ーオートバイは、たくさんのことを教えてくれましたー
バイク小説を二十年以上に渡り書き続けてきた著者が、オートバイに教えてもらったことをエッセイというスタイルで綴る。二輪誌で三年半ほど連載していたオートバイエッセイをまとめた著書「Rider's Story オートバイが教えてくれた」より、一部を掲載。

ミーティング

多種多様のバイクミーティング

 オートバイ専門の移動書店という形でバイクイベントに出店させてもらっている。その中にバイクミーティングイベントもある。バイクミーティング、と一口に言っても、その中身はそれぞれ違う特徴がある。

 例えば、一車種限定のミーティングがある。カラーリング違いの同じ形状のバイクだけがズラリと並ぶ様は、実に壮観である。また、メーカーや排気量は問わないけれど、エンジン形状で限定する《単気筒限定》のような、少々ざっくりしたカテゴリーのミーティングもある。「カワサキ」や「ハーレー・ダヴィッドソン」といった、メーカー限定のイベントもある。女性限定のミーティングイベントや、会場でコーヒーを飲むだけのバイクミーティングもあるし、海岸清掃するバイクミーティングイベントもある。

 企業や大きな団体が主催するバイクミーティングイベントもあれば、個人やその有志の集まりが主催するものもある。大企業主催だろうが個人の主催だろうが、イベントの規模と、どれだけのライダーが集まるか、どれだけ楽しいか、というのは決して比例しない。
 バイクミーティングイベントは全国各地で開催されている。インターネットで検索して探せばすぐ見つかるものから、ひっそり口コミで開催するような目立たないものもある。興味を持ったミーティングイベントを見つけたら、ぜひ参加することをお勧めする。

直接会うということ

 
 知らない人ばかり……、と不安に思う必要はない。個人的な感覚ではあるけれど、おそらく半分くらいは《一人で初参加》の人たちだ。親しげに会話しているから知り合い同士だと思ったら、今日初めて会った、と言われることが度々ある。

 少し前まで、新型ウイルスの蔓延が影響して、気にせずに出掛けたり、大勢で集まったりすることができなくなった。仕事では出張や打ち合わせが少なくなり、代わりにオンライン会議が利用された。プライベートでも、外食やお酒を飲む機会が減り、休日の過ごし方も変化した。
 インターネットの普及により、今やオンラインで相手の顔を見ながら会話ができる時代になった。僕たちは、そういったツールをさらに活用する(させられる)ことになり、身を持って体験した。時間が短縮できる。交通費がかからない。面と向かって直接言えなかったことも言える。様々なメリットがあることをさらに知り、実感した。

 だけど、じゃあこっちの方がいいね、となったのか。これで十分だね、と思っただろうか。会わなくても済むからそれで良い、と思っただろうか。
 いや、そうではない。それでも会いたい、会うべき、と思った。
 誰もが、少なくともバイクに乗るような人間は、皆そう思ったはずだ。それが自然な感情。ごく自然に生まれてくる気持ちだと思う。人間、会ってなんぼ、会う生き物、と改めて思った。

会うことで成長する

 人は人へ、何らかの影響を与えている。その力というのは、直接会うからこそ生まれるものだと思っている。もしこの世に他人が存在せず、他人と出会うことが無かったら、自分は変われないし成長もしないだろう。それどころか、嬉しいとか、悲しいとか、そういった感情すら生まれてこないだろう。

 人と出会うことで、自分の気持ちは変化し、感情が生まれる。
 刺激を受け、影響される。そうして、また少し成長する。

 バイクミーティングイベント。文字通り、バイクで会いに行くイベントだ。
 イベントの会場となる場所も、そんなきっかけが無かったら一生訪れることの無いような場所だったりする。初めて行くその土地で、初めて知ることも、たくさんあるはずだ。

 面倒臭い乗り物オートバイで、知っている人の誰も居ない、今ままで行ったことのない遠いところにある未知の場所へ、一杯の珈琲を飲むためだけに走るのだ。

 いかにもバイク乗りらしい一日を過ごせそうじゃないか。ただ楽しいだけの休日を。

 エンジョイライフ。

 オートバイを楽しもう。

<おわり> 

出典:『オートバイエッセイ集 Rider's Story オートバイが教えてくれた』収録作
著:武田宗徳
出版:オートバイブックス(https://autobikebooks.wixsite.com/story/

【オートバイエッセイ Rider's Story】ミーティング ギャラリーへ (5枚)

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