
“ライダー同士が知り合いでもないのにすれ違いざまに手をあげて挨拶する”のが『ヤエー!!』、もしくは『YAEH!!』と呼ばれる行為だ。20年以上バイクに乗っているライダーには『ピースサイン』といった方がしっくりくるかもしれないけど、現代のライダーの中には『ピースサイン』って言葉は知らないけど、『ヤエー!!』はやっているという人も多いだろう。今回はこの『ヤエー!!』について深掘り。由来や『ピースサイン』との関連性、『ヤエー!!』をより“たくさん返してもらう”ための効果的なやり方をみていこう!
目次
そもそも『ヤエー!!』とは? 『ピースサイン』とは何が違うの!?
さてこのライダーがすれ違う際に交わす『ヤエー!!』、なんのためにするのか? と言われるとちょっと説明が非常に難しい。筆者の感覚で話させてもらうと、登山中に行う挨拶が近い。山行中は見ず知らずの人に「こんにちは~」と挨拶しながらすれ違う。あの挨拶の感覚に『ヤエー!!』はとてもよく似ているのだ。
ライダーがすれ違う際に、“よっ!”って感じで手を上げて挨拶するのが『ヤエー!!(YAEH!!)』だ。
さて、まずは『ピースサイン』の方から説明していこう。かつて携帯電話もインターネットも普及してなかった80年代、90年代。迷子にガス欠、故障による立ち往生などなど、バイクツーリングは今よりもっと孤独で心細い場面が多かった。何かあったら電話で助けを呼べばいいや……では済まず、トラブルが即立ち往生に直結。だからこそ、ライダー同士がすれ違い様に「お互い無事でなにより。頑張ろう!」という意味を込めて手を振り合う慣習が生まれた。ライダーの中で自然発生的に生まれた挨拶が『ピースサイン』というわけだ。 過酷な環境に置かれると不思議と『ヤエー!!(YAEH!!)』したくなる。「お互い頑張ろう!」という感じでエールを送り合うのだ。
だからこそ雨天など、旅の状況が過酷であればあるほど、なんだか『ピースサイン』が心に沁みる。『ピースサイン』を交わしてお互いにエールを送り合うだけで嬉しくなって、「負けないぞ!」走る気力が湧いてくるのだ。
特に遠方からライダーが集まる北海道は、そんな心細い“旅心”を持ったライダーが多かったのだろう、『ピースサイン』といえば“北海道ツーリング”というイメージも定着していた。
『ヤエー!!』の歴史と「ピースサイン」との関係
面白いのは80年代、90年代の『ピースサイン』は、北海道以外の地域ではほとんど浸透していなかったということだろう。それこそ当時のツーリング雑誌には“北海道に行ったら『ピースサイン』をしよう!”なんてハウツーが、「ホクレンフラッグ」や「ライダーハウス」などの記事と一緒に紹介されているくらいだった。 『ヤエー!!(YAEH!!)』の輪を広げるべく、ステッカーデザインを公開して誰もがヤエーステッカーを作って配れるようにしている。(ヤエーステッカーウェブサイトより) 「ピースするスレ(2ちゃんねる)」で、ミススペルにより『ヤエー!!(YAEH!!)』が誕生した瞬間がこちら。(ヤエーステッカーウェブサイト:より) 80~90年代によく見かけた懐かしのピースミラー。さらに進化版でグー・チョキ・パーミラーなんてものもあった。ちなみに今でもWebikeで購入可能!
ただ、“交わすだけでなんだか嬉しくなって走る気力が湧いてくる”『ピースサイン』を愛好するライダーも当時から多く、なんとか『ピースサイン』を全国のライダーに普及させようとする活動も行われてきた。そんな中で生まれたのが、現代の『ヤエー!!(YAEH!!)』だ。ヤエーステッカーの公式ホームページの内容を要約すれば、
・『ヤエー!!(YAEH!!)』の発祥は2003年。『ピースサイン』愛好者による「ピースするスレ(2ちゃんねる)」で誕生。
・『ピースサイン』ってイイよね! という意味で「Yeah!(イエーィ!)」と書こうとして「Yaeh!(ヤエー!)」と書いてしまったミススペルに対する揚げ足取りがバズって定着。
・かつての『ピースサイン』は『ヤエー!!(YAEH!!)』として全国区に普及することになった。
ということになる。つまり80~90年代に北海道を旅するツーリングライダーの間で流行った『ピースサイン』が、偶発的とはいえ『ヤエー!!(YAEH!!)』と名称変換されることで、全国区となったものが現在の『ヤエー!!』というわけだ。
筆者は、「タンデムスタイル」や「レディスバイク」といった初心者向けバイク雑誌、400cc以下の専門誌「Under400」の編集長を10年以上やってきたこともあり、ライダーの中でも特に初心者ライダーを取材したり話を聞く機会がとても多かった。そんな会話の中で必ず“どうしてバイクに乗ろうと思ったの?”なんて話を聞くことになるのだが、面白いのは時代を反映してバイクに乗る理由のトレンドが少しずつ変化していくことだ。
いつの時代も、ソロにしろマスツーリングにしろ「ツーリングがしたくてバイクに乗る」ライダーが大多数なのは変わりないのだが、2010年あたりからてっきり絶滅したと思っていた「バイク同士で挨拶するやつ(ヤエー!!やピースサイン)」なんて理由が聞こえるようになり、2015年以降は「バイク動画をやりたくて」なんて理由が増えてきたと思ったら、近年は「バイクに乗ったら、やっぱり『ヤエー!!』ですかね!」なんて感じで、『ヤエー!!』という言葉が定着した印象を受ける。
『ヤエー!!』定着の背景には、YouTubeのツーリング動画が普及し、“誰もが観られて、誰もが動画を上げられる時代”となったことがあるのは間違いないだろうが、その特徴は80年代、90年代の「ピースサイン」と違って現代の『ヤエー!!』は全国的なものということだ。
僕がバイク雑誌の編集者をしていた頃は、ときどき誌面で「ピースサイン」を取り上げており、「1日走ってピースサインを出し続けたらいったい何人が返してくれるのか?」なんて企画を関東圏で実施したのだが、返してくれたのは“わずか数人(0人の時も…)”でガックリ!なんてことがよくあった。ところが『ヤエー!!』が定着した近年は、状況が一転。
僕自身も、“自分から『ヤエー!!』を出すことはあまりなく、出されれば返す”ライダーなのだが、近年は北海道だろうと本州だろうとバイクでツーリングに出かけて『ヤエー!!』せずに帰ることはないくらいだ。
『ヤエー!!』のやり方においてTPOは大切
さてここからは『ヤエー!!』実践編。実際に失敗しない『ヤエー!!』の出し方をレクチャーしていこう。というのも、期待に胸を膨らませて『ヤエー!!』を出したにも関わらず、返して貰えなかったらかなりションボリすることになる。 コーナリング中に『ヤエー!!(YAEH!!)』したところで誰も返してくれないし、危険なので注意! 写真はクローズド環境で安全に配慮して撮影したイメージです
そんな『ヤエー!!』デビューに失敗しないために重要なのはTPOをわきまえることだ。意を決して見ず知らずのライダーに『ヤエー!!』してみたのに返してもらえなくて闇堕ち、『ヤエー!!』否定派になる……なんてことがないようにしてもらいたい(笑)。
さて、TPOの“Time”は、タイミングだ。知っての通りバイクは車よりも運転が複雑な乗り物。『ヤエー!!』を出す方は自分でタイミングを選べるが、返す方は“それなりの余裕”が必要。なのでコーナリング中のライダーに『ヤエー!!』を出しても『ヤエー!!』は返ってこない。また直線であっても勾配のキツイ坂道(特に下り坂)など、余裕のない状況においても『ヤエー!!』を返しにくい。なので『ヤエー!!』を出すなら、お互いに十分に安全が確保できるタイミングで出すことが大前提となる。
また『ヤエー!!』を返す場合の無理も禁物。手を上げる余裕がない場合は軽く会釈すれば、相手に意図は伝わるし、その余裕もなければ返さなかったところで、相手も「今のはちょっとタイミングが悪かったな……」と反省しているはずだ。
TPOの“Place”は、場所。『ヤエー!!』を出すのはツーリング先で、お互いツーリングライダーであることが前提条件となる。目的地へと急ぐ通勤中のライダーに『ヤエー!!』を出したところでまず返ってこないものなのだ。『ヤエー!!』挨拶が成立するのは、お互いツーリング中で“バイクってやっぱり楽しいよね!”と心が開いていることが大切。なので『ヤエー!!』成功率を上げるには、○○スカイラインや海沿いのワインディングなど、ライダーの定番ツーリングスポットに行くといいだろう。また不思議とツーリングスポットでも、スポーツライディング愛好家のように走りに集中したいライダーは、余裕があろうとなかろうと『ヤエー!!』を返してくれないことが多い。
TPOの“Opportunity”は、機会。『ヤエー!!』を出されたり、出したりしていて感じるのは、『ヤエー!!』には“絶好の好機”があるということだ。冒頭の『ピースサイン』のくだりでも書いたけど、挨拶するライダーとの以心伝心というか、ある種の共感が伴うと『ヤエー!!』は単に“返してくれた!”以上の喜びが生まれるのだ。“いい景色だね!”とか“お互い頑張ろうぜ!”なんて思える状況での『ヤエー!!』がキマるとちょっとクセになるぞ!
『ヤエー!!』の心得 ・安全な場合のみ『ヤエー!!』しよう! ・『ヤエー!!』を出すのはツーリング中 ・相手が『ヤエー!!』を返す余裕をしっかり考慮する ・『ヤエー!!』が返せない場合は会釈だけでもOK! ・『ヤエー!!』のスタイルは人それぞれ。わかりやすければOKだ ・ライダーの中には『ヤエー!!』をしたくない人もいるぞ
SSTRなどのライダー同士の一体感のあるイベントなどでは特に『ヤエー!!(YAEH!!)』の成功率がアップする。ゴール後ともなれば、「お互いやり遂げたね!」なんて共感も加わって喜びもひとしおだ。
『ヤエー!!』で片手運転していいの!?
バイクで『ヤエー!!』を行う場合、スロットル側&ブレーキ操作に使わない左手を上げるのが普通だ。やり方は自由。サッと手を上げるだけのライダーもいれば、「おーい!」なんて感じで手を振るライダーもいる。 バイクでの片手運転は危険運転にはあたらず、むしろできた方が望ましい。ウインカー故障の場合には片手運転をしなくてはならないこともあるからだ。そんなもしもの場合に備えて『ヤエー!!(YAEH!!)』で余裕をもって片手運転ができるよう練習しておこう。
挨拶なので「好意」が伝われば、『ヤエー!!』スタイルはなんでもOK。かつて僕が北海道を旅したときには、4人組のライダーに「Y・M・C・A(懐いっ!)」を送られたこともあるし、変身ポーズをする仮面ライダーがいたり、ウワサレベルだが、Ninja(GPz900Rの方ね)やKATANAのライダーに抜刀されたなんて話も聞いたことがある。
コンプライアンス第一の現代ではそんなライダーはいない……と思うが、「片手運転なんて危ないよ! 違法じゃないの?」と心配する方もいるだろう。ただ片手運転に関しては違法とはならないのでご安心を。というのもバイクや車ではウインカーが壊れた場合、手信号によって右左折や停止の意思を周囲に知らせなくてはならない。当然、手信号をするためにはハンドルから手を放さなければならず、バイク(や自転車)の場合はそれが左手というわけだ。
『Webikeヤエー!!』が新登場!
さて、はからずも長話になってしまったライダーならではの素敵なコミュニケーションである『ヤエー!!』。ちょっと残念なのは、せっかく見知らぬライダーと『ヤエー!!』を交わしても、その関係はその場限りで刹那的ということだ。“さっき『ヤエー!!』してくれたライダーの乗っているバイクの名前が知りたい”、“カスタムがかっこよくて詳細を知りたい”。“もしかして今の有名なYouTuberだったんじゃないの!?”などなど……。 『Webikeヤエー!!』正式版がついにリリース。総額1000万円分のWebikeポイントが抽選されるキャンペーンを開催中。利用するにはアプリ(iPhone/Android)のダウンロードが必要となる。
今さっき『ヤエー!!』を交わした相手のことを知りたいと思ったことはないだろうか? この度、ウェビックから登場した『Webikeヤエー!!』は、そんなライダーならではの『ヤエー!!』と、現代のスマートフォンアプリ&SNS機能を融合させた全く新しいコミュニケーションツールだ。
バイクで走行中、Webikeアプリの『Webikeヤエー!!』機能をONしたライダー同士がすれ違うと、Webikeアプリ上で『ヤエー!!』挨拶を実施。つまり“ボディアクションはちょっと恥ずかしい”とか“運転に慣れていない”ライダーはもちろん、『ヤエー!!』しにくいコーナリング中や道の駅やPA/SAなどの駐車場でもアプリ上で『ヤエー!!』挨拶が可能。
面白いのは、相手の情報を確認可能。さらに相手の個人情報設定状況によってはそこから友達(ウェビ友)申請することもできてしまうのだ。この機会にヤエー!! にチャレンジしてみたい。
『Webikeヤエー!!』の走行後の履歴はこのように表示される。ヤエー!!を交わしたライダーを知ることができるのだ。
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記事を読んで2点ほど気になったところがあります
ピースサインの当時からバイクに乗るものですが、北海道だけでなく普通にやっていたと思います
今のように左手を挙げるような感じよりは地味で左手で右側に向けて(顔の前でピース)やる人が多かったと思います
また片手運転との絡みでも書かれていますが、現在主流になっているやり方はウィンカー故障時の手信号と似ているため
周りに誤解を与えかねない(双方のバイクだけならまだしも周りには一般車両も走っているため周囲に誤解を与えかねない)
ので誤解を招かない程度に」と注意喚起しても良かったのではないかと思いますが如何でしょうか
ライダー相互の挨拶はソロで走っていても複数で走っていても元気にしてくれる行為だと思いますで今後も「良い形」で浸透していって欲しいものです
そうですね、普通にその気のあるライダーは本州でも四国でも九州でも...知る限り全国でやってましたね。「ヤエー」についても、やりたい方はやれば良いと思いますが熟練ライダーのさり気ないピースサインは素直に渋く格好良いものでした。そろそろあがりの単車を考え始めた私が、どう見られているかはわかりませんが私は今でもピースサインです。
すれ違う時のちょっとしたコミュニケーションは嫌いじゃないし、なんなら何度か助けられるんだけど(主に「この先いるぞ!」的なサインに)挨拶を「ヤエー」って表現するライダーってちょっとアレな人が多い印象がある…
個人的にはあんまり使いたくなるサービス名ではない…
どう云う意図で、この記事を書かれたか邪推しませんが、
別の方も書かれてたように、間違った情報をスルーし、
それが「事実」となってしまうことを看過できないので、書かせていただきます。
75年頃から「ナナハン」に乗ってますが、九州でも普通にピースサインはやってました。
特に久住阿蘇にツーリングに行くと・・・。
時代は流れ、「ヤエー」と呼び名が変わった事はさておき、
バイク乗り同士が、簡単なサインで挨拶を交わす事は、とても気持ちが良いものです。
この文化が、永遠に続くように祈念してます。
大阪出身ですが、70年代の終盤にはピースサインやってました。むしろ、少し遠出すれば、もらいピースは嵐の如くだし、バンク中でもない限り返して貰えましたね。「フルバンクピース」の練習してる奴もいたとか(当時でも顰蹙もの)。クレームをつけるつもりは全くありませんが、ピースのやり方のレクチャーが必要なくらい廃れてしまったなあ···というのが前期高齢者の実感です。って俺、もしかして巧妙な記事に釣られた?
バイク歴36年のライダーですが、ピースサインはよくやるが、ヤエーなんてやった事もないし、そもそも聞いたこともありません。
私も記事について、不正確なことが記載されて
おりましたので一言
バイク暦30年以上です。90年代九州に在住して
おり、九州各地をツーリングしておりましたが
(阿蘇、大観峰、やまなみハイウェイ、ミルクロード
、日南海岸など)当時、ピースサインはしておりました。市街地はさすがにしませんでしたけど
正しい情報をお願いします。最近のヤェーって何?
って感じです。
ハーレー軍団もヤエーは返してくれないぞ