
気軽に身体メンテ企画第6回目で紹介した「骨盤タイプの簡単チェック」は試してみましたか? 腰痛の原因でもあり、逆にうまく使うことでパフォーマンスアップにも繋がる「骨盤」。後半となる第7回目では、いよいよ骨盤のタイプ別「自分でできる腰痛対策ストレッチ」を紹介しましょう!
写真・イラスト・まとめ/コイズミユウコ 講師:石塚洋之
骨盤のメカニズムを知ろう
直立して生活をしている人類にとって、重要な役割を持つのが脊柱(背骨)であり、その脊柱の状態を大きく左右するのが骨盤です。そして、その骨盤のバランスを取る役割を担うのが下肢周りの筋肉であり、この筋肉たちのケアと改善が、腰痛改善や身体のパフォーマンスアップの大きなキモとなるんです。
骨盤は自在に動かせるのが一番
骨盤の傾き=前傾や後傾、についてその原因や解消法について説明していきますが、ひとつ留意したいポイントがあります。
それは「前傾や後傾に骨盤が動くこと自体は悪いことではない」ということ。
むしろ骨盤を自在に動かせるほうが断然いいし、それができる人は身体能力が極めて高いともいえます。「どちらか一方しか使えない」もしくは「骨盤がどちらかに傾きっぱなし」というのが、よくないんです。
病名がついている人は注意!
病院で診断を受け、ただの腰痛ではなくちゃんと病名がついている人は、医師の診断に応じた医療処置を受けるべきなので無理なストレッチは禁物です!
骨盤に密接に関わる筋肉
そもそもなぜ骨盤が前傾になったり後傾になったりするのか。キモとなる筋肉たちにどういった原因があるのかについて触れてみましょう。
まず「前傾型なら大腿直筋と腸腰筋」、そして「後傾型ならハムストリングスと大臀筋」、これらが骨盤と密接に関わります。この筋肉らが縮む(筋緊張)ことで骨盤を引っ張り、その状態が長く続いたり、逆に反対側に引っ張る筋力が不足(前傾型ならば後傾にひっぱる筋肉が不足)することで、どちらかの方向に骨盤が偏っていってしまいます。
骨盤が前に傾く原因となる筋肉群
骨盤の前傾は、大腿直筋と腸腰筋の筋緊張が大きな原因。また後面の筋肉が筋力不足という、前面の筋肉>後面の筋肉という状態も原因となります。
大腿直筋と腸腰筋の縮みで骨盤は前に引っ張られ、前傾する。このまま固まってしまった状態が前傾型。逆に大腿直筋と腸腰筋が筋力不足だと、後ろの筋肉に引っ張られて後傾する。
骨盤が後ろに傾く原因となる筋肉群
骨盤の後傾は、ハムストリングスと大臀筋の筋緊張や筋力不足が大きな原因となります。また前面の筋肉が筋力不足という、後面の筋肉>前面の筋肉という状態も原因となります。
ハムストリングスと大臀筋の縮みで骨盤は後ろに引っ張られ、後傾する。このままかたまってしまった状態が後傾型。逆にハムストリングスと大臀筋が筋力不足だと、前の筋肉に引っ張られて前傾する。
骨盤の傾き解決法
1.ストレッチで骨盤を引っ張る要因を減らす
前傾や後傾の原因となる筋肉群をストレッチし、筋肉の縮み(筋緊張)をほぐす。
2.筋肉トレーニングで引っ張られる要因を減らす
筋肉不足を解消する。
前傾型を解消に導くストレッチ
股関節の前側にある筋肉・大腿直筋と腸腰筋がずっと縮んでいる状態(座っていたり、長距離の高速走行など)にあると、そこから足を伸ばした時に骨盤が前に引っ張られます。逆に後ろ側にある筋肉が弱っていても(筋力不足)、前に引っ張られます。
これらの状態で固まってしまうと、骨盤前傾による腰痛が出てしまいます。そこで、前面の筋肉の縮みを伸ばすストレッチが有効!
ちなみに前傾型は可動域が広く高いパフォーマンスで有利ということもあり、アスリートに多いです。ただ、アスリートの場合、前傾型を補う筋力や柔軟性があり、変な筋肉の縮みもないので、あまり問題にはならないです。
腸腰筋をストレッチ
イスを使ってのストレッチなので、イスを用意しましょう。会社の休憩時間などでもこっそりとできますよ。
イスなどに横向きに半ケツ(ストレッチする側の足をしっかり動かせるくらいの余裕をもたせる)で座り、上体を前に少し倒す。上体を倒すことにより、骨盤は前傾気味になる。
上体を倒したまま、ストレッチする側の足を後ろに引く。この時、しっかりと足を後ろに引くことがとても重要。上体を倒していることで、足を引きやすくなっているハズ。
足を引ききったら、上体をゆっくり起こしていく。この時、骨盤もゆっくり後傾になっていく。ただ、上体を反らせすぎると反り腰になり、背骨に負担がかかってしまうので注意。
大腿直筋をストレッチ
このストレッチは、前腿にある大腿四頭筋を伸ばすストレッチです。体育の授業や部活などで経験のある人も多いかもしれませんね。
効かせる側の足をしっかりと折りたたむ。
反対側の足で押さえ込み、自重でしっかりと伸ばす。ここから上体を後ろに倒す方法もあるが反り腰になってしまうので、今回は画像のように上体は起こしたままでストレッチしよう。身体が固い人は反対の足で押さえずともOK。
ちょっと難しいVerもご紹介
大腿直筋は大腿四頭筋の中の1つの頭の名前。上記のストレッチでも伸びてはいますが、ほかの筋肉も同時に伸びているので大腿直筋自体の効きは少し弱めなんです。そこで、少し難しいけれど大腿直筋にピンポイントで効果大なストレッチも、ご参考までに。
後傾型を解消に導くストレッチ
股関節の後ろ側にある筋肉であるハムストリングスと大臀筋がずっと縮んでいる状態(筋緊張・筋短縮)にあると、どんどん骨盤が後ろに引っ張られます。逆に縮んでいなくても、前側にある筋肉が弱っている(筋力不足)と、後ろに引っ張られます。この状態で固まると、骨盤後傾による腰痛が出てしまいます。
そこで、後ろ側の筋肉の縮みを伸ばしていくストレッチが有効!
ちなみに、後傾型は足も含めて身体を一体化させやすく、後ろに引く力や手足を引きつける力にすぐれているので、オフロードライダーのライディングでは骨盤を後傾気味に使うことも多いです。
ハムストリングスをストレッチ
上体を太モモにつけるように倒す、いわゆる体前屈なのですが、座ることで骨盤が後傾してしまうので、あえて立って行ないましょう。また、ストレッチする時にヒザを曲げている/伸ばしているかで「効かせたい場所」を分けることができるので、両バージョンを紹介します。
骨盤を前傾の状態(腰を軽く反らす感じを意識)にして、ストレッチする側の足を台などに乗せる。上体を太モモにつけるように倒して伸ばそう。
※台に足を乗せる時に後傾している状態で乗せると、伸びが悪くなってしまうので注意。
ヒザを曲げたバージョン。体前屈と同じように上体を太モモにつけるように倒す。伸ばすほう(台に乗せているほう)のヒザを曲げることで、お尻寄りのハムに重点的に効く。骨盤を前傾させるだけでもハムはすでに少し伸びているので、身体の固い人は無理はしないように。
ヒザを伸ばしたバージョン。同様に腰を軽く反らした前傾を意識しながら、台にストレッチする側の足を乗せる。この時しっかりヒザを伸ばした状態で体前屈すると、ヒザ寄りのハムに重点的に効く。
ハムストリングスの内側をストレッチ
ハムストリングスの内側を伸ばすためのストレッチです。このストレッチでも他と同様に、きっちりと骨盤は前傾を意識しましょう。
腰を軽く反らして骨盤の前傾を意識しながら、台にストレッチするほうの足を乗せる。このとき、身体の正面より外側に足を置き、さらにつま先も外側に向ける。ストレッチするほうのヒザを曲げて体前屈すれば、ハムの内側のお尻寄りが伸びる。
ヒザ伸ばしバージョン。ストレッチするほうのヒザを伸ばして体前屈することで、ハムの内側のヒザ寄りが伸びる。
ハムストリングスの外側をストレッチ
ハムストリングスの外側(大腿二頭筋)を伸ばすためのストレッチです。このストレッチでも他と同様に、きっちりと骨盤は前傾を意識しましょう。写真はヒザ伸ばしバージョンですが、このストレッチもヒザ曲げバージョンと両方やりましょう。
ストレッチするほうの足を内側に倒しながら、ストレッチするほうの足側に身体をひねる。効きがわかりにくいが、大腿二頭筋を伸ばしている。
大臀筋をストレッチ
大臀筋のストレッチは座ってやる方法もありますが、後傾型の人は"座った状態からアグラをかくような前面での足の折り曲げがやりづらい"という傾向にあるので、立った体勢からのこのストレッチがオススメです。また身体が固い人でも、自分で足を持ち上げるのではなく、自重でグッと力を乗せられるのでやりやすいです。
ストレッチするほうのヒザを曲げ、足先を内側に折る。
反対側の足は後ろに大きく引いて身体を支える。*横から見たところ
上体を前にしっかり倒して、自重で大臀筋を意識しつつ伸ばす。*前から見たところ
自分の骨盤タイプ別ストレッチ2つで身体が変わる!
紹介したストレッチを習慣づけていくことで、身体の変化を日々強く感じていけると思います。それだけ骨盤は我々の身体の中で重要なんです。そして、自分の傾いているタイプさえわかれば、やるべきストレッチは2つだけ。たったこれだけで腰痛の原因を減らせてパフォーマンスも上がるんです。
もしかしたらストレッチをすることで、次の日に部分的に鈍い痛みが生じるかもしれないけれど、それは骨や関節などの痛みではなく「ただの筋肉痛」なので心配ないです。つまり、骨盤が前傾なり後傾なりしていることによりバランスが崩れ、崩れたことで使われなくなっていた筋肉たちが本来のバランスに戻ろうとして動き出した証拠でもあるからです。
いわゆる「正しい姿勢」をした時に違和感や疲れを感じる場所、そこがまさしく筋力が弱まっているポイントなんです。このストレッチを続けていくことで、傾きすぎた骨盤を問題のないレベルまで戻すことができ、眠っていた筋肉も正常に動かせるようになるハズ!
「骨盤コントロールが身体能力を決める!」という石塚先生の言葉どおり、状況に合わせて骨盤を自在に使い分けられるようになること、それが理想の身体ですよね♪
<今回教えていただいた先生はこちら>
この記事にいいねする