1993年7月5日、旅行社「道祖神」のバイクツアー「カソリと走ろう!」の第1弾目となる「目指せ、エアーズロック!」に出発した。
参加者は13人。成田空港で出会った我ら13人は「豪州軍団」を結成し、オーストラリア東海岸のブリスベーンに飛んだ。
ブリスベーンを出発点にしてレンタルバイクでロングダートを走破し、世界最大の一枚岩のエアーズロックを目指すのだ。カソリのバイクはスズキのDR350。


ブリスベーンを出発する我ら「豪州軍団」


オーストラリアの大平原に立つカソリ


カソリのバイクはDR350

大分水嶺山脈を越え、最初のダートに突入した時は舞い上がってしまった。
「やったー!」
という気分。
先頭を走っていたカソリは走りやすいところをあえて外し、砂深いルートに突っ込んだ。気の毒だったのは、後続のみなさん。
「カソリさんが選んだルートだから、きっと走りやすいに違いない」と深い砂に突っ込み、砂にハンドルをとられて吹っ飛んだ。
「ターク」こと目木正さんや「お水」こと小船智弘さんは、全身打撲でサポートカーに乗ることになった。目木さん、小船さん、ゴメンね。
我々はすごくラッキーだった。上原和子さん、増山陽子さん、錦戸陽子さんの3人の女性ライダーが参加されていて、そのうち上原さん、錦戸さんの2人は看護師。そのおかげでタークとお水は美人看護師の手厚い看護を受けることができたのだ。
ダートに突入して目の色を変えたのは坂間克己さん。ぼくがDR350のアクセル全開で走っても、すぐ後ろまで迫ってくる。120キロ以上で走っていたので、ギャップにはまったときなどは「キャー!」と、絶叫モードで吹っ飛びそうになる。それでもバトルをつづける2人。このバトルのせいで(おかげで)、後に坂間さんが結婚する際にはカソリは仲人をすることになる。


オーストラリア一周のライダーに出会う


牧場訪問


我ら「豪州軍団」、勢ぞろい!

530キロのロングダート「バーズビルトラック」入口の町、バーズビルに着いたときは、なんともいやなニュースを聞いた。砂漠同然のこの一帯で記録的な大雨が降り、平原は水びたしだという。
こういうときは瞬時の決断が必要。最大限の情報を集め、「行ける!」という判断を下すと、「さー、突破するゾ!」と、我々は雄叫びを上げてバーズビルの町を出発した。バーズビルトラックに入ると、すさまじい洪水の光景を見る。大平原は一面水びたし。ダート道はグチャグチャヌタヌタ状態。バイクはあっというまに泥団子になった。
氾濫した川渡りが大変。濁流の中で転倒し、あわやバイクごと流されそうになったこともある。水をかぶったせいで、エンジンのかからなくなったバイクが続出し、そのたびに押し掛けした。あまりの苦しさに心臓が口から飛び出しそうになる。


ヌタヌタ道に突入


大雨の平原を突っ走る

530キロの洪水と泥土の「バーズビルトラック」を走りきって大喜びした「豪州軍団」だったが、その喜びもつかのま、次の610キロのロングダート「ウーダナダッタトラック」も大雨にやられ、ズタズタに寸断されていた。
だが洪水と泥土に慣れたメンバー全員は、「目指せ、エアーズロック!」を合言葉にしてウーダナダッタトラックも走りきり、大陸中央部を縦貫するスチュワートハイウエイのマルラの町に出た。ここまで来ればもう大丈夫。あとは舗装路のみで問題はない。


連続する川渡り。川に橋はかかっていない


夕食はぶ厚いステーキ

マルラではキャラバンパークでキャンプしたが、その夜は大きな難関を突破した喜びを爆発させ、焚き火を囲んでの大宴会になった。
カンビールをガンガン飲み干し、さらにワイン、ウイスキーと、あるものすべてを飲み尽くした。おかげで翌日は割れるように痛む頭をかかえての出発となった。
ブリスベーンを出発してから7日目、ついに我々はエアーズロックに到着。西日を浴びたエアーズロックは真っ赤に染まっていた。夢が現実になった瞬間だ。ここまでの道のりが厳しいかっただけに、感無量だった。

メンバー全員で、日が暮れるまでエアーズロックを見つづけた。日が沈む直前のエアーズロックは、炎をたぎらせれ燃え盛るか火のような赤さだった。
翌朝はまだ暗いうちにキャンプ場を出発。今度は地平線に昇る朝日に染まったエアーズロックを眺めた。そして急勾配の岩肌を歩いて登り、全員で標高867メートルのエアーズロックの頂上に立った。360度の大展望。地平線がスパーッと天と地に切り裂いている。


キャンプ地の朝。焚火の残り火を囲んで朝食を食べる


平原にそそり立つエアーズロック


エアーズロックを登る

エアーズロックから大陸中央部のアリススプリングスへ。この町がバイク旅のゴール。我ら「豪州軍団」は太平洋岸のケアンズから日本に帰ってきた。
「目指せ、エアーズロック!」を皮切りにして、「道祖神」のバイクツアー「カソリと走ろう!」シリーズでは、「ユーラシア大陸横断」(2002年)、「サハラ砂漠縦断」2004年)、「南米・アンデス縦断」(2008年)…を走り、「ウラジオストック→イスタンブール)の「アジア大陸横断」(2016年)が最後になった。その間の全19回の「カソリと走ろう!」では、200人以上のみなさんが参加された。


エアーズロックの頂上で「やったー!」を叫ぶ我ら「豪州軍団」

賀曽利隆の海外ツーリング記

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