
【賀曽利隆:冒険家・ツーリングジャーナリスト】
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「伊豆半島一周」につづいての新春ツーリングは「房総半島一周」だ。
1月17日5時、神奈川県伊勢原市の自宅を出発。相棒のVストローム250のメーターは15万9871キロ。16万キロまであと129キロだ。
新東名の伊勢原大山ICから東名→首都高経由で日本橋に到着したのは6時30分。ここからは千葉街道(国道14号)で市川に向かう。
日本橋から14キロ走ると、江戸川にかかる市川橋に出る。ここが今の東京と千葉の都県境、昔の武蔵と下総の国境だ。
江戸川にかかる市川橋。対岸の市川の町に朝日が昇る
市川橋を渡った市川から「房総半島一周」が始まる。市川は下総の中心で、昔の国府はここに置かれた。市川、船橋、習志野と渋滞の連続する国道14号を走り、4車線区間になって流れがよくなりホッとする。
千葉からは国道357号経由で国道16号に合流し、市原市に入る。千葉と市原の市境が下総と上総の国境。市原は上総の中心で、昔の国府はここに置かれた。国道16号で袖ヶ浦市に入ったところで、Vストローム250は160000キロを達成。「70代編日本一周」(2017年)から4年4ヵ月での16万キロ。目指すのは20万キロだ。
16万キロを達成!
首都圏大環状の国道16号の終点まで走り、東京湾に突き出た富津岬へ。公園食堂「志のざき」で「貝丼」を食べ、岬突端の展望台に登った。そこからの眺めはすばらしい。今、自分が走ってきた道が砂州の中に一直線に延びている。目を左に移すと、新日鉄の君津製鉄所が威容を誇っている。前面の海は浦賀水道。対岸は三浦半島の観音崎だ。
富津岬の公園食堂「志のざき」で昼食
公園食堂「志のざき」の「貝丼」
富津岬の展望台
富津岬の展望台から長く延びる砂州を見下ろす
館山に到着したのは13時30分。市川から136キロ。ここまで来ると、Vストローム250で切る風はそれほど冷たくはない。
館山は安房の中心で、昔の国府はここに置かれた。
館山からは館山湾沿いの県道257号を走り、房総半島南西端の洲(すの)崎へ。灯台の立つ展望台からは、三浦半島、伊豆半島、伊豆大島、富士山を見る。東京湾の内房海岸と太平洋の外房海岸はここで分かれる。
房総国境の明鐘岬
南国的な風景の館山の海岸通り
房総半島南西端洲崎の灯台
洲崎では洲崎神社を参拝。ここは安房の一宮。急な石段を登って拝殿へ。裏手の御手洗山は斧のまったく入っていない自然林。この御手洗山には千葉県でも一番といっていいほどの自然林が残っている。
洲崎からの「房総フラワーライン」のシーサイドランはすごくいい。菜の花が咲き始めている。黒潮の匂いをかぎながら走る気分はもうたまらない。行く先々の土地の匂いをかげるのが、バイク旅の大きな魅力だ。
洲崎の洲崎神社。ここは安房の一宮
安房神社の大鳥居。ここも安房の一宮
房総半島最南端の野島崎に到着。市川から178キロ。厳島神社を参拝。ここには男根と女陰が奉納されている。灯台に登り、遊歩道で野島崎を歩いた。
今晩の宿は野島崎の白浜温泉「南海荘」。大浴場の湯にどっぷりつかり、湯から上がるとレストランでの夕食。まずは生ビールで房総半島に乾杯。大ジョッキをキューッと飲み干したところで、サザエとホタテ、サワラの刺身、牛筋の煮込みなどを食べながら2杯目を飲む。これぞ極楽、極楽ツーリングだ。
房総半島最南端の野島崎
野島崎の灯台から見下ろす野島崎南端の岩場
野島崎の「房総半島最南端の地」碑
野島崎の白浜温泉「南海荘」の大浴場
白浜温泉「南海荘」の夕食。まずは生ビールで乾杯!
翌日は野島崎を出発すると海沿いの道を走り、小湊の誕生寺を参拝。ここは日蓮生誕の地。国道128号で鴨川市から勝浦市に入ったが、鴨川・勝浦の市境は安房と上総の国境。旧国の国境を意識してまわると、房総半島はよりおもしろくなる。
白浜温泉「南海荘」を出発
国道128号で鴨川の中心街を走り抜けていく
小湊の誕生寺を参拝。ここは日蓮誕生の地
勝浦市の鵜原海岸に寄っていく。ここは「生涯旅人!」、カソリの旅の原点。高校3年の夏休みに友人の前野幹夫君、横山久夫君、新田泰久君と鵜原海岸でキャンプした。このとき、バイクでアフリカ大陸を縦断しようという話になったのだ。そんな仲間のうち、横山君と新田君は、もうこの世にいない。
勝浦の鵜原海岸。ここは「生涯旅人カソリ」の原点
勝浦の八幡岬に立つ「お万の方」の像
鵜原から勝浦の町に入ると、勝浦漁港から八幡岬へ。そこには徳川家康の側室「お万の方」の像が立っている。お万の方は徳川御三家の紀州と水戸の藩祖の母。ここ勝浦城で生まれ育ち、14歳の勝浦城落城の時には幼い弟と母親を連れて、八幡岬の断崖に白い布を垂らして海に降り、小舟で逃げた。これが「お万の布さらし」伝説だ。
勝浦から「月の沙漠」像のある御宿を通り、太東崎(いすみ市)へ。岬の展望台から南側に目を向けると、夷隅川の河口がよく見える。北側に目を向けると、九十九里浜の長い海岸線を一望する。
御宿の砂浜には「月の沙漠」の像
太東崎からの眺め。夷隅川の河口がよく見える
大東崎を後にすると、九十九里有料道路を走り、終点の片貝で昼食。食事処「やなぎや」で名物の「焼きはまぐり」を食べ、そのあとで、、「いわしの刺身定食」を食べた。片貝といえば何といっても「いわし料理」だ。
九十九里有料道路を行く
片貝の食事処「やなぎや」の「焼きはまぐり」
片貝の食事処「やなぎや」の「いわしの刺身定食」
片貝からは九十九里浜に沿って県道30号を行く。とはいっても、海は見えない。飯岡(旭市)まで行くと、刑部岬から長くつづく九十九里浜の海岸線を見下ろした。
刑部岬からの眺め。飯岡漁港を見下ろす
刑部岬から犬吠埼へ。その途中では下総最高峰の愛宕山(73m)に寄っていく。山頂には三角点があり、石造りの祠が祀られている。ここには「地球の丸く見える展望館」があるが、国の最高峰が標高73メートルというのには驚かされる。下総には山らしい山はほとんどないということだ。
犬吠埼では犬吠埼灯台に登り、下総最高峰の愛宕山を眺めたが、山というよりもこんもりと盛り上がった丘という風景だ。
下総の最高峰、愛宕山(73m)の山頂。祠が祀られている
犬吠埼灯台に登る
犬吠埼灯台から見下ろす君ヶ浜海岸
犬吠埼から君ヶ浜海岸を走り、15時、銚子に到着。利根川河口の銚子漁港の岸壁にVストローム250を止めた。市川から347キロ。「房総半島一周」の終了だ。
銚子からは国道126号→国道296号で酒々井ICまで行き、東関道→首都高→東名と高速道を走り、20時、伊勢原の自宅に戻った。Vストローム250の新春ツーリング第2弾目は全行程616キロ。春を先取りするかのような「房総半島一周」だった。
利根川の河口で
銚子に到着。銚子漁港が「房総半島一周」のゴール!
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