→Vストローム250で行く「鵜ノ子岬→尻屋崎2021」(2)

【賀曽利隆:冒険家・ツーリングジャーナリスト】

みなさんへ!

東北道の事故から77日目、ついにバイクに乗れました。

東京・立石の「スズキ2輪・東京サービスセンター」からジクサーSF250に乗って北へ。2泊3日の「福島一周」では1129キロを走ってきました。最後は白河ICから東北道で東京へ。危うく命を落としかけた佐野藤岡IC近くの事故現場を通過したときはもう感無量でした。

「バイクに乗りたい!」 その一心で伊勢原協同病院に通院し、リハビリに励んだおかげでまたバイクに乗れるようになったと思っています。先生も驚くほどの回復ぶりでした。これからは1キロでも多くバイクで走ることが、一番のリハビリになると思っています。

なお、ジクサーSF250の弟分のジクサー150で「分割日本一周」をしていますが、中断しているその連載も後日、再開させますのでご期待ください。

▲石川さん(右)と斉京さんに見送られて「スズキ2輪」の「東京サービスセンター」を出発。さー、行くぞ!(写真撮影:坂本卓也)

復興が進んだ街と震災直後と変わらない街

3月13日。6時に朝食を食べ、6時45分に石巻の「サンファンヴィレッジ」を出発。今日も一日、渡辺さんは同行してくれる。2台のVストローム250で北へ。
国道398号で万石浦沿いに走り、ゆるやかな峠を越えて、女川湾岸の女川の町に入っていく。石巻は曇りだが、女川は雨。このあとずっと冷たい雨に降られることになる。

▲「サンファンヴィレッジ」を出発

▲JR石巻線終着の女川駅

女川の大津波直後の壊滅した町の姿はまるで幻だったかのように、盛土の工事も終わり、造成地には次々と新しい家が建ち始めている。スーパーマーケットの「おんまえや」も営業を開始している。
女川を過ぎると国道398号の交通量はガクッと減る。尾浦漁港でVストローム250を止めたが、岸壁は整備され、漁港は活況を呈しているように見える。高台移転した団地も出来ている。漁民のみなさんは高台の家から車で漁港に通う。目の前には出島が見えるが、架橋工事が進んでいる。

▲尾浦漁港。対岸には出島が見える

国道398号で再度、石巻市へ。旧雄勝町に入ったのだ。ここからは雄勝湾を右手に見ながら走る。かつての雄勝の町の中心街へ。東日本大震災の大津波で雄勝の町は消え去った。震災以降、雄勝はまるで見捨てられたかのように復興は遅々として進まなかったが、ここへきて一気に復興が進んでいる。
巨大な防潮堤が完成し、高台移転した町が姿を見せ始め、高台に移された県道238号も完成している。さらに「雄勝硯伝統産業会館」や「交流館」も完成している。

▲完成した雄勝の「硯伝統産業会館」

▲高台移転した雄勝の町

▲雄勝の巨大防潮堤。見上げるような高さだ

雄勝から国道398号で釜谷峠を越え、大川小学校へ。震災遺構の大川小学校は公開に向けての工事中で近寄れない。北上川にかかる新北上大橋を渡る。北上川の最下流にかかるこの橋は東日本大震災の大津波で落橋し、長い間、迂回しなくてはならなかった。

▲国道398号の釜谷峠を越える

▲北上川にかかる新北上大橋

新北上大橋を渡り、北上川の堤防上の道を行く。堤防上の2車線の道は完成し、気持ちよく走れる快走路に変っている。白浜海岸でVストローム250を止め、そこから広々とした北上川の河口を眺めた。北上川は東北第一の大河だ。

▲北上川堤防上の快走路を行く

▲東北第一の大河、北上川の河口を見る

北上川の河口を後にすると、三陸海岸の名勝、神割崎に立ち寄り、南三陸町に入っていく。国道398号の新道は完成し、スムーズに国道45号に合流できる。国道45号に入ると、志津川湾を右手に見ながら南三陸町の中心、志津川の町に入っていく。
志津川を貫く国道45号はすでに完成しているが、仮設だった「南三陸さんさん商店街」は新しい商店街となって、国道45号のすぐ脇に移っている。

▲三陸海岸の名勝、神割崎

▲南三陸町の「南三陸さんさん商店街」

▲「南三陸町震災復興祈念公園」に渡る中橋が完成した

▲大津波を今に伝える南三陸町の「防災センター」

国道45号で南三陸町から気仙沼市へ。気仙沼の中心街に入ると、まずは南気仙沼に行く。この一帯は大津波に襲われ、震災直後はすさまじい惨状だった。JR気仙沼線の南気仙駅の駅前は1年たっても浸水したままで、何台ものバスの残骸がそのまま残っていた。
その南気仙沼は一変した。土地のかさ上げ工事は終わり、新しい造成地に建物が建ち始めている。高層の公営災害住宅も完成している。JR気仙沼線はBRT(バス高速輸送システム)に変り、専用軌道の新しいバス停(南気仙沼駅)が完成している。

▲完成したJR気仙沼線の南気仙沼駅。BRTが走っている

南気仙沼から気仙沼の心臓部の気仙沼漁港へ。漁港には何隻もの大型漁船が停泊しているが、漁港周辺の復興は遅れている。大津波と大火に見舞われた鹿折は盛土工事も終わり、造成地には水産加工場や新しい建物が建ち始めていた。

▲気仙沼漁港には大型漁船がズラリと並んで停泊していた

気仙沼を出発し、国道45号で岩手県に入る。気仙川にかかる新しい気仙大橋を渡って陸前高田へ。国道45号の道の駅「高田松原」で、Vストローム250を止める。「東日本大震災津波伝承館」を見学したあと、レストランで昼食。ここでは「たかた丼」を食べた。広田湾のカキ、三陸のイクラ、三陸のメカブを使った「たかた丼」。
元の道の駅「高田松原」は震災遺構になっているが、まだ見られるような状態ではない。国道45号沿いの陸前高田は東日本大震災から10年たって今も、震災直後と何ら変わりがないといっていいほど復興が遅れている。

▲これが道の駅「高田松原」の「たかた丼」

▲陸前高田の国道45号。右手には元の道の駅「高田松原」が見える

国道45号で通岡峠を越え、大船渡市に入る。大船渡漁港とその周辺の復興は進んでいるが、かつての大船渡の中心街の復興はまだ遠い。大船渡からゆるやかな登り坂を登ると盛(さかり)だが、隣り合った盛の町は大津波の影響をほとんど受けていない。
わずかな高度差で明暗を分けるのが津波被害の大きな特徴だ。盛駅前でVストローム250を止め、缶コーヒーを飲んでひと息入れた。

▲大船渡の今。このあたりがかつての中心街

▲JR大船渡線(右)と三陸鉄道の盛駅

大船渡から国道45号で釜石に向かう。三陸道が完成しているので、国道45号は楽々走れる。大峠、羅生峠、鍬台峠と峠を越えていくが、国道45号の峠越えはずいぶん楽になった。
釜石に到着すると、釜石港まで行く。釜石の町はすっかりきれいになった。釜石港も漁港には新しい魚市場が完成し、食事もできる「魚河岸テラス」ができている。

▲整備されてすっかりきれいになった釜石港

釜石を出発し、大槌町に入っていく。大槌町の中心街の土地の造成はすでに終わり、町を貫く国道45号の旧道は新しく付け替えられ、新しい道路沿いには新しい建物が次々にできている。

大槌町では地震発生時、町役場前で防災会議を開き、当時の町長や町役場の職員40人が亡くなった。その旧町役場は震災遺構として残そうという意見と、一日も早く撤去して欲しいという意見が激しくぶつかり合った。結局、撤去されて今では更地になっている。

▲大槌町の旧役場跡。今では更地になっている

大槌町から山田町に入る。大津波で町が壊滅した山田では、新しい町を建設中。高層の災害公営住宅が完成し、町中を貫く国道45号も整備されている。
町をグルリと取り囲む巨大防潮堤も完成間近だ。町全体がかさ上げされているので、高台の町役場前から見下ろす新しい町は、町役場との高低差がなくなり、すぐ下に見えるようになった。

山田が今晩の宿。三陸鉄道の陸中山田駅に近いうみねこ温泉「湯らっくす」に泊まった。すぐさま大浴場の湯につかり、冷え切った体をあたためた。湯から上がると渡辺さんと陸中山田駅前の居酒屋「四季海郷」に行き、生ビールで乾杯。そのあとで鮮度満点の「海鮮丼」を食べた。

▲山田の居酒屋「四季海郷」で渡辺さんと生ビールで乾杯!

▲居酒屋「四季海郷」の「海鮮丼」

駅前に完成したスーパーマーケットで買い物をして宿に戻ったが、陸中山田駅といい、駅前の温泉宿、駅前の居酒屋、駅前のスーパーマーケットといい、大津波で壊滅的な被害を受けた山田の町は、今ここまで復興している。

この記事にいいねする


コメントを残す

スズキ Vストローム250の価格情報

スズキ Vストローム250

スズキ Vストローム250

新車 269

価格種別

中古車 94

本体

価格帯 48.5~66.88万円

59.3万円

諸費用

価格帯 5~6.97万円

4.98万円

本体価格

諸費用

本体

45.78万円

価格帯 38.8~51.4万円

諸費用

5.64万円

価格帯 5.16~5.25万円


乗り出し価格

価格帯 53.5~73.85万円

64.28万円

新車を探す

乗り出し価格


乗り出し価格

51.42万円

価格帯 43.96~56.65万円

中古車を探す

!価格は全国平均値(税込)です。

新車・中古車を探す