Vストローム250で行く「鵜ノ子岬→尻屋崎2021」（2）復興地域をめぐる26回目の旅

→Vストローム250で行く「鵜ノ子岬→尻屋崎2021」（1）

【賀曽利隆：冒険家・ツーリングジャーナリスト】

東日本大震災の発生から10年目の3月11日に出発した「鵜ノ子岬→尻屋崎」の第2回目をお伝えします。第1回目からずいぶんと間があいてしまいましたが、ぜひともお読みください。
それと5月31日のカソリの東北道での事故ですが、おかげさまでその後の経過は良好で、事故から45日目の7月15日、左手に埋め込まれていた12本のボルトはすべて抜き取られました。7月21日からはリハビリが始まりました。1日も早くバイクに乗りたいと思っています。

東日本大震災から10年目を象徴する景色

3月12日。福島県いわき市の四倉舞子温泉「よこ川荘」の夜明け。宿の窓から眺める風景は、東日本大震災から10年目を象徴していた。
海沿いの県道382号にかかる東舞子橋は付け替えられて新しい橋になり、横川と合流して太平洋に流れ出る仁井田川の堤防工事はすでに終わり、海岸の防潮堤も完成している。「よこ川荘」に隣接する旅館「なぎさ亭」は大津波で全壊したが、新しく建て替えられて営業している。6時前には付け替えられた新しい東舞子橋の上に朝日が昇った。

▲四倉舞子温泉「よこ川荘」の朝食

朝湯に入り、朝食を食べ、8時に出発。ここで合流した渡辺哲さんと古山里美さんと3台のバイクで北へと向かう。渡辺さんはVストローム250、古山さんはセローだ。
四倉の交差点から国道6号を行く。道の駅「よつくら港」の前を通り、久之浜バイパスを走る。この久之浜バイパスは、東日本大震災以降に完成した。

▲四倉舞子温泉「よこ川荘」を出発

▲国道6号の久之浜バイパス

いわき市から広野町に入ると、海沿いの県道391号を行く。JR常磐線の新駅、Jヴィレッジ駅前で止まったが、ここは広野町と楢葉町の境で、長らくこの地点で通行止になっていた。それも今は昔といったところだ。

▲広野から県道391号を行く

▲JR常磐線のJヴィレッジ駅

楢葉町に入ると、木戸川にかかる県道391号の橋を渡ったが、この橋も東日本大震災以降に完成した。
楢葉町では真言宗の古刹、大楽院に立ち寄り、ご住職の酒主さんにお会いし、しばし東日本大震災からの10年の話を聞いた。渡辺さんと酒主さんは双葉高校の同級生。大楽院に近いJR常磐線の竜田駅に行くと、東口と西口の新しい駅舎が完成し、西口には新しい広場が完成していた。東日本大震災から10年の復興の現場を見る思いがした。
楢葉町の太平洋岸最北の波倉まで行くと、東京電力福島第2原子力発電所がよく見える。爆発事故を起こした第1よりも出力の大きい第2の廃炉は決まっている。

▲JR常磐線の竜田駅

楢葉町から富岡町に入った。
JR常磐線の富岡駅に寄り、海沿いの県道391号を行く。富岡川にかかる橋が完成し、橋の上からは復興途上の富岡漁港が見下ろせた。
県道391号は富岡川を渡った先で通行止。通行止地点で左折し、国道6号に出ると、旧富岡消防署前を通る。国道6号は全線開通したあとも、長らくこの地点で二輪車は通行止になっていた。今は何ら問題なく走り抜けられるのが夢のようだ。富岡消防署は移転し、その跡地は更地になっている。

▲復興工事が進む富岡川河口の富岡漁港

大熊町に入ると、JR常磐線の大野駅まで行く。
双葉町に入ると、JR常磐線の双葉駅に立ち寄り、渡辺さんの母校の双葉高校に行く。東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故で、100年近い歴史のある双葉高校は廃校に追い込まれた。校庭に設置された線量計は0.191マイクロシーベルトを表示している。放射線量は爆発事故直後とは比べものにならないほどで、小数点以下まで下がっている。荒れ果てた校庭を見る渡辺さんの姿には、胸がジーンとしてしまう。

▲JR常磐線の大野駅

▲JR常磐線の双葉駅

▲廃校になった双葉高校の校庭に立つ渡辺さん

双葉町からは海沿いの県道254号を行く。海岸近くには復興の拠点となる「東日本大震災・原子力災害伝承館」と「交流センター」が完成している。「伝承館」を見学したあと、「交流センター」にある「ペンギン」のスペシャルサンド「カツ」を食べた。

▲双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」

▲「ペンギン」のスペシャルサンド「カツ」を食べる

双葉町から浪江町に入り、復興した請戸川河口の請戸漁港を見たあと、震災遺構の請戸小学校へ。ここは公開に向けて準備中だ。
浪江町から南相馬市に入ると、JR常磐線の小高駅へ。ここでは駅周辺を歩いた。駅前には作家柳美里の書店「フルハウス」がある。

▲JR常磐線の小高駅

▲小高からは海沿いの県道260号を行く

小高からは海沿いの県道260号を行く。以前は何ヵ所も通行止があったが、今では全く問題なく全線が走れる。
県道260号から県道74号に入り、海沿いのルートを行く。南相馬市から相馬市に入り、蒲庭温泉「蒲庭館」の前を通る。県道74号沿いには大規模な太陽光発電所が次々にできている。
県道74号を右折し、右手に太平洋、左手に松川浦を見ながら、大洲松川浦ラインを走る。正面には鵜ノ尾岬が見える。鵜ノ尾岬のトンネルを抜け、松川浦大橋を渡り、松川浦へ。松川浦の復興は進み、活気を取り戻している。震災直後の多くの漁船が乗り上げたシーンがまるで幻だったかのように思えてくる。

▲快走路の大洲松川浦ライン

▲松川浦の松川浦漁港

▲松川浦の前に立つ渡辺さん

松川浦で古山さんと別れると、ここからは渡辺さんと2台のVストローム250を走らせ、北へ北へと進む。海沿いの県道38号で福島県から宮城県に入ったが、盛土した県道38号はかなりの区間が完成している。この新道は大津波の際の堤防の役目も果たす。

▲県道38号の福島・宮城県境

▲山元町の震災遺構の中浜小学校

亘理からは海沿いの県道10号を行く。大津波で大きな被害を受けた阿武隈川河口の荒浜、名取川河口の閖上、仙台市若林区の荒浜と見ていく。
仙台市内の県道10号は、かさ上げされた新道で、東日本大震災の10年目にして、全線が完成している。これによって仙台北部道路と県道10号の2本の堤防道路ができたことになる。

▲亘理町の荒浜に完成した「荒浜防災公園」

▲荒浜のわたり温泉「鳥の海」。ここでは宿泊可

▲閖上の日和山。山上には富士姫神社と閖上湊神社

▲閖上の日和山からの眺め。高層の災害公営住宅が見える

▲かさ上げされた県道10号。左下の道は旧道

▲仙台市若林区の荒浜

▲仙台市若林区荒浜の慰霊塔

仙台港ICで三陸道に入り、石巻へ。
石巻港ICで三陸道を降りると、海沿いのルートを行き、18時に今晩の宿「サンファンヴィレッジ」に到着。「ローストビーフ」の夕食を食べたあと、部屋での飲み会開始。売店で買った「ポッキー」を食べながら、渡辺さん差し入れの南会津の地鮭「花泉」を飲みながら、この10年間の復興をおおいに語り合うのだった。

▲仙台港ICから三陸道に入る

▲三陸道の春日PAを出発

▲三陸道を石巻港で降り、日本製紙の石巻工場の前を通る

▲今晩の宿、石巻の「サンファン・ヴィレッジ」に到着

▲「サンファン・ヴィレッジ」の夕食。ボリューム満点

▲「サンファンヴィレッジ」での渡辺さんとの飲み会開始