前回:ジクサーでの「分割日本一周」(北海道一周編3)

【賀曽利隆:冒険家・ツーリングジャーナリスト】

▲宗谷岬に到達。手がかじかむような寒さだ

4月15日、オホーツク温泉「ホテル日の出岬」を出発。朝から雪が降っている。前日につづいての強烈な寒さ。国道238号を北上したが、あまりの寒さにガタガタ震えてしまう。あたりは一面の雪景色だが、幸いなことに路面に積もるほどではなかった。転倒しないように、慎重に相棒のジクサーを走らせた。

枝幸、浜頓別、猿払と雪。
これが北海道の春。日本最北端の宗谷岬まで来るとやっと雪はやみ、心底、ホッとした。宗谷岬を境にして、オホーツク海から日本海へと海が変わる。海が変わると気温が若干、上がった。稚内からは日本海を南下。天塩の町で、北海道第2の大河、天塩川の河口を見る。河口の鏡沼海浜公園には松浦武四郎の像。

▲稚内港の北防波堤ドーム。北海道遺産になっている

▲稚内のノシャップ岬。赤白のノッポ灯台が立っている

国道40号線沿いの天塩川の河原には、松浦武四郎の「北海道命名之地」碑。探検家松浦武四郎の「蝦夷地踏査の足跡」は北海道遺産になっている。天塩川流域の名寄盆地の名寄から国道239号線で下川へ。下川郊外の一軒宿の温泉、五味温泉に泊まった。

▲国道40号沿いの天塩川の河原に建つ松浦武四郎の「北海道命名之地」碑

▲ひと晩泊った下川町の五味温泉

五味温泉から名寄に戻ると、国道40号で塩狩峠へ。天塩・石狩国境の峠なので「塩狩峠」なのだが、ここは三浦綾子の名作『塩狩峠』の舞台。暴走した列車を身をもって止めた鉄道員の実話を元にしている。塩狩峠をJR宗谷本線が越えている。主人公の長野政雄氏の碑も建っている。

▲国道40号の塩狩峠。天塩・石狩国境の峠だ

▲国道40号旧道の塩狩峠は通行止

▲塩狩峠の峠上にはJR宗谷本線の塩狩駅がある

ぼくにとって『塩狩峠』は、十勝岳の泥流を描いた『泥流地帯』とともに三浦綾子の忘れられない作品だ。塩狩駅を見下ろす高台には「塩狩峠記念館」がある。この建物は旭川郊外にあった三浦綾子の旧宅の「三浦商店」を解体し、移築したもの。

ここでは三浦綾子のデビュー作の『氷点』にまつわる資料や映画化されたときのポスターが見られる。塩狩峠を越えて旭川へ。石狩川にかかる旭橋を渡って旭川駅に到着。駅構内で北海道遺産の「旭川家具」を見た。旭川からは国道12号で美唄へ。
このあたりはかつての石狩炭田。美唄からは道道33号で月形に向かったが、感動の広さだ。

▲石狩川にかかる国道40号の旭橋を渡って旭川の中心街に入っていく

▲道の駅「ひがしかわ」で「旭川家具」を見る

▲美唄から月形へ。北海道は広い!

ひと晩、「月形温泉ホテル」に泊まり、翌日は国道275号を北へ。新十津川に着くと、JR札沼線の終着駅、新十津川駅に行ってみる。札沼線の北海道医療大学駅から新十津川駅までの間は今日で終了。北海道からまた鉄道が消えていく。国道275号で雪の幌加内峠を越え、国道239号で霧立峠を越えて日本海に出た。

▲国道275号の幌加内峠への道。あたりは一面の雪景色だが、路面に雪はない

▲国道239号の霧立峠。幌加内町は氷点下41・2度を記録した

国道232号で留萌へ。留萌からは国道231号線を南下。札幌に到着すると、札幌駅前から北海道神宮に行き、蝦夷の一宮を参拝した。札幌からは国道5号線で小樽へ。「小樽市総合博物館」を見学する。ここには様々な鉄道車両が展示されている。線路が残る旧手宮線の廃線跡はプラプラ歩いてみた。
ここは北海道の鉄道の発祥地で、「0マイル碑」がある。

▲札幌では蝦夷の一宮の北海道神宮を参拝する

▲小樽の旧手宮線の廃線跡をプラプラ歩く。ここは北海道の鉄道発祥の地

小樽から余市へ。国道5号線沿いの「鶴亀温泉」の湯に入った。ここは宿泊可。「今晩、泊まれますか?」と聞くと宿泊OK。もう一度、湯に入り直し、湯から上がるとレストランで夕食。夕食後はゆったりまったり気分で、部屋で缶ビールを飲むのだった。

余市の鶴亀温泉を出発すると、国道229号で積丹半島に入っていく。まずは積丹岬へ。島武意海岸の断崖を見たあと、岬の突端に立った。残雪の積丹半島の山々が目に残る。つづいて神威岬へ。日本海に突き出た尾根上の道を歩き、岬の突端へ。沖合の岩礁地帯には「義経北行伝説」の神威岩がそそり立っている。
積丹ブルーの海が色鮮やかだ。

▲積丹半島北端の積丹岬。赤白の灯台が立っている

▲積丹半島北西端の神威岬へ。岬突端への道を歩く。白黒2色の灯台が見える

▲30分ほど歩き、神威岬に到達。目の前の岩礁地帯には神威岩がそそり立つ

▲神威岬の入口にある食堂「うしお」

▲食堂「うしお」で積丹名物の「生うに丼」を食べる

神威岬入口の食堂「うしお」で「生うに丼」を食べ、積丹半島の西海岸を南下。すると今度は、ニセコ連峰の雪山が海の向こうに見えてくる。これもすばらしい眺めだ。北海道本土最西端の尾花岬を見たあと、国道229号で江差へ。小樽から江差までが国道229号。

▲弁慶岬の弁慶像。猛烈な風が吹いている

▲北海道本土最西端の尾花岬を見る

▲江差の姥神大神宮を参拝。ここの渡御祭は北海道遺産になっている

江差では姥神大神宮を参拝し、横山家と中村家の旧家を見てまわった。江差からは国道228号で函館へ。その途中には北海道で唯一の城下町の松前がある。ここでは松前城を見た。北海道最南端の白神岬を通り、函館に戻ってきた。「函館→函館」は3056キロ。

▲北海道唯一の城下町、松前の松前城(福山城)

▲北海道最南端の白神岬

▲函館港に戻ってきた。津軽海峡フェリーの「ブルーマーメイド」で青森港へ

20時15分発の津軽海峡フェリー「ブルーマーメイド」にジクサーともども乗り込んだ。

▲青森駅前に到着

青森港到着は24時。青森駅前の「東横イン」でひと晩泊まり、翌朝は7時30分に出発。ジクサーを走らせ、日本海を南下。秋田県では芭蕉の「奥の細道」最北の地、象潟の蚶満寺でジクサーを止めた。ここは「奥の細道」に出てくる干満珠寺。
芭蕉は「江山水陸の風光を尽くして」と、象潟を絶賛したが、文化元年(1804年)の象潟大地震でこの一帯は隆起し、「江の縦横一里ばかり」とある絶景の象潟は陸地になってしまった。

▲青森・秋田県境の須郷岬からの眺め

▲「奥の細道」最北の地、象潟に建つ芭蕉像

▲秋田・山形県境の三崎

象潟を後にすると、国道7号で山形県に入り、そして鼠ヶ関を通って新潟県に入った。新潟に到着すると、古町の「東横イン」に泊った。古町の本町交差点には新潟市の道路元標が立っている。ここは国道7号と国道8号の起点で、国道113号、国道289号、国道350号、国道403号、国道459号の起点になっている。
さらに国道17号、国道49号、国道116号、国道402号の終点にもなっている。何と11本もの国道が、この本町交差点に集まっている。

4月20日、「北海道一周編」の最終日。新潟・古町の「東横イン」の朝食を7時30分に出発。まずは国道8号で長岡に向かう。長岡からは国道17号で東京へ。

国道17号の起点は東京・日本橋だが、終点は長岡ではなく、新潟・古町の本町交差点。ということで「新潟~長岡」間は国道8号と国道17号の重複区間になる。とはいっても、その間に国道17号のルート表示は1本もない。ルート表示があるのは国道8号のみ。
「新潟市道路元標」を見たことによって、国道への興味がおおいにかきたてられた。

▲本町交差点の「新潟市道路元標」

長岡からは国道17号を行く。小千谷では道の駅「ちぢみの里おぢや」で止まり、日帰り湯「ちぢみの里」の大浴場と露天風呂に入った。湯上りには売店で売っている「どら焼き」を食べた。越後川口では信濃川本流と信濃川最大の支流、魚野川の合流点を見た。
小出(魚沼市)では町中に入り、魚野川にかかる橋の上から残雪の越後三山を眺めた。南魚沼市では六日町、塩沢と通り、道の駅「南魚沼」で昼食を食べた。南魚沼産コシヒカリのご飯は美味だ。

▲国道17号の道の駅「ちぢみの里おぢや」の日帰り湯に入っていく

▲小出(魚沼市)から見る越後三山

越後湯沢からは芝原峠、二居峠、火打峠、最後に三国峠を越える。ここでは三国街道の「三国三宿」に焦点を当ててみた。三国三宿というのは芝原峠と三国峠の間にある三俣宿、二居宿、浅貝宿の3宿のこと。三俣宿には脇本陣の「池田屋旅館」が残っている。三国三宿では唯一の江戸時代の遺構。しかし今は旅館はやっていない。
二居宿は山中にひっそりとたたずむ宿場といった風情。本陣跡は「富沢旅館」だが、ここも今は旅館はやっていない。最後の浅貝宿は今では三国街道の宿場町というよりも、苗場スキー場の「スキーの町」としてのイメージが強い。
本陣跡は宿場の中央にある「ホテル本陣」。さすが本陣といったところで格式のあるホテル。ホテル内の「本陣歴史資料館」は自由に見学できる。 浅貝宿から新潟・群馬県境の三国峠を越えるが、この国道17号の三国峠と三国山は三国境ではなく、上越の二国境なのだ。
それなのになぜ三国かというと、峠の頂上に祀られている上州の赤城、越後の弥彦、信州の諏訪の、3国の神々を合祀した三国権現に由来する。

▲国道17号の三国峠は一面の霧

三国峠のトンネルを抜け、関東側に入ると天気は急変。濃霧の峠道を下る。沼田、前橋、高崎と通り、神流川を渡って埼玉県に入る。東京・日本橋にゴールしたのは19時30分。全行程4727キロの「北海道一周」だった。ジクサーよ、ご苦労さん!

▲東京・日本橋に到着。これにて「北海道一周編」、終了!

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