【賀曽利隆:冒険家・ツーリングジャーナリスト】

前回:賀曽利隆の「日本16端紀行」東日本編2

▲午前5時、宗谷岬を出発

2019年10月9日午前5時、日本最北端の宗谷岬を出発。日本本土の16端をめぐる「日本16端紀行」も、残すのは日本本土最東端の納沙布岬だけになった。相棒のVストローム250に、いつものように「さー、行くゾ!」とひと声かけて走り出す。

オホーツク海を真っ赤に染めて朝日が昇る。ところが…、陸地側はザーザー降りの雨なのだ。雨に降られながらオホーツク国道の国道238号を南下する。左手の朝日を見ながら土砂降りの雨に降られるという漫画のような世界を行く。枝幸を過ぎると大雨の様相。海も陸も大雨だ。

▲オホーツク海に朝日が昇る。だが国道238号は雨…

7時、雄武に到着。大雨は降りつづいている。「セイコーマート」で朝食の「サンドイッチ」を食べ、一息ついた。

▲雄武の「セイコーマート」で朝食。雨は降りつづく

9時、紋別に到着。ありがたいことに雨は上がる。

▲紋別に到着。雨は上がった

▲サロマ湖畔を行く

▲海のように広いサロマ湖!

11時15分、宗谷岬から310キロの網走に到着。青空が一気に広がる。

▲網走に到着。青空が一気に広がる

網走からは国道244号を行く。
斜里を過ぎると根北峠を越える。北見と根室の国境の峠だ。

▲国道244号の根北峠を越える。根北峠は根室・北見国境の峠だ

「蝦夷」は明治になってから石狩、後志、渡島、胆振、日高、十勝、釧路、根室、北見、天塩、千島の11ヵ国に分国された。根北峠はそのうちの北見・根室国境の峠だが、国道39号の石北峠は北見・石狩国境の峠、国道240号の釧北峠は釧路・北見国境の峠、国道274号の釧勝峠は釧路・十勝国境の峠…というように、2つの国名をつけた峠名が道北や道東の各地にある。

蝦夷はそのときに、日本古来の七道(東海道、東山道、北陸道、山陽道、山陰道、南海道、西海道)にならって、「北海道」と名づけられた。日本は「八道」になったが、現在ではそのうちの東海道、北陸道、山陽道、山陰道が街道名として残るのみ。唯一、北海道だけが本来の「道」として残っている。

根北峠を下り、「鮭の町」標津に到着すると、「鮭博物館」の「サーモンパーク」を見学。ガラス越しに遡上するサケを見る。ここでは「サーモンパーク」内にある「サーモン亭」で鮭三昧の「標津鮭定食」を食べるつもりでいた。ところが「サーモン亭」は営業休止でガックリ…。標津からさらに国道244号を走り、道の駅「おだいとう」で北方領土の国後島を眺めながら「海鮮うどん」を食べた。

▲標津の「サーモンパーク」

▲道の駅「おだいとう」の「海鮮うどん」

▲国道244号で根室へ。北海道を満喫!

14時45分、宗谷岬から500キロの根室に到着。日本本土最東端の納沙布岬へ。根室半島一周の道道35号を行く。歯舞漁港を過ぎ、日本最東端の珸瑤瑁(ごようまい)郵便局の前を通り、根室から22キロで納沙布岬に到着だ。

▲根室に到着。ここから納沙布岬を目指す

▲根室半島一周の道道35号を行く。青い空と青い海

▲第16端目の納沙布岬に到達!

「本土最東端の碑」の前に立ったときは、思わず「やった!」のガッツポーズ。
明治5年に初点灯という北海道最古の納沙布灯台には霧信号、無線方位信号所が設置されている。このあたりは海霧の多発地帯で、とくに6月から8月にかけては60日を超える海霧で、納沙布岬は「海霧の岬」といわれるほどだ。

▲納沙布岬の灯台

10月初旬のこの日は抜けるような青空。
灯台の下は岩礁地帯。その向こうの珸瑤瑁海峡には北方領土の島々(歯舞諸島)が浮かんでいる。一番右には秋勇留島。目を左側に移していくと、手前にある萌茂尻島が重なって見える。その左手には勇留島。納沙布岬からわずか3.7キロの貝殻島はケシ粒のような小さい島。その左手には志発島。目をこらしてやっと見える距離。そして水晶島へとつづく。水晶島はまっ平な島で、水平線上にべたっと寝そべるようにして横たわっている。

▲珸瑤瑁海峡越しに北方領土の島々を見る

納沙布岬は日本本土の最東端だが、日本の最東端というと、東経153度59分12秒の南鳥島(旧マーカス島)になる。南鳥島はミクロネシアに近い太平洋の孤島で、東京都の小笠原村に属している。さらにいえば日本の最南端は沖ノ鳥島で、北回帰線よりも南の北緯20度25分30秒になる。日本は広い!

16時、根室を出発。国道44号で釧路へ。納沙布岬から150キロの釧路で夕食を食べ、釧路からは国道38号を行く。22時、納沙布岬から180キロの白糠に到着し、駅前の「ホテル洸洋」に泊まった。宗谷岬からの1日の走行距離は700キロを超えた。

10月10日午前4時30分、白糠駅前の「ホテル洸洋」を出発。気温は0度。寒い。ガタガタ震えながら国道38号を走る。十勝川を渡るころには夜が明けた。帯広に近づいたところで十勝の平原を赤く染めて朝日が昇る。6時、帯広に到着。「吉野家」で朝食の「納豆定食」を食べて生き返った。

▲国道38号で帯広へ。十勝の平原に朝日が昇る

帯広からさらに国道38号を行く。新得を過ぎると狩勝峠を越えるが、狩勝峠は十勝と石狩国境の峠。展望台から雄大な風景を眺める。十勝側では茫々と広がる十勝の平原を見下ろし、石狩側ではゆるやかに連なる山並みを眺めた。狩勝峠の南、国道274号の日勝峠は十勝と日高国境の峠。さらにいえば、国道273号の三国峠北側の三国山(1541m)は、十勝・石狩・北見の3国国境になっている。
こうして「境」に想いを馳せ、「境」を意識しながら走るのは、バイク旅ならではの大きな魅力だとぼくは思っている。

▲国道38号の狩勝峠を越える。狩勝峠は石狩・十勝国境の峠

狩勝峠を越えると、もうひとつの峠の樹海峠を越え、富良野へと下っていく。富良野の町を過ぎると、石狩川の支流の空知川沿いに走り、滝川で国道12号に合流。国道12号の砂川、美唄、三笠、岩見沢を通り、12時30分、札幌に到着。納沙布岬から札幌までは550キロだ。

▲国道38号で富良野の町に入っていく

札幌では蝦夷の一宮の北海道神宮を参拝する。
ここは北海道開拓の守護神。北海道の総鎮守として道民の篤い崇敬の念を集めている。北海道神宮の鳥居前の屋台で「たこ焼き」を食べた。6個入り500円。一宮で食べる「たこ焼き」は忘れられない味になった。

▲札幌に到着。蝦夷の一宮、北海道神宮を参拝

札幌からは国道230号を行く。定山渓温泉を通り、中山峠に到達。蝦夷富士の羊蹄山(1898m)がよく見える。ここでは名物「峠のあげいも」を食べた。1串300円。北海道でイモといえばジャガイモのことだ。

▲国道230号の中山峠。峠からは蝦夷富士の羊蹄山がよく見える

▲中山峠の名物、「あげいも」をパクリ。一串350円

「あげいも」は男爵イモの皮をむき、3つに切って塩煮し、それに小麦粉をまぶして油で揚げたもの。北海道には「いも餅」もある。塩煮したイモを一度冷し、すり鉢ですりつぶしたものに澱粉を加え、餅状にする。それを形を整え、串刺しにし、こんがりと焼き揚げたものだ。甘辛のタレにつけて食べる。「あげいも」や「いも餅」を食べると、「あ~、今、北海道にいる!」という感動が胸にこみ上げてくる。

中山峠を越えると喜茂別、留寿都と通り、洞爺で国道37号に合流。長万部から国道5号で函館に向かう。この間は高速道路並み。大型トラックが100キロ近い速度で爆走しているので要注意。高速の大型トラックにあおられると恐怖を感じるほどだ。

20時15分、函館港に戻ってきた。納沙布岬から800キロ。「函館港~函館港」の「北海道一周」は2160キロになった。
20時15分発の津軽海峡フェリー「ブルーマーメイド」に乗船。間髪を入れず、すぐさま眠る。青森港までの3時間40分はちょうどいい一晩の眠りになる。

▲函館港のフェリーターミナルに戻ってきた。さー、青森へ!

10月11日午前0時、津軽海峡フェリーの「ブルーマーメイド」は青森港に入港。すぐさま東京を目指して走り出す。国道7号を南下。矢立峠を越えて秋田県に入ると、道の駅「たかのす」で10分寝、道の駅「ことおか」で20分寝と、寒さに震えながらゴロ寝した。

▲青森港に到着。津軽海峡フェリーの「ブルーマーメイド」を下船する

4時30分、秋田に到着。
秋田・山形県境の三崎を過ぎ、山形県に入る。

▲ここは秋田・山形県境の三崎

▲山形県側から見る鳥海山

8時、酒田に到着。
山形・新潟県境の鼠ヶ関を過ぎ、新潟県に入る。

▲国道7号の山形・新潟県境を通過

▲国道17号の向こうに越後三山を見る

12時、新潟に到着。新潟からは国道8号→国道17号を行く。
青森から新潟までは晴れていたが、三国峠は雨。三国峠を越えた関東も雨…。

▲国道17号の三国峠を越える。一路、東京へ!

群馬県の前橋、高崎を通って埼玉県に入り、東京・日本橋に到着したのは22時30分。青森港から820キロ、納沙布岬からは1628キロ、宗谷岬からは2152キロだ。

▲日本橋に到着。これにて「日本16端めぐり」、終了!

これにて「日本16端めぐり」は終了。西日本編4433キロ、東日本編4103キロ、17日間で8536キロを走った「日本16端めぐり」。Vストローム250のメーターは11万7376キロになった。12万キロまであと一息。がんばれ、Vストローム250!

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