中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)/2026鈴鹿8耐テスト ©T.Yamaguchi

 2026年の鈴鹿8時間耐久ロードレースに向けて、YAMAHA FACTORY RACING TEAMは再びHonda HRCとの頂上決戦に挑む。2025年に6年ぶりの復活参戦を果たした同チームは、いきなり2位表彰台を獲得し、その存在感を強烈に印象づけた。復帰2年目となる今年は、同じ布陣でHonda HRCへの再挑戦に臨む。

中須賀克行選手を軸とした、Honda HRCへ2年目の再挑戦

 マシンはヤマハYZF-R1。全日本ロードレース選手権JSB1000と連動し、ヤマハファクトリーを象徴するレーシングブルーを採用した。チームウエアやガレージも同一コンセプトで統一され、単なるカラー変更ではなく、チーム全体の世界観を表現する仕様となっている。

 ライダーラインアップは2025年と同じ3名体制。全日本ロード王者の中須賀克行選手を軸に、MotoGPライダーのジャック・ミラー選手、WorldSBKライダーのアンドレア・ロカテッリ選手という強力な布陣で、再び鈴鹿8時間耐久ロードレースに挑む。5月12日〜13日に行われた鈴鹿テストでは、ミラー選手とロカテッリ選手がレギュラーシーズンとの兼ね合いから欠席。そのため、中須賀とテスト担当として起用された南本宗一郎の2名が参加し、マシンの基礎セットアップを進めた。
 2025年は復活初年度ということもあり、準備面での揺らぎもあった。レースではHonda HRCと同一周回の217周を走破したものの、34.243秒差の2位。中須賀はその差をこう振り返る。

「昨年は6年ぶりの復活でバタバタした面もあったけど、今年はチームとして母体もしっかりしているし、データもある状態でテストに臨めている」

 単なる速さの差ではなく、準備段階の成熟度が結果に影響したと語る。今年はその“土台”が整った状態でシーズンインを迎えている。

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)/2026鈴鹿8耐テスト ©T.Yamaguchi

Honda HRCとの差34.243秒、その中身と見えた課題

 2025年の鈴鹿8耐でヤマハは、217周という同一周回までHonda HRCに食らいつきながらも、最終的には34.243秒差で2位に終わった。この数字だけを見れば僅差にも見えるが、中須賀の評価はより現実的だ。

「ピット回数がこちらは1回多かったので、そこで50秒くらいのハンデがあった。50秒はライディングで詰めるのはほぼ難しい」と中須賀。つまりレースの本質は“走行タイム差”だけではなかった。ピット戦略、燃費、そして作業精度。その積み重ねが最終結果に直結していた。

 さらに中須賀は、チーム構成の違いにも触れる。「向こうはライダーが2人で、こちらは3人だったので、その意味でもパフォーマンスの差は見せつけられたレースだった」

 この差を埋めるため、ヤマハは1年間を通して燃費改善やピット作業の短縮に取り組んできた。中須賀自身も「ピット作業などもタイムは縮めることはできているので、少しずつ削れてきている」とその変化を感じている。

 一方で、ライバルである4連覇中のHonda HRCの存在は、より明確な脅威として浮かび上がっている。「ロングランのアベレージも向こうの方が速かった。7回のピットであの速さが出せるのかというのが正直なところで、常に警戒しないといけない」と中須賀選手は語った。

 5月の鈴鹿8耐テストでは、新舗装された路面の影響もあり、序盤はフィーリングに変化があったという。しかしロングランでは安定したアベレージを刻み、一定の手応えを得ている。

「最初は路面も張り替えられていてフィーリングが違ったけど、最終的にはロングランもしっかりできて、いいアベレージを刻めていた」

 一方で懸念もある。テスト時は気温が低く、本番とのコンディション差が大きくなる点だ。「ちょっと涼しすぎるので、そのあたりは心配ですね。ただそれ以外は順調に来れていると思います」。鈴鹿8耐本番では気温が大きく上昇することが想定され、タイヤ選択やマシンのフィーリングも変化する可能性が高い。

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)/2026鈴鹿8耐テスト ©T.Yamaguchi

ラストイヤーの中須賀と、8時間の意味

 そして2026年、このレースの意味はさらに大きくなった。中須賀克行は今シーズン限りで現役を引退することが発表されている。ヤマハからのオファーを受けた際、中須賀は一度は参戦を迷ったという。

「暑いから出たくないとは言っていたんですけど、それでもYZF-R1を一番知っているのは自分だと言ってもらえて」と、ヤマハからの強い要請が彼の決断を変え、「覚悟を持って受けさせてもらった」と語った。

 その言葉通り、中須賀は単なるライダーではなく、マシン開発とレース運用の中心としての役割も担っている。鈴鹿8耐テストでは、今年もミラーとロカテッリの2人は別スケジュールのため不在となり、レースウィーク直前で合流する予定だ。その中で中須賀は、自らの役割をこう語る。「自分がバイクを作り上げていかなければいけない」

 鈴鹿8耐というレースは、ライダー3人の速さだけでは成立しない。チームの準備、戦略、そしてミスのなさが結果を左右する。その本質を中須賀は理解している。

「彼らは本当に世界のトップライダーなので、そこは全く心配していない。ミスなく8時間やり切れば、表彰台の真ん中は狙えると思っている」

 2025年の復活、34.243秒差の惜敗、そして2026年の中須賀ラストイヤー。YAMAHA FACTORY RACING TEAMと中須賀の物語は、いま確実に“最終章”へと進んでいる。すべての答えは、8時間のゴールラインで示される。

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)/2026鈴鹿8耐テスト ©T.Yamaguchi

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