世界耐久選手権の第3戦として行われるのが鈴鹿8耐。

そのハチタイの前哨戦として行なわれた選手権第2戦は、走行時間も同じ8時間の「スパ・フランコルシャン8時間耐久」。

8時間を走る、絶好のデータ取りの機会となるスパを制したのは、前回のこのコラムで「要注意」としたBMWモトラッドでした。

目まぐるしく変わる天候をBMWワークスチームが制圧

スパウェザーを乗り越えて優勝したBMWモトラッド。BMWの優勝は2022年の、場所は同じくスパ、当時は24時間耐久だったレース以来。

第2戦の舞台となったのは、ベルギーのスパ・フランコルシャン。森に囲まれた、ベルギーはアルデンヌ地方にあり、別名「アルデンヌのジェットコースター」。壮大な高速区間とテクニカルな区間、高低差が大きい区間が混在する全長6985mのサーキットで、戦闘力や耐久性だけではなく、戦略や作戦の柔軟性が試されるといわれる8時間耐久レースです。6月5~7日にかけて行なわれたスパ8耐は、その「作戦の柔軟性」が試されたレースとなりました。

というのも、スパは「スパウェザー」と呼ばれるほど、目まぐるしく変わる天候でも知られていて、レース中に快晴と豪雨に見舞われ、それどころかコースの西側と東側で路面コンディションが変わることすら珍しくないコース。8時間走るレースといい、高速区間とテクニカルなエリアが混在するレイアウトといい、さらに天候が目まぐるしく変わるという点でも、ハチタイにそっくりなレースだといえるのです。ちなみにこの週末、鈴鹿地方も梅雨入りが発表されました。

フリー走行を経て、公式予選でトップタイムを獲得したのは#37BMWモトラッド。BMWモトラッドは、3人のライダーが2回のセッションを走って、計6回中5セッションでトップタイムをマークしています。それでも#1YARTヤマハ、#5TSRホンダ、#12ヨシムラSERTの上位4チームが1秒未満の中でポールポジションを争う接近戦。5番手に#11カワサキWebikeトリックスター(=以下KWT)、7番手にオートレース宇部レーシングがつけ、この時点でもう、曇り→快晴→小雨→豪雨に見舞われ、ウェット路面でオイル漏れを引き起こしたチームがあり、10台ものマシンが多重クラッシュを喫してしまう場面も見られました。

スタートで飛び出したのは、いつものように#12ヨシムラSERTのグレッグ・ブラック。#1YARTは後方10番手あたりまでポジションを落としてしまう。

転倒やトラブルなく8時間を走り切った#37BMWモトラッド。ハチタイでも、コンディションが荒れると、このチームが上昇してくる!

決勝レースは6/6(土曜日)13時、日本時間20時にスタート。スパ8Hは土曜のお昼にスタートして夜21時にゴール。高緯度のベルギーの季節では、21時にはまだ薄暮といった感じの明るさが残されています。
スタートから飛び出したのは、安定の#12ヨシムラSERTで、いつものスタートライダー、グレッグ・ブラックが予選4番手からロケットスタートを決めて、いつものようにホールショットを獲得します。序盤から#12ヨシムラSERT、#37BMWモトラッド、#5TSRホンダ、#11KWT、#1YARTが後方を引き離してトップ集団を形成します。

ひと雨来そうな曇り空の中、ドライコンディションでスタートしたレースでは、開始1時間で、なんと#12ヨシムラSERT、#76オートレース宇部、さらにSSTクラスの期待の星・#25チームエトワールが転倒。ダメージの大小こそあれ大きくタイムロスしてしまいます。

それでも耐久レースらしく、#12ヨシムラSERTは4分でピット作業を終了! トップから2周遅れの37位で追い上げをスタートします。

この最初の1時間でトップに立ったのは#37BMWモトラッド。マーカス・レイテルバーガー、スティーブン・オデンダール、マイケル・ファン・デル・マークの3人が速く、安定したタイムで走り、ライバルチームと目されていた、スタートで出遅れて一時10番手あたりまで順位を落とした#1YART、開始30分で転倒を喫した#12ヨシムラSERTを引き離します。

#37BMWモトラッド、#1YART、#11KWT、#5TSRがトップ争いをする中、#12ヨシムラSERTは1時間で28番手、2時間で19番手、3時間で14番手、4時間で9番手まで追い上げ。しかし#5TSRがトラブルで長いピット作業を強いられているレース中盤あたりでスパに雨が降り始め、ここからレースは混乱していきます。

トラブルや転倒なく走り切ったが、路面コンディションに翻弄され、#37よりもピット回数が2回も多かったことが優勝を逃す原因となった#1YART。

雨が降り始めた時間帯でスリップダウンを喫してしまったKWT。それでも激しい追い上げを見せて3位表彰台に登壇したKWT=カワサキWebikeトリックスター。

スタート30分で「らしくない」転倒を喫した#12ヨシムラSERT。一時は最後尾付近までドロップしたが、それから7時間半をかけて4位までカムバック!

5時間終了を前に#11KWTが転倒。5時間経過あたりでは、#1YARTがライダー交代を行なった直後に激しい雨となって1周でピットイン。このスティントで路面が乾き始めたタイミングで再びピットインしてドライタイヤに履き替えたらまた雨と、約30分で3回ピットインするというタイムロスに見舞われてしまいます。

これがスパ8耐で重要視される項目のひとつ「作戦の柔軟性」です。各チームとも、当然のように雨雲レーダーや気象予報サイトを注視しながらのレースですが、それでもYARTのようなケースが起こるのがスパウェザーなのです。

開始早々はトップグループにつけていた#5TSRホンダフランス。26年シーズンは開幕戦ル・マンで9位、ここスパでリタイヤしてしまった。

序盤の転倒から長いピットストップを強いられ14位に終わったオートレース宇部。ハチタイでは浦本を軸に上位進出してきそうなチームだ。

その後も、#37BMWモトラッドのみが安定してハイペースでラップを刻み続け、ほぼノントラブルで8時間を走り切って優勝! 2位に同一周回ながら約1周近く差がついてしまった#1YARTが入り、3位には転倒の修復作業から追い上げた#11KWT、一時はほぼ最下位まで落ち込んだ#12ヨシムラSERTが、驚異の追い上げを見せて4位に入賞しました。

雨の後半戦をトップグループをしのぐペースで走った#12ヨシムラSERT。ハチタイでは2026年型GSX-R1000Rを初投入する予定だ。

ハチタイではワンマッチワークスチームにも遜色ない経験値を持つYART。チャンピオンシップレギュラーチームでは、優勝に最も近い!?

開幕戦ル・マンで3位、そしてここスパでも3位表彰台に登壇したKWT。日本では愛知、世界耐久の現場では耐久の本場フランスを本拠とする強み。

梅雨入りが発表された鈴鹿地方、7月3~5日のハチタイ本番では、まだ梅雨明けに至っていないのではないかという長期予報もあります。となると、是が非でも優勝を狙って来るワンマッチワークスチームとは別に、ハチタイ上位入賞と選手権での最大ポイントを狙ってくるチャンピオンシップレギュラーチームでは、地元チームである#12ヨシムラSERT、#5TSRホンダがやや有利かもしれませんね。

このスパ8耐での上位入賞4チーム、それに#76オートレース宇部レーシングも#5TSRホンダも、ブリヂストンタイヤを装着しています。鈴鹿が荒れた天候となったら、鈴鹿での雨のブリヂストンタイヤを知り尽くしている日本人ライダーがキーになります。となると、チャンピオンシップレギュラーチームでは、鈴鹿に日本人ライダー、渥美心を起用するヨシムラの「作戦の柔軟性」が上位入賞の重要なピースになるかもしれません。

世界耐久選手権 第2戦 スパ・フランコルシャン8時間耐久

EWCクラス

優勝:#37 BMWモトラッドワールドエンデュランス 周回数192周/ピット回数10回
2位:#1 YARTヤマハオフィシャルEWC 周回数192周/ピット回数12回
3位:#11 カワサキWebikeトリックスター 周回数190周/ピット回数10回
4位:#12 ヨシムラSERT MOTUL/SUZUKI 189周/ピット回数11回
5位:#4 Tati Team AVA6レーシング/HONDA 周回数188周/ピット回数13回
6位:#65 Motobox Kremerレーシング by321/YAMAHA 周回数185周/ピット回数12回
14位:#76 オートレース宇部レーシング/BMW 周回数174周/ピット回数8回
リタイヤ:#5 F.C.C.TSRホンダフランス 周回数62周/ピット回数7回

SSTクラス

優勝:#49 Revo-M2/Aprilia 周回数186周/ピット回数11回
2位:#77 Wojcikレーシングチーム/HONDA 周回数186周/ピット回数9回
3位:#18 TEAM18POMPIERS IGOL CMS/YAMAHA 周回数185周/ピット回数10回
4位:#25 チームエトワール/BMW 周回数183周/ピット回数9回
5位:#9 TEAM TECMAS-MINERVA OIL/BMW 周回数181周/ピット回数10回
6位:#119 Slider Endurance/HONDA 周回数180周/ピット回数10回

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