
5月12~13日の2日間、三重県の鈴鹿サーキットで『2026 FIM世界耐久選手権(EWC)"コカ·コーラ" 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第47回大会』に向けた『鈴鹿サーキット主催 特別スポーツ走行 "Suzuka Test Session"』が行われた。
39チームが参加し、テスト参加の2チームを除く37チームが、鈴鹿8耐本番に向けたマシンセットアップやタイヤ性能の確認、ライダーの習熟などを目的に、データ収集を行った。
目次
■2026年鈴鹿8耐テストの特徴
今回のテストでは、スケジュール変更に加え、路面・タイヤ・参加体制など複数の変化が重なった。
今年は鈴鹿8耐の決勝日が7月5日に設定され、例年より約1カ月早い開催となる。その影響もあり、6月初旬に行われるEWC第2戦スパ8時間より先に今回のテストが実施されるスケジュールとなった。これにより、海外を拠点とするYART Yamaha Official EWC Team、BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM、Kawasaki Webike Trickstarに加え、日本チームながらマシンを海外で運用しているAutoRace Ube Racing Teamは参加を見送った。
一方、EWCのパーマネントチームでは、日本国内にもガレージを構えるヨシムラSERT Motul、F.C.C. TSR Honda France、Team Étoile、Dafy-kaedear-Rac41-hondaの4チームが参加した。
現地は2日間ともドライコンディションとなり、晴れと曇りが繰り返される天候となった。気温は初日が20度前後、2日目は約26度まで上昇したものの、7月初旬の鈴鹿8耐本番時の暑さとは大きく異なるコンディションだった。
さらに、今回のテストで大きなポイントとなったのが路面状況だ。2025年に東コース、2026年には西コースの舗装改修が行われたことで、鈴鹿サーキットは従来以上のハイグリップ路面へと変化。また、SSTクラスで使用されるダンロップタイヤも、今年はタイヤ形状や特性が大きく変更されたため、各チームはマシンとのマッチング作業に追われていた。
走行はA組、B組に分かれて計6セッション実施された。各セッションの走行時間はそれぞれ異なり、初日に4セッション、2日目に2セッションを実施。なお、初日最後のセッション4は、A・B組合同によるナイトセッションとして行われた。また、ナイトセッションを除く各セッションでは、1チーム2台までの出走が認められていた。
ここからは、各クラスの走行内容と注目チームの動向を振り返っていく。
■Formula EWCクラス/3チームが2分04秒台に!
Formula EWCクラスは、Honda HRCがトップタイムとなる2分04秒773をジョナサン・レイがマークし、テスト初日から存在感を示した。セッションを通じて安定した速さを見せ、複数周回でもハイペースを維持。ロングランでも高い水準に仕上がっていることを印象づけた。
高橋は「マシンは昨年のベースです。昨年からサスペンションがオーリンズになり、去年改善し切れなかった部分を詰めていきました。新しい路面でのタイヤの摩耗も改善してきて、ロングランの最後にも2分05秒0を出せるので、仕上がりは悪くないと思います。まだライバルチームのアベレージタイムが見えていないので、できることをやります」と、全体の手応えとともに慎重な姿勢を見せた。
また、チームメイトのレイはプライベートテストも含めてマシンへの習熟を進めており、「WorldSBKのマシンとタイヤも違うし、スプリントと耐久でも出せるパワーは変わる。巧が作った鈴鹿8耐のマシンに合わせて走ったよ。鈴鹿8耐のフィーリングは素晴らしいよね。巧とザルコと組めるのはいい経験になる。勝てるチャンスがあるから来た」と語り、耐久仕様への適応を着実に進めている様子をうかがわせた。
2番手にはヨシムラSERT Motulが続き、渥美心が2分04秒856を記録。新型マシンに加え、新仕様をヨシムラチューンしたエンジンを投入しており、テスト初日から高い完成度を示した。
渥美は、「エンジンが速くなりました。振動が出ていた部分がなくなり、細かいライディングに気配りができるので乗りやすくなっています」と好感触を口にしている。グレッグ・ブラックとともに周回を重ね、ロングランでも安定したパフォーマンスを見せた。
3番手はF.C.C. TSR Honda Franceで、2分04秒969をマーク。ジョン・マクフィーは鈴鹿初走行ながら早い段階でコースに適応し、安定して2分05秒台を刻む走りを披露した。
チーム側は「タイムはここしばらくのTSRにない2分04秒台に入れられたのがポジティブです。燃費の課題はありますが、スパと鈴鹿のレースウイークで詰めていきます。ライダーの底力を信じてあとはアジャストすればいい結果が出ると思います」と手応えを語っており、今季の上位争いへの期待が高まる内容となった。
4番手にはAstemo Pro Honda SI Racingが2分05秒189で続き、安定したラップで上位に食い込んだ。日本チームとしての総合力の高さを示す走行内容となっている。
5番手はYAMAHA FACTORY RACING TEAMで2分05秒375。中須賀克行と南本宗一郎が走行を担当し、レースウイークから合流予定のジャック・ミラー、アンドレア・ロカテッリ不在の中でも、確実にデータ収集を進めた。
中須賀は「マシンは昨年と変わっていません。昨年のデータがある状態で挑めているので、いい状態です。路面が張り替えられていますが、ロングランもいいアベレージを刻めました。今は涼しすぎますが、それ以外は順調です」と語り、全体として順調な仕上がりを強調した。
中須賀はHonda HRCに対しては「昨年はピット回数が1回多かったです。昨年は課題が見えて、ライダー構成も向こうはライダー2人、こちらは3人という状態だったので、パフォーマンスの差を見せつけられたレースでした。そこを改善すべく、燃費やタイヤ交換作業の短縮を目標に掲げて1年間準備をしてきています。今回のテストでも抜群の速さを見せつけられたので、常に緊張感をもってレースウイークを過ごしたいです」と、優勝争いを見据えたコメントを残した。
6番手にはS-PULSE DREAM RACING SUZUKIが2分05秒993で続き、日本勢の中でも安定したパフォーマンスを発揮。全体として、上位はEWC常連とファクトリーチームと日本チームが拮抗する形となった。
●EWCクラス トップ10のベストタイム
2分04秒773/Honda HRC/Session5
2分04秒856/Yoshimura SERT Motul/Session5
2分04秒969/F.C.C.TSR Honda France/Session5
2分05秒189/Astemo Pro Honda SI Racing/Session3
2分05秒375/YAMAHA FACTORY RACING TEAM/Session3
2分05秒993/S-PULSE DREAM RACING SUZUKI/Session5
2分06秒032/SDG Team HARC-PRO. Honda/Session3
2分06秒048/Team 桜井ホンダ/Session5
2分06秒059/TeamATJ with NTT docomo Business/Session5
2分06秒300/Team BabyFace Titanium Power/Session6
■Superstockクラス/新タイヤと新路面の攻略がカギに!?
SSTクラスはフル参戦組のTeam ÉtoileとDafy-kaedear-Rac41-hondaがワン・ツーに並び、速さを見せつけた。
Team Étoileは周回数を絞りながら効率良くテストを進行。まず大久保光が2分06秒762を記録すると、最終セッションでは鳥羽海渡が2分06秒649までタイムを更新した。昨年の鈴鹿8耐SSTクラスウイナーであり、今大会でもポールポジション候補に挙げられる存在なだけに、注目を集める結果となった。
大久保は「新路面は走りやすくなり、路面の荒れも少ないです。新しいタイヤのコンパウンドは良く機能してチャタリングが収まる傾向で、いいイメージでテストを終えられました」とコメント。舗装改修と新スペックタイヤに対して好印象を語った。
また、SSTクラス上位陣からも、「ハイグリップでアクセルを開けやすい」、「グリップ感は高いが、まだ限界を掴み切れていない」、「タイヤだけでなく路面も変わっているため、昨年との比較が難しい」といった声が聞かれ、新路面への適応が大きなテーマとなっていた。
続く2番手はDafy-kaedear-Rac41-honda。石塚健が2分07秒902を記録した。同チームは鈴鹿8耐のみ日本で製作した車両を投入しており、今回のテストではマシンセットアップを進めながら上位タイムをマークした。3番手はTONE Team4413 BMWで、ベストタイムは2分07秒933。SSTクラスの強豪らしくロングランを中心にメニューを進めながら、このタイムを記録していた。
4番手には2分07秒948のTeam TATARA aprilia、5番手には2分08秒024のKawasaki Plaza Racing Team、6番手には2分08秒050のNCXX RACING with RIDERS CLUBが続いた。この3チームは、2023年に当時のNSTクラスで表彰台を獲得している実力派チームでもあり、今回のテストでも存在感を示した。
注目を集めたNCXX RACING with RIDERS CLUBは、長島哲太を起用。長島は初日のセッション1とナイトセッションのみ同チームから走行し、その他のセッションにはDUNLOP Racing Team with YAHAGIから参加した。一方、亀井雄大と伊達悠太はロングランを中心に周回を重ね、チームとしても決勝を見据えた確認を進めていた。現時点では改善点も残されているというが、6番手というタイムがチームの実力をそのまま示すものとは捉えておらず、レースウイークでのさらなるタイムアップを見据えている。長島はトップ10トライアル進出を目標に掲げ、亀井と伊達も優勝を現実的なターゲットとして見据えていた。
全体としてSSTクラスは、新路面と新タイヤの相互作用を探る段階にあり、各チームとも決定的なアドバンテージはまだ形成されていない印象だった。
●SSTクラス トップ6のベストタイム
2分06秒649/Team Étoile/Session6
2分07秒902/Dafy-kaedear-Rac41-honda/Session5
2分07秒933/TONE Team4413 BMW/Session6
2分07秒948/Team TATARA aprilia/Session5
2分08秒024/Kawasaki Plaza Racing Team/Session5
2分08秒050/NCXX RACING with RIDERS CLUB/Session4
■Experimentalクラス/2026年は3チームがエントリー
Experimentalクラスでは、環境技術や新素材の検証を目的とした開発枠として位置づけられている。今年は3チームが環境技術を取り入れたマシンで走行を行った。
Team SUZUKI CN CHALLENGEは、津田拓也、他の3戦ではヨシムラSERT Motulから参戦するエティエンヌ・マッソンに加え、水野涼が新たに加入した。SDG DUCATI Team KAGAYAMAが鈴鹿8耐参戦を見送ったことで、水野は参戦先を探していたが、全日本ロード第2戦SUGOの際にスズキからオファーを受け、参戦が決定したという。まさに急転直下での加入となった。
マシン面では、環境に配慮したパーツが昨年仕様からさらに進化。今回のテストではウイングレットの形状も変更されており、その効果確認も進められた。津田とマッソンは順調にセットアップを進め、2日目最後のセッションで2分05秒203をマークした。
初めてスズキGSX-R1000Rを走らせた水野は、「(別メーカーとは)想像以上にマシンの違いがありました。タイヤの違いもありました。まだ2人と差はあるので、遅れを取らないようにしたいです」と語り、まずは習熟を優先したテストとなった。
Honda Hamamatsu ESCARGOT with DREAMOとHonda Tochigi Racing & Kouyoukai Dream Racing TeamもEXPクラスにエントリー。両チームとも環境対応燃料を使用している。
Honda Hamamatsu ESCARGOT with DREAMOには、ホンダからオファーを受けたエリック・グラナドが加入。鈴鹿サーキット初走行となったグラナドは、「本当にテクニカルなトラックだね。でもいい感じだよ。(7月の鈴鹿は)みんな暑いって教えてくれたよ(笑)。ありがとう」と笑顔を見せながらも、最終的に2分08秒293までタイムを縮めた。
Honda Tochigi Racing & Kouyoukai Dream Racing Teamは、環境対応燃料に加え、環境負荷低減を目的としたパーツ開発も進行。今回は再生素材を使用したゼッケンプレートをテストし、2分08秒635を記録した。
事前テストは今回の2日間のみとなり、EWCフル参戦勢はこの後、第2戦スパ8時間へ向かう。一方、鈴鹿8耐に向けた次回走行は、6月30日~7月1日に行われる直前テストとなる。そこで各チームは、本戦に近いコンディションへの対応に加え、今回参加できなかったチームやライダーとの合わせ込みを進めることになる。
また、テスト前日の5月11日には、鈴鹿8耐の参加予定チーム数が53チームとなることも決まった。今後発表される正式エントリーリストやライダーラインナップにも注目が集まる。例年通りであれば、7月初旬は梅雨末期の不安定な天候となる可能性もあり、本戦がどのようなレース展開となるのか注目される。
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