
4月16日から19日にかけてフランスのル・マンにあるル・マン-ブガッティ・サーキットで開催された2026年のFIM世界耐久選手権(EWC)第1戦ル・マン24時間耐久ロードレースは、YART Yamaha Official EWC Teamがポール・トゥ・ウインを飾った。2位はヨシムラSERT Motul、3位はKawasaki Webike Trickstarが続いた。
昨年は雨と併催レースのオイルにより202回の転倒が発生したル・マン24時間。今年はレースウイークの天気が曇り予報だったが、水曜日の夜から小雨が降り、木曜日の朝の走行では路面がやや濡れた状態となった。予選と決勝に向けて不安定な天候が懸念された。
しかし結果的に、予選と決勝ともに雨が降ることはなく、晴れ間も見えるコンディションに変わった。気温差は例年通り激しく、日中は約20度まで気温が上がり半袖でも過ごせる一方、夜から明け方にかけては約4度まで冷え込み、防寒着が必要な厳しい寒暖差に見舞われた。
EWC全体について、1年ぶりに復帰した綿貫舞空は「ラップタイムは一昨年より全体的に進化している」と語る。ここからは、開幕戦ル・マン24時間を振り返る。
■予選は両クラスレコード更新
テストからはBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMが速さを見せ、レースウイーク直前の走行ではYART Yamaha Official EWC Teamもトップタイムを記録。16~17日に行われた2回の予選では、Formula EWCクラスでカレル・ハニカが1分34秒267をマークし、チーム平均タイム1分34秒335でYART Yamaha Official EWC Teamがポールポジションを獲得した。2番手はBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM、3番手はフル参戦初戦で、浦本修充を擁すAutoRace Ube Racing Teamだった。
SSTクラスでは鳥羽海渡が1分35秒650を記録し、平均タイム1分36秒053でTeam Etoileがポールポジションを獲得。総合でも10番手に入り、その速さはEWCクラスに匹敵するものだった。
さらに、ハニカ、鳥羽ともに、クラスのレコードタイムを更新。日本勢の好調ぶりが予選から際立ち、期待が高まるシーズンの幕開けとなった。
■決勝レースはトラブルが多発。表彰台を争うサバイバル戦に
翌18日の現地時間15時、24時間の決勝レースがスタート。Elf Marc VDS Racing Team/KM99が、スタートグリッド5番手から好スタートを切った。しかし、レース開始から1時間で首位を明け渡す形となった。その後、F.C.C. TSR Honda Franceが先頭に立つが、最初のピットストップ後にはBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMがトップへ浮上し、リードを広げた。
一方、YART Yamaha Official EWC Teamはスタートで出遅れて、序盤は少し後ろの位置を走った。ピットストップのタイミングでトップに立つ場面もあったが、2番手につけてレースを進めた。ヨシムラSERT Motulは3番手でトップとの差を縮めるチャンスを狙っていた。Kawasaki Webike Trickstarは7番手から追い上げを図った。
燃費面でも不利だったYART Yamaha Official EWC Teamだが、転機は夜明けに訪れ、16時間にわたってレースをリードしていたBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMが順位を落とした。マイケル・ファン・デル・マークの転倒、7コーナーでの衝突によるペナルティ、そしてレース終盤のトラクションコントロールの不具合でのポジションダウンだ。BMWはマシン修復後も残り数分までピットで待機し、最後にコースを1周して総合23位で完走扱いとなった。
ヨシムラSERT Motulは優れた性能を発揮。予選では転倒があり、レース序盤は電子制御システムの不具合と、シフトレバーのトラブル、ダン・リンフットのヘルメット交換などでタイムロスをしたが、最終的に2位表彰台を獲得。貴重なポイントを獲得した。
有力プライベーターのElf Marc VDS Racing Team/KM99はマシンから炎が上がりエンジントラブルでリタイア、さらにTati Team AVA6 Racingもマシントラブルでコースサイドでマシンを止め、リタイアした。
日本のAutoRace Ube Racing Teamは安定した走りで5位。初のル・マンを5位で終えたが、浦本は「ピットストップで順位を落としていたので、本気で勝ちたかったらそこを直さないといけません。思っていた以上にやれましたが、表彰台争いができるスピードはあったので、完走できたのは良かったですが、5位は嬉しくはないです」と悔しがったが、好成績だからこそ、すでにチャンピオンを見据えている表れだろう。
Kawasaki Webike Trickstarのマシンは確かな耐久性を示し、粘り強く最後まで走るのが特徴で、今年は新型マシンを投入。マシンの基本構成は大きく変わらないが、ピボットの位置と空力が大きく異なる。これまでウイングレット一体型カウルとして、カウル内側や前端に配置された構造により空力を生み出していたが、新型マシンは大型ウイングレットを装備。これが有効に機能すると鶴田竜二監督も語っており、戦闘力が上がった。
そのKawasaki Webike Trickstarが最終的に3位まで上がり、表彰台にのぼった。F.C.C. TSR Honda Franceにとっても厳しいレースとなり、早朝にクラッシュ。15分以上の修理を経てコースに復帰し、最終的に総合12位でフィニッシュした。
そして、昨年度のチャンピオンで、2025年のル・マンでも優勝を飾ったYART Yamaha Official EWC Teamが記録に1周届かない859周を走破し、ポール・トゥ・ウインを飾る結果となった。ヤマハがル・マンで勝利するのは6回目となる。また、欧州車はル・マンでは勝利しておらず、初優勝はまた来年以降に持ち越される。
新加入のメルカドは「まるで夢のようだ。このチームに加入して初めてのレースで、ポールポジションと優勝を飾ることができたのは信じられないことだよ。レースは完璧で、最高の気分だった。チームメイトも本当に速く、みんなでミスなくレースを終えることができた。ピットストップでもミスはなく、クリーンなレースだった。本当に嬉しい。最高の気分だよ」と喜んだ。
同チームの主力ライダーであるフリッツは「バイクにナンバー1のゼッケンをつけて、最高の形でシーズンをスタートできました。ル・マンで2連勝なんて信じられない。特にチームメイトに心から感謝するよ。彼らは素晴らしい仕事をしてくれて、ミスは一切なかった。これこそがル・マンで勝つ方法だよ」と語った。
ハニカは「昨年よりも多くのポイントを獲得できたので、最高のスタートと言えるだろう。練習走行でいくつか問題が発生したため、完璧な週末とは言えなかった。バイクにいくつかの変更を加え、ライディングスタイルを調整する必要があった。しかし、レースではバイクのフィーリングが最高だった。技術的な問題もピットストップでの問題もなかったので、全体的に素晴らしい週末だった。ラップレコード、ポールポジション、そしてレース優勝という結果だったので、これ以上望むことはない」とコメントし、エースライダーとなってきた風格を見せた。
■SSTクラス、プロダクションクラスの決勝レース
SSTクラスは総合6位のChampion-Hert Powered by MRPが優勝を果たした。ハンガリーの同チームにとって初の勝利となった。ロリス・クレソンは、「僕にとって大きな意味がある。子供の頃からこのレースを見てきた。チームは今週末、素晴らしい仕事をしてくれた。トラブルも技術的な問題も一切なかった。夢のようなレースで、完璧な形で幕を閉じたね」と勝利をかみしめた。
2位はHonda No Limits。3位は綿貫舞空が新加入したTRT27 AZ motoだ。チームメイトは経験5年目のライダーで、1スティントのみ走行した綿貫は「チームで3回の転倒はありましたが、致命傷はなく良かったです。我慢していた部分が多かったので、悔しいですが、表彰台は嬉しいので喜んでいます」と語った。
石塚健が所属しているDafy-Kaedear-RAC41-Hondaは表彰台圏内を走っていたがマシントラブルがあり、総合13位、SSTクラス4位と一歩表彰台には届かなかったが、好成績を収めた。
ポールスタートのTeam Etoileは、2スティント目からマシントラブルによりエンジン回りのパーツを交換。さらにシフトトラブルが出て、オーバーランした鳥羽や大久保光の転倒があった。ライダーのミスではなく、車両由来のトラブルが今年も発生したため、悔しい展開となり、序盤から追い上げを余儀なくされた。
何度かピットでマシンを修復したが、完走し、総合25位、SSTクラス13位でフィニッシュした。チーム加入3年目の大久保は「悔しい結果になりました。これまでは完走して良かったのが、今は完走して悔しい気持ちが全面的に出るようになったので、チームが強くなったと思いますし、チャンピオンを目指す強い気持ちの表れだと思います」とポジティブな面も見せた。
渥美心が走ったJunior Team le Mans Sud Suzukiは、総合18位、SSTクラス8位で学生メカニックや新チームメイトとともに完走を果たした。渥美は「トラブルもあり、ブレーキパッドの消耗も激しく、厳しいレースになりました。チームメイトの双子は初めて加入したので、耐久レースを伝えられるように頑張りました。レースは転倒なく、それぞれのライダーが頑張って適応したと思います。完走できてよかったです。メカニックの学生も頑張ってくれました」と振り返った。
なお、SSTクラスのトップチームであるNATIONAL MOTOS HONDA FMAは残念ながらリタイア。濱口喜博氏が率いるHAMAGUCHI Racing Teamとタッグを組んだ3ART Best Of Bike Hamaguchiも早々にリタイアしてしまった。
プロダクションクラスは総合26位のLEGACY COMPETITIONが優勝。2位はGREENTEAM 42 LYCEE SAINTE CLAIRE、3位はMana-au Competitionとなった。ヤマハ、ホンダ、カワサキと3台が異なるメーカーだ。
今大会は60台中38台が完走し、完走率は63%。観客数は76,700人を記録した。
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