1990年代に国内外のロードレースでその名を轟かせた青木三兄弟の次男、青木拓磨氏。全日本で王座に輝いた後、世界グランプリの500ccクラスにステップアップし、これからという1998年のシーズン開幕前のテスト中の事故で下半身の自由が効かない身体になってしまう。しかし、その逆境にめげることなく、車いすレーサーとして4輪レースに転向し、2023年のアジアクロスカントリーラリーでは総合優勝も遂げています。
今回は、スノーラリーに参戦するために訪れた北海道で、アイスサーキットでトレーニングを積んでいるトップライダーたちの活動を見学してきたということで、そのお話を!
「青木拓磨のモータースポーツライフ」前回はコチラ!
氷の上でしか得られない感覚があります!
先日、北海道・苫小牧にある「エビスサーキット アイスサーキット」へ行ってきました。「エビスサーキット」は福島県二本松市にあるサーキットで、「ドリフトの聖地」として海外でもよく知られた施設ですが、冬季限定で、氷上を走ることができる完全予約制のアイスサーキットを北海道で運営もしています。
今回訪問のきっかけは、エビスサーキットのオーナーから「冬の間、北海道でアイスサーキットをやっているんだよ」と聞いたことでした。実は、翌日に新千歳モーターランドで開催されるクローズドラリー「EZO ENDLESSラリー」に参戦するため北海道入りしていたタイミングだったので、今回は、完全に「挨拶がてら顔を出す」くらいの軽い気持ちで現地に向かいました。
ところが現地に行ってみると、話で聞いていたよりも想像以上に面白いものでした。クルマでドリフトしながら氷上で走行を楽しんでいるだけだろうと思っていたら、なんとここでは、バイクの氷上トレーニングも行われているというのです。
しかも、その運営を任されているのが、若手全日本ライダーの濱原颯道(はまはら・そうどう)選手でした。今回はちょうど、同じバイクレーサーである渥美心(あつみ・こころ)選手が義弟でもある片田泰志(かただ・たいし)選手とともにトレーニングに来ており、実際に話を聞くことができました。
彼らが口を揃えて言っていたのが、「このアイスサーキットの練習は、本当に意味がある」ということでした。
氷の上という、極端にグリップの低い低μ路面では、マシンは常に不安定な状態に置かれます。しかし、それこそがこの場所の価値でもあります。限界が低いからこそ、マシンがどの瞬間に滑り出し、どこでグリップを失い、どの操作がきっかけで姿勢を立て直せるのかが、はっきりと身体に伝わってきます。
このアイスサーキットで行えるのは、単にスライドさせるための練習ではありません。リアが流れた状態から、どこでアクセルを当て、どうやってもう一度タイヤを路面に喰わせ、前に進ませていくのか。滑らせることが目的ではなく、滑ったあとに、どうトラクションを回復させ、いかに効率よく加速につなげていくか。その一連のプロセスを、恐怖心の少ない低速域で、何度も何度も繰り返し体験できます。
頭で考えて操作するのではなく、身体が先に反応する感覚を作ること。それこそが、このアイスサーキットトレーニングの一番の狙いであり、このトレーニング最大のポイントだと、話を聞きながら強く感じました。
今後の予定を聞くと全日本ロードレース選手権や鈴鹿8耐に参戦している面々の予約が入っており、さらに四輪のほうでも意識の高いGTドライバーたちが、「誰にも言わず、こっそり練習に来ている」という話も聞きました。
その理由は、よく分かります。四輪でも二輪でも、マシンコントロールの根本は同じです。限界域で「どう立て直すか」を、低リスクで体験できる場所は、そう多くありません。
運営する側はそれなりに大変?
ただし、このアイスサーキットは華やかな世界ではありません。使用しているマシンはホンダCRF125で、タイヤには無数のピンスパイクが打ち込まれています。このスパイクがまた大変で、1日走ると、数本は必ず抜けてしまいます。走行が終わった夕方から、外れたピンを1本1本打ち直す作業が待っています。
そのすべての整備を、濱原颯道選手が一人で行っています。タイヤのスパイク打ちが終わったら、使用するマシンの整備を行い、翌日またライダーたちを迎え入れます。彼の丁寧な仕事はもちろん、天候の変化に合わせて、氷をしっかり育て、雪が降れば積もった雪を取り除き、と、エビスサーキットのスタッフは毎晩この氷上のメンテナンスも行っており、コースコンディションを常にキープしていきます。
派手さはありませんが、本気で「走り」を考える人間にとっては、これ以上ない環境が、そこにはありました。冬の北海道だからこそ体験できる、特別なトレーニングの場は新千歳空港から30分とアクセスも良好です。アイスサーキットの営業は2月中旬までの期間限定です。もちろんレーサーだけでなく、一般の方でも参加が可能です。
バイクの操作を上達させたいという方で、少しでも興味があるなら、このチャンスを逃さず、ぜひ一度体験してみてください。氷の上で得た感覚は、春になって必ず、あなたの走りを変えてくれるはずです。
<参考URL>
エビスサーキット アイスサーキット バイク部リンク(Facebook)
(https://x.gd/meSuI)
青木拓磨のモータースポーツチャンネル
(https://www.youtube.com/channel/UC6tlPEn5s0OrMCCch-4UCRQ)
takuma-gp
(http://rentai.takuma-gp.com/)
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