写真・文/中村浩史
第6戦の「戦前のみどころ」で触れたように、中須賀克行の13回目のJSB1000チャンピオンなるか、と注目された岡山大会。「晴れの国」と呼ばれる岡山ながら、決勝レースの日曜日以外は雨に降られるというコンディションで行なわれました。
雨にたたられた事前テストと事前走行
レース1週間前に行なわれた事前テストでは、中須賀克行(ヤマハファクトリーレーシング)、野左根航汰(Astemo Pro Honda SIR)、長島哲太(ダンロップレーシングwith YAHAGI)らが好タイムをマークし、そこに水野涼(DUCATIチームカガヤマ)、さらに名越哲平の負傷で代役参戦する阿部恵斗(SDGチームハルクプロホンダ)が顔を出します。3日間にわたって行われた走行では、3日目がウェットコンディションとなり、このまま迎えたレースウィークも、雨スタートとなってしまいました。
金曜の事前走行も雨となり、1本目は中須賀がトップタイムをマーク、2番手以下に阿部、水野がつけ、2本目には水野→阿部→中須賀の順。今シーズンはアジア選手権を主戦場とする阿部の好調が目立ちます。2本目走行の水野は、ウェットコンディションを得意とするライダーで、さらに2本目の4番手には、これも“雨男"の異名をとる星野知也(TONE チーム4413BMW)が上がってきました。
土曜の公式予選も雨。今大会の公式予選は、シリーズ中唯一の「ノックアウト方式」で行なわれ、まず全選手が出走(=Q1)、そのトップ10の選手が10分間のインターバル後に再び出走し(=Q2)、トップ10のスターティンググリッドを決めるというもの。
まずQ1では、世界耐久選手権最終戦・ボルドール24時間を勝ったヨシムラSERT MOTULからスポット参戦の渥美心、阿部、水野らが周回ごとにタイムシートのトップに顔を出し、水野→阿部→中須賀→長島→星野の順でTOP5。トップライダーのなかでは、津田拓也(チームスズキCNチャレンジ)が11番手とQ2進出を果たせませんでした。
10人が出走したQ2では、中須賀、水野がトップ争いをするなか、2番手タイムをマークした阿部が転倒。結果、予選順位は以下の通りとなりました。
①水野涼 ②阿部恵斗 ③中須賀克行 ④長島哲太 ⑤鈴木光来(チームATJ) ⑥野左根航汰 ⑦星野知也 ⑧岩田悟(チームATJ) ⑨伊藤和輝(ホンダドリームRT桜井ホンダ) ⑩渥美心
そして、注目のチャンピオン争いは、現在ランキング2位の浦本修充(オートレース宇部レーシング)がボルドール24時間耐久出場後で大会を欠場したため、ランキング3位の伊藤がタイトル確定対象者となり、伊藤が優勝しても、中須賀が1ポイント獲ればチャンピオン確定、ということになっています。これはもう、よほどのアクシデントがない限り、中須賀のチャンピオンは確定だろうな、というムードでレースは進んでいきました。
ついに晴れた日曜に絶対王者圧勝!
決勝レースが行なわれる日曜は、ついに朝から太陽がのぞく晴れの日。オープニングレースのJ-GP3クラスからドライコンディションで行なわれ、そのJ-GP3クラスでは、尾野弘樹が最終戦を残してシリーズチャンピオンを決めました。
午後に行なわれたJSB1000クラスは、気温が30℃に迫り、真夏を思わせるコンディションの中で24周と長丁場のレース。
スタートで飛び出したのはポールシッター水野で、真っ先に1コーナーからモーターサイクルシケインに入ると、その後方につけた長島がトップに浮上。しかし3周目には中須賀がトップに立ち、中須賀はそのままスパート。レース展開やライバルの走りを見つつ、誰かを先に行かせたり、自ら集団の先頭でレースを進めることが多い中須賀ですが、この日は先行逃げの戦略を打ったようです。
「金曜土曜から雨で、ちょっとナーバスにはなっていたんですが、先週の事前テストからドライではいい調子で良く走れていました。ウェット路面では水野くんがいいタイムで走っていて厳しいなと思っていたんですが、日曜はうまく晴れてくれました。あとは長島くんが事前テストからレースラップで速かったので、彼が来るな、と。それで、序盤から自分で前に出て、1~2周目は強引にでも前に出ましたね」(中須賀)
序盤から2番手以降を引き離して逃げる中須賀。1周につき0秒5はほかのライダーより速く、後続との差を見る見る広げていきます。
中須賀→長島→水野→野左根が先頭集団を形成し、第2集団に阿部→津田→鈴木→岩田→伊藤といった顔ぶれの中、6周目あたりに野左根が水野をパスして3番手に浮上。このトップ3で周回が進みます。
中須賀が2番手以降との差を大きく広げると、レースの興味は2番手争いへ。長島が野左根を抑えて周回しますが、今シーズンここまでの展開では、レース序盤に上位にいても、レース中盤あたりからずるずるとポジションを落とすのが長島の、そしてダンロップタイヤの弱点と言われてきました。
しかし今大会では、長島のその悪癖は見られず、レース中盤を過ぎても野左根をきっちり抑え込みます。
「スタートを少しミスして埋もれてしまったんですが、3番手に上がってからやっと自分のペースがつかめた感じ。ずっと雨だったから、序盤はうまくリズムに乗れませんでした。長島選手とはレース中ずっとバトルになって、昔…12~13年前にGP2で良く一緒に走って負けたこともあったので、今回は負けないぞ、と」(野左根)
野左根を抑え込んでいた長島も、ついにレース終盤でペースダウン。野佐根の先行を許しますが、4番手の水野ははるか後方。結局このまま、中須賀がトップでチェッカーを受け、13秒差の2番手に野左根、僅差で野佐根に敗れた長島が、全日本ロードレースフル参戦2年目で、とうとう3位表彰台に登壇しました。
「2024年にJSB1000クラスに参戦を始めて……長かった、感慨深いです。日本に戻ってきて、もちろんレベルが高いのはわかっていたんですが、そこでダンロップタイヤの開発を兼ねて参戦するという選択をして、ここまで結果は出せず、それでも課題を見つけながらここまで来た感じ。何度も心が折れそうになりましたが、今年に入ってようやく改善がみられて、レースのたびにアップデート、自分も迷いながら、着実に前進して、こうして結果をひとつ出せたのは良かったと思います。レースはずっと150%で走っていました!」(長島)
勝った中須賀は、これで13回目のJSB1000クラスチャンピオン。このクラスで通算94勝目という金字塔を打ち立てました。こうなると、前人未踏の100勝まであと6つというカウントダウンも始まりそうですね。
「今シーズンも、いろんなコースでヤマハブルーの旗を振ってくれて、その応援を力に変えてチャンピオンを獲り戻すことができました。この大会では1ポイント獲ればチャンピオン、無理せずに完走すればいい、とは思っていたんですが、今日のJ-GP3では尾野選手が勝ってチャンピオンを決めていたので、完走でOKとか、そんな弱気でどうする、って気を引き締めなおして、いつものように優勝を目指して走りました。今年で13回目とはいいますが、その年によって展開も違う。今シーズンは開幕戦で水野くんのドゥカティに完敗、2戦目の菅生大会では何とか流れを引き戻せて、8耐のあとには、今度は浦本くんのBMWに完敗、それでもチャンピオンがかかった今大会できっちり勝ち切れたのは大きかった。マシンを常にベストの状態に仕上げてくれたチームのおかげ。ファンのみんなを含めて、全員勝ち獲ったチャンピオンです」(中須賀)
レースは水野が復調の兆しを見せての4位、予選11番手からの追い上げを見せた津田が5位、前大会オートポリスでJSBクラス初表彰台に登壇した伊藤が6位はいりました。
これで2025年シーズンは最終戦MFJグランプリを残すのみ。2レース制の最終戦は10月25~26日に鈴鹿サーキットで行なわれます。
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