年に一度の九州・オートポリス大会。雄大な景色とダイナミックなコースレイアウトが人気のサーキットだが、ひとつだけ気になることがある。それは、一度天候が崩れると、関係者が「APウェザー」と呼ぶ状態になってしまうことです。

「ここは僕のホームコースです」有言実行、絶対王者

全日本ロードレースの後半戦、その皮切りとなったモビリティリゾートもてぎ大会では、今シーズンからニューマシンBMW M1000RRを投入したオートレース宇部レーシングが、全日本ロードレース復帰となった浦本修充をライダーに、衝撃のダブルウィンを飾りました。
今シーズン「絶対王者」中須賀克行(ヤマハファクトリーレーシング)を負かしたのは、開幕戦の水野涼(DUCATIチームカガヤマ)と、この浦本のみ。
しかしこのオートポリス大会では、その浦本が欠場。理由は、オートレース宇部レーシングと浦本が、活動目標を「世界耐久選手権チャンピオン」においているからで、手始めにこのオートポリス大会の翌週に決勝レースが行なわれる、2024世界耐久選手権・最終戦ボルドール24時間耐久参戦のため、欠場することになったものです。もちろん、このことはシーズンイン前から予定されていたもので、すでに発表されている「予定欠場」だったのです。

浦本不在の中、打倒・中須賀を期待されたのは、水野と野佐根航汰(AstemoプロホンダSIR)、名越哲平(SDGチームハルクプロホンダ)、伊藤和輝(ホンダドリームRT桜井ホンダ)、津田拓也(チームスズキCNチャレンジ)といった面々。特に、過去にここオートポリスで中須賀を下したことがある野佐根に注目が集まっていました。

「今シーズンはマシンもかなりアップグレードして、特にストレートスピードはライバルに負けないくらいに仕上がっています。今シーズンは開幕戦のもてぎ、菅生大会のレース2、もてぎのレース2と、僕のミスもあってリタイヤしてしまったんですが、走りは決して悪くない。うまくかみ合えば中須賀さんと勝負できる」とはレース前の野佐根。

金曜の事前走行では、1回目でやはり中須賀がトップタイム、すると2回目の走行では野佐根がトップタイム。このふたりを軸にレースが展開されるものと見られていました。ドゥカティ・パニガーレV4Rを駆る水野は、車体のセットアップに苦しみ、事前走行では8/10番手と調子が上がってこない状況でした。

スタートはレース1で野佐根、レース2は中須賀がホールショットを獲得

事前走行総合結果(9/12金曜日)

①中須賀克行 1分48秒508 ②野佐根航汰 +0.334s ③津田拓也 +0.627s ④鈴木光来 +0.640s ⑤岩田悟 +0.790s ⑥伊藤和輝 0.922s ⑦長嶋哲太 +1.413s ⑧名越哲平 +1.462s ⑨中村竜也 +2.144s ⑩水野涼 +2.359s

土曜日に行なわれた公式予選では、事前走行のTOP3がそのままの顔ぶれでフロントロウに並びます。中須賀は事前走行からさらにタイムを伸ばし、ただひとり1分47秒台に入れる好調ぶりで、土曜のレース1、日曜のレース2ともにポールポジションを獲得しました。
「やっぱり自分が地元と呼んでいるコースで両レースのポールが獲れたのは嬉しい。走りはチームがきちんと準備をしてくれて、それをミスなく出せた結果のポールポジションだと思います」と中須賀。絶対王者には、走りの好不調や、上手く走れたか否かは存在しない、やるべきことをキッチリやって、その結果がトップタイム、ポールポジション、そして優勝とチャンピオンなのです。

中須賀独走、2位争いが激化

予選に続いて、土曜のうちに行なわれたレース1では、ここでも中須賀が比類なき強さを見せつける結果となりました。レース直前に雨が降り、ウェットからドライへと変わっていく路面コンディションのなか、スタートは野佐根が飛び出してホールショットを獲得すると、中須賀、名越、岩田悟(チームATJ)、伊藤、長島哲太(ダンロップレーシングwithYAHAGI)、鈴木光来(チームATJ)といった面々。津田はスタートでやや遅れます。
2周目の1コーナーでは岩田が3番手に上昇。岩田は一時、中須賀をかわして2番手に浮上し、後方に名越、津田、鈴木、伊藤が続いた7台がトップグループを形成します。ここまでの全日本ロードでは見られなかった接近戦です。
4周目には、満を持して中須賀が野佐根をかわしてトップに浮上。これは、微妙な路面コンディションで、タイヤが十分に温まるまで様子見をして、野佐根を抜けなかったのではなく、抜かなかった、というのが真相でしょう。
中須賀はトップに立ってからすぐにペースアップ。ぐいぐいと2番手以降を引き離して、レースの注目は2番手争いに向いていきます。これは、集団が出来たことで2位争いが激しくなることを見越しての、中須賀の早目のペースアップだったと思います。2位争いが激しくなれば、その集団を抜ければ独走できますからね。事実、序盤から2位争いが激しくなったことで、中須賀は2番手以下との差をどんどん広げることになりました。
結局、レースはこのまま中須賀が独走し、2位以下を8秒引き離してのぶっちぎりウィン! レースは、最終ラップに降雨があって、コース区間によっては瞬間的に激しく降り、2位には序盤から津田、岩田と激しくポジション争いを展開し、一時は6番手あたりまで順位を落としながら、最終ラップで3台抜きを演じた野佐根、3位に津田が入りました。
2位争いで津田、岩田、伊藤、野佐根、名越といった面々が激しく抜き合いを演じ、周回中に雨が降ってきた影響もあって順位が目まぐるしく変わるという、久しぶりに見る接近戦でした。名越は最後の雨で転倒、岩田、伊藤が表彰台に手が届きそうでした!

レース1の序盤はご覧の接近戦。ここから中須賀が前に出始めます

中須賀がトップに立ってからは、短期決戦ということで早めに後続を引き離します

レース1/最終ラップの2位争いはコーナーごとに順位を入れ替える激戦

「コースがところどころ濡れていたんで、序盤は大事に行きました。もちろん勝ちたいのは当たり前なんですが、場合によってはきちんとポイントを持ち帰るのが大事になるかな、とまで考えてましたね。レースは展開で上手く前に出られたので、最後は雨が降ってきたんですが、マージンを持って走り切れましたね。しかし、蒸し暑いレースで、路面温度が低くて、タイヤをけっこう消耗させてしまったので、明日のレースへのいいデータはとれました」(中須賀)

「完敗ですね。序盤は前に出て逃げようと思ったんですが、中盤にちょっとグリップに苦しんで挽回できませんでしたね。風が強くて、前に出ると苦しかった。中須賀さんについていって集団を離せたらよかったんだけど、最終ラップは6位くらいから、雨に助けられた2位だったと思います」(野佐根)

「最終ラップに入ったところでは2番手にいたんですが、雨が降り始めて、けっこう大粒の雨になってペースがつかめなくて危ないほどでしたね。雨だと集団の先頭にいるより後方にいるほうが有利なので、最後に前に出るつもりだったんですが、野佐根くんにうまくペースを作られました。カーボンニュートラルのパーツもいろいろトライしつつ、マシンは進んでいます」(津田)

レース1の表彰台。ヤマハーホンダ-スズキの順のフィニッシュとなった

伊藤和輝が初表彰台へ!

レースデイ2日目を迎えた日曜には、オートポリス周辺に朝から降雨があり、その雨が霧となってコースへ。サーキットは、ひどいときには5m先さえ見えないほど視界が悪くなってしまいました。レースは、朝から天候待ちをしながらスケジュールを順延し、まず朝のウォームアップ走行が中止となり、続いてJ-GP3クラス決勝、ST600クラス決勝も中止となってしまうほどでした。
しかし14時前ごろから霧が晴れ、JSB1000の決勝レースは決行へ。レース前にコース確認のために5分間のフリー走行が行なわれ、予定周回数が18周から12周に短縮されての決勝レースとなりました。
スタートはポールポジションの中須賀が好スタートを見せてホールショットを獲得。2番手に野佐根、3番手に津田、そこに岩田、長島、伊藤、鈴木が続く展開。序盤から中須賀と野佐根が3番手以降を引き離しつつ、レースが始まりました。

レース2では、スタートから中須賀がトップに立ちます

3番手争いは、レース序盤、長島が主導権を握ります

2周目の終わりには野佐根が中須賀をパス。ここでは中須賀は抜けないのか、抜かないのか。しかし、周回数が短いことで、12周の周回ならば、万が一赤旗が降られてレース周回2/3のことを考えると早めに抜いておきたい中須賀は、3周目にトップに再浮上。野佐根もここで離されない! このあたりで、3番手には長島が浮上し、低い路面温度でのダンロップタイヤの良さを引き出しています。
レースは中盤から中須賀がジリジリと野佐根を引き離し、長島、岩田、伊藤、鈴木、水野、津田による3番手争いから、岩田がこの集団のトップに、さらに伊藤が岩田を追い詰めると、岩田はマシントラブルでリタイヤ。3番手に伊藤がつけ、そこに周回ごとに水野が迫る展開となっていきました。
レースは終盤にかけて中須賀が野佐根を引き離し、7秒7差で野佐根が2レース連続の2位フィニッシュ。単独で3番手につけていた伊藤には、最後の最後まで水野が迫るものの、伊藤が水野を抑え切って3位フィニッシュ。伊藤はこれが最高峰クラスの初表彰台となりました。

レース終盤までペースを落とさなかった伊藤。後方の水野も追いつけず

「今日は朝からずっと天候待ちといった状態で、レース決行が決まってもコンディションを見ながらと、レースがあるのかないのか、ずっと集中しづらい、プレッシャーのかかるレースになりましたが、僕のホームコースですから! たくさん声援をもらって力になったし、最後まで走り切れました。今日は最初から前に出て、一度は(野佐根)航汰に前に出られても、あまりペースが上がっていなかったので、もう一回トップに立って、スパートできました。もてぎでは浦本(修充)くんに前を走られて我慢のレースだったので、ダブルウィンは嬉しいです」(中須賀)

この日曜のレースは、JSB1000クラス終了時にまた降雨があり、そのままコースが再び霧に包まれてしまったことで、続くST1000クラスも中止。なんと土曜にJP250クラスが開催された以外は、JSB1000クラスだけが、しかも2レースも開催されたオートポリス大会となりました。
これで中須賀は菅生大会で2勝、オートポリス大会で2勝を数え、優勝できなかったレースもすべて2位入賞。残りの岡山大会、鈴鹿大会の2戦3レースでチャンピオン確定までマジック1となりました。オートポリス大会を終わってランキング2位の浦本が予定通りに岡山大会を欠場すると、中須賀は岡山大会で15位=1ポイントを獲れば、ランキング3位の伊藤が優勝しても、チャンピオン決定となります。

絶対王者の王座獲得記録の更新、秒読みです。

中須賀、野佐根、伊藤という初めての顔ぶれでの表彰台

ポイントランキング(オートポリス終了時)

①中須賀克行 160P ②浦本修充 86P ③伊藤和輝 80P ④津田拓也 75P ⑤水野涼 72P ⑥野佐根航汰 71P ⑦岩田悟 63P ⑧長島哲太 54P ⑨児玉勇太 51P ⑩鈴木光来 50P

ギャラリーへ (9枚)

この記事にいいねする


コメントを残す