©Eri Ito

2025年シーズンMotoGP前半戦を終え、ホンダ勢の最上位、チャンピオンシップのランキング8番手につけているのが、ヨハン・ザルコだ。ザルコは、ウエットコンディションのフランスGPで優勝し、ドライコンディションのイギリスGPでは2位表彰台を獲得して、ホンダをけん引している。

ザルコは、2025年型RC213Vをどう評価しているのだろうか。

また、2度目の参戦となる鈴鹿8時間耐久ロードレースについて、MotoGPとは異なる「耐久レース」の特徴についても語ってもらった。

「思ったよりもいいシーズン」

シーズン前半戦を、ヨハン・ザルコ(カストロール・ホンダLCR)はチャンピオンシップのランキング8番手で締めくくった。ホンダ勢だけではなく、ヤマハを含めた日本メーカー勢としても最上位のランキングである。

第12戦チェコGPの木曜日、インタビューの始まりはザルコの前半戦振り返りから始まった。

「とてもポジティブで、思っていたよりもいいシーズンになっているよ。アルゼンチンGPのスプリントレースと決勝レースでは、初めて少し表彰台争いができた。素晴らしかったよ」

「それに、カタールの結果もよかった。5番手というのは、ビニャーレスがペナルティを受けたからね。すごくいいレースだったし、すごくいいペースだった」

カタールGPで、ザルコは最終結果4位を獲得している。5番手でのゴールだったのだが、2番手だったマーベリック・ビニャーレス(レッドブルKTMテック3)がタイヤの空気圧違反で16秒のタイムペナルティを受けたためだ。ザルコにとっては手応えをつかんだレースだった。

「そして、ル・マンでの思いがけない優勝。ウエットコンディションで好結果のチャンスをつかんだのはとてもよかった。奇跡的な結果だったし、重要(な優勝)だったよ。それに、シルバーストンでまたすぐに表彰台を獲得できた。あの瞬間は、まるで雲の上にいるような気分だったね。2戦連続で表彰台を獲得できたのだから、思っていたよりもいいシーズンだよ。こういうシーズンになるとは思っていなかった」

フランスGPは、ウエットコンディションに加えてフラッグtoフラッグとなって、状況も戦略も非常に複雑で難しいレースだった。イギリスGPはドライコンディションだったが、2周目に赤旗中断となってレースは仕切り直しになった。仕切り直しとなったレースでは、優勝候補であったマルク・マルケス(ドゥカティ・レノボ・チーム)やアレックス・マルケス(BK8・グレシーニ・レーシングMotoGP)がスペアマシンに乗り換えたことでフィーリングを失った。

確かに、全く普通のレースではなかった。しかし、こうしたレースで優勝や表彰台を獲得できるほど、今のホンダとザルコはポテンシャルを向上している、とも言える。

とはいえ、ザルコにとっても、ル・マン(フランスGP)とシルバーストン(イギリスGP)の結果は「大きなプレゼント」だった。

「思いがけずもたらされたプレゼントではあった。でもね、それをちゃんと掴める準備ができていたことが、うれしかったんだ」

雨のル・マンでホンダでの初優勝を飾った©Honda LCR

続くシルバーストンでは、ドライコンディションで2位を獲得©Honda LCR

ザルコ、RC213Vの評価は

そんなザルコは、2025年型RC213Vをどう評価しているのだろうか。ザルコが走らせているのは、最新型の2025年型。現在、エンジンもファクトリーチームと同じくフランスGPで投入された最新のものを使用している。なお、エンジンについては、チェコGP時点で、ルーキーのソムキアット・チャントラのみがそれ以前のエンジンを使用中である。

「僕としては、バイクの旋回性はまだ改善する必要があると考えている。でも、それはバイクのセッティング次第なところも大きいんだ。セッティングの組み合わせで変えられる部分もあるからね。とても安定するバイクにセッティングすれば、バイクは曲がらない。よく曲がるバイクだと、ブレーキング時のパフォーマンスに欠ける。だから、どちらを選択するか、ということになる」

「“最高のバイク”は、それらが全部まとまっているバイクだ。よく曲がり、ブレーキングもよく、加速もいい。ホンダの主な問題がどれかはまだ僕はわからない。でも、エンジニアと一緒に理解しようと務めている。僕にはライディングスタイルで対応できる経験があるからね。とても安定したバイクでも、よく曲がるバイクでも乗りこなせるけれど、常に何かが欠けている。僕たちにはもっといいパッケージが必要なんだ」

エンジンについては「今年のエンジンはよくなった」ということだ。

「昨年よりもスピンをとてもよくコントロールできるようになった。昨年は、スピンがすごく大きな問題だったからね。今は、スロットルのコントロールがとてもいい。エンジンとして、とても重要な前進だよ。全体的なパフォーマンスとしては、まだ少しパワーに欠けている。でも、少なくとも決勝レースではエンジンはいい働きをしているよ」

「スピンがコントロールされているということは、電子制御も改善したということですね」と尋ねると、ザルコは「そうなんだ」とうなずいた。

「電子制御がどれほどよくなったのか、エンジンがどれくらい電子制御を助けているのか、僕にはわからない。でも、そうだね。全体的なバランスはよくなっているよ」

他のホンダライダーがこれまでに何度も言及し続けているように、ザルコもまた「パワーが不足している」と指摘している。これについては、新しいエンジンのパッケージを待つ状態だろうか。

チェコGPの日曜日、囲み取材でルカ・マリーニ(ホンダHRCカストロール)が語っていたところによると、後半戦皮切りの大会、オーストリアGPで新しいものが投入される予定だという。ただし、「大きなものではない」とも語っており、この話を聞く限りでは、エンジン自体のアップデートの可能性は低そうだ。

「高橋巧のライディングスタイルのように」

多くのMotoGPライダーはチェコGPを終えて、約ひと月のサマーブレイクに入る。前半戦締めくくりのレースでは、関係者同士はもちろん、日曜日の囲み取材を終えたライダーに向けて、ジャーナリストが「いいサマーブレイクを!」という言葉をかける。

ただし、ザルコは違う。8月1日から3日にかけて鈴鹿サーキットで開催される、鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)にホンダHRCから参戦するのである。ザルコにとっては、2度目の鈴鹿8耐参戦で、高橋巧、イケル・レクオーナ(※2025年7月27日時点)というチームメイトとともに挑む。

「昨年よりもあのコースを楽しんでいるよ。慣れてきたからね」と、ザルコは言う。

「ホンダの鈴鹿8耐のバイクは、すごく速い。タクミ・タカハシはとても興味深いライダーだ。鈴鹿でホンダのバイクを走らせる彼のライディングスタイル、僕は好きだな。彼みたいにできるだけ最高の形で適応したいと頑張っているんだ」

そんなザルコに、鈴鹿サーキットで好きなコーナーと苦手なコーナーを尋ねた。MotoGPの日本GPはモビリティリゾートもてぎで開催されるため、ザルコにとって鈴鹿サーキットは鈴鹿8耐でしか走るチャンスがない場所だ。

「(好きなのは、)1コーナーと7コーナー(NIPPOコーナー)。(苦手なのは)、ヘアピンのあとのシケインかな(二輪専用シケイン)。一番難しいコーナーの一つだね」

耐久レースとMotoGPのようなレースは全く異なる種類のレースである。MotoGPライダーであるザルコは、「鈴鹿8耐の考え方は、『とてもコンスタントであること』だね」と、心構えを説明した。

「でも、エネルギーをコントロールする必要もあるんだ。MotoGPライダーであるアドバンテージは、とても速くバイクで走れるということ。速く走っているけれど、同時にエネルギーもセーブできる。これが、鈴鹿8耐にやるべき完璧なことなんだ。それから、チームメイトがいて、グローバルなチームですごく強いチームを作るということ。これが大きな違いだね。本当にスムーズに走らないといけないし、過剰には攻めない。MotoGPでは、常にパフォーマンスを発揮するためにもっとエネルギーを必要とするけどね」

年々、湿度と暑さを増して亜熱帯化している日本の夏でのレースについて、ザルコは鈴鹿8耐ライダーが置かれた過酷な状況を明かす。

「僕はスティントの前と後に体重を量るんだけど、2キロ減るんだ」と言うのである。

「スティントの間に食べて飲んで、この2キロを戻して、レースに挑むんだよ」

思わず「タフですね……」と漏らすと、ザルコは「でしょう?」というようにふふっと微笑んだ。

2024年、鈴鹿8耐優勝を果たしたザルコ。今季はMotoGPでも優勝し、鈴鹿8耐でも再び勝利を飾ることができるだろうか。

ザルコにとって2度目の鈴鹿8耐は8月1日から3日にかけて、鈴鹿サーキットで開催される。MotoGPのシーズン後半戦は、8月15日から17日にかけてオーストリアのレッドブル・リンクで行われるオーストリアGPから始まる。

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