2024年シーズンから世界耐久選手権にフルエントリーを開始した、純国産の「チームエトワール」。まったくのプライベートチームが迎える、2度目のホームレース。今年こそ万全の体制で臨むエトワールの狙いは、ズバリSSTクラス優勝だ。

純日本チームから、世界を目指すライダーやメカニックを生み出す!

「世界に誇る4大バイクメーカーがある日本から、今までにないルートで世界を目指す環境を作りたかった。もちろんライダーだけじゃない、若い日本のメカニックも世界の舞台で戦ってもらいたい。それがチームエトワールの結成理由です」
そう語るのは、2024年に設立された純日本チーム「チームエトワール」の総監督、市川貴志さんだ。
日本人ライダーと日本人メカニックで構成されるチームエトワールの使用マシンはBMW M1000RR。つまりエトワールは、日本4メーカーの支援を受けないプライベートチームとして、全日本ロードレース参戦経験もなく、世界選手権へのフル参戦を開始したのです。

チームエトワール2025。左からリザーブライダーの奥田教介、伊藤元治、市川貴志総監督、渡辺一樹、大久保光。

チームエトワールには若い日本人メカニックたちも。「うちでの活動をみて、海外のチームに引き抜かれるようなライダー、メカニックが出るといい」と市川さん。

「チームの原型は、僕が自分で走っていたミニバイクレースですね(笑)。僕はもともと、趣味としてモビリティリゾートもてぎでのDE耐やCBR250Rドリームカップに出ていたんですが、少しずつ知り合いが増えていって、全日本ロードを走る若いライダーたちに何人か少しだけですがサポートしていたんです。いろんなレース関係者とも知り合いになって、レースの裏も表も知り始める中で、この若い子たちは頑張ってもなかなか先が見えない、じゃぁ僕が連れて行ったらどうだろうって思ったんです」(市川さん)

市川さんの本職はIT関係。共同で創業した会社が大成功し、ご自分が抜けても大丈夫になったタイミングで、自分の好きなことをやろう、と一線を退いたのだといいます。つまり、私財を投じてのレーシングチーム運営です。
CBRやGROMのパーツを買いに通った、全日本ロードレースを戦うモトバムホンダや、関口太郎、TONE SYNCEDGEらとの交友関係が広がるうち『BMWで世界耐久を戦いたい』という気持ちが強くなったのだといいます。SYNCEDGEがボルドールに単身挑戦した時には、ヘルパーとしてチームを手伝ったこともありました。

「レースをやっていると、ライダーもチームも、みんな『世界の舞台で戦いたい』って思いますよね。僕だってそう。それが耐久だったのは、昔からの憧れもあったし、関口さんやSYNCEDGEさんとお付き合いさせていただいたからでもあった。なによりMotoGPやWSBKみたいに手の届かない世界じゃなかったからというのもありますね」
IT関連で仕事をする前には、20歳前後に料理人を目指してフランス修行もしていたという市川さん。いつか日本以外で活動できたらいいな、その時はフランスだな、なんて考えていたこともあった。もちろん、それがレースになるとは思ってもいなかったそうです。

鈴鹿テストでのM1000RR。フランスのガレージにもヨーロッパ戦で使うマシンが保管されている。

2024年からSSTクラスフル参戦を開始 前回ハチタイでは2位を獲得!

2023年はSYNCEDGEや関口の手伝いをしながら世界耐久参戦への準備を進め、日本とフランスにワークショップを用意しました。世界耐久にフル参戦するためにビッグトレーラーを用意し、BMW M1000RRをフランスと日本でそれぞれ複数台購入。日本にもマシンを用意したのは、テストもするし、世界耐久にフル参戦するから、当然鈴鹿ハチタイにも出場するためのマシンです。
当然、まったくのプライベートチームが世界耐久にフル参戦するなんて大事業が、そんなにすんなり行くはずがない、と市川さんは覚悟してのスタートでした。まずは2024年の開幕戦、遠くフランスでのレース、それも耐久レースをするにあたって準備するもの、足りないものを徹底的にシミュレーションして、開幕戦のル・マン24時間耐久に初参戦したのです。

「まずはレースごとに一歩ずつ進んだらいい、と考えました。10年計画で、まずは世界耐久に無事にエントリーすること、レースを完走すること、24時間耐久を走り切ること、SSTクラスの表彰台に乗ること、5年くらいでSSTチャンピオンになってトップカテゴリーのEWCクラスに挑戦すること。日本のレースファンに世界耐久をもっと知ってほしいし、SYNCEDGEさんがやったように、日本のチームがル・マンやボルドールにもっと参戦すればいいのになー、とも思います。それくらい耐久レースって楽しい、面白い、やりがいがあります」

鈴鹿テストでの渡辺の走り。渡辺は2024年大会にはTOHOレーシングから参戦している。

2024年、ル・マン24時間耐久に初参戦したチームエトワールは、参戦予定のエースライダーをレース直前のケガで欠き、予選17番手(SSTクラス6番手)、決勝レースでは16時間を消化前に転倒リタイヤ。第2戦スパ・フランコルシャン8時間耐久では予選10番手(SSTクラストップ!)、決勝は12位(SSTクラス5位)。2戦目で早くも、SSTクラスの予選トップポジションを獲得しました。

第3戦は母国大会、鈴鹿ハチタイ。当然、日本のチームには有利に働く鈴鹿での開催ですが、エトワールにとっては、フランスから来日したチーム、という形。鈴鹿の初レースでは、予選19番手(SSTクラス2番手)からの、決勝レースは18位(SSTクラス2位)。世界耐久参戦へのきっかけを作ってくれたSYNCEDGEにわずか半周及ばなかったものの、クラス2位を獲得したのです。フル参戦1年目にして、SSTクラスの初表彰台でした。

「鈴鹿を終わってSSTクラスのランキング4位、トップまで55ポイント差につけられて、SSTクラスチャンピオンも夢ではなかったところまで来たんです。そして最終戦では予選12番手(SSTクラス3番手)、決勝レースは19時間過ぎに転倒リタイヤで終わりました。最後の最後で少し夢見ちゃいましたけど(笑)、初年度としては成功も失敗も、準備不足も計画通りのレースもできた。SSTクラスランキング5位、有意義な初年度シーズンでした」

2年目の挑戦にして世界耐久の「スター」を作り出す!

そして2025年は参戦2年目のシーズン。前年よりも入念に準備をし、ル・マン24時間には事前テストから備えて、ル・マン24時間に2度目の参戦。しかしこのレースでは、3月のフランスの寒い気候の中、晴れ→雨→曇り→雨→雨というル・マンらしい天候にも苦しめられました。結果は予選11番手(SSTクラス2番手)、決勝12位(SSTクラス4位)。3人のライダー合わせて、決勝中に6回も転倒しながらの、傷だらけの24時間耐久初完走です。
第2戦スパ・フランコルシャン8時間では、予選12番手(SSTクラス3番手)、決勝レースは13位(SSTクラス4位)。ここでも、ベルギーの不順な天候に翻弄されました。

そして、いよいよハチタイ! 母国日本、鈴鹿での2回目の大会です。決戦前の事前テストでは、予想以上のいい結果を残した、という市川さん。今年のベストメンバーである渡辺一樹/大久保光/伊藤元治という3人のライダーのタイムが揃い、事前テストではSSTクラスのトップタイムもマークしました。
昨年の大会では、上記のようにSSTクラスで惜しくも2位。あと半周、8時間かけてあと1分だけ速かったらSSTクラス優勝を達成できただけに、今年のターゲットはもちろんSSTクラス優勝です。

伊藤元治。全日本ロードレースにはモトバムホンダからST1000クラスに参戦している。

渡辺一樹。カワサキ→スズキ→BMWとマシンを選ばないスキルを持つ、エトワールのエースライダー。

大久保光。日本ナンバー1と言っていいほどの海外経験を誇るのが大久保。74Daijiroカップ初代チャンピオンももう31歳!

「SSTクラスの選手権フル参戦組は6チーム。事前テストでは、うちのチームは3人とも2分11秒台と平均タイムが揃って、ベストタイムは2分08秒249でトップタイム。レース本番なみの暑さの中で結果を出せたことはチームの成長の証拠だと思います。クラス優勝への自信につながりました」

チームエトワールのハチタイは、言い換えれば来日2回目のハチタイ。もちろん鈴鹿の結果は大事だが、あくまでも2025年シリーズのうちの1/4。目標はあくまでも年間ランキングだから、参戦する18のSSTチームのうち、地元スペシャルであるワンマッチSSTチームとの争いよりも、6チームのフル参戦組との戦いを優先させるはずです。
「エトワール」とはフランス語で「星」のこと。かつて星の獲れるシェフを目指した市川さんが、世界耐久の「スター」を作り出す戦いは、まだまだ2年目なのです。

チームオーナーであり総監督である市川貴志さん。自らも走るライダーで、今年もモビリティリゾートもてぎで行なわれたもて耐に出場しました。

日本のガレージにお邪魔した時の整備風景。

2024年のハチタイでの大久保光。

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