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1990年代に国内外のロードレースでその名を轟かせた青木三兄弟の次男、青木拓磨氏。全日本で王座に輝いた後、世界グランプリの500ccクラスにステップアップし、これからという時に1998年のテスト中の事故で下半身の自由が効かない身体になってしまい、現在は車いすレーサーとして4輪レースへ転向し、2023年のアジアクロスカントリーラリーでは総合優勝も遂げています。

その拓磨選手のMotoGP解説、今回は2025シーズンのMoto GPで快走を続けるマルク・マルケスの強さについて語ってもらいます!

「青木拓磨のモータスポーツライフ」前回はコチラ!

“怪物”復活。痛みと再起を乗り越えたマルク

今シーズンのMotoGP、マルク・マルケスが圧倒的な強さを見せ、ランキングでも首位を独走しており、ふたたびその頂点に舞い戻ってきた、と言えますね。ここ数年のマルク・マルケスは、これまでの栄光とは裏腹に“試練”の中にいました。ホンダ時代には度重なる負傷と戦い、2020年には右腕骨折からの長期欠場。そこからの復帰後もかつてのような輝きを取り戻せず、本人ですら「トップ争いをするマシンではない」と言い切る場面もありました。

そんな彼が選んだのが、サテライトチームであるGresini Ducatiへの電撃移籍でした。ファクトリーチームでなくとも、自分自身を変えることができると信じての決断でした。そして今、彼はかつてないほどの安定感と爆発力を手に入れているのです。

さらに、この“快進撃”の裏には、もう一つの要因があると思います。そう、実弟アレックス・マルケスの存在です。Gresini Ducatiという兄弟同門チームで同じマシンを操るふたりが見せる一糸乱れぬ連携、情報共有、そして阿吽の呼吸。これが今のマルクの強さをより一層際立たせているのは間違いないでしょう。

「破竹の勢い」という言葉がありますが、まさに今のマルクこそ、この表現に最もふさわしい選手と言えますね。

7月のドイツGPでもその勢いは衰えず。

“弟”アレックスの存在がもたらしたもの

兄マルクがチームに加わってからというもの、アレックスも目に見えて結果を出し始めています。これも見逃せないポイントですね。今季ここまで複数のトップ5フィニッシュ、スプリントでの表彰台も記録し、Gresiniチームとしての総合力を高める大きな原動力となっています。

なぜ、ふたりはこれほど噛み合うのか? それは単なる兄弟愛ではありません。彼らは幼少期から同じ空気を吸い、同じ時間にバイクにまたがり、同じコースを走ってきました。数え切れない練習とレースを共にこなしてきたからこそ、言葉にせずとも意図が伝わる。いわば“阿吽の呼吸”のような信頼関係が、ピット内でのデータ交換にも、精神面でも、強烈な相乗効果を生んでいるのでしょう。

マルク自身もインタビューで「彼(アレックス)と一緒にやることで、毎レースに意味が生まれている」と語っている。まさに“家族力”が生む勝利の方程式なのです。

ドイツでもそろってポディウムを踏んだマルケス兄弟。

GP25との融合、研ぎ澄まされた走り

そして現在のマルクの走りには、無駄がありません。開幕戦タイGPでの勝利、ドイツGPでの完璧なコントロール。最速でありながら、確実。暴れ馬だった時代の“抑えきれない速さ”から、“精密機械のような速さ”へと、その走りは進化を遂げています。

特にDucati GP25とのマッチングは素晴らしく、彼の特異な“肘センサー”で感じ取る前輪の滑りは、今も健在です。

その乗り方においても、身体を捻るようにタンクへ荷重を移し、リアブレーキとスロットルの“微調整”だけでマシンを曲げていく。ここにきて、まるで新たなライディング理論を生み出しているかのようです。

現時点で、総合ランキングでは2位に大差をつける独走状態。ライバルたちがマルク攻略の糸口を見い出せずにいる今、彼の快進撃はまだまだ止まりそうにありません。

もちろん、MotoGPに“絶対”はないのも事実。マシントラブル、クラッシュ、天候など、レースには常に想定外がつきまといます。ですが、たとえそうした不確定要素があったとしても、今のマルクには“揺るがない核”があります。

それは、何よりも「バイクに乗る喜び」を再び手に入れたということ。そして、信頼できる弟という最高のチームメイトが隣にいるのです。

Ducati GP25とのマッチングは素晴らしいようで、新たなライディングスタイルが確立してきている?

青木拓磨が見たマルクの“本質”

個人的に、マルク・マルケスというライダーは、“直感と理性”が同居する数少ない存在だと感じています。

誰よりも速く走れるが、なぜ速いのかを言語化できる。誰よりも攻めた走りができるが、それをどこで抑えるべきかも分かっている。そして何よりも、バイクと真摯に向き合い続けている。

彼の快進撃がいつまで続くのか——。それは、彼自身がどれだけ「走る理由」を持ち続けられるかにかかっています。怪我にも、転倒にも、環境の変化にも、彼は常に“自分を変えること”で乗り越えてきました。

だからこそ言いたい。「破竹の勢いは、止まるまでが勝負じゃない。止まってから、もう一度走り出せるかどうかが本当の勝負なんだ」と。

マルケス兄弟の“進撃”はまだまだこれから。そして、MotoGPはこのふたりの存在で、さらに面白くなっていくはず、です。

青木拓磨のモータースポーツチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC6tlPEn5s0OrMCCch-4UCRQ

takuma-gp
http://rentai.takuma-gp.com/

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