MotoGP第9戦イタリアGPには、中上貴晶(ホンダHRCカストロール)が代役として参戦した。中上にとっては初めてのファクトリーチームからの参戦だったが、ホンダは厳しい戦いを強いられた。

Moto3クラスでは、古里太陽(ホンダ・チームアジア)が終盤まで表彰台争いを展開した。

そんな日本人ライダーたちのイタリアGPを追っていこう。

なお、小椋藍(トラックハウス・MotoGP・チーム)については別途、記事にしている(【MotoGP第9戦イタリアGP】小椋藍、怪我を乗り越え10位完走。初のMotoGP復帰戦を語る)ので、ぜひそちらもご覧いただければ幸いだ。

代役参戦の中上貴晶、スプリント、決勝ともに完走果たす

2025年からホンダのテストライダーに就任した中上貴晶(ホンダHRCカストロール)が参戦するのは、イタリアGPで今季2度目である。一度目はフランスGPだ。このときはテストライダーとしてのワイルドカード参戦だった。

今回のイタリアGPについては、レギュラーライダーのルカ・マリーニの負傷、欠場による代役参戦である。マリーニは、5月28日の鈴鹿8耐テストで激しく転倒し、左股関節の脱臼、左ひざの靭帯損傷、胸骨および左鎖骨の骨折、右肺の気胸を負ったのだ。マリーニはイタリアGP開催地であるムジェロ・サーキットに姿を見せており、問題なく歩いてパドックで談笑していたし、コースサイドで走りを見て中上に助言をしていたそうだから、回復は順調のようだ。

代役参戦ということもあってか、大きなアイテムを投入することはなく、テストの意味合いの強い参戦というよりも、より結果にフォーカスした参戦となった。

2018年から引退した2024年までの7年間、ホンダのサテライトチームのイデミツ・ホンダLCRに所属してきた中上にとっては、初めてのファクトリーチームからの参戦である。

木曜日の囲み取材では「ファクトリーチームで参戦するのは、小さいころからの夢でした。初めてのメンバーと一緒に戦うので、しっかりコミュニケーションをとりながら、少しずつ焦らずにやっていきたいですね。自分としてもいきなりファクトリーチームで不安や緊張もあるので、ワイルドカード参戦とはまた違いますね」と、心境を語っていた。

そんなイタリアGPは、ホンダにとって厳しい週末となった。コーナー立ち上がりでのトラクション不足に悩まされ、気温が上がるとパフォーマンスが悪化する現象に苦しんだ。今年のイタリアGPは気温が高く、毎日のように午後には気温が30度を超え、路面温度は50度近くにまで上昇した。

端的に言えば、ホンダは試行錯誤したものの、状況を変えることができずに終わった。今季は苦しい状況から脱しつつあり、フランスGPのヨハン・ザルコ(カストロール・ホンダLCR)の優勝やイギリスGPの2位表彰台といった成績を収めてきた。ただ、ドゥカティのようにシーズンを一貫して安定して戦うことは、そう簡単ではないのだ。

こうした週末で、中上は19番手からスタートし、スプリントレースを15位、決勝レースを16位で終えた。

中上は決勝レース後の囲み取材で、こう語っている。

「全体的にレースペースはよく、(ファクトリーライダーのジョアン・)ミルとそん色ないペースで走れていたんです。ただ、残り5周、6周はリアの振動があまりにもひどくて……。2024年や日本でのテストも含めてあまり感じたことがないレベルで、ペースを落とさざるをえなかったです。残念ですね。1ポイントでも取れればと思ったんですが」

「ワイルドカードとはまた違った発見や難しさもあった」と中上は言う。もちろん、この週末で得たことを、開発に生かすつもりだ。

「シーズン序盤ならもうちょっと戦えたと思いますが、シーズン中盤に入ってくると、みんな乗れているしタイムも上がってきますからね。難しかったけれど、このあとすぐにもてぎでテストを控えているので、このフィーリングをスピードアップにつなげたいです。望んでいた結果は残せなかったけれど、自分のスピードもあらためて理解できたし、いい収穫はあったのかなと思います」

なお、連戦となるオランダGPは、やはりテストライダーであるアレイシ・エスパルガロが務めることになっている。

苦しい週末ではあったが、スプリントレース、決勝レースで完走し、仕事を果たした©Honda Racing Corporation

Moto3古里太陽が表彰台争いを展開し、惜しくも6位

Moto3クラスに参戦する古里太陽(ホンダ・チームアジア)は、レース終盤まで表彰台圏内にいた。最終ラップ、メインストレートでは3番手付近につけていたが、1コーナーのブレーキングでポジションを落とす。これが影響して、6位でゴールした。

古里は「最終ラップの1コーナーでポジションをキープできていれば……」とレースを振り返る。

「ウイーク通して調子はよかったので、こういうレースができるのは予想していました。でも、最後のラップにミスをして、ポジションを落としたのがいちばん痛かったですね。それがリザルトに出てしまいました。これからはそういうミスを減らすしかないと思っています」

今季はあと一歩で表彰台に届かないレースが続いている。今季2度目の表彰台獲得のために必要なものは何だろうか。

「基本的にはスピードと、最後の戦略だと思う」と、古里は答えた。もちろん、今回のレースも冷静にスリップを使って周回を重ねていたが、それでも最後にミスをした。

「その二つをちょっとでも上げられれば、リザルトにつながると思います。考えたり、落ち着いてレースすることですね」

同じくMoto3ライダーの山中琉聖(フリンサ-MTヘルメット-MSI)は、土曜日の予選Q2でエンジントラブルが発生した。決勝レースに向けてエンジンを乗せ換えたが、Moto3クラスは日曜日朝のウオームアップ・セッションがないため、その確認できないままレースを迎えた。

「後方からのスタート(15番手)になったんですけども、全体的にすごくペースは遅くて余裕があったんです。でもストレートが全然伸びなくて、抜けなかったし、抜く場所も限られているレースになってしまいました。何が問題かわからないですけど……。グループが大きかったのですが、それによってギアボックスをロングにしてきた選手にストレートで抜かれてしまいました。もっと前にいければよかったんですけど、なかなか前に出られず、難しいレースになりました」

山中はそんな苦しいレースでも10位でゴールしている。

古里(#72)は、惜しくも表彰台を逃したが、調子は上向きだ©Honda Team Asia

金曜日は好調だった山中(#6)。レースでは思うように順位を上げられなかった©MSi Racing Team

Moto2クラスの佐々木歩夢(RW-イドロフォーリャ・レーシングGP)は、19位だった。内容としてはMoto2のレースでいちばんいい19位だった。フロントのフィーリングが改善し、攻められるようになってセッティングを詰められるようになったこと、そして、確実にスピードが上がってきていることが要因だ。

「ペースとしてはMoto2のレースでいちばんよかったと思います。最終的には悔しいリザルトになってしまいましたけど……。スタートでミスをして遅れてしまったので、そこから少し追い上げながらのレースで、最終的にペースよくトップ選手とレースをすることができました」

「仲のいいジェイク(・ディクソン)や、トニー・アルボリーノなどともバトルができて、トップライダーたちと一緒にレースすることができました。今のMoto2は本当に差が少ないんです。ちょっとでも調子が悪ければ、(ディクソンやアルボリーノのような)トップ選手も自分と同じ順位にいますからね。彼らに追いつくまで、あと少しだと感じています。その“あと少し”をしっかり改善していきたいです」

Moto2に参戦する國井勇輝(イデミツ・ホンダチームアジア)は、土曜日の時点では「自信を持って走れている」と語っていた。しかし、レースでは苦戦し、23位だった。

「いいフィーリングでレースに臨んだのですが、自分が想定したペースでは走れなくて、レースペースが厳しい状態でした。スタートも出遅れてしまって、あまりいいところがなくレースが終わってしまった印象です。ウイークを通して、今までよりもすごくフィーリングがよく走れていただけにすごく残念です。ペースが作れなかったのは、今後の課題ですね」

MotoGP第10戦オランダGPは、6月27日から29日にかけて、TT・サーキット・アッセンで行われる。

一時はディクソンも抜いたが、最後に抜き返された。内容のあるレースだったと佐々木(#71)©RW-Idrofoglia Racing GP / Rafa Marrodán

國井はレースペースがうまく作れず、苦しんだ©Honda Team Asia

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