ヤマハレーシングチーム、TeamHRCと優勝候補筆頭のワークスチーム体制が判明し、残るは24年大会で4位入賞を果たしたこのチーム! アクシデントを乗り越えて初表彰台を目指します。

本番前の大アクシデントを乗り越えて 今年こそ表彰台、優勝を目指す!

それは突然のアクシデントでした。5月24~25日に開催された全日本ロードレース第2戦・スポーツランド菅生大会、その一週間前に行なわれた公式事前テスト初日。開幕戦・もてぎ大会で優勝し、悲願の全日本チャンピオンへ向けて最高のスタートを切ったDUCATIチームカガヤマの水野涼がテスト走行中に転倒してしまったのです。

スポーツランド菅生のSPアウトコーナー先、シケイン手前の、通称「旧6」と呼ばれる右コーナーで転倒→コースアウトし、水野はマシンから投げ出され、マシンはフェンスを飛び越えてコース外、コース外斜面の山林部分に落下して炎上してしまったのです。

テスト中でオフィシャルスタッフの数が多くなく、普段は決してマシンが飛び出さないような場所ということで、炎上したマシンであわや山林火災、という状態でオフィシャルが水野を救護し、マシンの炎上を食い止めたという大アクシデントでした。

「まず僕を救助してくださったオフィシャルの方、メディカルセンターのスタッフの皆さんにお礼を言いたいです。命の危険を感じた転倒は初めてでした。改めて迅速な転倒処理をしてくださったオフィシャルのみなさん、本当にありがとうございました」(水野涼SNSより抜粋)

水野はその後も走行を続け、しかしテスト2日目に再び転倒し、走行を切り上げての精密検査の結果は両肩の骨折。水野はそのまま療養に入り、菅生大会の欠場はもちろん、2回4日間行なわれたハチタイの事前テストも欠席。廃車となってしまったドゥカティ・パニガーレV4Rを組み直し、マシンのシェイクダウンからスタートしたいチームの計画は修正を余儀なくされ、2度の鈴鹿テストでは加賀山就臣監督自らがシェイクダウンテストを行なう緊急事態となったのでした。

実は筆者は、テスト後にチームカガヤマのワークショップを訪問。転倒炎上したパニガーレV4Rも見せてもらったのですが、もともとフレームレスのパニガーレだけに、本当に部品単位のバラバラで、アルミやカーボンは高熱で大ダメージを受け、再利用できる部品なんかひとつもないんじゃないか--そんな状態でした。写真を撮るのも忘れて呆然と立ち尽くすだけでした。下の写真は加賀山監督がSNSで公開した写真です。

これが炎上した「元」パニガーレV4R。消火活動はコース外、スポーツランド菅生の場内道路からでした。ワークショップではすぐに鈴鹿テスト用の1台が組み合げられました。

2025年シーズン用のパニガーレV4R。昨年のハチタイで、耐久レース向けの耐久性の高さも確認されたといいます。

昨年のハチタイに来日した、当時のスポーティングディレクター、パオロ・チャバッティ。「チームカガヤマが鈴鹿の耐久をブリヂストンタイヤで走るのは貴重なデータだ」と語っていました。

スピードでは上位3チームにまったく引けを取らなかったパニガーレV4R。ただし、片持ちスイングアームならではのピット作業、特にスタンドワークに課題を残していました。

スプリントレースでの速さは文句なしのドゥカティの、耐久レースへの意外な耐久性の高さを実証して見せた2024年大会。

HRC、YARTヤマハ、ヨシムラスズキに次ぐ4位を獲得。

イギリスからドイツから パニガーレ使いが飛来!

その鈴鹿テストの1回目に駆けつけたのが、まずレオン・ハスラム。往年の名ライダー、ロン・ハスラムのジュニアとしても知られるレオンももう42歳。これまでハルクプロホンダ時代に2度、カワサキワークスチーム時代に1度ハチタイに優勝していますから、まさに優勝請負人! ホンダのWSBKワークスチームにいたり、BMWでWSBKを走って、ハチタイでは初めてドゥカティに乗りますが、今シーズンはブリティッシュ・スーパーバイク(=BSB)でパニガーレV4Rを走らせて、開幕戦優勝のほか、6月末現在8レースを終えてランキング3位につけています。2003年に日本人で初めてBSB参戦を開始した加賀山監督の友人であり、その縁で駆けつけたのだと思います。

もうベテランの域に達したレオン・ハスラム。カワサキ在籍時の優勝レースでは、レース後に立てなくなるほどの脱水症状となっても走り続けた不屈の鉄人。

 2回目の鈴鹿テストでは、またも加賀山監督が完成車検査を続ける中、今度はマーセル・シュロッターの顔がチームカガヤマのピットにありました。シュロッターは2017/2023年にエスパルスドリームレーシングからハチタイ参戦経験があり、今シーズンはWSSP600にドゥカティ・パニガーレV2で参戦中。ここまで12レースを終えてランキング8位につけています。

「2年ぶりに鈴鹿8耐を走ることになってすごくうれしい。僕が知っている限り、いちばん難しいサーキットであるスズカで、初めて乗るパニガーレV4Rで自己ベストも更新できたし、HRCのタカハシ(=高橋巧)は速かったけど、イケル(レクオーナ)の0秒1落ちで走れた。30℃を超える気温のなか、ロングランのテストでは最終ラップにベストラップが出せたのがすごくポジティブだった。あと1か月でまた日本に戻って、8月最初の日曜が待ちきれないよ」(シュロッター)

長くMoto2で活躍、現在はワールドスーパースポーツ600でパニガーレV2を走らせるマーセル・シュロッター。ハチタイへは3度目の出場、もう鈴鹿への対応は充分!

そしてチーム加賀山は、今大会のハチタイにSDGの支援を受けて「SDG-DUCATI Team KAGAYAMA」として水野涼/レオン・ハスラム/マーセル・シュロッターのトリオで参戦します。気がかりなのは水野の回復状況ですが、問題なく走れるとすれば、ここも表彰台、そして優勝を狙えるチームなのは変わりありませんね。

実はこのハチタイに関して、加賀山監督は早くからライダー招聘に動いていて、候補に挙げたライダーは、名だたるMotoGPとWSBKライダーばかり。名前こそ明かしませんでしたが、MotoGPライダーであるフランチェスコ・バニャイア、ファビオ・ディ・ジャナントニオ、フランコ・モルビデリ、そしてWSBKではダニロ・ペトルッチあたりにおそらく声をかけていると思われ、しかしやはり難しかった、と言います。ずっと以前には、あのバレンティーノ・ロッシをハチタイに監督として呼びたい、と語っていたことがありました。加賀山は、これらのビッグネームに実際に声をかけてしまうコネクションがあるからすごいんです。そうでなければパニガーレV4Rなんてワークスマシンを日本に持ってくることなどできませんから。

「名前は明かせないけど、実際にGPやWSBKのライダーに声をかけて、OKをもらえたライダーはいたけど、チームや契約先の事情でだめになってしまったケースばっかりでした。これは私の力不足です」と加賀山監督。

ドゥカティの公式ショート動画で、バニャイアが冗談めかして8耐参戦のことを口にしたり、昨年のハチタイにもドゥカティ本社からスポーティングディレクターがつきっきりで視察にきていたりと、加賀山監督とチームカガヤマがドゥカティのハチタイへの興味の扉をこじ開けたのは明らかで、そう遠くない将来に、ドゥカティワークスチームがハチタイとかかわりを持つだろうことは想像に難くありません。
DUCATIチームカガヤマから、フランチェスコ・バニャイア/アルバロ・バウティスタ/水野涼組が出場、なんてドリームが実現すること、願っています。

菅生テストでの負傷から療養中の水野涼。鈴鹿の事前テストには走行せずとも元気な姿を見せていました。Get well soon,RYO!

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