
私はハリー、台湾出身でWebike中国の社員です。今回は会社のチーム「Webike Endurance Team」と共に、2025年モビリティリゾートもてぎで開催される「もてぎ7時間耐久レース」に挑戦します。これは私にとって人生初のオートバイ耐久レースであり、3回目のオートバイレース、そして日本でのオートバイレース初参加となります。この記事では、外国人の視点から、私がどのようにして参戦資格を取得したか、日本のレースの特色、そしてもてぎ7時間耐久の魅力について紹介します。
目次
外国人のアマチュアライダーがもてぎ7耐に参加するための資格について
まず、他のレースと同様に、各レースが規定する必要な条件とライセンスを把握する必要があります。もてぎ7時間耐久レースは、MFJ(日本モーターサイクルスポーツ協会)が発行する当該年度のレーシングライセンスを所有していることが出場条件です。しかし、日本国内で直接MFJライセンスを取得しようとすると、日本人であるか日本の在留資格を持っていることが必須であり、この方法は私には不可能でした。
もう一つの方法は、他の国で取得したFIM(国際モーターサイクリズム連盟)ライセンスを使って転籍(スポーツ国籍を変更)し、MFJライセンスに切り替えることです。これによりもてぎ7耐への参加が可能になります。ただし、この方法では元の国のFIMライセンスを放棄しなければなりません。元のライセンス発行国(地域)でレースに参加したい場合は、転籍先の協会(この場合はMFJ)に「No Objection Letter」(異議なし証明書)の申請が必要です。私の例で簡単に言えば、転籍が成功すると、2025年は「台湾のライダー」ではなく「日本のライダー」となります。台湾のローカルレースに参加したい場合は、MFJにNo Objection Letterの発行を依頼しなければならないのです。
もてぎ7時間耐久レースは、MFJライセンスの他に、初参加または久しぶりにエントリ―するライダーには、安全のために少なくとも1回の公式練習への参加が義務付けられています。私は今年以前にFIMライセンスを持っていなかったため、3回開催するうちの最後の公式練習までに転籍によるMFJライセンスを取得することができませんでした。そのため、さらに追加で「もてぎサーキットのビギナーコース」に参加し、まずMCoM(モビリティリゾートもてぎの会員)の会員資格を取得。その後、1回の公式テストに参加し、ようやくレースの約2週間前にMFJライセンスを取得することができ、もてぎ7時間耐久レースへの参加が叶ったのです。
日本でレースに出られることへの想い
日本でレースに出られることは、夢のようでした。アジアの他の国々で育ち、幼い頃からレースが好きだった多くのライダーの皆さんも、私と同じ気持ちを持っていると信じています。子供の頃、MotoGPやF1の日本グランプリが中継されると、特に注目していました。ヨーロッパやアメリカほど遠くない距離感、そして同じアジア人の顔を見ると親しみを感じたからです。レースに日本人や他のアジアのライダーが参加していると、特に応援したものです。だからこそ、MotoGPも開催される同じもてぎサーキットでの7時間耐久レースに参加できることは、私にとってまさに夢が叶った瞬間でした。
実際に参加して気づいた日本のレースの特色
しかし、実際に参戦してみると、予想外の発見もたくさんありました。耐久レースという性質上、スプリントレースのような殺伐とした雰囲気は少なく、皆まるで集まりに参加しているようでした。多くのチームがパドック ピットエリア(Paddock)にテントを張り、様々なものを調理し始めます。特に昼時、ピットエリアを歩くとキャンプ場に来たような感覚になり、至る所で食べ物の良い香りが漂い、皆の気分もリラックスして楽しそうでした。
もう一つ、非常に印象的だったのは、出場選手の年齢層の幅広さです。最年少の選手は15歳、最年長の選手はおそらく60歳を超えていたと思います。青年・中年・高齢の3世代が同じサーキット上で競い合う光景は、おそらく耐久レースならではでしょう。
もてぎ7時間耐久レースのもう一つの面白い点は、空き時間にホンダコレクションホールを見学できることかもしれません。ちょうど金曜日と土曜日、雨の合間の空き時間に訪問してきました。
レース本番について
2025年の7時間耐久レースには、様々な規定に基づいて分けられたWT、JP、NSTの3つの車両クラスに、合計66台のマシンがエントリーしました。各クラスには異なる改造規則やピットストップ時間が設けられ、様々な車種がなるべく同じ土俵で戦えるようになっています。
今年のレースは天候が非常に不安定でした。金曜日はフリー走行、土曜日は予選、日曜日が決勝レースというスケジュールでしたが、金曜日は一日中雨、土曜日は晴れ間もありましたが変わりやすい天気でした。日曜日は、スタートの10分ほど前から小雨が降り始めました。この時点では全チームがドライタイヤを使用しており、皆の緊張が高まり、対策を考え始めていたことでしょう。
レーススタート後、一部のチームはすぐにピットインしてレインタイヤに交換しましたが、大半のチームはドライタイヤを維持しました。路面は濡れていましたが、雨が強くなる様子はありませんでした。そして15分後には雨が小降りになり、レーシングライン上の路面は乾き始めました。
スタートから30分後、ようやく天候が落ち着き、三日ぶりの太陽が顔を出しました。レースも非常に順調に進行し、途中セーフティカーが登場することは一度もありませんでした。
私たちのJPクラスには給油ストップでは4分間のピットストップ時間が設定されていたため、ライダー交代、給油、タイヤ交換といった作業は非常に余裕を持って行うことができました。
しかし、耐久レースの状況は常に予測困難です。レース開始から4時間が経過した頃、私たちのマシンはコース上でガス欠状態に陥りエンジンストップしてしまいました。そしておそらく燃料供給の問題により、ECUが保護モードに入り、クイックシフター機能が失われ、パワーも低出力モードに制限されてしまったのです。残り1時間半、給油の回数を減らすために、私たちは速度を落として燃費を節約することを決断しました。
最終的に、私たちは総合36位で無事に完走を果たしました。耐久レースには非常に強力なチームサポートが不可欠です。戦略を練り、各ライダーやスタッフの役割を明確にし、突発的な状況に迅速に対応する能力が求められます。これはスプリントレースとは全く異なる、耐久レースならではの楽しさです。
もてぎ7耐の表彰項目は非常に多岐にわたります。各クラスの優勝という最も重要なものに加え、ベストカラーリング(マシンデザイン賞)、メディアチーム賞、最年少ライダー賞、ベストウーマンライダー賞、最も遠くから来たチーム賞などが用意されています。これにより、このレースはまさにオートバイレースを愛する者たちの一体感に繋がり、誰もが心から楽しむことができるのです。
楠山泰生(チーム代表 兼ライダー/リバークレイン取締役)
もて耐には、私は4回目の参戦です。このZX-25Rは2023年にNST-ZX(スタンダードクラス)で出場しましたが当時の私は怪我のためチームクルーに専念し、ようやくライダーとして参加することが叶いました。今回私達はホイールサイズを最適に換装できるJPクラスでのエントリーのためピットストップ時間も長く、燃費が厳しいこのマシンでは上位を狙うことは難しい面もありましたが、結果はともかくマシンづくり、練習会、前夜の作戦会議、ヘルパーの仲間達と過ごすパドックも全部含めて楽しい経験でした。
ところで世界耐久選手権を戦うゼッケン11番【Kawasaki Webike TRICKSTAR】をご存じでしょうか。このマシンをオマージュした緑色の4気筒を駆り、チームメンバーの気分は鈴鹿8耐です。見た目もKWTっぽい感じを目指しました。そんな遊び心も本気でやると面白いものです。
リザルト
Webike Endurance Team ゼッケン11
カテゴリー:JPクラス
マシン:ZX-25R
ライダー:4名
信濃孝喜(リバークレイン社長)
神 拓也(リバークレイン取締役)
楠山 泰生(リバークレイン取締役)
Harry Chen(Webike台湾社員・WebikeCHINAマネージャー)
出走台数:59台
予選順位:総合25位/JPクラス12台中 8位
7時間決勝結果:総合36位/JPクラス 6位 156周
モビリティリゾートもてぎ「もて耐」公式情報はこちらから!
もて耐:https://www.mr-motegi.jp/motetai/
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