写真:MotoGP

1990年代に国内外のロードレースでその名を轟かせた青木三兄弟の次男、青木拓磨氏。全日本で王座に輝いた後、世界グランプリの500ccクラスにステップアップし、これからという時に1998年のテスト中の事故で下半身の自由が効かない身体になってしまい、現在は車いすレーサーとして4輪レースへ転向し、2023年のアジアクロスカントリーラリーでは総合優勝も遂げています。

その拓磨選手のMotoGP解説、今回は4月25-27日に行われたスペインGPの詳細について語ってもらいます!

「青木拓磨のモータースポーツライフ」前回はコチラ!

転倒でレースを棒に振った、と思いきや!

スペイン・ヘレスで行われたMotoGP第4戦。サーキットは朝から異様な熱気に包まれていました。誰もが地元の英雄マルク・マルケスの快走を期待し、彼の一挙手一投足に歓声をあげる、そんな状況でした。予選では惜しくもポールポジションを逃し、ヤマハのファビオ・クアルタラロがトップタイムを記録。マルケスは2番手スタートとなったものの、その存在感は圧倒的でした。

決勝レースでは、クアルタラロが好スタートを決めてレースをリード。2番手にはペッコ・バニャイア、そして3番手にマルク・マルケスが続く展開。緊迫したトップ争いが繰り広げられる中、事件は3周目に起きました。左の8コーナーで、マルケスがわずかにラインを外し、そのままスリップダウン。マシンはグラベルへと一直線。スタンドが一瞬静まり返りました。

「あぁ、終わったか」と誰もが思ったはずです。でも、マルケスは諦めなかった。転倒直後、自らマシンを起こし、再スタートを果たすのです。驚くべきはその転倒したマシン。左側のウイングレット、つまりエアロパーツが完全に吹き飛んだ状態です。近年のMotoGPでは、空力パーツがラップタイムに直結する重要なファクターとなっています。まるでF1やGTマシンのように、フロントのエアロでダウンフォースを生み、マシンを路面に吸い付かせる。それが失われれば、通常はまともに走ることなどできません。

しかし、マルケスは違いました。左側の空力パーツが失われた状態で、まるでマシンが完全体であるかのように攻め立てていくのです。トップグループと遜色のないラップタイムで周回を重ね、次々にライバルたちをパスしていった姿は、まさに「エアロ不要説」を突きつけるような衝撃でしたね。このレースを戦う他のライダーたちは、さぞや複雑な気持ちだったに違いありません。

最終的にマルケスは12位でフィニッシュ。表彰台には届かなかったものの、その走りは間違いなく観る者の心に刻まれたでしょう。

転倒によりエアロパーツを失った後も、驚異的な走りを見せたマルケス。

弟・アレックスが歴史を刻んだ日

そしてこの日、歴史がもうひとつ動いたと言えます。兄・マルクの背中を追い続けてきた弟、アレックス・マルケスが、遂にMotoGPクラスで初優勝を飾ったのです。スペイン人ライダーとして地元での初勝利、そしてMotoGP史上初となる“兄弟での勝利記録”という偉業を達成。まさに、その名前をモータースポーツ史に確実に刻み込んだ瞬間でした。

2位にはポールポジションから粘りの走りを見せたクアルタラロ、3位には王者バニャイアが入り、表彰台の顔ぶれも実力者揃いの納得のラインアップでした。

一方で注目すべきは、今シーズンMoto2から昇格した日本人ライダー、小椋藍の活躍です。開幕戦ではスプリント5位、決勝6位とデビュー戦で堂々たる結果を残し、アルゼンチンGPでも鋭い走りを見せました(結果は残念ながらチームトラブルにより失格扱いとなりましたが)。その後もコンスタントに好走を重ね、今回のヘレスでも力強いパフォーマンスを披露。すでにMotoGPの世界で“存在感”を確立し始めています。

マルケスの常識を覆すような走りと、弟アレックスの歓喜の初優勝。そこに新星・小椋藍の台頭も加わり、2025年シーズンのMotoGPはますます混沌とした様相を見せてきています。これから続くヨーロッパラウンドで、果たして誰が主役の座を手にするのか——その行方から目が離せませんね。

スペインGPではアレックス・マルケスがMotoGPクラスで初優勝を遂げた。

青木拓磨のモータースポーツチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC6tlPEn5s0OrMCCch-4UCRQ

takuma-gp
http://rentai.takuma-gp.com/

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    システムのミスでアップされてしまったのか?

  2. 匿名 より:

    Webikeの通常運転(嘲笑)。

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