
2025年FIM世界耐久選手権(EWC)開幕戦ル・マン24時間レースで、Kawasaki Webike Trickstarのロマン・ラモスが印象的な活躍を見せた。スペイン出身のラモスは、代役出場にも関わらず、チームを表彰台へと導く原動力となった。レース後、ラモスはEWC公式メディアのインタビューに応じ、自身の思いを赤裸々に語った。
惜しくも届かなかった勝利――ロマン・ラモスの挑戦
2025年FIM世界耐久選手権(EWC)第1戦ル・マン24時間レースで、カワサキ・ウェビック・トリックスターに加わったスペイン人ライダー、ロマン・ラモスが魅せた走りは、多くのファンにとって記憶に残るものとなった。急きょ負傷したチームメイトの代役として参戦したラモスは、マイク・ディ・メグリオ、グレゴリー・ルブランと共に、優勝争いの先頭に立つ力走を見せた。
「一時は、本当に勝利が見えていた」と語るラモス。勝利は目前だったが、終盤に降り出した雨がすべてを変えてしまう。路面状況が急変するなか、ラモスはダブルスティントを引き受け、リスクを冒して走行。
「負けたことは悔しいけれど、もし開幕前に2位という結果を提示されたら、迷わず受け入れていたと思う」と彼は振り返る。シーズン開幕戦にして、表彰台という結果。ラモスのポテンシャルを証明するには十分な内容だった。
苦悩と再生――耐久レースで見つけた"自分らしさ"
ロマン・ラモスにとって耐久レースは、当初「自分には向いていない」と思わせる過酷な舞台だった。2023年のル・マンでは体調不良で苦しみ、鈴鹿では熱中症寸前に。「1周も楽しめなかった」とまで語るほどだった。
それでも、耐久レースに再び挑むことを決意した彼は、今年、テストライダーとしてチームに復帰。「もう一度やってみよう」と心に決め、新たなアプローチを試みた。
「今回は精神的にも肉体的にも準備を整え、複雑なコンディションにも冷静に対処できた」とラモスは語る。雨の中の走行、夜間のライディング、そして突然のタイヤ変更──すべてが成長の糧となった。
彼は、ブリヂストンタイヤとの相性を「ゲームチェンジャー」と表現。ライディングが格段に楽になり、自信を持ってスロットルを開けられたという。
次なる戦いへ――スパで狙う、真の頂点
「勝利は手の届くところにある」と確信したラモスは、6月6日から7日までベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催されるスパ8時間耐久レースに向けて、野心を燃やしている。チームメイトのクリスチャン・ガマリーノが復帰すれば、自身は再び4番手ライダーとなる可能性があるが、「チームの勝利のために全力を尽くす」と力強く語る。
昨年の苦悩から、今シーズンの飛躍へ。ラモスはただの代役ではなく、今やチームの重要な柱のひとりだ。その姿勢と成長は、多くのファンの心を打ち、次なる戦いへの期待を高めている。
スパでの勝利、そしてタイトル争いへの加速。ラモスの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
この記事にいいねする