
開幕戦もてぎ大会から約1カ月。JSB1000クラスだけでなく、全クラスのレースが開催されたスポーツランド菅生大会。天候に左右されるレースもありましたが、2レース制で行なわれたJSB1000クラスは、両方ともドライタイヤでのレースとなりました。
目次
水野涼、無念の欠場
全日本ロードレース第2戦の前に、まずは残念なニュースが入ってきました。それは「黒船襲来」水野涼(DUCATI TEAM KAGAYAMA)が事前テストで転倒し、両肩を負傷。菅生大会を欠場するというものでした。レース前週に行なわれた3日間の事前テストで、2日目に登場した水野は、SPアウトコーナーからシケインまでの区間で転倒してコース外に投げ出され、マシンはスポンジバリアを超えて炎上。2日目にも水野は転倒し、マシンもライダーも大きなダメージを負ってしまったようです。
水野の穴を埋めるかたちで注目を集めたのが、東北初登場のBMW M1000RRワークススペック。オートレース宇部レーシングの浦本修充が、公式予選でトップタイムをマークし、全日本ロードレース2戦目にしてポールポジションをもぎ獲ったのです。
「ポールポジションは嬉しいけど、予選中に中須賀さんや(野左根)航汰と走って出たタイム。(単独で出したわけではないから)素直には喜べないんですけど、マシンも徐々に仕上がってきている。やっぱり中須賀さん、航汰が速いので、そのあたりをマークしながら決勝に臨みます」(浦本)
2レース制ということで、セカンドベストタイム(自己ベスト2番目タイム)で浦本に競り勝ったのが中須賀克行。事前テスト、ウィーク金曜のフリー走行でもトップタイムを譲らず、やはりスポーツランド菅生を得意としているだけに、第2戦でシーズン初優勝を決めておきたい。
「先週のテストから気温と路面温度が下がってしまったんですけど、フリー走行と予選で、なんとかリズムは取り戻せた。考えてみたら、去年のここ菅生のレース1からずっと優勝できていないので、いいレースを見せたい、納得のいく走りがしたいのと同時に、勝ちにもこだわりたい」(中須賀)
土曜に行なわれたレース1は、ドライコンディション。中須賀と同じく、ここ菅生を得意とする野左根(Astemo Pro Honda SIレーシング)がホールショットを奪うと、中須賀、浦本、伊藤和輝(Honda Dream RT桜井ホンダ)、津田拓也(Team SUZUKI CN チャレンジ)、岩田悟(Team ATJ)、長島哲太(DUNLOP レーシングチーム with YAHAGI)、名越哲平(SDG Team HARC-PRO Honda)といった順でオープニングラップをスタート。
ここから野左根がスパートし、中須賀、浦本、長島、伊藤の順で周回を重ね、3周目には中須賀がトップに浮上。この時、浦本はクラッチトラブルで無念のリタイヤ。トップ争いは中須賀と野左根がテールtoノーズで3番手以降を引き離し、少し離れて長島と伊藤、さらに離れて津田と岩田がポジション争いを繰り広げます。
トップ2台はつかず離れずの接近戦。ヤマハYZF-R1の中須賀と、ホンダCBR1000RR-Rの野左根の戦いは、やはりマシン特性の違いで「速いところ、強い区間が違う」(野左根)ため、2台の間隔は広がったと思ったら接近したり、の繰り返し。そのまま3番手以下を引き離して、2台の戦いが続いていきます。
後方では、岩田を引き離し始めた津田のペースがよく、伊藤と長島をかわして3番手に浮上。さらにこのグループに、スポット参戦の日浦大治朗(Honda Dream RT桜井ホンダ)が迫ります。
レースは終盤となって、中須賀がやや野左根を引き離し始めますが、周回遅れをパスするタイミングでその差が詰まり、中須賀のペースも落ち始めます。そして最終ラップ、中須賀の背後についた野左根が、バックストレート前でトップに立つものの、バックストレートエンドの通称“馬の背コーナー"で中須賀が抜き返し、中須賀→野左根は0秒004という僅差のフィニッシュとなりました。3位でフィニッシュしたのは津田でしたが、津田はイエローフラッグ区間での追い越しでペナルティが課せられ、30秒加算で9位に降格。かわってレース後半に追い上げを見せた日浦が3位表彰台に登壇したレースとなりました。
伊藤がJSB1000クラス自己ベストの4位に入り、以下、岩田、鈴木光来(Team ATJ)、長島、児玉勇太(MARUMAE Team KODAMA)、津田、関口太郎(SANMEI Team TARO PLUSONE)の順でトップ10となりました。
野左根のファイト空転!
日曜に行なわれたレース2は、土曜夜から降った雨が上がり、路面もウェットからドライへと変わった後。ところどころにウェットパッチの残る難しい路面での一戦でしたが、全車スリックタイヤでのレースとなりました。
レース2のスタート順は中須賀→浦本→野左根の順のフロントロウ。4番手の名越はレース1での転倒による負傷で、さらにレース1で3位に入った日浦は、日曜朝のフリー走行での転倒でレース2を欠場。スタートではフロントロウ3番グリッドの野左根が好スタートを見せますが、2コーナーで転倒! 打倒中須賀のためには1周目から、という狙いが空回りしてしまいました。
替わってトップに立った津田をかわしたのは長島。長島は、トップライダーのなかで唯一ダンロップタイヤを履いているため、もちろん長島のスキルもありますが、タイヤのウォームアップ性の良さで、路面温度が低い局面では強さを発揮するのです。2番手には津田をかわして浦本がつけ、津田、中須賀といったオーダー。路面温度が上がり切らない難しいコンディションの中で、こういった状況に強いベテランのなか、浦本が上位につけているのは大健闘です。
長島、浦本、中須賀、津田、岩田、伊藤、鈴木、関口といった顔ぶれが上位陣に並ぶ中、長島と浦本がやや3番手以降を引き離す展開。5周目にはホームストレートで浦本が一度トップに立つものの、長島が抜き返し、そのバトルに乗じて3番手以降も接近。長島、浦本、中須賀、岩田、伊藤の5台が上位集団となります。
路面コンディションのためかペースが上がらないなか、たまらずレース中盤に浦本がトップに浮上。すぐに中須賀も続いて、いよいよ浦本と中須賀の一騎打ちとなっていきます。圧倒的にストレートスピードが速い浦本のBMWと、変幻自在のライン取りを見せてブレーキングが強い中須賀のR1。
力と力のぶつかり合いはレース終盤まで続き、18周目の馬の背コーナーで、浦本がブレーキングミスをして中須賀がパス。そのままスパートを見せて逃げ切り、中須賀のダブルウィンで決着。2位となった浦本に続いて、土曜のレース1で幻の表彰台登壇となった津田が3位フィニッシュ。以下、伊藤が4位に、5位にはST600からJSBクラスにステップアップして3レース目の鈴木が入り、岩田、長島、関口、児玉、津田一磨(Team BabyFace)でトップ10となりました。
これでレースは中須賀が2戦3レースで優勝2回、2位1回となってランキングトップに浮上。そのライバルである浦本は1レースをノーポイントで落としてランキング2位、水野と野左根が2レースをノーポイントで落とし、ランキング3位には3レースともポイントを獲得している伊藤、4位に津田、5位に岩田がつけています。
中須賀克行 レース1:優勝/レース2:優勝
「今日は雨上がりのコンディションで、路面は滑りやすいし、タイヤ温度もなかなか上げられないレースでした。昨日は(野左根)航汰と気持ちいい、クリーンなバトルができたものの、終盤すこしタイヤを消耗させてしまったので、それも踏まえてきちんとタイヤをマネジメントしてのレースでした。今日はとにかくタイヤを温存したかったので、(長島)哲太が前にいてくれる間は、パスせずに団子状態にしていこうと思っていました。浦本君とのバトルは、うまくミスをついて前に出られたのが良かったと思います。あれがなかったら、走行ラインが限られて、なかなか抜く場所がなかったので危なかった。航汰とはリスペクトしあえている仲なので、安心して激しいレースができた。水野君が戻ってきたら、(浦本)ナオも加えてまたガチンコでいいレースがしたい」
浦本修充 レース1:リタイヤ/レース2:2位
「レース1のポールはすごく嬉しかったし、マシントラブルは残念だったんですが、もう切り替えていくしかない、と。今日は難しいコンディションのなか、(長島)テツが前に出るだろうなと思っていたので、まずはそのとおりペースメーカーになってもらって様子見、間違いなく中須賀さんが来るだろうなぁ、と。ぼくかなりストレートでアドバンテージがあったので、レース中盤に集団を崩そうと前に出たんです。最後はミスしてしまってから、中須賀さんのスパートについていけませんでした。完敗でした」
津田拓也 レース1:9位/レース2:3位
「昨日の黄旗区間の追い越しは、安全通過のために取った措置で、それが認められなかったのは残念でした。大事なポイントを落としてしまって悔しいですね。うちのマシンはストレートスピードがライバルに劣っている分、コーナリングスピードで戦わなきゃいけないので、それができない今日の路面は厳しかった。一時は7~8番手まで落ちたのかな、レース後半は路面が乾いてきて、自分の走りができてポジションを挽回できました。チームの頑張りに応えるのは成績だと思っているので、まずは3位でマシンを戻せてよかったです」
野左根航汰 レース1:2位/レース2:リタイヤ
「自分としては中須賀さんとまた、こうやって激しいレースができてよかったと思います。結果は2位、中須賀さんに負けてしまったんですが、最後の最後まで戦えて、1000分の4秒届かなかったけど、いいレースができたと思います。中須賀さんとはヤマハとホンダで、速い場所と遅い場所が違って、狙った場所でパッシングできても、抜き返されちゃいました。去年よりもレース後半のペースを速く走れているので、前進できているな、と思います」
日浦大治朗 レース1:3位/レース2:欠場
「普段はスーパーモタードに出場していて、(24年最終戦以来)久しぶりのロードレースでこうやって表彰台に上がれてすごくうれしいです。僕はレース中もういっぱいいっぱいで、ポイントを獲れて最終戦に出る資格をもらえてよかった。鈴鹿8耐前に実戦に出ておこうと、次は8耐、得意な鈴鹿でがんばります。久しぶりの1000ccということで、レース後半でやっときちんと走れました」
ギャラリーへ (14枚)この記事にいいねする