MotoGP第7戦イギリスGPはここしばらく8月に開催されてきたが、2025年シーズンは5月にスケジュールされた。

5月あたりのイギリスは、不安定な気候の日が多い。晴れたかと思えば雨が降り、雨が降ったかと思えば晴れてくる。寒いと思えば気温が上がる。“four seasons in one day”とも表現される気候である。

イギリスGPの週末は、まさに“four seasons in one day”だった。

決勝レースが行われる日曜日は、朝に本降りの雨が降った。けれど朝のうちに雨は上がり、全クラスの決勝レースはドライコンディションで行われた。ただ、風が強く、走りに影響した、と言及するライダーが多かった。

そんなイギリスGPを戦った日本人ライダーの週末をお届けする。

小椋藍、転倒により右足骨折の疑い

イギリスGPを迎えた小椋藍(トラックハウス・MotoGP・チーム)は、金曜日午前中のフリープラクティス1(FP1)の終盤、転倒を喫した。午後のプラクティスでは一度コースインしたものの、ピットに戻り、走行キャンセルを決断している。

この日、小椋の囲み取材は行われなかったが、チーム提供の小椋のコメントによると、「午前中、バイクの調子はとてもよく、僕もあまり速いペースで走っていたわけではありませんでした。2回目にコースインして、ペースを上げていこうとしたのですが、攻めたタイミングが悪く、攻めすぎだったのだと思います。それでクラッシュしました。クラッシュ後、右ひざの調子が悪く、午後のセッションを走らないことにしました」ということだ。

翌日の土曜日、チームから小椋がイギリスGPを欠場することが発表された。

小椋は右ひざの関節部分の骨折が疑われている。スペイン・バルセロナに戻ったあと、27日月曜日に詳しい検査を受けるとのインフォメーションで止まっており、続報が待たれる。

イギリスGPを欠場した小椋。負傷の状態が心配される©Trackhouse Racing

Q2ダイレクト進出を果たしたMoto2佐々木歩夢、決勝はチャタリングに苦しむ

Moto2クラスに参戦する佐々木歩夢(RW-イドロフォーリャ・レーシングGP)は、金曜日午後のプラクティスで7番手となり、今季初めてQ2にダイレクトで進出した。スペインGPからエンジンブレーキが改善され、前戦からセッティングに集中することができており、「午後のプラクティスは、今季初めて、気持ちよく走れました」と語った。改善の兆しを見せていた。

だが、Q2ではタイム計測前に転倒。このため、佐々木は17番手から決勝レースをスタートすることになった。

この転倒は、チャタリングが影響していたようだ。このチャタリングは決勝レースで大きく佐々木の走りに影響した。チャタリングに苦しんだ佐々木は、17位でレースを終えている。

「バイクのフィーリング自体はよかったのですが、チャタリングに苦しんでしまいました。昨日の転倒も、ちょっとフロントにチャタリングが出て切れ込んだみたいなんです。レースでチャタリングが出るかもしれない、と心配していましたが、その通りになって、スタート後からずっとチャタに苦しんでいました」

「チャタリングの改善についてはだいたいわかっていますし、なぜ起きているのかも確実にわかっています。ただ、バイクのバランスの話になりますが、チャタリングを改善したら、また違うところで影響が出るかもしれないので、バイクのバランスをよくしていきたいですね」

Moto2ルーキーの國井勇輝(イデミツ・ホンダチームアジア)は、このクラスで初めて走るシルバーストン・サーキットに苦戦を強いられた。23番手からスタートし、20位でゴールした。

「ル・マン(フランスGP)と比べたらレース内容としてはよかったのかなと思いますが、ウイークを通して考えれば全体的に厳しかったなと思います。ただ、ウイークの流れから、レースではグループから離れて単独走行になると予想していましたが、終盤、残り3周までは15位争いの集団で走ることができました。集団で走ることができたのはよかったし、他のライダーとの違いを知ることもできました」

「次戦のアラゴンは、もう少し知っているサーキットです。ここほど苦労はしないのでは、とは思います。僕としては、アラゴンが勝負かなと思っています」

調子が上向いてきた佐々木(#71)。次戦に期待©RW-Idrofoglia Racing GP / Rafa Marrodán

ルーキーとして苦戦が続く國井。アラゴンで奮起を見せるか©Honda Team Asia

Moto3の山中琉聖と古里太陽、ペナルティで難しい週末に

Moto3クラスに参戦する山中琉聖(フリンサ-MTヘルメット-MSI)にとっては、二つのペナルティを科された週末となった。一つ目のペナルティは、前戦フランスGP決勝レース転倒後の行動に対して科されたもので、イギリスGP金曜日午前中のフリープラクティス1(FP1)の出場停止というものだった。

山中本人によれば「転倒後、リスタートしようとランオフエリアでエンジンをかけようとしたのですが、マーシャルに『バイクを走らせられない』と言われ、2度言われたのにエンジンをかけようとしたのがペナルティの対象になったようです。あるいは、エンジンをかけようとした場所が危ないから、だったのか……。ただ、エンジンをかけるのを手伝ってくれたマーシャルもいたので……」ということだった。

さらに、予選Q2中のスロー走行に対し、決勝レース中のダブル・ロングラップ・ペナルティ(※レース中、ランオフエリアに設定されたルートを走行しなければならないペナルティ。これによって、ライダーは数秒を失う。ダブル・ロングラップ・ペナルティの場合、レース中にここを2回通過しなければならない)が科された。

「1台に抜かれたので、そのままラインを外して走っていました。邪魔をしたわけでもないです。ただ、後ろのライダーがそれによってタイムが落ちたのかもしれません。映像を見ても、自分以外にも同じようなことをしていますし、なぜ自分だけなのかとも思うのですが……」山中はこのペナルティについてそう説明していた。

山中は13番手からスタートし、上位を含む大きな集団で周回を重ね、結果は8位だった。

レース後、「今回はFP1を走れておらず、積み上げられたウイークではありませんでした」と、山中は言う。ライダーたちは金曜日から決勝レースに向けて自分とバイクを煮詰めていく。一つのセッションを走れないということは、その分だけライバルに遅れるということであり、ライダーにとって大きなダメージなのだ。

それでも完走し、ポイントを獲得できたことは、ポジティブなレースだった。

「そういう状況を踏まえたら、しっかり転倒しないでポイント獲得できたことはよかったかなと思います。新しいこともいろいろわかりました。それは今後のレースに生かしたいですね」

同じくMoto3の古里太陽(ホンダ・チームアジア)にとっては、2年ぶりのイギリスGPだった。昨年は、サマーブレイク中のトレーニングで転倒し、鎖骨を骨折。手術を受け、その回復中だったからだ。

2年ぶりのシルバーストン・サーキット、そしてピレリタイヤでの走行経験がないということもあり、古里は金曜日から苦戦していた。

しかし、決勝レースでは19番手という後方からのスタートにもかかわらず、トップ争いを含む大きな集団のなかで周回を重ねていた。

「レース中盤にトップグループに追いついたところで、最初のタイヤを使ってしまったので、中盤以降は攻めすぎないように意識していました」

残り3、4周になったとき、古里は追い上げを開始する。上位二人は集団から抜け出したが、3番手争いは古里を含むライダーたちによって混戦、接戦となった。古里は4番手でゴールしたが、最終ラップ16コーナーでのアンヘル・ピケラス(フリンサ-MTヘルメット-MSI)との接触に対しペナルティが科された。結果に3秒加算のペナルティで、これによって古里の正式結果は12位だった。

「最終ラップだったので僕も抜きにかかっていたし、かなりぎりぎりのブレーキングはしていました。もちろん曲げようとしていたけど、限界で曲げようとしていたのでラインも少しはらんでしまいますし。ピケラスはいちばん外側にいたので、いちばん自分のラインの自由度があったと思うんですけど」

「僕のほうは、内側から(ルカ・)ルネッタが来ていたので、『どこに行けばいいのかな?』という状況だったんです。僕としては、納得のいくペナルティではなかったかなと思います」

とはいえ、19番手から「4番手でのゴール」は「次につながるレースではあった」と、古里は語っていた。

MotoGP第8戦アラゴンGPは、スペインのモーターランド・アラゴンで、6月6日から8日にかけて行われる。

山中琉聖(#6)はペナルティにもかかわらず8位だった©MSi Racing Team

大きくポジションを上げ、表彰台争いを演じた古里(#72)©Honda

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