2024年からロイヤルエンフィールド ハンター350で「鉄馬」に参戦する中山恵莉菜さん。2025年も5月3日(土)、4日(日)にHSR九州で開催された「鉄馬 with βTITANIUM 合戦の日」に参戦。モリワキGB350を駆る『NC350』クラスの絶対女王・金子美寿々さんに挑んだ!

気合いは十分。モリワキGB350を駆る絶対女王の金子美寿々さんに挑む!

「来年は10kg痩せてきます!」。これは2024年の「鉄馬」を終え、HSR九州での別れ際に中山恵莉菜さんが宣言した言葉だ。

そうして1年ぶりにピットで会うと、まるで別人のようだった。12kg体重を落としてきたという。ロイヤルエンフィールドのロゴの入った真新しいクシタニ製のレーシングスーツに身を包み、底抜けの明るさ、周囲を明るくする笑顔はそのままだが、表情は大人びていた。

中山さんは、昨年から「ROYAL ENFIELD with Moto Junkie」よりハンター350レーサーで「鉄馬」の『NC350』クラスに参戦を開始。昨年は大学4年生だったが、今春にクシタニに就職し、いまは社会人に。現在は「KUSHITANI PROSHOP 西宮」のスタッフとして働いている。

『NC350』クラスのNCはネオクラシックの意味で、ハンター350とホンダのGB350が参戦できるクラス。このクラスには絶対王者であるモリワキGB350で参戦する金子美寿々さんが君臨している。金子さんは4連覇を目指して、ニューレーシングスーツを纏い、気合いを入れて今年もHSR九州入りとなった。

ロイヤルエンフィールド ハンター350レーサー。前後ホイールはCBR250RR用のアクティブのゲイルスピード製を加工して装着。アルミ鍛造で約8kgの軽量化を実現。

低く構えたセパハンが特徴。サイドカバーとシートはKスピード製だ。

今年、中山さんのレーシングスーツはロイヤルエンフィールドの輸入元であるPCIのサポートで、ロイヤルエンフィールドのロゴ入りを新調。「ニューレーシングスーツは本当に嬉しかったです。同時にそういう立場なんだってプレッシャーもかかりました。頑張らないと!」と中山さん。そしてストレート&高速区間は、見事に伏せっぱなし。

写真中央がPCIの高永さん、「鉄馬」参戦の仕掛け人だ。ロイヤルエンフィールドのスポーツ性を「鉄馬」のフィールドで示していく。チームのピットは中山さんがいるとパッと明るくなり、誰もが娘のように彼女を可愛がる。終日チームのメンバーと過ごし、晩ご飯も一緒だったが中山さんは今年はお酒も食事もかなりセーブ……。昨年にはない本気モードに入っていたのは明らかだった。

中山さんは、昨年は2位だった。そして決勝直後に悔しさを全面に出した。「あー、もう。自分に怒ってます」。いま思えば、その時すでに次戦の「鉄馬」を見据えていたのだと思う。彼女はその後、岡山ロードレースシリーズで2度優勝し、国際ライダーへと昇格。着々とライダーとして成長を遂げ、そして宣言通り12kg体重を落としてHSR九州に戻ってきたのである。

「昨年は『鉄馬』や初めてのハンター350に馴染むので精一杯だったので、今年はまず自分自身もやれることをやらないと!と思って減量してきました。とにかく昨年は悔しかったんです。これまで男勝りでやってきたので、女性ライダーに負けたのは本当に悔しかった。一方で『鉄馬』はとても楽しかったんですよね。イベントレースもカスタムバイクでのレースも初めてだったけど、とにかく楽しかった!だからずっと楽しみだったんです!」と中山さん。

ハンター350レーサーを手がける熊本のバイクショップ「Moto Junkie」代表の中尾真樹さん。カスタムバイクでのレース経験がない中山さんに順序立てて、走りの方向性を示唆していく。

「Moto Junkie」メカニックの松見直樹さんは、『NC350』クラスにほぼノーマルのハンター350で挑戦。中山さんにコース攻略やセットアップのコツをアドバイス。

中尾さんの奥様も中山さんを可愛がる。中山さんと中尾家は、もはや家族ぐるみの付き合いになっている。

中山さんは中尾さんの娘さん2人とも仲良し。娘さん2人にはロイヤルエンフィールドブースで物販の手伝いもしていただいた。

中山さんのハンター350レーサーは、日本一カスタムされたハンター350⁉︎

中山さんが乗るハンター350は、ロイヤルエンフィールドの350シリーズの中で最もスポーティなモデルだ。コンパクトな車体が魅力で、前後17インチを採用しているためホンダ GB350よりもレーサー化のハードルは低い。

「鉄馬」に参戦するハンター350は、熊本のバイクショップ「Moto Junkie」にレーサー化を依頼している。セパハンにし、前後足まわりを大幅にモディファイ。2024年からの変更点は、吸気にFCRφ39mmキャブレターを装着し、レスポンス向上を狙った点だ。

「レーサー感が強まりました。レスポンスも上がり、コーナー立ち上がりでの加速が鋭くなりました。スロットル操作でバイクがきちんと反応してくれて、エンジンが走ってくれますね。ドドーって加速します!」と中山さん。練習走行時から、かなりの手応えを得ている様子だった。

マフラーはクォーター製のフルチタン。エキパイを徐々に太くしていく凝った作り。

ハンドルはセパハン化。ラップタイマーはアクティブが取り扱うQスターズ。メーターはスタック製。

ステップは中山さんの乗り方や体格に合わせた「Moto Junkie」中尾さんの手作り。

リヤサスペンションはアクティブが取り扱うハイパープロ製。中山さんに合わせてセットアップを進める。タイヤはピレリ製スーパーコルサ。

ノーマルフロントフォークにスクーデリアオクムラでカートリッジを組み込み、プリロードと伸び側減衰力の調整を可能に。

インジェクションからキャブレターに変更。キャブレターはFCRφ39mm。中山さんはキャブ車に乗るのは、このハンター350レーサーが初めて。

バッテリーはレーサー化の必需品であるSHORAIのリチウムイオン。バッテリー交換だけで2.5kgも軽量化でき、もっともコストパフォーマンスの高い軽量化アイテムとも言える。

ライバルであり、友だちのような、お姉さんのような関係

今シーズン、中山さんはレースへの闘志を燃やす一方で、『NC350』クラスの女王である金子さんと積極的にコミュニケーションをとっていた。2人はバイクを降りると、付き合いの長い友だちのように仲が良い。

「今年は、(金子)美寿々さんや参加者の方、いろいろな方と積極的に話をしようと思いました。アットホームな雰囲気が、『鉄馬』の良さでもあると思います。選手権だと、なかなかこうはいきませんよね。美寿々さんは優しくて、本当に感謝です。お姉さんだなって思ったし、その優しさは私も見習わないと!」と中山さん。

王者の余裕もあるのだと思うが、金子さんは本当に優しく、コースでは中山さんを引っ張ってくれていた。そして中山さんは金子さんと走ると、良いリズムを刻んでいるのが明白。タイムが安定しているのだ。

モリワキGB350で常勝する金子美寿々さんと記念撮影。

お互いのSNSを交換したり写真を撮ったり……。中山さんは選手権レースにはないイベントレースならではの楽しい時間も楽しかったと語る。

練習走行や予選で度々見られた2人のランデブー走行。

中山さんは金子さんから走りを盗む?ために何度も真後ろを走る。

決勝はトップには届かず。でも2024年からは大きく前進!

練習走行から手応えを得た中山さんは、予選もセットを変えて貪欲に挑んだ。セットを変えたバイクに合わせて走り方やラインを模索。「鉄馬」は土曜日が予選(2回走行)、日曜日が決勝(練習走行後、決勝レース)のスケジュール。走行時間が多いのも鉄馬の魅力だ。

中山さんの予選は金子さんに次ぐ2番手。金子さんは1分20秒949、中山さんは1分22秒559 。3番手は今年からハンター350で参戦する道岡さん(ロイヤルエンフィールド正規ディーラーである東京ウエストと東京セントラルを運営するマイテックの代表)で、1分23秒763と油断できない存在に。中山さんは、予選後に決勝の作戦をじっくりと練る。

予選も決勝も抜群のレース日和。過去最高台数のエントリーとなった「鉄馬」を晴天が後押しするように、パドックの雰囲気はとても良い。主催者と参加者、参加者同士、出展者と参加者、皆が強く繋がっていて、笑顔があふれる。2日間に渡って穏やかな時間が流れるのが、この「鉄馬」ならではとも言える。

『NC350』クラスは、予選/決勝ともに『ACS(エア・クールド・シングル)』クラスと『WCS(ウォーター・クールド・シングル)』クラスとの混走レース。『ACS』と『WCS』は『NC350』よりパワフルな車両が多く、走りのリズムがまったく異なる。

だからこそ中山さんはスタートダッシュを決め、混沌とした状況から一刻も早く抜け出す作戦を立てていた。しかし、決勝でその状況からいち早く抜け出したのは金子さんだった。中山さんは1コーナーで道岡さんに抜かれ3番手に……。2周目の3コーナーで2番手に浮上するものの、金子さんはすでに先へ。中山さんは決して諦めずに3周目以降は22秒台で周回するが、金子さんは3周目にレコードタイムとなる1分20秒880をマーク!女王は強かった。

そのままゴールとなり、中山さんは2番手。レース後、彼女は悔しがってはいるものの、しっかりと結果を受け入れている様子だった。

スタート直後の混沌とした状態をいかに早く抜け出すかが課題だったが……。

2周目の1コーナー。金子さんに離され、中山さんは道岡さんとバトルに。

2周目の3コーナーで、道岡さんの前へ。

金子さんは危なげない走りで4連覇を達成。強い!

体重を落とすだけでなく、ライディングスタイルも変えてきた中山さん。

次こそは、バトルを見せたい!

「2年目だから競りたいと思っていたけど……スタートを失敗してしまいました。去年みたいに終わりたくなかったのですが、美寿々さんは速かったです。次は全員ぶち抜かす!って言いたいのが本音ですが、まずは絡めるようになりたいですね。会場に集まってくださった方にバトルを見せたいです。とりあえず、あと5kg痩せますかね(笑)。一番簡単なタイムアップの手段ですから。

今年も九州の方たちとの出会いは楽しかったです。バイクをカスタムする楽しさ、友好関係を広げる楽しさが『鉄馬』にはあります。レースはハードルが高いと思う方も多いですが、『鉄馬』はレース初心者の方でも入りやすい環境が用意されているとも思います。いつか『NC350』の単独クラスでレースを開催できるようにさらに盛り上げていきたいですね」と中山さん。

中山さんは大学生から社会人になり、レースは選手権からイベントレースへと走る場所を変えた。彼女の表情は1年でグッと大人びていたが、笑顔はより柔らかくなっているようにも見えた。

レースは勝つことももちろん大切だ。でも楽しむレースもある。楽しんだ結果、勝てたらそれが1番だ。好きなバイクで長くレースを楽しむ。そんな「鉄馬」の魅力、ロイヤルエンフィールドの「ピュアモーターサイクリング」「ピュアスポーツ」の精神が中山さんの笑顔をより魅力的にしたのだと僕は思った。

楽しそうな『NC350』クラスの表彰台。シャンパンでは炭酸水ファイト。

中山さんはもちろん、3位の道岡さんも、次戦こそはと虎視眈々と頂上を狙う。

写真左からJトリップ代表の森さん。筆者、中山さん。人とのつながりが「鉄馬」の魅力。

ピレリの調さん。空気圧など様々なアドバイスをくださった。

中山さんの走りを見て、タイムを考察して様々なセットを施す中尾さん。

タイヤウォーマーはモトコルセが取り扱うイタリアのCapit製。暖まりが早く、均一。MotoGPやWSBKで大きなシェアを持つ。

Capitのビジョン機能付きは、40℃から100℃まで任意で温度設定が可能。設定温度に到達すると表示が点滅し、タイヤが温まったことを示す。

昨年に続き「ROYAL ENFIELD with Moto Junkie」からコンチネンタルGT650とハンター350の2台が参戦。ロイヤルエンフィールドの輸入元であるPCIの他、九州や広島、関東のディラーさんが集結。「鉄馬」×ロイヤルエンフィールドのタッグは着実に盛り上がりを見せている。

恒例のファンミーティングも開催。鉄馬のお昼休みに40台以上でパレード。参加者は年々増えている。

また、次戦の「鉄馬」『NC350』クラスでお会いしましょう!

鉄馬直後にハンター350のニューモデルが発表された。7月中旬から日本への導入を開始する。カラーは、左からロンドン・レッド、トウキョウ・ブラック、リオ・ホワイトの3色を用意。

女性ライダー2人の熱戦!【ロイヤルエンフィールド ハンター350が「鉄馬」でモリワキGB350に挑む!】ギャラリーへ (35枚)

この記事にいいねする


コメントを残す