
日本で一番盛り上がっているイベントレースとして定着しているテイスト・オブ・ツクバ 皐月ステージが5月10日~11日に行われた。10日(土)は雨模様となったものの、日曜日は快晴となり多くのお客さんが茨城県・筑波サーキットに訪れた。
空冷、水冷、年式、排気量などクラス分けされ、各カテゴリーで思い入れのあるバイクで熱く走るライダー、楽しむライダー、それぞれのスタンスで年に2度の晴れ舞台に臨んだ。
盛り上がりのピークを飾るHERCULESクラス
中でも最高峰のHERCULESクラスは今回も役者がそろっている。事前の練習走行から調子の良さが伝わってきたのがPOWER-BUILDER&PRESTO CORSAの渡辺一樹だった。「40周走ったユーズドタイヤでも57秒台に入ったから仕上がりはいいですね」とPOWER-BUILDERの針替代表が語れば、渡辺も「もうやることがないです」と足回りもバッチリ決まったとコメント。公式予選では、その渡辺が計測3周目に57秒646をマークしトップとなるが、走路外走行があり、ベストタイムが抹消されるが、セカンドタイムでも57秒659となりポールポジションを獲得する。これに肉薄したのが、OVER Racing Projectsの松本隆征だった。タイムは57秒691と僅か0.032差で2番手。松本のマシンは、新たにCBR1000RR-Rのエンジンを搭載。4月アタマに完成し、3回ほど練習に来て、この速さを発揮していた。3番手には、昨年秋のウイナーであるTeam YELLOW CORNの國川浩道が57秒824で続き、トップ3が57秒台。好調の渡辺に対し、松本と國川がどこまでついていけるかがカギとなることが予想された。
一方、ブランニューとなった鐵隼(テツブサ)を駆るTeam KAGAYAMAの加賀山就臣は、58秒600で4番手とトップ3には引き離されていた。昨年の神楽月ステージの決勝で國川と接触し転倒。鐵隼のダメージも大きく、新たにフレームから作り直すことにしていた。若手スタッフの庄司宏徳と橋畑修斗を中心に、チーフの斉藤雅彦が監修。野口裕一がエンジンを担当した。これは加賀山のショップであるRIDE WINの若手スタッフ育成を目的としており、フレーム形状を変え、スイングアームにはNinja H2SXのものを流用したことにより片持ちとなっていた。5月2日の走行会でシェイクダウンしたが、あいにくの雨となってしまい、レースウイークの木曜日が実質の初走行。金曜はドライだったが、土曜は雨となり走行できず、走行3日目で予選、決勝を迎えていた。
レースは波乱の幕開けとなる。2列目4番手グリッドの加賀山が好スタートを切りホールショットを奪う。一方、ポールポジションの渡辺は、やや出遅れ1コーナーに入ると、後方からきた中村竜也にリアをひっかけられてしまう。全日本JSB1000クラスに参戦している中村は、新庄雅浩の弟子でありTOTには今回が初参戦。予選7番手グリッドからスタートを決めたものの、行き場を失いコントロール不能となったところ渡辺を巻き込んでしまった。
「好事魔多しですね。1コーナーに入ったらスキール音が聞こえてきたので“これってかなり近いよな”と思った瞬間、何もできずに転倒していました」と渡辺。
渡辺と中村のアクシデントを尻目に、トップを走るのは加賀山だったが、その座は長くはなかった。4周目のバックストレートから最終コーナーの進入で松本にトップを奪われると、5周目の1コーナーでは1速でロックしてしまうトラブルが出てしまいオーバーラン。すぐに症状は改善するものの4番手にポジションを落としてしまう。
Team YELLOW CORN 國川が独走優勝! マシントラブルでOVER Racing Projects 松本は惜しくも2位へ
トップを走る松本の背後には、着実にポジションを上げてきていた國川が迫る。松本も5周目にファステストラップとなる57秒703をマークし逃げたいところだったが、制御系のトラブルが出てしまいペースを上げられない。これを見逃さず前に出た國川がトップに立つと、その差を広げて独走優勝。昨年の秋に続き2連勝を飾った。
「スタートはそこそこだったのですが、アクシデントがあり、前を走っている新庄選手と加賀山選手を落ち着いて抜いて、松本選手を追いました。松本選手に追いつくと、トラブルが出ているのが分かったのでトップに立った後は冷静に走りました。運もありましたが、トラブルなく安定して速いマシンを用意してくださったチームのおかげで勝つことができました」と國川。
悔しい2位となった松本は「予選では自己ベストを出せましたし、決勝でもトップに立ってペースを上げたところまでは、よかったのですが…。トラクションコントロールのトラブルでガス欠症状みたいに前に進まない状態になってしまいました。次回リベンジしたいですが、渡辺選手も同じことを思っているはずですし、間違いなくハイレベルなレースになるでしょうね」とコメントした。
3位争いはH2Rを駆るGarage414&WoodStockの光元康次郎と鐵隼・加賀山の一騎打ちとなっていた。光元も本調子ではなかったが、加速に苦戦する加賀山に勝負所を作らせず、何とか抑え切っていた。
「1月にミニバイクコースで転倒し鎖骨を折ってしまったのですが、手術できない折れ方だったので、2カ月はバイクにも乗れず、トレーニングもできない状態でした。4月に岡山でようやくテストして1回だけ筑波まで練習に来られたのですが厳しかったですね。残り5周は必死に走りました」と光元。
日曜日に白ベースから黒ベースのニューカラーをお披露目した鐵隼で苦闘し4位となった加賀山は「安全に走れる車両になっていたけれど、まだまだ速く走るためにはセットアップする時間が必要な状態でした。ドゥカティ同様、鐵隼も多くの皆様に応援してもらっているので、秋のレースはぜひ勝てるように準備したいと思っています」とリベンジを誓っている。エンジン自体は220馬力と過去最高のものになっているが、それを生かせる足回りに仕上げたいところだ。
マシンが今ひとつの状態ながら5位となったFirst☆Star AUTOBOY ACTIVEの新庄、6位にグリーンクラブ熊塚の植垣創平とZRX勢が続いた。7位のOVER Racing Projectsの梶山知輝を空冷CB1100Rで追い回したTEAM UKAWAの宇川徹が総合8位、SUPER MONSTER EVOLUTIONトップでゴールしている。
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