
MotoGP第6戦フランスGPは、ル・マン-ブガッティ・サーキットで開催される。例年多くのファンを集めるこのル・マンでのフランスGPだが、今年は史上最多となる、週末通算31万人の観衆がやって来た。日曜日だけでも12万人が訪れたということだ。
この観衆に喜びの歓声を挙げさせたのは、MotoGPクラスの決勝レースで優勝したフランス人ライダー、ヨハン・ザルコ(カストロール・ホンダLCR)だった。
フランスGPでフランス人が優勝するのは、1954年以来のこと。ホンダのライダーとしても2023年アメリカズGP以来の優勝だった。
ザルコの優勝を演出したのは、決勝レースが始まる前に降り出した雨だ。この雨は、複雑なレース展開を生んだのだが……。そんなレースを、ルーキーの小椋藍(トラックハウス・MotoGP・チーム)は、どのように戦ったのだろうか。
Moto2、Moto3クラスの日本人ライダーのレースとあわせてお伝えする。
小椋藍、MotoGPクラスで初のウエットレースを経験
フランスGPの週末は、金曜日と土曜日は雨のセッションはなかったのだが、週末の天気予報は不穏な天気を知らせていた。雨予報は日曜日にずれこみ、その通り、朝には雨が降った。雨はいったん上がったものの、MotoGPクラスの決勝レース前、ぽつぽつと雨が降り出した。ライダーたちはすでにグリッドについており、スタート直前に公式タイヤサプライヤーであるミシュランからのインフォメーションによると、全ライダーがスリックタイヤを装着していた。
複雑な状況となったのは、このあとだ。スタート直前のウォームアップ・ラップで全ライダー(おそらく全ライダーだったと思われる)がレインタイヤを履いたマシンに乗り換えるためピットインをして、ピットレーン出口が混雑するため、赤旗中断となった。
ここからさらにタイヤ選択、レース中のマシン乗り換えと展開していくのだが、結局のところ、コンディションはウエットで、レインタイヤで走るものになった。小椋は大方のライダーに倣ってスリックタイヤでスタートし、7周目にピットインをしてレインタイヤを履いたマシンに乗り換えた。以降はレインタイヤで周回を重ね、10位でゴールを果たしている。
なお、スタートからレインタイヤだったライダーもいた。その一人がザルコである。ザルコが優勝した要因は、スタートからゴールまでレインタイヤで走り切った、そのタイヤ選択と判断にあった。
小椋に話を戻そう。小椋はタイヤの選択などは、「8割のライダーがどうするか」を参考にジャッジした。フラッグ・トゥ・フラッグもウエットレースも初めてだったからだ。
ウエットコンディションでの走行時間、経験を積めたことが、この日の収穫だったと小椋は語る。
「トップ10の結果やポイント獲得は、おまけみたいなもの。今日は、レインタイヤで長く走れたのがいちばん大きかったですね。今までちゃんとしたウエットコンディションでのセッションはなかったですから」
「アメリカズGPでもウエットコンディションでのセッションはあったんですけど、よくわからない感じだったんです。(サーキット・オブ・ジ・アメリカズは)コース自体が難しくて、ウエットでの走行となると余裕がなかったので。今日は朝もレースも、(ウエットで走れて)よかったと思います」
今季、小椋はMotoGPクラスでの経験を重ねることに重点を置いており、こうした混乱のレースであっても、冷静にその仕事を果たしたわけだ。
Moto3古里太陽、6位に憮然。「納得いかない結果」
Moto2、Moto3クラスの日本人ライダーは、全体的に奮わない、あるいは苦戦して週末を締めくくった。
Moto3クラスの古里太陽(ホンダ・チームアジア)は11番手からスタートして、6位でゴールしている。6位という順位は悪くはないが、今季の古里に期待されているポジションはさらに上位だ。古里自身も、上位争いに加わることができると思っていた。それだけに、納得のいかない結果だった。
「接触も多かったし、自分でも1回ミスをしました。そういうミスが響いての結果になってしまいましたね」と、ぽつぽつと語っていた。
レース後、こちらも厳しい表情を崩さず口数が少なかった、山中琉聖(フリンサ-MTヘルメット-MSI)。山中は12番手からスタートして、2周目6コーナーで他車と接触、転倒リタイアに終わったのだ。
「(6コーナーで)少しはらんだとき、内側に入ってきたライダーと接触して、そのまま転倒しました。けがはありません。僕がはらんだのも悪かったけど、はらんだところに(相手が)ちょっと強引に入ってきたのかな、とは思いますけど」
今季、古里、山中ともに速さはある。継続的に結果に結びつけたいところだ。
Moto2クラスの佐々木歩夢(RW-イドロフォーリャ・レーシングGP)は20位、國井勇輝(イデミツ・ホンダチームアジア)は22位だった。佐々木、國井ともに、ル・マンは苦戦のうちに終わった。
佐々木はスタートからフロントのフィーリングに苦しんだという。
「フロントのフィーリングが悪く、序盤から2回ほど転びそうになったくらいです。ただ、前戦、前々戦と(決勝レースで)転倒しているので、今回は完走しなければ、と思って走って、結果がこの順位でした。悔しいですが、完走したことで得られたものもありました」
Moto2ルーキーの國井は、Moto3とは違うMoto2マシンでのル・マン攻略に悩まされた。土曜日には少し前進したが、日曜日の決勝レースでは土曜日のフィーリングを取り戻したのが中盤からだった。
「土曜日のような感覚で走りたかったんですが、コンディションの違いもあって、バイクに思うようなフィーリングがありませんでした。それに、レース序盤にかなりミスをしてしまったせいで、前のグループとも離れてしまった。自分がしたかったレースにはならなかったです。ただ、中盤以降は土曜日のような感覚が得られたので、そこは少しよかったところですね」
MotoGP第7戦イギリスGPは、イギリスのシルバーストン・サーキットで、5月23日から25日にかけて行われる。
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