
写真・文/中村浩史
いよいよ開幕する全日本ロードレース。もてぎ2&4レースはJSBクラスのみの開催ですが、ゼッケン1不在のシーズンで、誰が開幕ダッシュを決めるのかが注目されます。ホンダvsヤマハvsスズキのワークスチームの激突、そこにワークススペックのドゥカティとBMWがいかに絡むのでしょうか。
中須賀&水野の2強に誰が戦いを挑むのか
いよいよ今週末、4月19~20日には、全日本ロードレースが開幕します。開幕戦は「もてぎ2&4」として、四輪のスーパーフォーミュラとの併催となり、JSB1000クラスのみの開催となりますが、2024年の最終戦・MFJグランプリ以来、実に173日ぶりの全日本ロードレース。
2025年は、昨年のチャンピオン・岡本裕生がワールドスーパースポーツ600に転出したことにより、ゼッケン1不在のシーズン。その意味で、昨年の「3強」の一角に誰が名乗りを上げるのか、に注目のシーズンとなりそうです。
注目は、やはりV12チャンピオン「絶対王者」こと中須賀克行(ヤマハファクトリーレーシングチーム)。昨シーズンは、チームメイトで後輩ライダーである岡本にチャンピオンを獲られてしまったとはいえ、いまだそのレースの速さ、勝負強さ、レース運びの上手さは一級品。中須賀の強さは、瞬間的なものよりも長いスパンで勝負に出ることで、予選よりも決勝、決勝よりもシリーズを優先することです。予選でポールポジションはもちろん獲りたいけれど、それはレースに優勝するため、レースに優勝したいけれど、それはシリーズチャンピオンになるため、というライダー哲学が、中須賀を絶対王者に君臨させるのでしょう。
「打倒・中須賀」の最右翼は、24年にドゥカティ・パニガーレV4R「ワークススペック」を全日本ロードレースに投入し、シーズン3勝を挙げた水野涼(ドゥカティ・チームカガヤマ)でしょう。水野はパニガーレV4Rのデビューレースでいきなり2位表彰台を獲得すると、表彰台を外さない戦いを続け、ついに夏のもてぎ大会で初優勝! これは、もてぎ大会前の鈴鹿8耐で走り込んだおかげだ、と水野が言っていた通り、春のもてぎ大会に続く2回目のもてぎでの優勝でした。
さらに最終戦の2レースでもダブルウィンを飾り、実はこれも鈴鹿8耐を除けば、春の鈴鹿大会に続く2回目の鈴鹿での勝利。つまり水野は、初めてのサーキット以外では全勝しているわけです。その意味では、25年のシリーズではじめてのサーキットがなく、これも打倒・中須賀の最右翼とする大きな理由となるのです。
開幕戦のもてぎ大会で注目なのは、ホンダに乗り換えた初年度にもかかわらず、昨年ランキング4位を獲得した野左根航汰(Astemo PRO ホンダ SIレーシング)。千葉県出身の野左根は、ここもてぎをホームコースとしており、昨年のもてぎ大会3レースでも、表彰台まであと一歩の走りを披露。シーズンが進むにつれてホンダCBRへの理解も深まったのか、最終戦のレース2ではついに2位表彰台に登壇しました。昨年からジャンプアップしそうなライダーのひとりといえるでしょう。
さらに開幕戦で注目したいのは、トップライダーで唯一ダンロップタイヤユーザーである長島哲太(ダンロップレーシングチームwith YAHAGI)。長島は昨年のランキングこそ10位と低迷しましたが、世界グランプリMoto2クラス優勝経験者であり、2022~2023年の鈴鹿8耐2連覇の立役者。ダンロップタイヤの特性から、特に低気温や低路面温度時の速さには定評があり、開幕戦の気象条件によっては、一気に優勝を狙えるライダーです。
そして、スペイン選手権スーパーバイクから全日本ロードレースに復帰する浦本修充(オートレース宇部レーシングチーム)も注目のひとり。浦本はスペインを戦場にスズキ→ホンダで7シーズンを戦っており、日本復帰にあたってはBMWをチョイス。このBMWが、2024年ワールドスーパーバイクのチャンピオンマシンM1000RRと同等のスペックのエンジンを供給されたことで、そのパフォーマンスはすでに一級品! まずは7年ぶりの日本のサーキット、鈴鹿8耐で履いていたブリヂストンタイヤとのマッチングが合ってきたところで本領を発揮するのではないか、と見られています。
さらに開幕戦には、全日本ロードレースのレギュラーではないものの、楽しみなチームが参戦します。ひとつはホンダHRCテストチームの高橋巧で、これは25年の鈴鹿8耐をにらんでの参戦で、残念ながら昨年ランキング5位を獲得した高橋巧は、鈴鹿8耐まではこのもてぎ大会のみの参戦となりそうです。
さらに昨年の鈴鹿8耐に参戦して話題を呼んだ、スズキCN(カーボンニュートラル)チャレンジもスポット参戦します。マシンは、24年の鈴鹿8耐仕様からアップデートされた25年モデルで、チーム運営は事実上のスズキワークスチーム、ライダーはスズキMotoGPマシンのテストライダーを務めていた津田拓也。津田が再びスズキブルーに身を包んでの参戦です。
開幕戦は5台のワークスマシンが激突!
これで開幕戦は、引き続き唯一のワークスチーム体制での全日本ロードレース参戦を続けるヤマハYZF-R1、ホンダの鈴鹿8耐テストマシンCBR1000RR-R、スズキはCNチャレンジGSX-R1000R、そしてドゥカティ・パニガーレV4RとBMW・M1000RRのワークススペック車の、計5大ワークスマシンが参戦します。
さすがに、チーム運営とレース実績に一日の長があるヤマハYZF-R1+中須賀が一歩抜きん出ていますが、2年目を迎えて爆発的な戦闘力を発揮しそうなドゥカティ・パニガーレV4R+水野涼、これも2年目を迎えるホンダCBR1000RR-R+野左根航汰と、ホンダワークスの意地をかけて出陣する高橋巧が激突、そこにスズキCNチャレンジとBMW-M1000RRがどう絡んでくるか、が開幕戦の見どころとなりそうです。
JSB1000クラスのみの開催ということで、スポット参戦してくるST1000勢の走りにも注目したいですね。
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