2025年のJNCCは、徳島県の小松海岸、今切海岸特設会場で幕を開けた。そのため例年開幕戦の舞台として数々のドラマを生んできたサザンハリケーン大阪は、2025年3月22日(土)、23日(日)、第2戦として大阪府プラザ阪下にて開催。3月後半ということもあり気候は温暖。少し汗ばむくらいの陽気の中、白熱のレースが展開された。

午前「FUN-GP」は最終コーナーまで予想がつかない大接戦へ

勝利から遠ざかっていただけに、2年以上ぶりの優勝に歓喜した馬場大貴選手。父親になったばかりの馬場選手は、ライブ配信で娘に勝利を報告。また自身のモトクロスチームに所属し日頃指導している若手ライダー達へ、勝利する姿を見せることができて喜んだ。

河内長野駅からほど近いプラザ阪下を全面使用した広大なコース。全体的にハイスピードだが、名物の大型丸太やタイヤセクションも健在だった。

ファッションモデルとしても人気の鳳ゆまさんは、JNCCでも屈指の人気レースクイーン。レース翌週は東京モーターサイクルショーコンパニオンとしても活動するなど多忙だが、ライダーを全力で応援!

午前中はFUN-GPが開催。約100分という短いレース時間や、難所を極力排除したレイアウトで、JNCCの中でも最大人気のレースだ。しかし最高峰FUN-Aクラスのレベルは非常に高く、毎回スリリングなレース展開が見られる。本戦は最終ラップの最終コーナーまで勝負の行方がわからない大接戦となった。

レースを終始リードしたのは若手有望株の筆頭である橋本大喜選手。エンデューロIAライダーの大神智樹選手が育てた秘蔵っ子とも言えるライダーで、幼少時から注目されていたクロスカントリーライダーだ。その橋本選手が最終ラップまでトップを快走していたのだが、それに待ったをかけるライダーがいた。モトクロスIAライダーにして、関西有力ショップ「モータサイクルショップニュートン」の従業員でもある岩﨑優選手。彼はHonda CRF250Lで昨年のサザンハリケーンで大活躍したライダー。その後JEC(全日本エンデューロ選手権)最終戦大阪大会のIBクラスを圧勝するなど、トレールバイクの可能性を示し続けているライダーだ。その岩﨑選手が驚異的な追い上げをみせ、なんと最終ラップに8分5秒976というタイムを出した。逃げる橋本選手の最終ラップタイムの8分17秒304も十分に凄い速さなのだが、ここは岩﨑選手に軍配が上がった。なんとフィニッシュ直前、最終コーナーで橋本選手を抜き去りチェッカー。その差、わずかに0.313秒! 
優勝した岩﨑選手は表彰台で、「安くて買いやすい国産トレールバイクだってレースに勝てるんです。みなさんもっと国産車も買って、日本の経済を回していきましょう!」と高らかにPRしていた。負けた橋本選手もサバサバとした表情で登壇。負けた悔しさよりも激しいレースをできた楽しみの方が優っていたような表情。きっと今回の反省を踏まえて、強いライダーへと成長するだろうと思えるレースだった。

昨年同様モトクロスコースからスタートしたFUN-GP。快晴、ドライコンディションでレースが幕開けした。写真はFUN-Bクラス。

最終ラップ、最終コーナーでわずか0.313秒リードした岩﨑選手が橋本選手を抜いてチェッカー。

モトクロスIAライダーの岩﨑選手はトレールバイクHonda CRF250LでFUN-GP総合優勝を飾った。国産トレールバイクを自身の走りでPR。

若手ライダーとして注目される橋本選手は幻の勝利に終わってしまったが、レース後は明るく次戦への活躍を宣言!

FUN-Aクラス4位に入った平田自動車代表の平田武博選手は、自身のチーム員の声援の中激走した。

初々しい笑顔で表彰台に登壇したFUN-WDクラス優勝の糟谷みなみ選手。

午後「COMP-GP」は馬場選手が逃げ切り! 2022年以来の勝利へ

午後は2時間30分~3時間未満で争われるCOMP-GPが開催。近年のJNCCはハイスピード化が進み、モトクロス出身ライダーにとって有利な状況にあることは間違いない。しかし一筋縄で行かないクロスカントリーの奥深さは、全日本モトクロスIAチャンピオンの言葉やこれまでの戦績も証明している。象徴的なのは成田亮選手だ。ご存知全日本モトクロスでは前人未到のV11を達成したレジェンドライダーだが、JNCCで圧勝しているかといえばそうではない。成田選手はこの第2戦開催前日にこんな言葉を話してくれた。
「クロスカントリーがこんなに難しくて奥が深いとは、始める前は全く思っていませんでした。本当に色々な技術が必要で、まだまだ自分には足りていないものが多いです。」モトクロス現役時代は誰よりも勝利に貪欲だった成田選手は、当然ながら今は仕事も抱えている身であり怪我ができない状況だが、JNCCでの勝利にも飢えているはずだ。一度はレースを辞めてJNCCスタッフとして従事していたものの、どうしてもまたレースがしたくなり昨年後半に仕事を変えてまで復活したライダーだ。しかしシーズンオフの練習での負傷の影響が大きく開幕戦は満足できない走りとなった。ここ第2戦は最終的にリザルトを残せなかったものの、前半はトップグループで快走し、時折信じがたい鋭いコーナリングを見せていただけに、完全復調が待たれるところだ。

COMP-GPはMTBダウンヒルトッププロライダーのキャリアを持つ内嶋亮選手がホールショット。今やモトクロスIAトップライダーに引けを取らないスピードを身につけている。

全日本モトクロスV11チャンピオンの成田亮選手は、昨年後半からレース復帰。シーズンオフの負傷から回復しつつある。

総合4位を獲得した2010年全日本モトクロスIA2チャンピオンの小島太久摩選手はYZ開発の仕事も担う。レースで得た情報をフィードバックすることも彼の任務である。

また2010年に全日本モトクロスIA2チャンピオンに輝いた小島太久摩選手にとってもJNCCは想像以上に大変な舞台だったのかもしれない。現役引退後10年間はYZの開発に専念し、レースの世界から遠ざかっていた小島選手。しかし徐々に走り方を覚え、体も動くようになったという、参戦3年の今季注目のライダーだ。ここ第2戦は総合4位を獲得した。

史上最多7度のJNCCチャンピオン獲得記録を持つ渡辺学選手は、得意とする追い上げのレースで2位を獲得。巨大丸太セクションなどでも抜群のうまさ、安定感を誇る。

総合3位、AA1クラス優勝を果たしたのは昨年度覇者の矢野和都選手。次戦テージャスランチで今季初優勝なるか。

AA1クラス優勝の矢野選手とCOMP-Aクラス優勝の迫田勇馬選手は会社の同僚(カワサキ車開発)でもあり、友人でもある。一緒に表彰台に立てた喜びを分かち合った。

開幕戦で惜しくも優勝を逃した熱田孝高選手は総合5位を獲得。今季も全日本モトクロスと重なるラウンドは欠場となるが、常に優勝を狙う一人だ。

さて、このレース、中盤をリードしたのは昨年度、馬場大貴選手と激しいバトルの末に勝利した矢野和都選手だった。しかし終盤は過去7度のチャンピオンを獲得している渡辺学選手と馬場選手が激しく攻防を繰り広げる展開となった。馬場選手にとってかつて初優勝を遂げたプラザ阪下では、過去の渡辺選手との激しいバトルも記憶に新しいところ。馬場選手がタイヤ&丸太の人工セクションで失敗し、ベテラン渡辺選手が馬場選手を肉薄。終盤はスリル感溢れる展開となったが、最後は馬場選手がしっかりと逃げ切り、2022年八犬伝以来の勝利を飾った。

娘が生まれ父親となった馬場選手は、近年は自身のチームで若いモトクロスライダーを指導し、手本となるべき存在でもある。それだけに勝利を渇望していたのだった。
ゴール直後はライブ動画を撮影しているカメラに向かって「パパ勝ったよ!」。表彰台では「若いライダー達に漢を見せたかった」と、喜びのコメントを残した。

レース終了後はフィニッシャーズロードでハイタッチ。もちろんレースクイーンも先頭で戦い終えたライダーを待ち構えてくれるのだ。

次戦は4月20日ビックディア(広島県テージャスランチ)。昨年は大雨による激しいマディコンディションとなったが、今年はどんなレースになるのだろうか。

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