3月28日、スズキ株式会社は東京ビッグサイトで開催されている『第52回 東京モーターサイクルショー』でプレスカンファレンスを開き、Team SUZUKI CN Challenge(チームスズキCNチャレンジ)の2年目の活動について発表した。今年は鈴鹿8時間耐久ロードレースの出場に留まらず、スポットではあるが全日本ロードレース選手権にも参戦するようだ。

■MotoGP&EWCファクトリー撤退とカーボンニュートラルでのレース復帰まで

 スズキは2015年にMotoGPに復帰以降、チーム・スズキ・エクスターとして成長を続けて2020年にはジョアン・ミルがチャンピオンに輝く。2021年からはヨシムラSERT MotulとしてFIM世界耐久選手権(EWC)にもファクトリー体制で参戦してその年にチャンピオンを獲得した。MotoGPでもEWCでも優れた成績を収めて、破竹の快進撃を展開していたのだが、2022年シーズンを最後にレースから撤退。スズキ社内でもレース部門が解体されてしまった。

 MotoGPからは姿を消し、EWCのヨシムラSERT Motulはファクトリー体制ではなく、全日本ロードのチームなどと同様にスズキがサポートする形で参戦していたが、ちょうど1年前の2024年の第51回 東京モーターサイクルショーのスズキブースで『レース復帰』が明かされた。

2025チームスズキCNチャレンジGSX-R1000R

 撤退の際は「サステナビリティの実現に向け、経営資源の再配分に取り組まねばならない中で、この度のMotoGPとEWCの参戦終了という決断をいたしました。二輪レース活動は常に技術革新・人材育成の場としてチャレンジをしてきた場所であります。この度の決断は、レース活動を通じて培ってきた技術力・人材を、サステナブルな社会の実現へ振り向け、新たな二輪事業の創生に挑戦していくことを意味しております」とコメントを残していたが、その通りサステナブルアイテムを使用してのレース復帰だった。

 内容は鈴鹿8耐にチームスズキCNチャレンジとしてエントリーしてスズキGSX-R1000Rを走らせるというもの。チーム名にある『CN』はカーボンニュートラルの略だ。実験的クラスとして設定される『エクスペリメンタルクラス』に参戦するという新しい試みで、40%バイオ由来のFIM公認サステナブル燃料、プロジェクトに賛同したパートナー企業のタイヤ、オイル、カウル、ブレーキなどサステナブルな新技術の開発を兼ねた挑戦となった。

 レース部門が解体されていることから、有志なども含めてスズキ社内で選抜したメンバーを中心に構成。ライダーはヨシムラからエティエンヌ・マッソンを借りて、濱原颯道、生形秀之というスズキにゆかりのあるライダーを起用した。パートナー企業とともに課題を克服しながら『レース完走』を目指してデータを収集するとしていたが、優勝チームから4周差の8位でゴールして初プロジェクトを成功させたのだった。

■プロジェクト始動と2年目にかけるスズキライダーの思い

 チームスズキCNチャレンジのプロジェクトリーダー兼チームディレクターを務める佐原伸一氏は、「人・お金などのリソースをサステナビリティの開発に向ける流れ」から撤退することになったため、「ならば、カーボンニュートラルな燃料で、鈴鹿8耐に参戦しよう」と周囲を巻き込んでプロジェクトを立ち上げた。

 鈴鹿8耐では目標の完走を達成して、レース後には「これでプロジェクトが終わったわけではなくデータをとってサステナブルアイテムの検証をして次の目標を作るという作業が残っています。今後もこの活躍続けていきたいと思っていますので応援をよろしくお願いします」とスズキの鈴鹿8耐スペシャルウェブサイトでコメントを残していた。また、筆者のインタビューでも「唯一決まっているのは『続ける』ということだけです」とも語っていた。

2025チームスズキCNチャレンジGSX-R1000Rのウイングと茶色のカウル

 そして今回、第52回 東京モーターサイクルショーのスズキブースにて、チームスズキCNチャレンジの2年目の活動の概要がお披露目された。今年もゼッケン『0』で鈴鹿8耐に参戦するが、サステナブルアイテムを拡大。40%のサステナブル燃料から100%のサステナブル燃料へと変更することが大きな違いだ。カウルは漂白処理をなくして、カーボンニュートラルへの取り組みがわかるように茶色のままのものを使用する。また、チームウエアまでも100%再生生地で作られたものだ。

 ライダーは3名体制であるが、1名は津田拓也が務めることのみ決まっている。彼は昨年の最終戦の際に全日本ロードのフル参戦から勇退することを発表。MotoGP開発ライダーや全日本ロードのトップライダーだった彼がレースする姿が見られないかと思われたが、引退ではなくさらにスズキ契約は2025年も残っている状態。このプロジェクトのテストライダーとしての役割を担い、本戦にも出場する。

 津田はにとってはMotoGPの撤退から「スズキのみんなでやりたいと思っていた時にお話をいただきました。スズキがレース活動に復帰したので自分が手助けできるようにして、応援してもらえるチームになれるように自分が引っ張っていければいいなと思っています。今のモチベーションはスズキのみんなとレースができることです」と語った。津田は昨年もテストとしてチームスズキCNチャレンジのマシンを走らせた経験を持っている。

チームスズキCNチャレンジのライダーである津田拓也もレーシングスーツ姿で登場

■鈴鹿8耐に留まらず全日本ロードにも参戦へ

 また、発表会後に筆者がプロジェクトリーダーの佐原氏にインタビューを決行。ウイングの形状が昨年と異なるが、「MotoGPの開発と同じ工程で開発して、ベースの形ができていますがもう少し進化するかもしれません」と佐原氏はいうが、2022年MotoGP最終戦バレンシアGPでアレックス・リンスが走らせたマシンのウイングと似た形状だとも説明した。

 さらに驚きだったのは「あくまでも鈴鹿8耐がメインのプロジェクトですが、テストを兼ねて全日本ロードの事前テストとスポットで参戦するつもりで準備をしています」と語っており、全日本ロード開幕事前テストとなるモビリティリゾートもてぎの『PRE-TEST“Round ZERO”』、第1戦もてぎと第2戦SUGOのJSB1000クラスに出場することがほぼ確定している状態だ。

チームスズキCNチャレンジのプロジェクトリーダー兼チームディレクターを務める佐原伸一氏

 レギュレーションに合わせるためにウイングの使用はできず、カウル等も市販車と同等のパッケージとなるだろうが、全日本ロードでは全4クラスのうち最高峰のJSB1000のみ2023年から100%のカーボンニュートラル燃料を使用しているため、チームスズキCNチャレンジの取り組みにも合致しており、良いテストとなることだろう。また、津田がブルーのスズキGSX-R1000Rを走らせることも注目ポイントとなる。

 全日本ロード開幕戦もてぎには、HRCもスポット参戦することが囁かれている。YAMAHA FACTORY RACING TEAM、DUCATI Team KAGAYAMAに続き、オートレース宇部Racing Teamもファクトリースペックエンジンを搭載したBMWで戦う2025年シーズン。1戦限りかもしれないが、そこにHRCやチームスズキCNチャレンジが入ることでトップ争いがより一層面白くなること間違いなしだ。

 全日本ロード第1戦もてぎのエントリーリストは近日公開される予定だ。

2025チームスズキCNチャレンジGSX-R1000R

●参戦車両 2025チームスズキCNチャレンジGSX-R1000R

新開発エンジン、新開発空力部品を採用
使用予定のサステナブルアイテム
燃料:トタルエナジーズ Excellium Racing 100(100%サステナブル燃料)
タイヤ:ブリヂストン 再生資源・再生可能資源比率を向上したタイヤ
オイル:MOTUL バイオ由来ベースオイル
カウル:JHI 再生カーボン材(プリプレグ材)
フェンダー他:トラス Bcomp(天然亜麻繊維複合材料 非漂白品 使用範囲拡大)
前ブレーキ:サンスター技研 熱処理廃止鉄製ディスク、
サンスター技研/東海カーボン ローダストパッド
バッテリー:エリーパワー 車載 LFP バッテリー、ピット電源供給用蓄電池
マフラー:ヨシムラジャパン 環境配慮型チタン TranTixxii-Eco 製サイレンサー
ユニフォーム:アールエスタイチ 100%再生生地のチームポロシャツ

●チーム体制

・チーム名:チームスズキCNチャレンジ
・テストライダー:津田拓也
・プロジェクトリーダー兼チームディレクター:佐原伸一
・テクニカルマネージャー:田村耕二
・クルーチーフ:今野岳

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