
2025年2月22日(土)・23日(日)、徳島県小松海岸・今切海岸特設会場にて、JNCC開幕戦「ノースショアTOMAHAWK」が開催された。TOMAHAWKとはアメリカの先住民が使用していた斧のことで、今回のコースレイアウトがまさに斧のような形をしていることに因んだネーミングとのこと。JNCC星野代表はこれまでにも各ラウンドに、一度聞いたら忘れられない印象的な名称をつけているが、このトマホークも強烈なインパクトを残したはずだ。
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徳島のビーチサンドを爽快に駆け抜けた431台
普段走れないフィールドだけに、いつも以上にライダーの楽しげな姿が印象的だった。こんな素敵な海岸を走れるのだから興奮するのは当然!
徳島県徳島市の今切海岸、小松海岸を舞台に用意された特設コース。北部のエリアは比較的に路面が締まっている。全体的に斧の形をしているため「トマホーク」と命名された。
続々とトップライダーが参戦、後藤田県知事も応援
年末に本戦開催の公式アナウンスが発表されて以来話題は尽きず、その余波はモトクロス界にも及んだ。2022年度全日本モトクロスIA1チャンピオンを獲得した富田俊樹選手をはじめ、現役IA、カワサキワークスライダーの能塚智寛選手、トッププライベーターの安原志選手、全日本モトクロスにマシン開発を兼ねてスポット参戦中の勝谷武史選手が参戦を表明。さらに現役は退いたが長年トップライダーとして活躍してきた星野裕選手、昨年までIA2クラスを走っていた阿久根芳仁選手も参戦。
一方で国際交流も盛んに行うJNCCだけあって、海外からのゲストも来日した。韓国KNCCのトップライダー、ナ・ジョンウン選手、昨年度JNCCで大活躍したオーストラリア人GNCCライダーのステファン・グランキスト選手だ。もちろん彼らを迎え撃つJNCCトップライダーも気合いを入れて臨んできた。
午前の部「FUN-GP」は270台!
午前中に行われたFUN-GP(約100分)は270台が完走を果たした。これだけの大人数が走るビーチレースは、なかなか日本では見られない。JNCCではWEXの一戦として新潟県柏崎の海岸でもレースを開催しているが、今回の規模は桁違いに大きい。この激戦を制したのは田渕武選手だった。往年のモトクロスファンにはお馴染みの、元ヤマハワークスライダーである田渕選手は、全日本モトクロスIAチャンピオンであり、JNCCでも数々のタイトルを獲得してきた小池田猛選手の師匠でもある。
今でもMCFAJクラブマンモトクロスなどに積極的に参戦しているので、ほぼ「現役」である。そんな田渕選手は圧倒的な速さと上手さを見せて圧勝した。思う存分楽しんだが、その一方で「他の選手の邪魔にならないように、気をつけて走りました」と、ベテランならではのアマチュアライダーやビギナーに対する気遣いも忘れていなかったのは、さすが。
こんな気持ちのいいビーチを全開走行できるなんて! 碧い海、飛び散るサンドルースト。オフロードライディングの究極の魅力が詰まっている。
総合優勝モトクロスレジェンドライダー田渕武選手
モトクロスレジェンドライダー田渕武選手が圧倒的な速さを見せて、FUN-GP総合優勝を飾った。
モトクロス現役IAライダーを夫にもち、自身もレディースライダーとして活動していた根岸舞美選手は、クラス優勝だけでなく総合10位という好成績を残し、速さを証明。
この日はめちゃくちゃ寒かったが、終日元気にライダーを盛り上げてくれたのは、JNCC大人気レースクイーンの鳳ユマさん。
午後の部「COMP-GP」
午後は約2時間30分〜3時間の長さで行われるCOMP-GPが行われた。徳島県知事の後藤田正純氏が振る日章旗でレースがスタート。COMP-GPのコースレイアウトはFUN-GPにはない人工セクションが設けられている。本戦はまさにここがキモとなった。巨大タイヤや巨木丸太セクションは、もはやJNCCではお馴染みとも言えるが、これをサンドの砂浜に設けるのは初めて。
バイクのフロントを上げる地点が掘れてくれば難易度が格段に増すことは、レース前からも予想されていたが、トップライダーは果敢に挑んだ。モトクロスの世界では国内トップレベルを争うライダーが思い切り前転したり、バイクを放り投げてしまったりする光景は、あまりにもレア。距離を長めに取られたエスケープラインを選択するIAライダーも続出する事態となった。
注目のCOMP-GP AAライダーのスタートは、韓国KNCCトップライダーのナ・ジョンウン選手のホールショットで幕を開けた。
レースを支配したのはグランキスト選手、レベルの高いGNCCを主戦場とするライダーの底力を見せつけた。しかし中盤、そんなグランキスト選手を抜き去りトップに躍り出たのは熱田孝高選手。全日本モトクロス最高峰クラスで3度のタイトルを獲得し、モトクロス世界選手権にフル参戦したベテラン。欧州ではディープサンド走行スキルが必至で、必死に練習した日々を送っている。豊富な経験を活かし激走したのだが、残念なことに、目の前で転倒した周回遅れのライダーと運悪くぶつかってしまい、ウォーターポンプを破損してリタイアとなった。
グランキスト選手を終盤に追い上げたのは能塚選手。彼はモトクロスIAライダーに昇格する前にJNCCに参戦経験があり、その頃からすでにクロスカントリーのスキルを発揮してきたライダー。一時は総合9位番手まで下がっていたが、終盤に2番手に上がりチェッカーを受けた。優勝する自信があっただけに、悔しさも見せた表彰式だった。
終盤怒涛の追い上げを見せて2位フィニッシュした能塚選手。現役モトクロスカワサキワークスライダーとしての実力を発揮した。
総合3位入ったのはJNCC史上最多7度のチャンピオンを獲得した渡辺学選手。昨年末に本業の餃子がテレビで紹介されて以来空前の発注数となり超多忙な毎日を送る中、非力な250ccで現役モトクロスライダー達を相手に戦い、3位を獲得したことは本人にとっても自信に繋がったに違いない。
踏切りが掘れやすいサンド路面。そりゃあ、タイヤも丸太も難しいに決まっている! それでも果敢に挑むライダーも多かった。
レース終了後、お互いの健闘を讃えあい、振り返ったモトクロスIAライダー。富田俊樹選手、安原志選手、能塚智寛選手、星野裕選手、勝谷武史選手、阿久根芳仁選手など、普段JNCCに参戦しないメンバーが集結した。
名産の酢橘や徳島ラーメンなど、地元の方が出店販売。徳島県のマスコットキャラクター「すだちくん」も応援に駆けつけてくれた!
さて、今回の舞台は年に1回の開催許可を得たフィールド「徳島県徳島市小松海岸・今切海岸」だ。日頃はもちろん砂浜を楽しむ人たちの憩いの場である。そのことを踏まえると、2025年JNCC開幕戦の会場として、イリーガルではなく正々堂々とバイクで疾走できたことの意義は極めて大きい。開催に向けて地域の合意や協力を得ることは決して簡単なことではないのが容易に想像できるが、会場には後藤田正純・徳島県知事も来場し、県や地域がレースを応援していた。
「バイク=自然環境破壊」という考え方とはある意味真逆な姿勢を示したことでも、今後のオフロードバイク業界への影響も大きいはず。厳密なルール、特定外来植物の除去など環境保全への貢献(土曜日には特定外来植物の「ナルトサワギク」除去活動を参加者たちと行なった)、地域経済にも寄与するというプラスの面を前面に押し出したイベントとして、後世に語り継がれる記念すべき特別な大会だと感じた。
それゆえに、決してバイクで乗り入れるようなことがないよう、我々ライダーも注意喚起していきたい。
【画像】【JNCC開幕戦レポート】徳島のビーチサンドを爽快に駆け抜けた468台 (25枚)この記事にいいねする