写真・文/中村浩史
2024年シーズン、モータースポーツで活躍したライダーやチームを表彰する「MFJモトアワード」。MFJが統括するモータースポーツ、さらに海外で活躍したライダー、チームが表彰を受けるイベントだ。
MFJが統括するモータースポーツは、ロードレース/モトクロス/トライアルの3大競技をはじめ、エンデューロ、スーパーモト、スノーモービルの6カテゴリー。このカテゴリーのランキング3位までのライダーが、東京・大手町の日経ホールで晴れの舞台を迎えたのだ。
MFJ鈴木哲夫会長の挨拶
開会に先立っての、MFJ鈴木哲夫会長の挨拶では
「今年もモータースポーツのシーズンを終えることができました。今年は多くのカテゴリーで白熱した熱戦が繰り広げられ、ファンの皆さんに、モーターサイクルスポーツの情熱や感動をより一層、お伝え出来たかと思います」とトピックが紹介された。
まずは世界選手権シリーズ
「世界選手権では世界トライアル、鈴鹿8耐、MotoGPが日本で開催され、アジア選手権も、会場をモビリティリゾートもてぎに変更して行われました。特にMotoGPはシリーズへのフル参戦が最後となる中上貴晶選手を応援しようと、多くのファンの皆さんがサーキットに足を運んでくださいました。
Moto2クラスでは、現IDEMITSUホンダTEAMアジアの青山博一監督以来、15年ぶり日本歴代7人目の世界チャンピオンに小椋藍選手が輝きました。また、ヤングライダーが参戦するMotoGPへの登竜門『FIM MiniGP』でも、世界各国の優秀な若手ライダーのなかで、日本の弱冠12歳・国立和玖選手が見事に世界チャンピオンに輝きました。世界耐久選手権では、ヨシムラSERT MOTULチームが見事に年間チャンピオンに輝き、会社創立70周年という節目の年に華を添えられました。
またトライアルでも世界国別対抗戦FIMトライアル・デ・ナシオンに参戦し、参加18か国の中、インターナショナルクラス2連覇を達成、ロードレースのアジア国別対抗戦では藤原雫花選手、片口神月選手がシリーズ総合優勝を獲得、FIMインターナショナルゲームスには、FIMアジアから南本宗一郎選手、高杉奈緒子選手、中原美海選手が選抜されて総合2位の成績を収めてくれました」
続いて国内の選手権について
「国内の選手権開幕は、2月のスノーモビルから始まり、4会場5大会が開催され、寒い中での熱い戦いが繰り広げられました。スノーモビルは、郷瞬希選手が最高峰SX-Proクラスで初のタイトルを獲得、4月に開幕して7戦を戦ったスーパーモトでは、日浦大治朗選手と小原堅斗選手の2強時代を迎えたS1PROクラスで、毎レースのように白熱したチャンピオンを見せてくれました。
4戦を行なったエンデューロでは、馬場亮太選手が3連覇、モトクロスでもIA1クラスでジェイ・ウィルソン選手が圧倒的な強さを見せて2連覇、そしてトライアルでは小川友幸選手が12年連続、通算14回目のチャンピオンを獲得されました。さらにモトクロスとトライアルでは、本年度からさらなるシリーズの魅力アップの一環として、開催格式を国際格式に変更し、海外で活躍する選手の参加が加速しました。モトクロスでは下田丈選手とフェルッチオ・ザンキ選手、トライアルでは藤波貴久選手が21年ぶりの全日本選手権に参加いただき、電動車両を駆り、シリーズを大いに盛り上げてくれました。
全日本ロードレースについては、岡本裕生選手が4年ぶりの新チャンピオンに輝き、文部科学大臣杯を授与されました。またドゥカティのワークスマシンを駆って参戦した水野涼選手もシリーズを大きく盛り上げてくれました。2025年も新旧交えた素晴らしい戦いになるのは必至で、心躍る思いです」
MFJの今後、目指す方向について
「MFJでは、多様化し、複雑化する現代社会において、モーターサイクルスポーツが持続していくためには、社会の一員として取り組む活動が不可欠であると考え、2024年も環境へのチャレンジと、新たに女性が活動しやすい取り組みを開始しました。
環境へのチャレンジは、国内での最高峰クラスであるロードレースJSB1000クラスに、ハルターマンカーレスジャパン様の100%非化石由来の燃料を年間300缶=1万6000リッターほど支給しました。カーボンニュートラル燃料を100%使用したレースは、グローバルに見てもまだまだ使用例が少ない中、安定して使用できたのは、エントラント、国内外の車両メーカーのみなさん、タイヤメーカーの皆さん、大会施設の皆様のご理解とご尽力のおかげです、ありがとうございました。
環境へのチャレンジは、燃料だけではなく、電動化も着実に進化し、全日本トライアルでは長年電動車両にトライされているヤマハ発動機が、その電動車でもてぎ大会IAスーパークラスで表彰台を独占するという歴史的快挙を達成されました。また、成田匠選手がエレクトリックモーション社の電動車両を使用し、IAクラスでチャンピオンを獲得、さらにホンダレーシングが新たに電動車両を発表し、IAスーパークラスにおいてシリーズ後半の3戦で連続優勝。トライアルにおいて、電動化が加速した歴史的な年だったと思います。これは環境対応だけではなく、性能面でも、電動化の優位性を語れる時代になって来たということで、来期以降の進化にも期待したく思います。
また女性のエンパワーメントに関しては、MFJ内部に女性部会を創設し、アジア国別選手権に藤原雫花選手を派遣、ウィメンズカップレースで日本が総合優勝を果たしました。今後においても、MFJはモーターサイクルスポーツを社会的に受け入れられる活動として、環境と女性にも配慮した取り組みを継続し、ガバナンスコードの再整備と社会に受け入れられる教育にも取り組んでまいります。また業界外への社会活動の一環として、代表選手の海外派遣に際して、スポーツ庁、関連市町村への表敬訪問も実施しました。活躍して成果を上げた選手の皆さんの取り組みを官公庁の皆様や各自治体と連携しながら、社会に発信する取り組みを、2025年も継続、強化してまいりたいと思います」
総勢100名近くの受賞者の中、25年シーズンへの期待を見せてくれたのが、新たに世界スーパーバイク選手権SP600クラスに参戦を開始する岡本裕生選手と、同じくMoto2世界選手権に参戦を開始する國井勇輝選手。全日本JSB1000クラスチャンピオン岡本選手と、ST1000クラスチャンピオン國井選手が新たに海外に参戦するということで、結果を出した選手が新たな活躍の場を獲得するという流れができたことだ。
「今年は最後の最後まで、(ランキング2位の)中須賀選手、(同3位の)水野選手と、楽しくクリーンなレースができ、ファンの皆さんにも楽しんでもらえたと思います。25年からはワールドスーパースポーツ選手権に参戦することになりましたが、日本のチャンピオンとして恥ずかしくないレースをしてきます!」と岡本選手。
またWebike!のサポートチームとして全日本ロードレースMFJカップ、JP250クラスを戦ったbLUcRU Webike チームノリックの久川鉄平選手、森山浬選手が、それぞれ国際ライセンス、国内ライセンスクラスのチャンピオンを獲得。久川選手は25年に、ヨーロッパを舞台に行なわれるbLUcRUヤマハYZF-R3カップに参戦の予定だ。
そして筆者の個人的に印象に残ったのが、全日本トライアルIAトライアルクラスで、前人未到の12連覇を達成した小川友幸選手。小川選手は開幕2連勝を飾るも、第3戦もてぎ大会でヤマハ勢の電動モデルに表彰台を独占されて5位に甘んじると、続く北海道大会でも6位と低迷。しかし開催が中止となった第5戦をはさんでの終盤3戦では見事な巻き返しを見せ、最終戦で大逆転を達成。
「本当にギリギリでした。今年は第5戦が中止になってレース数が少なくなったことで、逆転が難しいかと思ったんですが、なんとか最後の最後に逆転できた。本当に危なかったです、藤波選手が終盤3戦にスポット参戦して、新しいホンダの電動マシンで全勝されてしまったのは悔しいですが、V12は誇っていい成績だと思います。来年も記録を伸ばせるよう、がんばります」と小川選手。
2025年も、モータースポーツ界にとっていい年になるよう、期待しています。
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