スーパースポーツバイクの未来形とも言える「YZF-R9」で、ヤマハは2025年からのFIMスーパースポーツ世界選手権を戦うことを発表した。レースベース車の生産中止が続くレースの世界においても、このYZF-R9はゲームチェンジャーとなる可能性がある。

スーパースポーツ選手権2025年シーズン用の新兵器YZF-R9

FIMスーパースポーツ世界選手権は、4気筒600cc以下、3気筒675cc以下、2気筒750cc以下の4ストロークエンジンを搭載した公道用バイクをベースにしたマシンで行なわれるレースである。しかし、近年はベースとなるバイクの生産中止が続いたために、リストリクターなどによる性能の調整を行なった上でトライアンフの765ccのストリートトリプルRSやドゥカティの955ccのパニガーレV2などが参戦している。

ヤマハはYZF-R6でFIMスーパースポーツ世界選手権に参戦しており、2017年から2022年まで6年連続でチャンピオンを獲得していた。しかし、2023年はドゥカティにその座を明け渡し、2024年シーズンもドゥカティ勢相手に苦戦を強いられている。そんなヤマハが2025年シーズンから、つい先日発表となったニューモデル「YZF-R9」で参戦することを発表した。

レースへの参戦はYZF-R9の“宿命”

公道仕様のYZF-R9は、完全新設計の専用デルタボックスフレームに、119PSのCP3エンジンを搭載。足回りはサスペンションに新設計のKYB製倒立フロントフォークとフルアジャスタブルタイプのリアショックユニットをセットし、ブレーキはフロントキャリパーにブレンボStylema+320mm径のディスクローターを組み合わせている。

ライディングモードは「ストリート」、「レイン」、2種の「カスタム」に加え、任意に設定できるトラックモードが4パターンを追加。バンク角を反映するトラクションコントロールは9段階に調整することができ、サーキット走行用にリアブレーキのABSをオフにすることも可能となっている。

フロントにはカウルと一体型になった大型のウイングレットが装着され、シートカウルにもエアロデザインを採用するなどモトGP由来のエアロテクノロジーも導入されている。

今回お披露目されたFIMスーパースポーツ選手権仕様について詳しいスペックは公開されていないが、アクラポビッチのエキゾーストシステムやオーリンズ製のフロントフォークとリアショックユニットが装着されているのが写真から確認できる。また、シートには「GYTR」のロゴが確認でき、当然だがシングルシート仕様とされている。エンジンに関してはレギュレーションの範囲内でのチューニングを受け、排気量に対するハンデとして何らかの制限を受けることになるだろう。

レースレギュレーションは大きく変わる時期に来ている

YZF-R9でのFIMスーパースポーツ選手権参戦は、現在YZF-R6で参戦しているパタ・ヤマハ・テンケイトチーム、そしてライダーはイタリア人のステファノ・マンツィが決定している。マンツィは2023年シーズンをランキング2位で終えており、2024年も3回の優勝と14回の表彰台を獲得している。マンツィは11月からこの新しいYZF-R9でのテスト走行を始めるということだ。

FIMスーパースポーツ世界選手権においては先にも触れたようにベース車の生産停止によって、新たな車種を導入するためのレギュレーションが整備されつつある。Webike+でもお伝えしたが、ホンダが全く新しいV型3気筒のエンジンを800cc前後の排気量で開発しているという話も出ている。モトGPは2027年に今の1000ccから850ccへの排気量ダウンが決定しており、このホンダのエンジンはモトGPレプリカであると共に、スーパースポーツ選手権へのエントリーを意識して開発される可能性が高い。こうしたさまざまな事情を考慮すると、公道用バイクをベースにしたクラスも大きなレギュレーション変更が行なわれる時期に来ていると言えるのかもしれない。

今後のレースの運命を握る? ヤマハがYZF-R9でスーパースポーツ世界選手権に参戦 (8枚)

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