
9月14~15日(土日)の2024年FIM世界耐久選手権(EWC)第4戦「ボルドール24時間耐久ロードレース」。YOSHIMURA SERT MOTULとYART - YAMAHAのチャンピオン争いが白熱したが、多くのチームがトラブルで後退または戦線離脱を余儀なくされた。そんななかYOSHIMURA SERT MOTULが2年連続でレースを制して、2021年以来、同体制では2度目の王座を獲得した。2024年シーズンのEWC第4戦での出来事やレース内容をレポートしたい。
予選はBMWが最速。YART - YAMAHAとYOSHIMURA SERT MOTULは接戦
12日と13日に2日にかけて予選1回目と2回目が行われた。アベレージタイム1分52秒049で3年連続のポールポジションを獲得したのはBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMだった。BMW M1000RRは最高速で350km/hを叩き出した。2番手はYART - YAMAHA、3番手はYOSHIMURA SERT MOTULでチャンピオンシップポイントは6点差から7点差に開いた。
SSTクラスはTECMAS MRP BMW RACING TEAM、Hungarian Endurance Racing Team by Moto-Jungle、TEAM ÉTOILEとこのクラスでもBMWが速く、トップ3を獲得している。
予選までの結果では、Formula EWCクラスもSuperstock(SST)クラスもランキングトップ4にチャンピオンの可能性があった。
ポールポジションを獲得したBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM
決勝序盤からトラブル発生。レースはホンダ勢がリード
決勝はスタート前に気温19度だったが、この週で一番日が照っており路面温度が上がっていった。スタート時は気温22度、路面温度37度となり、暑く感じられた。
ホールショットはYOSHIMURA SERT MOTULが奪い、BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM、YART - YAMAHAが続く。しかし、YART - YAMAHAは1周目終了時点で8番手まで下げ、2周目のミストラルストレートでBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMがトップに立つが、TATI TEAM BERINGER RACINGが追い上げてレースをリードしていく。
SSTクラスではTEAM ÉTOILEがスタートで失敗して順位を下げたが、Hungarian Endurance Racing Team by Moto-Jungle、TECMAS MRP BMW RACING TEAMがレースを引っ張っていく。
7周目にはF.C.C. TSR HONDA FRANCEがTATI TEAM BERINGER RACINGをとらえてトップ交代。YOSHIMURA SERT MOTULもBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMをパスして3番手に上がる。十数分が過ぎるとホンダ2台、スズキ、BMW、ヤマハ2台、カワサキとメーカーごとにペースが異なり集団がばらけていく。
決勝のペースが例年以上に速く、開始から42分先頭集団の中で一番早いピットストップが行われた。その3周後にYART - YAMAHAがピットに入ったが、トラブルがありガレージにマシンを入れた。リヤタイヤ剥離しており、飛んだタイヤのゴムがリヤカウルを破損させたことで修復が必要となった。4分40秒ほどのピット作業終えて39番手でコースに復帰している。
1時間15分過ぎには、3番手のTATI TEAM BERINGER RACINGにシフタートラブルが起きて、3分30秒ほどの修復で33番手で復帰。同チームは2時間9分に14番手まで上げたところでスリップダウンをして再度マシン修復が必要にもなった。
1時間23分頃にはYOSHIMURA SERT MOTULがトップに浮上した。また、1時間34分には2番手を走るF.C.C. TSR HONDA FRANCEにYART - YAMAHAと同様のトラブルが発生。リヤタイヤの剥離でまたもマシンリヤ部分が損傷しており、パーツ交換に時間を費やした。
このトラブルを確認したYOSHIMURA SERT MOTULは同コンパウンドか同ロッドのタイヤの使用をやめて、さらにショートスティントに戦略を変更。スティントが増えたが、ライバルの後退により良いアベレージタイムを刻んでレースを進めていく。
2時間43分、SSTクラスのHungarian Endurance Racing Team by Moto-Jungleのマシンから白煙が上がりそのままピットイン。最初のリタイアチームとなった。3時間目にはKAWASAKI WEBIKE TRICKSTARがピットイン。マシンに致命的なトラブルがあり、2チーム目のリタイアとなる。この頃にはTEAM ÉTOILEの渡辺一樹が予選より速いタイムをマークして、SSTクラス4番手まで浮上した。
マシンを修復するF.C.C. TSR HONDA FRANCE
チャンピオン争いをするYOSHIMURA SERT MOTULとYART - YAMAHA
4時間30分が経過すると、SSTクラスのランキング首位NATIONAL MOTOS HONDA FMAにトラブルがありピットイン。修復終えて7分のロスでコースに戻るが、再びピットイン。さらに10分ほどロスして、クラス8番手からクラス19番手まで落とした。
6時間49分、3番手を走るHONDA VILTAIS RACINGがガレージイン。パーツ交換を行い3分のロスで4番手で復帰した。その後、KM 99がHONDA VILTAIS RACINGをパスして3番手に浮上した。
1~10番手のチームにポイントが入る8時間時点では、トップのYOSHIMURA SERT MOTULが10点を獲得。BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM、KM 99、HONDA VILTAIS RACING、YART - YAMAHAのトップ5だ。SSTクラスはTECMAS MRP BMW RACING TEAM、TEAM AVIOBIKE BY M2 REVO、CHROMEBURNER-RAC 41-HONDAのトップ3だ。
その後はピットのタイミングではYOSHIMURA SERT MOTULとBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMがトップを入れ替えるタイミングがあるが、実質的なトップはYOSHIMURA SERT MOTULだ。
転倒を喫したハネス・ソーマー(BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM)
夜間走行に入ると、気温は12度まで下がった。ペースはBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMの方が速く、首位を追いかける。そんななか、11時間20分、SSTクラストップのTECMAS MRP BMW RACING TEAM、2番手のCHROMEBURNER-RAC 41-HONDAが立て続けにトラブルを抱えてガレージで修復。さらに、11時間32分頃、一時トップだったBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMが痛恨の転倒を喫する。この転倒でハネス・ソーマーは怪我を負い、残りは2人で走ることになった。
この頃、TEAM ÉTOILEはSSTクラス首位に立ち、優勝とSSTクラスチャンピオンの可能性が見えてきた。BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMはマシン修復後に5番手まで落ちたが、1分53秒台の好ペースで周回。じわじわYART - YAMAHAに詰め寄っていく。その他のチームもトラブルやマシンから白煙が上がることもあり、前半から荒れたレースとなった。
マシンから白煙が上がるBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM
折り返しの12時間はYOSHIMURA SERT MOTULがノントラブルで好走。後半はさらにリタイアチームが多発
12時間を過ぎるとBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMはYART - YAMAHAとKM 99を追い越して3番手まで浮上。さらにHONDA VILTAIS RACINGのピットのタイミングで2番手まで上がる。
13時間が過ぎると、YART - YAMAHAとKM 99が接近してヤマハ同士で表彰台争いを展開する。トップ独走のYOSHIMURA SERT MOTUL以外の上位チームは接近しており、この時間でもピットのタイミングで順位が入れ替わることもあった。
14時間50分頃、序盤のタイヤトラブル後に追い上げていたYART - YAMAHAのマシンがストップ。車に載せられてマシンをピットに帰還させて、すぐさま修復作業が行われる。これで総合11番手まで順位を落としてしまう。
夜が明けて、18時間40分頃にBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMがガレージにマシンを入れてパーツを交換で4番手。KM 99が2番手、HONDA VILTAIS RACINGが3番手に浮上した。また19時間過ぎに、BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMが再びピットイン。順位を落とすことはなかったが周回差がついた。
そんななか、TEAM ÉTOILEがピット内にマシンを入れる。7分ほど作業が行われて復帰するが、アウトラップでコースサイドでマシンストップ。車に載せられてピットまでマシンを戻すがエンジントラブルでリタイアを決断した。
さらにF.C.C. TSR HONDA FRANCEもトラブルでストップ。ピットで修復を試みたがリタイアした。BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMもスロー走行となり、マシンから白煙が上がる。ピットで修復してこちらはコースへ戻った。
20時間32分、3番手のHONDA VILTAIS RACINGがマシンを止める。ピットでエンジンの組みなおし作業を続けた。その後は大きなトラブルなくすすみ、23時間20分頃にこのレースで引退するニッコロ・カネパ(YART - YAMAHA)が最後の走行を終えた。
そして、トラブルなく一定のリズムで快走を続けたYOSHIMURA SERT MOTULが最多の737周で優勝。同時に2024年EWCのチャンピオンを獲得した。2位はKM 99、3位はYART - YAMAHAとトラブルを抱えたが表彰台に上がった。
SSTクラスは総合4位のTEAM18 SAPEURS POMPIERS CMS MOTOSTOREが優勝、CHROMEBURNER-RAC 41-HONDAが2位、TRT27 AZ MOTOが3位だった。全45台中26台が完走、1台が未完走、18台がリタイアした。
ランキングはEWCクラスは上記の通りYOSHIMURA SERT MOTULがチャンピオン、2位はYART - YAMAHA、3位はBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMだ。SSTクラスはボルドールではノーポイントだったNATIONAL MOTOS HONDA FMAがチャンピオン、Chromeburner-RAC 41-Hondaが2位、TEAM18 SAPEURS POMPIERS CMS MOTOSTOREが3位、綿貫舞空擁する3ART BEST OF BIKEが4位、日本のTeam Étoileが5位だった。
最後の走行を終えたニッコロ・カネパ(YART - YAMAHA)
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