9月第一週の台風上陸のため、事前テストなしで開催された全日本ロードレース第6戦・オートポリス大会。天候が心配されることが多いオートポリス大会だが、今大会は残暑と呼ぶにはまだ暑い、高い気温と湿度に見舞われた大会となった。

ヤマハ勢が得意とするオートポリス

前戦もてぎ2&4大会から2週間のインターバルをおいてのオートポリス大会。もてぎ大会を勝ったドゥカティ・パニガーレV4Rを駆る水野涼(DUCATI TEAM KAGAYAMA)は、事前テストが開催されなかったことで、金曜の事前走行も1回目3番手、2回目6番手とやや苦戦のスタート。

「パニガーレでオートポリスを走るのは初めて。事前テストもなかったので、セットアップに苦しんでいます。コースレイアウトがどうとかより、やっぱり走り込む時間が必要なマシンなので、仕上げるまでもう一歩」と水野。

2回の事前走行では、2回ともヤマハファクトリーレーシングの岡本裕生&中須賀克行の順で1-2フィニッシュ。ここオートポリスで圧倒的な勝率を誇るヤマハYZF-R1の仕上がり、そして中須賀、岡本ふたりの調子良さを見せつけた。

土曜に行なわれた公式予選でも、やはりヤマハファクトリーの2人がTOP2を独占。トップタイムは中須賀でレース1のポールポジションを、セカンドベストタイムは岡本でレース2のポールポジションを獲得。しかし、公式予選中に、珍しく中須賀が転倒するシーンもあった。

「転倒はスリップダウンしただけで、ケガもなく問題ありません。マシンは本番車もスペアも同じように走り込んで同じ仕様に仕上がっているので大丈夫!」と中須賀。

ヤマハ対決を岡本が制す

土曜に行なわれたレース1では、まず中須賀がホールショットを獲得する好スタート。岡本、野佐根航汰(Astemo HONDA DREAM SIR)、名越哲平(SDG HONDA RACING)、岩田悟(Team ATJ)、長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)が続くなか、予選3番手スタートの水野はスタートでやや遅れ、7~8番手あたりでオープニングラップをスタート。

この中から、出足良く1周目に2番手に、3周目にはトップに浮上した野佐根が、ジャンプスタートを取られてライドスルーペナルティを受ける。

レースは序盤からやはりヤマハの2台のペースが良く、中須賀と岡本の2台がトップ争いをしながら3番手以下を引き離す展開。しかしここで、セカンドグループを走っていた長島が転倒し、レースは赤旗中断。残り8周で第2レースを行なうことになった。

第1レースの最終結果で第2レースのスターティンググリッドが決まり、第2レースの結果が正式結果となる。

第2レースでも、やはりヤマハのふたりが好スタート。今度は岡本がホールショットを獲り、中須賀、名越、水野、岩田、高橋巧(日本郵便HONDA DREAM TP)が続くスタート。オープニングラップで中須賀が岡本の前に出るが、岡本も中須賀を追走。このふたりが何度もトップの座を入れ替えながら、4周目あたりに岡本が中須賀をパスし、そのまま引き離しにかかる。

レース中盤には岡本が中須賀を引き離し、水野をはさんで、4番手には第1レースのライドスルーペナルティを消化し、第2レースを16番グリッドからスタートした野佐根が浮上。

このままフィニッシュとなり、岡本が菅生大会のレース2以来の今シーズン2勝目を獲得。中須賀は前戦もてぎ大会に続いて2位フィニッシュ、3位に水野が入っての表彰台となった。

「素直に嬉しいです。赤旗中断前は攻め切れないマシンだったんですが、中断の間にチームにお願いしてセッティングを修正して中断後はいいペースで走れました。あとは出られるときに前に出よう、それからはミスのないように走り切りました」(岡本)

「ベストは尽くしたんですが、いま一歩及ばずでしたね。走行ペースが上げられなかったし、なにが悪かったか、きちんと見直して、明日のレース2につなげたい。2レース制だとやり返すチャンスがありますからね。しっかり若手に負けないようにね」(中須賀)

「ウィークを通してちょっと苦しい展開で、トップ争いに加われないままの3位はちょっと悔しい、もっと前を走れるはずなのに、って感じ。まだ走る度によくなる感じで、明日のレースも使っていいところを見つけられれば、今後のレースのためにもなると思います」(水野)

岡本の速さ際立つレース2

日曜に行なわれたレース2でも、やはりヤマハのふたりが好スタート。中須賀→岡本の順でオープニングラップがスタートし、野佐根、水野、名越、岩田、長島、高橋、津田拓也(AutoRace Ube Racing Team)の順。やはり序盤から、2台のYZF-R1がレースをリードしていく。

ここで動きを見せたのは、7番手争いで長島をプッシュする高橋。7月の鈴鹿8耐を制した高橋だが、今シーズンの全日本ロードレースではここまで5位が最高位だ。

「予選順位より順位を上げて1周目を終わらせたことがない」という高橋は、レース後半の強さと引き換えに、レース前半にペースが上がらないという問題を抱えているようだ。

レースは4周目にトップに立った岡本がスパート。中須賀もこのペースにはついて行けず、徐々に岡本が独走態勢を築いていく。3番手争いは野佐根→水野→名越→岩田といったメンバーから、水野が1コーナーで名越をパッシングしようとして、オーバーランからグラベルで転倒。

水野は今シーズン初めてレース中に転倒するものの、マシンを起こして再スタート。順位は最後尾まで落ちるも、マシンのダメージの少なさを判断してピットに入らず、レースを続行する気迫を見せた。

レースは岡本が中須賀を引き離して、3番手争いは名越vs野佐根vs岩田。しかしレース後半、タイヤの消耗か、ほとんどのライダーがペースを落とす中、序盤のペースをキープした高橋がこの集団に接近し、自己ベストタイムを連発しながら岩田をパス。ラスト3周では野佐根と名越までパスし、ついに3位でフィニッシュ。今シーズン、中須賀、岡本、水野以外が表彰台に乗るのは初めてのことだ。

優勝は岡本。キャリア初の連勝で、先輩のチームメイト中須賀を連破するダブルウィン。中須賀は菅生大会のレース2から4戦連続で優勝できていない。高橋はST1000クラスを走っていた23年の岡山大会ぶりの表彰台となった。

「今日は昨日より路面温度も上がって苦しいレースでしたが、朝のフリー走行からいいタイムが出ていたので、自信をもって走りました。トップ争いがバトルになると中須賀さんのいいところが出てしまうので、できるだけ引き離して、後ろは気にせずに集中して走りました。連勝はST600やST1000時代を含めても初めてで、自分に足りないものを少し見つけられたかな」(岡本)

「レース1のような展開にはさせない、と思ったんですが、想定していたよりペースが速くて、ユウキに隙を与えてしまった。レース中盤くらいまで抑えて、中盤で勝負しようと思っていたんですが、作戦を読まれてたかな、序盤からハイペースで逃げられましたね。地元オートポリスで勝てなかったのは悔しいけど、次は巻き返します!」(中須賀)

「(JSBクラスでは)表彰台は久しぶり。序盤は絶望的な差で、追い上げて5位に上がっても前が見えない状態だったんですが、レース中盤からペースがキープできました。レース前半で離されることが多いので、そこを課題にいろんな課題をひとつずつ改善していきたい。解決策は、ずっと探してます。序盤のペースが上がらないことを改善できれば、もうすこし結果もついてくると思います」(高橋)

次戦・第7戦岡山大会は9月29日に決勝レースが行なわれる。

岡本裕生、初めてのダブルウィン! ~全日本ロードレース第6戦オートポリス大会~ ギャラリーへ (12枚)

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