文/写真:中村浩史

JSB1000クラスの開催は、5月24-25日の第3戦・菅生大会以来となる全日本ロードレース、もてぎ2&4大会。鈴鹿8耐明けの一戦ということで、8耐に参戦したチームは、鈴鹿と変わらない猛暑の中、耐久仕様からスプリント仕様への変更があるレース。全日本ロードレースの後半戦スタートにも位置付けられる一戦だ。

レース前から岡本と水野が好調

事前テストはなく、レースウィークの金曜から走行開始。この事前走行では、午前、午後とも岡本裕生と中須賀克行のヤマハファクトリーレーシング勢が1-2。3番手に水野涼(DUCATIチームKAGAYAMA)がつけるスタート。8耐に出場しなかったヤマハファクトリーのふたりに、ドゥカティ・パニガーレの水野が挑む、前半戦と変わらない図式を見せていた。

土曜に行なわれた公式予選では、鈴鹿8耐でパニガーレV4Rにたっぷり乗り込んだという水野がポールポジションを獲得。水野は、2レース制で行なわれた第2戦もてぎ大会、レース2でポールポジションを獲得していたが、これは公式予選のセカンドベストタイムで決まるグリッドだったため、トップタイムでのポールポジションはこれが初めて。

「第3戦の菅生大会、レース2で岡本君に負けてしまったんですが、しばらく後ろを走っていて、いま使っている電子制御はこうやって乗ればいいのか、というヒントをもらった気がしていたんです。それを鈴鹿8耐の走行でトライできたし、鈴鹿では海外の選手権でパニガーレに乗っているチームメイト(ジョシュ・ウォータースとハフィズ・シャリーン)が、僕がしていない乗り方とかライン取り、ライディングポジションなんかを使っていたんで、それもすごく参考になった。それよりも、とにかく乗りまくった時間帯がすごく効いたんだと思います」(水野)

予選2番手は、その水野のスリップをうまく使って1周だけタイムが出た、という野左根航汰(AstemoホンダドリームSIR)、3番手に岡本がつけ、中須賀はセカンドロー4番手、5番手に津田拓也(オートレース宇部レーシング)、6番手高橋巧(日本郵便ホンダドリームTP)までが2列目に並んだ。

公式予選ともども天候が心配されていたもてぎ2&4だったが、土曜夕方に雷雨があったものの、走行時間はすべてドライコンディション。降雨からひと晩たった日曜日朝のウォームアップ走行では、これも水野がトップタイムをマーク。2番手に中須賀、3番手に岡本、4番手に野左根と、この4人が軸となってレースが展開するのだと思われた。

1周目からトップに立った水野が独走へ

決勝レースでは、フロントロー2番手スタートの野左根がホールショットを獲得して、水野が2番手、中須賀、岡本と続き、少し離れて長島哲太(DUNLOPレーシングwith YAHAGI)、津田、芳賀涼大(WORK NAVI NITROレーシング)、岩田悟(チームATJ)、高橋らが続く。
1周目のダウンヒルストレートでは、水野が野左根をパスしてトップに浮上。

「ポールからのスタートだったし、最初からうまく前に出られたらプッシュして後ろを引き離そうと思っていました」(水野)

ここで、中須賀も水野に続いて野左根をパスしたかったが、ここもてぎをホームコースとする野左根もいいペースで中須賀のパッシングを許さない。野左根は、中須賀とチームメイトだったヤマハ在籍時代にも、ここもてぎでたびたび中須賀を打ち負かしてきた。

「このレースのキーマンは野左根選手だと思っていた。水野選手が逃げ始めたから、僕も野左根選手をかわしたかったんですが、パッシングに時間がかかってしまって、その間に水野選手に逃げられてしまった」(中須賀)

トップに立った水野は、言葉通りに序盤からハイペースで周回。徐々に2番手以降を引き離し、5周目には1秒差、7周目には3秒を超え、20周のレースが折り返しを迎える10周目には、その差4秒強。中須賀も、5周目に2番手に浮上して水野を追うものの、ハイペースで周回する水野に追いつけない。結局このまま水野が2位以下に4秒1の差をつける独走態勢でフィニッシュし、今シーズン初優勝を達成。ドゥカティ・パニガーレV4Rを全日本ロードレースに投入した4戦6レース目での初優勝で、外国車モデルによる全日本ロードレース最高峰クラスでの史上初めての優勝という記録を残すことになった。

2位に中須賀、3位にはレース後半で中須賀を追った岡本が入り、ここまで6レースすべて、この水野、中須賀、岡本の3人だけが表彰台に登壇。4位には序盤からトップグループを走ったものの、レース中盤あたりからペースを上げられなくなった野左根が入り、これで野左根は6レースで4度目の4位入賞。5位に津田、6位には名越哲平(SDGホンダレーシング)のアタックを退けた高橋が入賞。8位に伊藤和輝(ホンダドリーム桜井ホンダ)とのバトルを制した、BMW M1000RRを走らせる関口太郎(SANMEIチームTAROプラスワン)が入り、今シーズン初めてトップ10にドゥカティ、BMWという2台の外国車が入る結果となった。

優勝 水野涼(DUCATIチームKAGAYAMA)

「優勝できて、本当にうれしいです。これまで、トップグループに加わりながら、勝てそうで勝てないレースが続いていたんですが、8耐を経て走行時間が増えたことで、またマシンが持っているポテンシャルを引き出せるようになったと思います。今年の前半戦の反省や課題を改良、それを少しずつ積み重ねてきたことが間違ってなかったんだな、と思っています」

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2位 中須賀克行(ヤマハファクトリーレーシング)

「ここもてぎは、今年春の大会こそうまくいきましたが、うまくマシンをまとめられないことがあって、今回も決勝日朝のウォームアップ走行でセッティングを変えてようやく良化した感じでした。今回は水野君がいいタイムを持っていて、序盤から逃げられてしまった。マシンを作っていく作業というのは本当に大変で、この短期間でドゥカティを速いマシンに仕上げたチームカガヤマと水野君の力に負けました」

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3位 岡本裕生(ヤマハファクトリーレーシング)

「予選から一発タイムではなく、アベレージタイムがいい仕上がりで、正直言って決勝も自信があったんですが、序盤の水野選手のペースについて行けずに離されてしまった。中須賀さんにも離されて、中盤すこし近づいたんですが、最後また離されるという課題の多いレースになってしまいました。自分の実力不足もあるし、次のオートポリスはきっちり切り替えて、今日の反省を洗い出していきたい。今回は本当に水野選手が速かったです」

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これで全日本ロードレースは7戦11レースのうち6レースを終えて折り返し。チャンピオン争いは、中須賀、岡本のヤマハファクトリーレーシングの快進撃に、プライベートチームのDUCATIチームKAGAYAMAが一矢報い、水野がランキング2位に上昇する結果となった。

ポイントランキング(4戦6レース終了時)

①中須賀克行 136P ②水野涼 117P ③岡本裕生 113P ④野左根航汰 72P ⑤津田拓也 59P ⑥高橋巧 58P ⑦名越哲平 49P ⑧長島哲太 45p ⑨岩田悟 39P ⑩伊藤和輝 38P

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