「サーキットで耐久レースに参加」と聞くと、かなり経験あるライダーでない限りハードルが高いと感じてしまうでしょう。今回ご紹介するミニバイク耐久レース「Let’s レン耐」(以下、レン耐)は、ロードレースの世界では有名な「青木三兄弟」の次男である青木拓磨さん(以下、青木さん)がプロデュースする恒例イベントで、レース用バイクはもちろんヘルメットやツナギがなくても参加できる、初心者に優しいレースなのです。

そんなレン耐の模様をお届けしようと、2024年6月9日(日)に桶川スポーツランド(埼玉・桶川)に足を運び、レースに参加した初心者チームに密着しました。初参加チームの走りっぷりとともに参加した感想もお伺い、さらに主催者の青木さんにもお話を伺いました。

レン耐とは

初心者でも気軽に参加できるミニバイク耐久レース「Let’sレン耐」に密着!

「レン耐」とは、バイクレースに参加するための装備品がレンタルできる排気量125cc以下のミニバイクレースです。バイクはもちろん、ヘルメット、レーシングスーツ、グローブ、シューズがレンタル可能で、事前予約をすれば手ぶらで行っても参加できるレースなのです。一度もレースに参加したことがない初心者の方でも参加可能で、初心者向けにブリーフィング(事前説明)も実施されるので安心・安全にレースを楽しめます。

桶川スポーツランド「レン耐」参加チームの奮闘をレポート

2024年6月8日(日)、桶川スポーツランドで開催されたレン耐では、60分耐久レースに2チームが、そして4時間耐久レースには25チームが参加しました。今回、そのなかの2つのチームに密着しました。1日の模様とともにレポートしていきます。

レース初参加者のための講習

初心者でも気軽に参加できるミニバイク耐久レース「Let’sレン耐」に密着!

まずは初心者講習から始まります。レース初参加の方を集め、実際に乗車するレース用バイクの特徴や扱い方をレクチャーします。その後、コースへの入り方(ピットイン)と退出(ピットアウト)における合図の出し方等を学び、先導車に続いての練習走行が始まります。

世界チャンピオンと戦う60分耐久レース

まず10時から始まったのは「60分耐久レース」です。今回このクラスにエントリーしたのは2チームだけだったので、ロードレース世界選手権(WGP)125ccクラスのチャンピオンにも輝いた元ロードレーサー・青木治親さんとその御子息のチームが特別参加することに。

今回密着したチームは、平均年齢が60歳を上回るリターンライダーチーム「湘南RT」(ゼッケン21)。125ccクラスで世界チャンピオンに輝いたレジェンドライダーのチームにとても敵うはずがない……と思われるかもしませんが、ただ速く走れるだけでは勝てないのがレン耐なんです。

その理由は、レン耐が設定しているユニークなルールにあります。それは、

・ライダー一人が走れる時間は5分以上〜30分未満
・ライダー交代時にはミニゲームをせねばならない

の2つです。今回設定されたミニゲームは「チームメイトがけん玉を成功させないと交代できない」というもの。青木治親さんのチームはこのミニゲームに苦戦してしまい、なんと「湘南RTチーム」が見事に優勝を飾りました。

現役のツーリングライダーで形成された「湘南RT」のメンバーにはレース経験者もいらっしゃいましたが、「サーキットを走るのは本当に久しぶり」というフレッシュな面々でした。

「昔はスクーターレースやホンダSP125レースにも参戦していました。今回のレースは35年ぶりです。昔着ていたレーシングスーツを今回着用しました。主人はメカニックなんです。仲間と参加できてすごく楽しかったです」

そう語ってくれたのは、「湘南RT」メンバーの中川直見さん。レースが始まった際は慎重に走っていましたが、ラップを重ねるごとにタイムがどんどんよくなっていきました。さすが往年のレーサーと思わされるほどライディングフォームも美しく、レース後は存分に楽しめたようで笑顔が弾けていました。

25チームが入り乱れる4時間耐久レース

4時間耐久レースで密着したのは、会社仲間やその友人という若年チーム「チーム涼木23」です。4人中2人はスプリントレースの経験者で、もう2人はレース未経験のツーリングライダーとのこと。メンバーの岡本壮司さん(以下、岡本さん)はホンダ CBR1000RRが愛車で、今回が人生初レースです。どんなレース体験となるか、楽しみですね。

いよいよ4時間耐久レースの始まりです。使用するバイクは、従来型ミッションが4速の「ホンダ グロム4」と、現行モデルの5速ミッション仕様の「ホンダ グロム5」の2タイプがあり、そのタイプ別でクラス分けされています。

レースのスタート方式は、古くから世界の耐久レースシーンで採用されている「ル・マン式」となっており、フラッグが振られるのと同時にライダーが自分のバイクへとダッシュ。そのまま乗車して本コースへと雪崩れ込んでいきます。

4時間耐久レースで用意されていた交代時のミニゲームは「謎解き問題」でした。興奮状態だとなかなか解けない難しさがあり、先を走っていたはずのチームがミニゲームに苦戦し、後続のチームに追い越されるという場面も。この謎解きはライダーだけでなくチームメイトでも回答可能なので、チームとしての連携も問われるレースとなっています。

この4時間耐久レースにはもうひとつルールがあり、それは「(レース開始から)2時間経過したところで、最後尾のチームがサイコロを振り、その出た目(数字)によって上位チームの周回数から減算&下位チームの周回数に増算」されるというもの。耐久レースはどれだけ多く周回できたかを競うので、多く走れる上位チームと下位チームの周回数を運まかせなサイコロの目で減らす&増やすことで、実力差を少しでもなくそうというゴルフのハンディキャップと同じ考え方から生まれた特別ルールなのです。

さらにレースごとに配分されるガソリンの規定量が決まっているので、最初から飛ばしてしまうとガソリンを使い切ってしまってリタイア、ということも起こるのがこの耐久レース。チームで一台のバイクを使うので、バランス良いペース配分やチーム連携が重要になってきます。改めてチームワークの大切さを教えてくれるレースとも言えますね。

4時間耐久レースは、60分耐久レースにも参戦していた元ロードレーサー・青木治親さんの「ハルチカ&キッズチーム」が優勝。ハンディキャップ修正を加えての優勝ということで、さすがの一言です。さらに「チーム涼木23」は総合4位入賞、初心者クラスでは優勝という好結果となりました。

「(レース経験がある)速いふたりのチームメイトの足を引っ張っちゃいけないから、一生懸命走りました。もちろん転ばないことを第一に考えて。

一般道と違って、走り方をもっと考えなくちゃいけないのがとても楽しかったです。レースへの興味も高まりました。初心者クラスで優勝できるなんて思っていなかったから、嬉しいですね。今後もレースには参戦しようと思います」

4時間耐久レースでは最終ライダーを任されていた岡本さん。レン耐を存分の楽しまれていました。

女性ライダーもレースを楽しむ!

レン耐の前回大会では見事優勝を飾ったチームメンバーのウチノアミさん。ここ桶川スポーツランドが最寄りでホームコースだと言います。

「実は両親がレーシングライダーで、モタードのレースにも出ていたんです。このレーシングスーツは母のもので、体型が同じなので借りています。装備類は自分で準備できるんで、バイクがレンタルできるレン耐は本当に有り難くて、レースもすごく楽しいです。主催者も参加者も皆さん親切なので、怖かったり不安に思ったりしたことはありません。

まだコース一周に1分以上かかっているので、今度は1分を切れるようにしたいです。もちろん次回の桶川スポーツランドでのレン耐には参加します」

主催者 青木拓磨さんに話を聞いた

レースが好きなバイク乗りなら、皆知っているレジェンドライダー。青木三兄弟の次男でその輝かしい戦績と、怪我で車椅子生活になった以降からの活動内容にも誰もが注目する青木拓磨さん。このレン耐は、もう20年の歴史を繋ぎ、年間36回も開催されているのです。

初心者にも敷居が低く、参加しやすい内容と楽しさを両立させているレン耐。このイベントの意図や狙い、今後の発展性等もお聞きしました。

「僕はバイクレースが大好きな人間ですから、その楽しさを多くの人に伝えたい、感じてほしいんです。誰でも参加しやすいサーキットイベントをとレン耐を考えたのですが、始めたので当初はバイクブームが下火になってきて、ミニバイクのレース人口も減る一方でした。そんな時代にスタートさせたのがこのレン耐なんですよ」

サーキットを走るにはマシンはもちろん、バイクを運ぶクルマも必要です。さらにウェアやヘルメット、ライセンス、サーキットの走行券も準備せねばなりません。ガソリンなど消耗品にかかる費用も発生します。

全部自分で用意しなきゃいけないサーキットの準備を、主催者側で準備したら参加者が増えるのではないか、そう考えたのは、ご自身が嗜んでいたスキーの経験からでした。

「群馬県出身の僕は冬にスキーをやっていまして、毎年最新のスキー板やウェア類も用意してて、バイクと同じスタンスで臨んでいました。でも遠くから来られるスキーヤーは、年に数回しかスキーをしないので全部レンタルするんです。その環境が一般的に普及して人気に繋がりました。だったら、敷居が高いレースのための準備をこちらで用意しよう、と考えたのです。本気でレースに挑む人も、楽しくサーキット走行を楽しみたい人も同様に、最初の入り口は入りやすくすべきだと思いました。裾野を広げることこそ、これからの発展につながるに違いありませんから」

レン耐では、バイクもウェアもレンタルできます。参加者はバイクを運ぶトランスポーターも必要ありません。発想の原点であるスキー場でのレンタルサービスと同じ仕組みで、まるで運動会のように仲間とレース参戦できるのです。

「耐久レースって楽しいんですよ。達成感もありますしね。最初の半分は練習のつもりで走ってください。あ、転ぶと5,000円の罰金ですから注意してくださいね(笑)」

気軽に参加!Let’s レン耐

20年以上の開催実績を持つレン耐、これまでの参加者数は4万人を超え、そのうち初参加だったのは約800人と言います。年間で36回、関東や関西を中心に、北海道から九州までさまざまなサーキットで開催されています。

レースという形式ながら、速さだけを競うのではないレン耐で求められるのは、チームワークや大切に扱いつつもバイクを味わい尽くす遊び心と言えます。参加すればその楽しさが理解できるレン耐、ご興味がある方は是非レン耐の公式ウェブサイトから参加&開催情報を確認してみてください。

■Let’s レン耐 http://rentai.takuma-gp.com/ 【画像】「Let’sレン耐」に密着! (19枚)

情報提供元 [ MOTO INFO ]

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