
「ノリック」故・阿部典史の長男である阿部真生騎は、2023年から渡欧。VFT Racing Webike Yamahaからスーパースポーツ世界選手権(WSBK)スーパースポーツ600に参戦している。2年目となる今年の初戦はイタリア・CIVイタリアン・スピード・チャンピオンシップ(CIV)へ挑戦を開始した。今回はその第2戦の様子をお伝えしたい。
文:佐藤洋美/写真:VFT Racing Webike Yamaha
目次
イタリア選手権(CIV)第3戦ムジェロ
予選1-34番手 レース1- 出走ならず。
予選2-計測ならず。レース2-31位。
阿部真生騎は、イタリア選手権第3戦に出場、事前テストに参加出来たことからレースウィークは順調にセットアップが進む。ポイント圏内(15位)を目指す戦いだが、予選2回目の転倒からリズムが崩れ、レース1では他車のオイルにのって転倒してしまう。レース2では、自己ベストに届かないアベレージとなり31位でチェッカーを受けた。だが、確実にタイムは向上しており中団グループへの浮上の手応えを掴んだレースでもあった。
フリー走行ではタイム短縮し順調な滑り出しを見せる
開幕戦ミサノで負った左ひざの前十字靭帯が伸びてしまったケガの影響を感じることなくムジェロで行われた2日間のテストに参加することが出来た。初めて走るコースだが、屈指の高速サーキットとして知られるムジェロと真生騎の相性は良く、違和感なく走行することが出来た。ここで、コースの特徴を知ることが出来たのは、大きな収穫だった。
レースウィークに入り、木曜日からフリー走行が開始された。テストで得たデータを基に、セットアップを決めて、ラインやギアの確認をして1回目の走行を終える。2回目の走行ではオンボードを積み周回した。走行後にその映像を見ながら、自身の走行イメージとの違いを確認して修正して行く。前回からオンボードでの確認作業をするようになり、今回も、自分が思っているラインと実際に走っているラインとの違いを確認した。アクセルを開けるタイミングが遅いため、タイムに繋がっていないこともわかった。
6月21日金曜日
フリー走行3回目では、前日の修正箇所を意識しながら走行を繰り返した。良くなった部分もあるが、まだ、ラインの修正、アクセル開度のタイミングなど問題が残る。だが、走行開始時に比べれば、タイムは1秒単位で短縮できているので、方向性は間違っていないことを確認する。更に予選でタイムアップを目指しセットアップの確認を行った。
予選通過するも狙ったタイムに届かず。
予選1―34番手
40台が走行する予選1回目、リネージュ・ダビデ(ドゥカティ)が1分53秒810でトップタイムを記録する。53秒台に入れたのはダビデのみで、2番手から11番手までは54秒台にひしめく。55秒台が12番手から28番手までと続く。真生騎は 1'56秒810 がベストタイムとなり34番手となった。
真生騎は、予選走行開始から0.5秒とタイムを短縮するが、自分よりも速いライダーの後ろについていき、タイムアップを狙うが、思うような相手が見つからずに終わる。走行毎に約1秒の短縮が出来ていたので、55秒台を狙っていたが届かず。
6月22日土曜日
予選2―計測できず。
ここでもトップライムはダビデで1分53秒121とタイムを詰めた。2番手から4番手まで53秒台とタイムを上げて来た。54秒台に6番手から22番手が続いた。55秒台を22番手から34番手までが記録した。真生騎もタイムアップを狙うが、コースインしてすぐに転倒してしまい、計測が出来なかった。
だが、転倒した3コーナーまでのタイムは、昨日までより0.6秒タイムアップしていた。1周出来ていれば、予選1回目のタイムよりも1秒は短縮出来ていたはずだ。だから、自信を失うことはなかった。転倒してしまったが、大きなダメージはなく、決勝を迎える。
レース1は転倒し、レース2は31位でチェッカーとなる
レース1-リタイヤ
トップ争いはポールポジションを獲得したダビデ、ブッソロッティ・マルコ(ドゥカティ)マントヴァーニ・アンドレア(ドゥカティ)との争いとなるが、5周目に多重クラッシュがあり赤旗中断となる。
真生騎はスタートが決まり、前の集団に追いついたが、徐々に後退してしまう。前を走るライダーが転倒して出たオイルにのって自身も転倒してしまう。転倒したことで、再開されたレースを走ることが出来ずに終わった。
レースは7周で争われプスセドゥ・エマニュエル(ドゥカティ)が勝った。2位にアンドレア、3位にダビデが入り、ドゥカティが表彰台を独占した。
6月23日日曜日
朝のフリー走行は雨となり、真生騎は久しぶりにレインタイヤを履き雨の走行をこなす。感触は悪くなかった。だが、レース2決勝の天気がどうなるのかわからない空模様となる。真生騎は天気の回復を待った。データのあまりない雨よりも、ドライでの走行を望んだ。
レース2-31位
スタート前のタイミングで晴れてドライでコンデションに代わり、スリックタイヤでの決勝となった。
ダビデ、アンドレアの争いにオッタヴィアーニ・ルカ(MVアグスタ)ダッラ・ポルタ・ロレンツォ(ヤマハ)が加わり、4台の争いとなる。ダビデが、0.088差で優勝のチェカ―を受けた。2位にアンドレア、3位にルカが入った。ロレンツォは4位となる。
真生騎はスタートがうまく行かず、予選順位とあまり変わらないポジションで、単独走行となり31位でチェッカーを受けた。
真生騎の決勝中のベストタイムは1分58秒960で、予選タイムで出した56秒台で周回が出来ていれば、15番手争いが可能だっただけに、悔しさの残るレースとなった。
次戦は中断グループまで浮上することを誓う
「今回はレース前に2日間のテストがあり、コースを学習することが出来、走行毎にタイムも1秒ずつ上がり、順調に進んでいました。それなのに、予選2回目で転倒してしまったことで、その流れをつなげることが出来なかった。記録出来ていたタイムを決勝で出すことが出来ずに、前についていけなくなってしまった。なぜ、タイムアップ出来なかったのか、その原因を次のレースまでにデータを見て、映像を確認して探ります。まずは、今の下位グループから抜け、中団グループでチェッカーを受けることが出来るように準備したい」
第4戦は8月4日にミサノで開催される。
阿部真生騎 転倒でリズムを崩し悔いの残る戦い。ムジェロ戦【CIV第3戦】 ギャラリーへ (10枚)この記事にいいねする