
6月8日(土)のFIM世界耐久選手権(EWC)第2戦「スパ8時間耐久ロードレース」。上位勢の転倒もあり、そこから挽回をして完走したチームも多かったが、トラブルが直らずにリタイアしたチームも出た。そんななか難コースを攻略したYART - YAMAHAがポール・トゥ・ウインを果たした。勢力図も見えてきた2024年シーズンのEWC第2戦での出来事やレース内容をレポートしたい。
経験と短期間でのセッティングが活きた予選、決勝序盤でも見えたペースの違い
まず、レースウイークが始まる直前にF.C.C. TSR Honda Franceのマイク・ディ・メリオが欠場することが発表された。それにより同チームは2人でレースを戦うことに決めた。
予選で強さを見せたのは開幕戦ル・マン24時間でもポールポジションを獲得したYART - YAMAHAだった。同チームの3人のみ2分18秒台を記録しており、平均タイム2分18秒587と圧倒的なラップタイムで先頭を奪取。2番手は平均タイム2分19秒278のF.C.C. TSR Honda France、3番手は2分19秒357のYOSHIMURA SERT MOTULだった。
そしてSSTクラスでは日本チームのTEAM ETOILEが2分22秒381でポールポジションを獲得。なかでも渡辺一樹は2分21秒911のSSTクラスでのポールレコードをマークしており、総合10番手からのレーススタートを決めた。
決勝は気温20度、路面温度34度とこのレースウイークでは一番暑くなったが、過ごしやすい気候だった。スパウェザーに翻弄されたのは水曜日のパレードが中止されたのみで、予選日や決勝日は一度も雨が降ることはなかった。
現地時間13時に好スタートを決めてホールショットを奪ったのはYOSHIMURA SERT MOTULだったが、YART - YAMAHAと4番手スタートのBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMが序盤のレースを引っ張る。昨年同様にBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMもペースが良くてトップに立つが、数周するとYART - YAMAHAが後続を少しずつ引き離して、予選同様に速さを見せていった。
1周目はSSTクラスでポールポジションを獲得したTeam ETOILEが14番手、F.C.C. TSR Honda Franceはバイクのスイッチが入っておらずエンジン始動が遅れて17番手まで落ちていた。
6周目には4番手のKM 99がケメルストレートエンドのブレーキングで転倒。ピットで修復を試みて最後尾に落ちることになる。そのころにはF.C.C. TSR Honda Franceは上位勢に追いついていた。
15分を過ぎるとYART - YAMAHA、BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM、YOSHIMURA SERT MOTUL、F.C.C. TSR Honda France、HONDA VILTAIS RACING、TATI TEAM BERINGER RACING、KAWASAKI WEBIKE TRICKSTARの順となる。SSTクラスでは8番手にTEAM AVIOBIKE by M2 REVO、10番手にWOJCIK RACING TEAM 777、11番手にTRT27 AZ MOTO、12番手にTEAM ETOILE、13番手にTECMAS MRP BMW RACING TEAMと続く。
レース開始から20分を過ぎるとYART - YAMAHAが独走体制で逃げていき、BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMとYOSHIMURA SERT MOTULが2番手を争う。少し差が開いてF.C.C. TSR Honda Franceがいたが、30分を経過するとF.C.C. TSR Honda Franceが2番手争いに追いつき、さらにハイペースで走り2台を抜いて2番手まで浮上した。
アクセルの全開が多くて6速のギヤも多用するコースだけに、レース開始の40分から50分と早いルーティンでほとんどのチームがピットイン。YART - YAMAHA、YOSHIMURA SERT MOTUL、F.C.C. TSR Honda France、BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMがトップ4となる。
転倒やトラブル発生。YART-YAMAHAとYOSHIMURA SERT MOTULは同一周回での優勝争い展開
1時間10分、ハイペースで追い上げている2番手のF.C.C. TSR Honda Franceが14コーナーで転倒。マシンを起こして6番手で復帰すると、ピットに入らずに走行を続けた。その30分後にルーティンのピットインを行ったが、そのタイミングで修復作業をして約7分ほどの作業のち25番手で復帰した。
さらに、SSTクラス上位を走っていたTEAM ETOILEだったが、ガス欠によりコース後半でストップ。すぐにエンジンがかかりピットロード入口まで戻るもまたも止まってしまい、大久保光がピットまでマシンを押して戻った。このトラブルにより5分ほどのタイムロスをした。総合25番手、SSTクラス13番手までポジションを落としてしまう。
続いて、SSTクラス3番手のTECMAS MRP BMW RACING TEAMが転倒を喫してしまい、総合30番手、SSTクラス17番手までポジションダウン。BMWチームが一気に下位に沈んだ。
2時間30分には、4番手のHONDA VILTAIS RACINGがマシンをガレージに入れる。オーバーヒートのようで、ラジエーターに水を入れるなどの冷却を施して5分以上のロスにより18番手でコース復帰する。
3時間20分には3番手のBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMが8コーナーで転倒。自力でピットに戻り修復作業に時間を要す。また、WOJCIK RACING TEAM 777もその後に転倒を喫してリタイアすることになった。
転倒後のF.C.C. TSR Honda Franceのマシンのダメージ
BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMは一度コースに復帰したが、数周後にまたもピットイン。オイル漏れの修復が叶わずに4時間11分にリタイアしたことが公示された。
開始から4時間、YART - YAMAHAのピットインのタイミングでYOSHIMURA SERT MOTULがトップ浮上。同一周回でのトップ争いの機会が訪れるが、すぐにYART - YAMAHAがトップを奪い返す。4時間30分、KM 99が2度目の転倒。トップ争いからは遠のいており、ポジションを下げることはなかったが、大きなロスとなった。
4時間45分にもYART - YAMAHAとYOSHIMURA SERT MOTULのトップ争いがあったが、YART - YAMAHAがラップリーダーを守り抜き、以降は一度も首位を譲ることなく独走でレースを進めていった。
5時間15分、順調に走行を続けて4番手だったKAWASAKI WEBIKE TRICKSTARがスロー走行でピットに自走で戻る。マシン修復に取り掛かるが、エンジンのトラブルが直らずにリタイアとなった。
上位勢のポジションはほぼここから動かないが、6時間22分にはSSTクラスに動きがあった。クラストップ、総合5番手走行中だったTEAM AVIOBIKE by M2 REVOがマシンをピット内に入れる。しかし、すぐに修復済ませて最初限のロスで復帰するもSSTクラス2番手、総合8番手に落ちてしまう。
それで、NATIONAL MOTOS HONDA FMAがSSTクラスのトップに立ったが、数周でTEAM AVIOBIKE by M2 REVOがトップを奪い返してクラス優勝を諦めなかった。
最後の給油。YART-YAMAHAの完勝、日本勢はすべて完走
そこから大きなトラブルはなかったが、燃費の問題でレース残り数分の段階で燃料補給のみのピットインをするチームが相次ぐ。そのピットイン後が実際の順位で、TEAM BOLLIGER SWITZERLAND #8が6番手、F.C.C. TSR Honda Franceが5番手と入れ替わるなどがあった。
そして常にトップを維持していたYART - YAMAHAがノートラブルで優勝を飾った。2位はYOSHIMURA SERT MOTULで連勝とはならなかったが、なんと40.145秒差の同一周回でペース自体は良くレースを進めていた。3位はプライベーターチームのTATI TEAM BERINGER RACINGで、ヤマハ、スズキ、ホンダが表彰台を獲得した。
レース折り返し地点でのトップ争い。YOSHIMURA SERT MotulとYART-YAMAHA
4位はHONDA VILTAIS RACING、5位はF.C.C. TSR Honda Franceでトラブルと転倒が表彰台を逃した要因となった。上述の通りKAWASAKI WEBIKE TRICKSTARとBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMはリタイアに終わった。
SSTクラスではアプリリアのマシンを使うTEAM AVIOBIKE by M2 REVOが優勝。総合では7位だった。クラス2位は総合8位のNATIONAL MOTOS HONDA FMA、3位は総合10位のTEAM 33 LOUIT APRIL MOTOだ。
日本人を擁すチームとしてはTEAM ETOILE(亀井雄大/大久保光/渡辺一樹)が総合13位のSSTクラス6位、石塚健が所属しているMACO RACING TEAMが15位、綿貫舞空が所属している3ART BEST OF BIKEが19位と見事な結果となった。
ランキングとしてはYOSHIMURA SERT MOTULが88ポイントで首位、1点差の87ポイントでYART - YAMAHAが続き、54ポイントのTATI TEAM BERINGER RACINGが3番手だ。SSTクラスのランキングは1番手が91ポイントのNATIONAL MOTOS HONDA FMA、2番手が55ポイントの綿貫を擁す3ART BEST OF BIKE、3番手が54ポイントのChromeburner-RAC 41-Honda。Team ETOILEは25ポイントで8番手につけている。
次戦は第3戦鈴鹿8時間耐久ロードレースで、三重県の鈴鹿サーキットにて7月21日に決勝レースが開催される。
2024年スパ8時間耐久はYART-YAMAHAの完全勝利!予選ではTEAM ETOILEがポールと健闘、日本勢は見事完走 ギャラリーへ (20枚)この記事にいいねする