2023年からスーパースポーツ世界選手権(WSBK)のスーパースポーツ600(SS600)に参戦を開始している阿部真生騎。今回は2023年9月22日~24日に開催されたWSSP第10戦スペイン・モーターランド・アラゴンを戦い、連戦となるWSSP第11戦ポルトガルラウンド、アルガルヴェ・インターナショナル・サーキットへと向かった。

WSBK第10戦スペイン・モーターランド アラゴンは転倒で予選通過ならず

阿部真生騎は、周辺は砂漠地帯で、サーキットも赤茶けた山に囲まれた荒野に作られたスペインのモーターランド アラゴンへと向かった。全長5,345m ホームストレートとバックストレート下り1,726mの長い直線を持つ高速サーキットだ。レースウィークの木曜日には現地に入り、いつものようにチームスタッフとコースを歩いて確認作業を済ませた。ここも、初めての挑戦となるサーキットだ。

9月22日(金曜日)にはフリープラクティス45分が2回行われる。午前中に行われた1回目 は、コースに出て2周目にエンジントラブルが出てしまい、マシンを修復する間に、そのまま走行時間が終わってしまう。トップタイムはN. BULEGA(Ducati)で1分54秒043、真生騎は1周の走行で2分07秒036と記録される。
午後の2回目の走行に賭けたが、10周してピットイン・アウトしてコースに出るもエンジンの回転が上がらずそのままピットイン。その後、走行することが出来ずに終わった。トップタイムはN. BULEGAで1分53秒671とタイムを詰めている。真生騎は2分00秒841と、2分を切ることが出来ていない。コースをまともに走ることがないままに予選を迎えることになる。

 

1017_abe_maiki381196995_828345155417643_1122358583591155678_n_resulte

第9戦フランス・マニクールに続き、初めて走るコースが続く。不利な形で予選を迎えることとなった

 

9月23日(土曜日) スーパーポールは、スタート直後に、前車に急激に追いつき、接触し転倒してしまう。バイクのダメージが大きく、コース復帰できずに終了してしまった。計測タイムがなく、予選落ちとなる。ポールポジションは、トップタイムを叩き出し続けているN. BULEGAが1分52秒306で獲得した。
レース1はN. BULEGAが、2位のM. SCHROETTER(MV Agusta)に3秒581と差をつけて独走優勝を飾る。3位にはY. MONTELLA(Ducati)が入った。
レース2もN. BULEGAが勝ちダブルウィンを飾った。2位にS. MANZI(Yamaha)が激しい2位争いを0.753差で制し、3位がF. CARICASULO(Ducati)となった。

真生騎は、本拠地としているバレンシアに戻り、近郊のインターナショナルカートドローモ(カートの世界選手権も開催されるサーキット)でチームオーナーのファビオと共に3日間YZF-R6で乗り込みをする。アラゴンでのやるせない思いをバネに、ベストタイムを更新する走りを見せた。

 

1017_abe_maiki381127771_824745345998712_3468885820938197495_n_resulte

接触・転倒を喫し、計測タイムを出せなかった真生騎。今年のチャレンジは次回ポルトガル戦が最後となる

 

最終戦ポルトガルでは入魂の26位ゴール!

トレーニングを終えて、連戦となるポルトガルへと向かう。火曜日に、バレンシアから900kmを約9時間かけてトランスポーターで移動し、目的地のポルティマオに夜8時くらいに到着。ヨーロッパ大陸の一番西に位置するポルトガルは、日本とは8時間差となる。

ポルティマオのサーキット、アウトドロモ インターナショナル アルガルベは全長4,592m、アップダウンを繰り返す「ハイスピード・ローラーコースター」と呼ばれる。ブラインドコーナーが多く、加速、減速の調整がシビアな難所として知られている。初挑戦となる真生騎にとっては、厳しい戦いとなることが予想されていた。

9月29日(金曜日)、午前のフリープラクティスは、走り切り1分50秒165を記録する。トップタイムはS. MANZI(Yamaha)で、1分44秒190となる、予選通過のボーダータイムは1分44秒190だ。 午後のフリープラクティス、計測1周目に1回目のタイムを超える1分49秒1ベストタイムを記録し、2周目には1分48秒785を記録する。ラスト15分でニュータイヤに履き替えてアタックに飛び出したが、ベストタイムは2周目に記録したタイムとなる。トップタイムはJ. NAVARRO(Yamaha)が1分43秒849となり、予選ボーダータイムは1分49秒042となり、真生騎は、ボーダーラインを超える。

 

1017_abe_maiki383322366_3518965725084181_1772285715450600175_n_resulte

予選落ちが続いた中、最終チャレンジで念願の予選突破を果たした

 

9月30日 スーパーポールは、20分間の短期決戦で、4周後にタイヤ交換し、後半の計測2周でベストタイムを叩き出さなければならない。真生騎は、スタート直後の計測1周目で昨日のベストタイムを上回り、1分48秒129と詰めた。タイヤ交換して、更にベストを目指そうとするが、直後に赤旗が提示され、タイミングを失い、タイム更新できずに終わる。

ポールポジションは、N. BULEGA(Ducat)で1分42秒769、予選ボーダーラインは1分47秒908で、真生騎のベストは1分48秒129で、届かずだったが、フリープラクティス2回目でボーダーを超えており30番手で予選通過となる。

レース1決勝、真生騎は10列目からのスタート、そこから、追い上げ26位でゴールする。優勝は N. BULEGA(Ducati)で、2位のS. MANZI(Yamaha)、3位にJ. NAVARRO(Yamaha)が入った。
レース2決勝は、スタートで少し遅れるが、前の集団に食らいつく。次第に離されてしまうも、コンスタントに1分48秒台を刻み、安定した走りを見せて26位ゴールした。

優勝はS. MANZI(Yamahaが2位のN. BULEGA(Ducat)に0.084差で獲得した、3位にはY. MONTELLA Ducati)となった.

真生騎にとっては、ここが最終戦となる。

WSBK第12戦はプロメテオン・スペインラウンドで最終戦を迎える。

 

1017_abe_maikiポルトガル_resulte

先頭集団に喰いつきつつ、「ローラーコースター」に翻弄されつつも、完走し26位でチェッカーを受けた

 

【WSSP第11戦】阿部真生騎コメント
「アラゴンは、最後のストレートが長く、最終コーナーをスピードをのせてクリアして行かなければならなく、難しいサーキットだなと感じました。でも、レイアウトは、好きで、しっかり走りたいと思っていました。でも、トラブルで走ることが出来ず、自分のミスで転倒もあり、予選を通過することが出来なくて、辛いレースになりました。ポルティマオは、絶対に決勝を走りたかった。転ばないと決めて大事に挑みました。納得できる走りではありませんでしたが、両レース26位になりました。

ここが、自分にとっての最終戦でした。正直、全日本でもちゃんと走り切ることが出来なかった自分がWSSPに挑戦し1年を過ごしました。簡単に行くとは思っていなかったし、自分なりに覚悟を持って戦いましたが、まだ、まだだということを突き付けられました。それでも学ぶことも多く、貴重な経験をさせてもらえたことに感謝しています。所属させてもらえたチームに支えてもらいました。

出来れば、この経験を生かすことのできる来シーズンを望んでいます。イタリア選手権やスペイン選手権といった、国内選手権で再スタートできたらと思っています。まだ、諦められませんし、走り続けたい」

阿部監督コメント

「アラゴンを終えて、バレンシアの住まいに帰り、25日、真生騎は1時間30分程度家周辺のランニング。私はR6のタイヤ交換、ブレーキパッドの交換等マシンのメンテナンスをして、26日アラゴンの前と同じカートドーロモでR6を走らせ、27日ポルトガルのポルティマオへ移動しました。今回が最後のレースとなりましたが、流石に世界選手権は各国、各地のチャンピオンの集まりで、日本にはない超高速コーナーが多い中を全開で走り抜けてゆく迫力はただただ感心させられるものでした。経験の浅い真生騎には荷が重かったのかなと感じさせられました。

しかしトレーニングの成果はバイクの取り回しにはっきり出ていて、チャンスをもらえるのならイタリア選手権等で、もう1年間修行ができたら結果が出せるようになるのでは無いかと思っています。真生騎は、普通では経験出来ない事をさせて頂き、ご協力頂いた各社各御仁に深く感謝申し上げます。ありがとうございました」

この記事にいいねする


コメントを残す