写真:Ducati Corse / HRC

1990年代に国内外のロードレースでその名を轟かせた青木三兄弟の次男、青木拓磨氏。全日本で王座に輝いた後、世界グランプリの500ccクラスにステップアップし、これからという時に1998年のテスト中の事故で下半身の自由が効かない身体になってしまいました。

それでも4輪レースへ転向してさまざまなレースに参戦。この夏のアジアクロスカントリーラリーでは、健常者と混じっての挑戦ながら、見事に優勝。同じ条件でハンデなしで障がい者がFIA公認レースで勝つのは世界初のこととなりました。この連載では、青木拓磨さんの今でも溢れ続けるモータースポーツへの情熱を語ってもらいます!

「青木拓磨のモータスポーツライフ」前回はコチラ!

新時代に突入した感がありあり!

みなさん、こんにちは。今回は先日開催されたMotoGP日本グランプリの現場に直接足を運んでパドックを見て回った感想を書いてみたいと思います。今年、最もびっくりしたのは、なんといっても今までオープンな感じだったピットが、シャッターを閉めていることです。ドゥカティもアプリリアも以前はもっとオープンだったはずなんですが、隠す必要があるということで、ピットのシャッターを閉めてしまってました。調子のいいドゥカティやアプリリアだけならまだしも、あのKTMもそうなんです。これまでなにも隠していなかったのに、今までと違ったなという印象が強く、それがとても気になる一戦でした。

 

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ドゥカティのみならず、アプリリアやKTMも極力、ピットを見せないように隠してしまっていました

 

もちろん、隠しているのは空力パーツですよね。今、どこのチームも空力に関していろいろやってきています。それをいち早くやってきた2メーカーのチームが現在上位を独占していることを考えると、今回のこのシャッターガラガラも仕方ないな、というのが正直なところです。

特にドゥカティのワークスチームはエアロダイナミクスの効果を有効に使う、まさに最先端を行っているという感じがしました。今回実車を間近で見てみましたが、なんとフロントフォークにまでアイテムを装着していることがわかります。これでスタビリティが増しているんだろうなぁと推測できます。他にも、フロントディスクの下にも翌端板が付いていましたし、整流という考え方が徹底的に行なわれていて、すごいところまで行っているな、と思います。

 

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Ducati Lenovo TeamのDesmosedici GP。各種エアロパーツが徹底的に装着されています

 

日本勢にも頑張ってほしいのですが…

欧州勢の勢いに対し、日本勢は? というと、やはりその空力開発の出遅れた分、そして台数の論理が成績にもつながっているように見えます。

MotoGPはタイヤの本数もテストの時間も決められていて、走行する時間がほんとにないですよね。そうなると数の原理が効いてきます。車両1台で得られるデータは限られていますから、こうやって制限の多い中では台数が多い方が圧倒的に有利です。ホンダやヤマハは、わずかな台数でどうやってデータを収集するのか、追い上げていけないでしょう。いろんな解析も進んで入るでしょうが、実走行で確認できることというのもありますからね。

さらに、開発に携わるライダーは、実際のライダーから意見と情報を収集して次のマシン開発へのフィードバックしますが、基本的には開発チームが持ち込んだ車両をテストするのが殆どです。基本的には、エンジンエンジニア、ECUエンジニアの考え方が物事を進めていくわけです。バイクって、特にレースではエンジンパワーがあればいいというものではありません。そのパワーを路面に伝えられなければタイムにはつながりません。日本メーカーもエンジンパワーで負けているわけでは決してありません。いかにリアタイヤにトラクションを掛けられているか、です。パワーが出すぎてタイヤがスピニングを起こして、前に進まないってことがあるのと同じで、ライダーが本来求めている、扱いやすさが重要になってきます。

また、リアのライドハイトシステムに関しても、ドカティは非常に考えられているスイッチを使用していて、ライダーがコーナリング中に余計な仕事(動作)をしなくても良いようになっているのも、ドカティの強さの秘訣なのかもしれません。

そして、シーズンも終盤でこの日本GP直後には、マルケス選手が2024年にドカティ車を駆るグレシーニレーシングへ電撃移籍をすることになりました。この決断には相
当な葛藤があったものだと考えられます。それほどライダーとしても、追い詰められていたと言うことも考えられます。そしてライダーの旬もあるわけで、マルケスも齢30歳です。ライダーとしてもこれ以上待てない!と言うことがあったのでしょう。それがわかっているからこそ、この決断だったのかと元ライダーながら思うわけです。

 

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日本勢HRCは日本GPで3位を獲得しました。しかし、台数が多いほうが圧倒的に有利なのがMotoGPです

 

参考URL

青木拓磨のモータースポーツチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC6tlPEn5s0OrMCCch-4UCRQ

takuma-gp
http://rentai.takuma-gp.com/

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