●文/佐藤洋美 ●写真/ヤマハ発動機

バレンティーノ・ロッシが世界で活躍できるライダーの育成を目指す「VR46 Riders Academy」に参加するために、阿部光雄監督と真生騎は、全日本ロードレース選手権第4戦SUGO大会をキャンセルしてイタリアへと向かった。
ヤマハは、未来へと繋がるプロジェクトのひとつとして、このアカデミーと2016年にパートナーショップを結んだ。「Yamaha VR46 Master Camp」として、年2回、若手ライダーを選抜し、約1週間、「VR46 Riders Academy」の本拠地「The Motor Ranch」や「ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリ」で指導する。
「Motor Ranch」は、バレンティーノ・ロッシの故郷、イタリアのタヴッリアにある本人のプライベートコース。広大な敷地には、大小2つのオーバルを中心とした複合的なレイアウトのダートトラックがあり、ロッシを始め、VR46 ライダーたちのトレーニング施設として活用されている。
新型コロナウィルスの影響で、休止していたが、今年は11回目となるプログラムが実施されることになった。パッサコーン・サンルォン(タイ/19歳)、ウォラポット・トンドンムァン(タイ/17歳)、アルディー・スティア・マヒンドラ(インドシア/16歳)、アリフ・ダニエル・ビン・ムハマッド・アスリ(マレーシア/18歳)、阿部真生騎(日本/18歳)が参加した。

ロッシが「Norick」こと故阿部典史のファンだったことは、ロードレース世界選手権(WGP)ファンなら誰もが知っている。自分のニックネームをロッシフミとして、髪型を真似してロン毛にした若きロッシの姿を覚えている人も多い。ノリックの息子が「VR46 Riders Academy」に参加することは注目を集めた。
スーパーバイク世界選手権が開催されているミサノ・ワールド・サーキットに出かけ、Pata Yamaha with Brixx WorldSBK Team と GYTR GRT Yamaha WorldSBK Team のピットを訪れ、T・ラズガットリオグルと A・ロカテッリに挨拶してGYTR の野左根航太と eSport のプレ・イベントを楽しんだ。
キャンプ最終日は、Galliano Park サーキットで YZF-R3 に乗り、VR46 本社を訪ね、VR46 Motor Ranch でバレンティーノ・ロッシ選手と対面した。Galliano Park サーキットでインストラクターの A・スーラと M・ゴンザレスからコース・レイアウトに関する説明を受けてコースイン。最速タイムを競い、1位マヒンドラ、2位サンルォン、3位真生騎となった。
最後は、VR46 本社訪問と卒業セレモニーに出席。5 人はYamaha VR46 Master Camp の公式参加証書と VR46 からプレゼントを受け取り、VR46 Riders Academy のトレーニング・セッションとアメリカン・レースの見学に招待され、ロッシ選手と握手を交わし、Master Camp を終えた。

阿部真生騎

「WSBのパドックやピット、ホスピタリーは、とても立派で設備が整っていて、世界の舞台は違うなと思いました。ロッシさんは、すごく気さくな人という印象でした。インストラクターへの質問は、通訳の人がついてくれて、走り方や、コースへの疑問に答えてくれました。ここも、バスケットのコートや、ジムと、そして、コースもたくさんの種類があり、バイクも用意されていて、たいへんな規模でした。参加することが出来て、ライディングに関してというより、精神的にはとても得るものがあったと思っています。世界を走りたい、いつかは、そこに行くんだと思っていますが、具体的に、世界の姿がクリアになりました。世界へ行くと行っても、まだまだなのはわかっているので、今は、とにかく目の前のことに取り組んで力を付けて行くしかないと思っています。走れる環境に感謝して、時間を無駄にせず頑張って行かなければという気持ちが強くなりました」

阿部光雄

「2度目の参加ですが、ライダー育成の勉強という視点で、しっかり見てこようと出かけました。MotoGPライダーの多くは、オフロードのトレーニングを熱心にやっている印象なので、そのへんをしっかり確認したかった。設備が、とにかく、素晴らしいし、コースを使って、様々なトレーニングに挑戦出来る環境がうらやましく感じました。アジアの若手ライダーが、この環境を体験することは、大きな意味があります。真生騎にも、全日本を休んでも世界の意識を感じる機会だと参加を決めました。世界のトップライダーたちが、懸命にトレーニングする姿を見るだけでも刺激になったと思います。アジアのライダーたちも、数年前に比べてグーンとレベルアップしていることを感じました。確実に世界へとやってくると思います。得るものの多い旅でした」

真生騎は、8月7日決勝の鈴鹿8時間耐久に初参戦することが発表された。AKENO SPEED・YAMAHAから伊達悠太と共に挑む。

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