
「EVA RT 初号機 Webike TRICK STAR」は、鈴鹿8時間耐久ロードレース第41回大会に、出口修/アンソニー・ウェスト/マチュー・ギネスの3選手で参戦した。
前日からの台風の影響を受け、めまぐるしく変わる天候予報の中で行なわれた決勝レースでは、一時8位まで順位を上げることに成功した。しかし、さらに上位を狙う中、50ラップ目に出口選手が転倒。命に別状は無かったものの、怪我を負い出走不可能となり、マシンも大破し、そのままレースへ戻ることが出来ない状況になった。
チームはそのまま棄権を選ばず、ゴールを切ることを目標に変更。メカニック達の努力で、大破したマシンは修復され、午後7時20分に再びコースへ送り出された。
ライダーはマチュー選手。応援席からは大きな拍手が沸き上がり、チェッカーフラッグを受ける為にコースイン。マチュー選手にとっては、この10分間が今大会決勝の最初のスティントであり、最後のスティントとなった。それを噛み締めるようにしっかりと走り切り、午後7時30分のゴールを迎えた。
■参戦レース:鈴鹿8時間耐久ロードレース第41回大会
■サーキット:鈴鹿サーキット / 日本
■開催日 :2018年7月27-29日
■チーム名 :EVA RT 初号機 Webike TRICK STAR
■ライダー :出口 修 / アンソニー・ウェスト / マチュー・ギネス
■監督 :鶴田竜二
■結果 :予選 22位 決勝 DNF(56位)
27日 予選
今年は早くから梅雨が明け、約2週間以上続く猛暑の中、ドライコンディションで行なわれた。レギュレーションでタイヤ使用本数の制限があり、チームは決勝に照準を合わせ予選での本数をなるべく使用しない作戦で臨んだ。
タイヤの種類も決勝を見据えたミディアムハードを選定し、第1ライダーのアンソニー ウエスト選手から出走を始める。開始早々、他のチームのライダーがヘアピンカーブで転倒、コースに車両が残ってしまった為、赤旗中断となってしまう。
車両回収も終わり、リスタート。 計測1周目でアンソニー選手は既に自己ベストタイムに迫るタイムで各コーナーを攻め立ててコントロールタワーを通過。 2分9秒8のタイムを計測。2周目もタイムアタックを試みるも、タイムの遅いマシンに阻まれタイムが更新出来ない。
次の周も同じく途中までのセクター区間では自己ベストタイムを刻むも、クリアラップが取れずタイムは更新出来なかった。 この後に続く出口選手やマチュー選手もアンソニー選手が使用したタイヤを使用しなければならない為、タイヤを温存する目的でまだ予選時間は残っていたが1回目の予選を切り上げ終了。
続く第2ライダーの出口選手が予選を出走。先ほど行なわれたアンソニー選手のタイヤを使用しコースイン。 オープニングラップはマシンを確かめながら順調に各セクターを通過する。 続いて計測ラップに突入した。順調にアンソニー選手に迫るセクタータイムを記録。 しかし、セクター3に入った所で、また他車によるアクシデントがコース上で起こり、レッドフラッグとなり中断となってしまった。
リスタート後、出口選手は集中を切らさず2分10秒6と言うタイムで15番手に着ける事が出来た。
続く第3ライダーのマチュー選手の予選時間となった。 今回はレースウイークからチームに合流となったが、そのハンディを感じさせない気丈な態度でチームを盛り立てた。 その姿は2014年にEWC世界耐久チャンピオンになった実績も大きくうなずける振る舞いであった。
コースに出て計測が始まったその周に、またもやレッドフラッグとなり、これで全てのセッションにレッドフラッグによる中断が入り、集中力を切らさずチーム力も試される事に。気を取り直し、マチュー選手もタイムアタックをするも、なかなかクリアラップが取れず、しかも既に2人が使ったタイヤによる走行で思う様にタイムが伸ばせず2分12秒台で予選を終了。
アンソニー選手、出口選手も予選2回目に更にタイムアップ出来る自信は持っており、チームとしては2回目の予選で大幅に順位を上げるイメージをしていた。しかし、アンソニー選手からコーナーでもう少し回転を上げたいのでギヤ比を変えて欲しいと要望があり、チームはそのリクエストに応え仕様を変更。 コースに送り出したがアンソニー選手はタイムを更新する事が出来なかった。
ピットに戻ったアンソニー選手のコメントでは、マシンのフィーリングが全く変ってしまい、凄く乗り難くなってしまったと言う事だった。 この時点でアンソニー選手の予選時間は終了。チームは変更したギヤレシオを戻し、出口選手の予選に備えた。 出口選手は真っ先にコースに飛び出し、そのやる気を伺わせた。
しかし、計測周回に入った所でまたレッドフラッグにタイムアタックを阻まれた。 ピットに戻った出口選手のコメントでもマシンが全然変ってしまい思うようにタイムアップが出来ないと言う事だった。 実はギヤレシオを変更する為にスイングアームの変更をしてしまい、その影響が悪い方向に出てしまった。出口選手のコメントにより、元の仕様に戻す為に予選時間終了を待たず作業に取りかかった。
元通りの仕様に戻し最終走者のマチュー選手にタイムアップを任す事になった。予選順位は3人の合計タイムで決められる為、マチュー選手のタイムも重要だ。出口選手が使用したユーズドタイヤで最終予選に挑んだが、 開始早々またレッドフラッグにタイムアタックが阻まれる。
第3ライダーはペースの遅いライダーが多くクリアラップを確保するのも大変であった。 その中、マチュー選手は1回目のタイムを更新し、2分11秒台に上げてきた。 しかしここで予選時間は終わり、チームの順位は22番手となった。
29日 決勝
前日からの台風の影響を受け天候はめまぐるしく変わる予報の中で行なわれた。各チームグリッドに整列し、いよいよスタート進行が行なわれる10分前辺りから急に雨が降り出し、各チームの動きが慌ただしくなった。
チームはスリックタイヤで構えていたが、レインタイヤに交換しスタートを待った。スタート間際で雨が強くなり完全なレインコンディションでスタートが切られる事となった。スタートライダーのアンソニー選手はレインコンディションは特に得意としている為、チームも期待が膨らむ。
午前11時30分スタートが切られた。
アンソニー選手はスタートを上手く決め、22番手から大幅にジャンプアップを決めた。1周目のコントロールラインを15位で通過。2周目14位、4周目に13位と順調に順位を上げて行く。
その後13位争いを続ける中、先ほどまで強く降っていた雨も止み、サーキットは再び高温のコンディションに戻り、今度は急激に路面を乾かせて行った。 周回を重ねるにつれ、ドライコンディションに移り変わり、レインタイヤでどこまで走るかがポイントとなって来た。 難しいコンディションの中、12周目に11位にポジョンを上げる。
トップグループではスリックに交換しようとピットに戻るチームが出始め、レースは大きく動きを見せた。アンソニー選手は8番手まで順位を上げ15周を終えた所で、タイヤ交換を行なう為ピットイン。タイヤ交換とガソリン給油、車体のセッティングをレインセッティングから、ドライコンディションに戻す為にやや時間を費やし、ピットワークトータル1分08秒の時間で、再びアンソニー選手がコースに戻った。
コース復帰後の順位は17位となった。レインコンディションでのタイムが2分23秒台だったのに対し、2分13秒台でラップを重ね始め、更に2分12秒台にタイムを上げ、プッシュしていった。
25周目には16番手に順位を上げ、26周目には15番手、27周目にタイムを2分11秒8とペースを更に上げた。 28周目に順位を12番手に上げ確実に前車とのタイムを縮めていった。
その後もアベレージ2分11秒台のラップタイムで安定してラップを刻む、このタイムは4番手争いをしているタイムと変らず、4位から26秒後に着けていた。
遂に30周目に11番手まで順位を上げたアンソニー選手、残りの与えられた10ラップを走り切り合計40ラップを一人で走り切りピットイン。スリックタイヤに交代し燃料を補給した後、本来27周する予定だったが、補給警告ランプが作動した為アンソニー選手の判断で26周でピットに戻ってきた。
ガソリン給油とタイヤ交換のピットワークを済ませ、今度は約46秒でコースへ戻した。このタイムはトップグループと並ぶ好タイムだ。
ライダーはアンソニー選手から出口選手に交代。コースインした出口選手もアンソニー選手と遜色ない良いペースで前を追いかける。44周目にはポジションを9位に上げた。その後も順調にラップを刻み、更に前車との差を詰めて行く出口選手。アベレージは12秒台で安定していた。
しかし、このまま行くと思っていた50ラップ目に、セクター3からホームストレートに出口選手が戻って来ない。モニターには最終コーナーで転倒している10号車の姿が映し出された・・・
映し出された出口選手は単独では歩けない状況で、そのまま救急車で医務室へ担ぎ込まれた。マシンは数分後レッカー車両でピットまで戻された。出口選手の様態は診察をしたドクターからこのまま出走する事が不可能だと告げられた。
一方、転倒したマシンをメカニックがチェックしたところ、転倒の影響で右側のハンドルが折れ曲がり、フレームを突き破ってしまっている事が判明。 フレームを損傷している事でそのまま競技を続行させる事は危険が伴うため鶴田監督は悩んだ末、レースをそのまま継続する事を断念した。
しかし、このまま終わるのではなく、せめてゴールだけは切ろうとチームはマシンの修復に取りかかった。
メカニック達の努力で大破したマシンを修復し午後7時20分に再びコースへ送り出す事に。ライダーはマチュー選手。応援席からは大きな拍手が沸き上がり、チェッカーフラッグを受ける為にコースインして行った。
マチュー選手にとってはこの10分間が2018年鈴鹿8時間耐久ロードレース決勝の最初スティントであり最後のスティントとなった。それを噛み締めるようにしっかり走り切り午後7時30分のゴールを迎えた。
出口選手 コメント
2018年鈴鹿8時間耐久ロードレース、エヴァRT 初号機Webike TRICK STARに沢山の応援有難う御座いました。
22番手からスタートしたレースは、アンソニーが難しいコンディションの中を大きくポジションを上げた所で私に交代。9位まで順位を上げ、更に上位を狙おうと果敢に攻め続ける中、最終コーナーでギア抜けからのハイサイド転倒を喫してしまいました。
私は医務室に搬送され、マシンはその後ピックアップされましたが、修復してチェッカーを受けるのが精一杯・・・望んだ結果とは成りませんでした。1年かけて準備をしてくれたチームスタッフ、サポート企業様、そしていつも温かく応援して下さるファンの皆さんには申し訳ない気持ちでいっぱいです。
私の体の方は、若干の負傷は有りましたが元気です。御心配して下さった皆様にも重ねてお詫び申し上げます。今は怪我の治療に専念して早期復帰を目指します。引き続き応援頂ければ幸いです。
アンソニー選手 コメント
レースは残念な結果で終わってしまいましたが、これもレースです。仕方がありません。私個人としてはこのチームは優秀なライダー、優秀なメカニック、良いマシンが揃っていてとても、モチベーションも高くレースに取り組む事が出来たのでとても良かったです。
またファンの皆さんがとてもあたたかく素晴らしかったです。機会を与えて貰えるなら是非もう一度チャレンジしたいと思います。
最期に今回のレースに参戦に伴いご協力を頂いたスポンサー、チーム、鶴田監督、熱い応援をしてくれたファンの皆さんに感謝しています。
マチュー選手 コメント
レーシングアクシデントはどんなチームでも起こりうるのが耐久レースです。 耐久レースを経験している人なら良くわかっているでしょう。私も過去の経験から苦い経験も、幸せな経験もしてきました。だからこそ、この耐久レースが好きなのです。
私にチャンスを与えてくれた鶴田監督に感謝しています。このチームはとても優秀で居心地が最高でした。チームの皆さん、ファンの皆さん全ての皆さん、ありがとうございました!
鶴田監督 コメント
今期はEWC参戦を諦めてこの1戦に臨みました。昨年よりチームのポテンシャルはアップし手応えは充分感じておりました。天候も私達が望む形になり表彰台への可能性を抱きながら進めていましたが、序盤の転倒で戦列を離れる形になってしまった事はとても残念に思います。
やはりアクシデントの裏にはそれなりの原因があり、改善しなければならない問題点を事前にクリアする事が大事だと痛感されました。この経験を糧として次に繋げて行きたいと思います。
今大会も大変多くの方達のお力で参加する事が叶いました。我々チームのチャレンジにご賛同頂き、ご協賛を承っているWebike様をはじめ各スポンサー様、イカヅチ作戦サポーターをはじめ、個人スポンサーの皆様、各御関係者様、そしていつも熱い応援を頂いているファンの皆様に心から感謝しております。
この先また1年がとても長いですが、リベンジ出来る様に取り組んで参りますので引き続きどうぞよろしくお願い致します。
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