■大会名
世界耐久選手権第4戦 スロバキアリンク8時間耐久ロードレース

■開催地
スロバキアリンク / スロバキア

■開催期間
6月24日

■ライダー
エルワン・ニゴン
出口 修
ジュリアン・ミレット

■監督
鶴田竜二

■結果
予選 8位
決勝 20位

FIM 世界耐久ロードレース選手権第4戦 結果報告

世界耐久選手権第4戦スロバキア8時間耐久決勝が行われました。決勝日は30度を超える猛暑となり、当初の予定より30分早い午後13時30分にスタートが切られました。

8番グリッドからスタートしたエルワン・ニゴンがオープニングラップから果敢に攻め、1コーナーで3番手にジャンプアップし、トップ争いに加わります。5コーナーで抜かれ4番手に順位を下げ4番手で通過、2周目に入り、熾烈な順位争いが繰り広げられました。

エルワンは3位争いに加わり、5~6番手で周回します。1スティント後半に入っても3位争いは6台の集団で争われますが、エルワンは無理をせず、3番手をいつでも狙える位置をキープしながら走行を続けます。

ピットイン予定は、23周目、スタッフはライダー交代のための準備を整えてエルワンを待ちますが、エルワンはピットインせずに走行を続けます。エルワンは、燃費を考え、予定より1周多く周回出来ると判断して、24周を終えてピットイン、燃費の良さがポジションアップにつながり、3番手へと浮上します。

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1回目のタイヤ交換とガソリン給油を行います。ドイツ戦で新たに投入したロケット型の給油タンクは前戦でトラブルがありましたが、今回はしっかり改善出来たことで、スムーズに給油することが出来ました。このことで給油時間も短縮、ピット作業を確実にこなすことが出来ました。

ピットワークの時間は、ピットロードでの一連のルーティーン作業を終え、入りピットを出ていくまでのトータルタイムが、常にモニターに表示されるのですが、トリックスターのピットストップは43秒とこれまでのタイムを大きく上回り、トップチームに引けを取らないトップレベルに達することが出来ました。

給油方法の改善もありますが、スタッフがピットワークの鍛錬を日夜行って、スピードアップを達成したことがタイム短縮の原動力です。

レースはエルワンから出口修へと交代し2スティント目に入ります。エルワンの健闘を引き継ぎ、出口も果敢に攻めてハイペースで走行を開始します。2周目のセクター1はチームのベストタイムが刻まれます。しかし、次の瞬間、『No.10Crush』の文字がモニターに映し出されます。

我々チームのゼッケンが表示され転倒を意味するアナウンスが流れました。モニターには出口が右腕を抱えマーシャルに支えられながら救急車に運ばれる様子が映し出されます。そのままメディカルセンターへ搬送され、肩の脱臼と診断されました。

他は特に骨折などのダメージはなく、一安心したのですが、脱臼による痛みは強く、走行は断念しなければなりませんでした。残りの走行はエルワン、ジュリアン・ミレットのふたりが引き継ぐことになります。

マシンは大破し、レッカー車で約10分後ピットに戻されます。損傷が激しく、特にフロント周りが大きく破損しています。

フロントサスペンション、カウリング一式、メーター、ライト、リヤスイングアーム、チェーン交換シートカウル、スロットルボディー、リヤブレーキキャリパー、などを交換。この修復に約35分間が費やされました。

マシンが戻ってきた時は、修復が不可能ではないかと思わるほど状態でしたが、奇跡的にフレームとエンジンへの影響がなくメカニック達の高い技術力で復帰させることに成功します。

約50分間のピットストップから、ジュリアンがコースへ復帰、復帰後のマシンに不具合が無いか心配されましたがジュリアンのペースは良く、レーシングスピードを取り戻します。
コースに戻った直後は29番手、トップとの差は21周と大差がついていました。ですが、ライダー、クルー、チーム全員誰一人手を抜く事なくゴールを目指します。

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予定通り3スティント目の25周をジュリアンが無事に走り終え、タイヤ交換、ガソリン給油をしてエルワンへ交代する為にピットに戻ってきました。エルワンがコースイン。怪我をして途中欠場する事になった出口の分まで必死の追い上げを開始し26番手に浮上します。

コースは路面温度50度を超え、なかなか上位陣もペースが上げられない中で、トップと同等のタイム2分7秒台でエルワンは追い上げて行きます。ピットワークもクルーの頑張りで先ほどの好記録を上回る42秒でライダーをコースへと送り出します。

エルワンが4スティント目も予定の25周の周回を無事に終えピットに戻って来ました。待ち構えていたクルーが手際の良いピットワーク作業でタイヤ交換、ガソリン給油を行い、ジュリアンに交代させ43秒で送り出します。ここまでほぼNOミス、NOトラブルで進行します。

2人で走る為、新たに周回数、ピットインタイミングを組み立て直し、ジュリアンは、54分間と通常よりも短いインターバルでコースイン。午後5時を回っても、気温は一向に下がる気配はなく、鈴鹿8時間耐久を思わせる暑さの中をライダーは走り続け、スタッフはライダーを支えました。

ジュリアンはペースを少しあげ順調に走行を重ね、23番手へとポジションアップします。6スティント、7スティントと共に順調に進め、8スティント、エルワンの最後の走行となりました。
エルワンはコースへ出る前に「イージーな7秒台で走行をする」と鶴田監督に伝えます。鶴田監督も「そのタイムで充分だ」と言い渡しコースへ送り出しました。

その言葉通り序盤は順調にラップを重ねるエルワンでしたが、中盤には6秒台までタイムアップ、このタイムはトップを走るライダーと変わらず、2番手走行のライダーよりも速いペースで、エルワンの底力を見せつけることになりました。

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最後のライダー交代を終え、ジュリアンがチェッカーライダーを務めます。ジュリアンは21番手へとポジションアップ。ジュリアンは更にペースを上げ7秒台でコンスタントにラップを刻んでいきます。

遂には2番手争いをしているゼッケン1番SERTとゼッケン111番エンデュランスホンダに追いつき、そのバトルの中に割って入ります。もしこれが本当の順位であれば確実に表彰台は狙える位置で走れていることの証でもあり、ジュリアンは存在感を示し周回を重ねました。

その堂々としたライディングは、ゼッケン1番SERTとゼッケン111番エンデュランスホンダの2台が最後のピットインをするまで続きました。

そして、想定タイムよりペースが速かったことで、残り5分で、給油をしなければならなくなり、想定外のピットインとなりました。ジュリアンは最後の走行を無事に終えチェッカーを受けました。

現地時間午後21時30分過ぎにゴールを迎え、結果は20位となりました。

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【出口 修 コメント】

先ずは、今大会スロバキア:スロバキアリング8時間耐久レース参戦にあたり、ご協力頂きました関係各社様、スポンサー企業様、ファンの皆様、チームスタッフの皆様には心より感謝申し上げます。

今大会は事前テストに参加することが出来ず、ライダー、チーム共に初走行となりましたが、フリー走行から順調にセットアップが進み、予選こそ8番手では有りましたが、他チームに比べてアベレージタイムで我々には十分なスピードが有る事が確認できていたので、表彰台が狙えると自信を持ってグリッドに付きました。

快調に飛ばすスタートライダーのエルワンからバトンを受けペースを上げた直後、ハイスピードの5コーナーでまさかの転倒。グラベルの上を何度も回転した後、立ち上がろうと腕に力を入れるも感覚が無く、胸のあたりからぶら下がる腕を見た途端、激痛に襲われ、なす術なくメディカルへ運ばれてしまいました。

右肩の肩鎖関節脱臼でした。その後、マシンはオフィシャルの手でピットへ運ばれ、修復後にエルワンとジュリアンがトップと遜色ないタイムで走っていたことから、上位獲得が十分可能だっただけに、自身の転倒を悔やんでも悔やみきれません。

鶴田監督はじめ、いつもライダーのリクエストに応えようと懸命に作業してくれるスタッフ、負担を掛けてしまったエルワンとジュリアン、そしていつも応援して下さるスポンサー様、ファンの皆様、応援して下さる全ての方に心よりお詫び致します。

引き続きEVA RT WEBIKE TRICK STARの応援宜しくお願い致します。
ご声援ありがとうございました。

【エルワン・ニゴン コメント】

前回のドイツ戦からトレーニングをハードに行い、体重も絞りモチベーションも最高潮で臨みました。
スロバキアのコースは初めてでしたが素晴らしく綺麗なトラックで私は好きでした。

予選の2回目は私のミスでタイムが縮める事が出来ず、申し訳なかったです。
決勝はアクシデントはありましたが私は充分手応えを感じながら走り続ける事が出来ました。
鈴鹿ではもっと良いパフォーマンスを見せれるように頑張ります。

【ジュリアン・ミレット コメント】

スロバキアのコースはドイツに比べ私にとってとても走り易かったです。
予選は2回目に風が強くて攻め切れなくて思う様なタイムが出せなくて残念でした。

決勝は出口選手の後に私がマシンに乗りましたがあんなに壊れていたマシンとは思えないくらい良い状態で走り切る事が出来ました。改めてクルーに感謝します。最終スティントでは2位争いに混じって走り切る事が出来たので大きな自信になりました。
本当に素晴らしいチームでレースが出来た事にとても感謝しています。

【鶴田竜二監督 コメント】

ル・マン戦、ドイツ戦の雪辱を晴らす為、そして僅かなタイトルへの希望に向けにチームはしっかり準備をして今回のスロバキア戦へ勝利を目指し挑みました。その甲斐もあり練習から本来の好調さを取り戻しチームは良い状態で決勝を迎えることが出来ました。
1回目の予選では5番手に着ける事も出来ました。

ですが、フリー走行でエルワン選手が他車と接触転倒したり、ジュリアン選手が決勝朝フリー走行でコースアウトしグラベルで転倒したり、決勝前のグリッドでその転倒の影響から、ゼッケンが光らなくなりコース上でアッパーカウルを交換する一幕があったりしました。

それでも、チームはどんな状況でも落ち着いて対処出来、チームとしての力量も上がっているのだと感じることが出来ました。しかし、決勝序盤に出口選手のまさかの転倒があり、その転倒であまりにも大きなロスが生じてしまい。目指していた結果にはほど遠い物となってしまいました。

出口選手の怪我は大事には至りませんでしたが、肩の脱臼と言う大きな怪我である事は間違いがなく、残りのレースに不安を残す形となりました。最後まで走ってほしかったですし、本人の辛さを思うと深い落胆は否めませんでしたが、前回完走も出来ない状況だったので、起こってしまった状況を受け入れ最後まで自分たちの出来るベストを尽くそうとチームは一丸となってゴールを目指しました。

その結果転倒後はエルワン選手、ジュリアン選手もピットクルーも高い集中を見せ素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれました。その内容は今回 2位を勝ち取ったチームよりも速いペースで走り、ノートラブルで課題だったピットワークも見違えるほど速く安定してやりきることが出来ました。
だからこそ、悔しさがこみ上げてきます。

良い結果を持ち帰り、鈴鹿8耐に臨みたかったのですがそれが出来なくて本当に残念です。しかしこれもレースです。内容は十分手応えのあるものだったのでこれを次回に繋げて行きたいと思います。今、出来ることは、気持ちを切り替え次回のレースに備えることだけだと言い聞かせています。

最後にいつもご支援を頂いている各スポンサー様、各関係者様、熱い声援を頂きましたファンの皆様、本当にありがとうございました。次回は EWC の最終戦鈴鹿8時間耐久ロードレースです。
EWCをフルで戦い、1年かけて成長した我々の姿をお見せします。

photo by Ishizaki Nobuki

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