●写真/小縣清志 ●文/中村浩史

 

2018年から、GSX-R1000Rのエンジンを搭載した「スーパーカタナ」をオリジナルで製作しテイストofツクバ「ハーキュリーズクラス」に大旋風を巻き起こした加賀山就臣。
その加賀山が、新しいチャレンジをスタートした。
今度はなんと、ハヤブサのハーキュリーズレーサーを作り上げた!

カタナでレースに出る意味

2018年、TeamKAGAYAMAと加賀山就臣のテイストofツクバデビューは鮮烈だった。スタートは、生粋のレーシングライダーである加賀山が、サーキットと街乗りのライダーをつなぎたい、と思ったこと。

「僕はスズキのレーシングライダーとしてキャリアを歩んできました。もちろん、テイストofツクバのことも知っていたし、空冷エンジンとか鉄フレーム、2本サスのマシンが、僕も何100回と走ったことがある筑波サーキットを、1分00秒台で走っちゃうことも知ってます。え!あんなマシンでこのタイムで走るか!って現役ライダーもみんな驚いてますよ(笑)。いつか出たいなぁ、ってタイミングが合ったのが、あの2018年だったんです」と加賀山。

加賀山が作り上げたマシンは、GSX1100Sカタナのフレームを使用し、オリジナルフレームを追加、GSX-R1000Rのエンジンを搭載したオリジナルマシン・カタナ1000R。フロントカウルやフューエルタンクには、あの特徴的なカタナのシルエットを残したレーシングマシンハイブリッドなマシンは、テイストofツクバのファンだけでなく、今までサーキットでレースを見たことなんかない一般のファンの興味も惹きつけた。


2021 Taste of Tsukuba KAGURADUKI STAGE

加賀山はオリジナルカタナで参戦を続け、ついに2021年11月に行なわれた「神楽月の陣」では、目標のひとつを遂げることになる。それは、ストリートライダーたちのカタナファンクラブである「カタナ愛好会」のメンバーに声をかけ、カタナ愛好会の専用パーキングを確保したスペシャルチケットを用意したのだ。

グランドスタンド裏にズラリと並んだカタナたち。水冷・令和カタナをはじめ、空冷カタナも250から400、750、1100が集まり、いつものテイストofツクバと違う空気感を漂わせたのだった。

その「神楽月の陣」で、加賀山は見事ポールtoウィン! 加賀山自身も、レースDAYのなか、時間があるかぎりカタナパーキングに足を運んで、レース優勝後にも駆けつけた。「レース、初めて見ました。スゴい迫力! また来たいです」と口々に加賀山に伝えるカタナオーナーたち。これが加賀山が考えた「サーキットとストリートの懸け橋」の姿だった。

カタナの次はハヤブサ?!

TeamKAGAYAMAオリジナルのカタナも、回を重ねて3号機。GSX-R1000Rのエンジンを抱くカタナルックスのハーキュリーズマシンは、ユニットプロリンクから片持ちスイングアーム、最後には2本サス&キャブレター仕様にまで「逆」進化した。コースレコードもポールポジションも優勝も成し遂げた加賀山の次なる目的は、ベースマシンの変更だった。それがハヤブサだ。

「カタナの挑戦はひとまず終了。でも、まだテイストには出たいからなぁ……ってベースマシンを探していたら、あったのがハヤブサだった。うちのショップにもハヤブサで遊びに来てくれるファンがいるし、ウチのメカニックもひとり、ハヤブサを自分で組んで乗っているんです。それで興味が出てきて手に入れて、何度かツーリングにも行ったんですよ。いやぁ、いいバイクだなぁ、ハヤブサ!」

この春、2021年いっぱいでのレーシングライダー卒業を発表した加賀山だったが、その発表内容は「全日本ロードレースからの引退」だった。つまり、テイストofツクバへの出場の余地を残しておいたのだ。ハヤブサと加賀山がテイストofフリーランスに出るには「鉄フレームならば何でもアリ」のハーキュリーズクラスのみ。つまり、ハヤブサを鉄製のオリジナルフレームに搭載し、オリジナルマシンを作ることだ。


オリジナルフレームと初期型ハヤブサエンジンを組み合わせたTeamKAGAYAMAオリジナル鐵隼 ゼッケン23はブサ、の意味 シェイクダウン車のゼッケンは加賀山自らがカッティングシートから切り出したとのこと


ハヤブサエンジンを露出するハーフカウルを装着したプロトタイプ 本番までにはもう少しカウルのカットが大胆になるかも

「カタナ1000Rと同じ手法で、鉄製オリジナルフレームを製作してハヤブサのエンジンを搭載します。とはいえ、今は全日本ロードレースで、渡辺一樹を走らせるヨシムラのチームを運営しているので、なかなか時間が取れないなか、またウチのメカに無理言って仕上げてもらったんです」

ハヤブサといえば、かつてヨシムラが全日本ロードレース「Xフォーミュラクラス」に参戦していたことがあったが、もうそれは20年も昔。今では、まったくと言っていいほど、レースイメージのないハヤブサを、再びサーキットへ連れ出そうというのも、加賀山の「サーキットとストリートの懸け橋を」という思いからだ。

「ハヤブサって、フルカウルのツインスパーフレームなのにサーキットとは別のところで生まれて、育ってきましたよね。まぎれもなくスズキのフラッグシップマシンだと思うし、ファンも多い。そうやって、バイク好き、ハヤブサ好きという、今までサーキットに縁のないオーナーさんも、筑波にテイストを見に来て欲しいんです」

ハヤブサのエンジンを使用し、鉄製オリジナルフレームを製作する――。それだけが決まっていること。そこからサーキット向けに車体ジオメトリを決め、組み上げる。これは、今までのカタナ1000R製作で得たノウハウが、確実に役に立つはずだ。


鐵隼と加賀山 カタナに続き、ハヤブサでサーキットとストリートを橋渡しする!

シェイクダウンで0分59秒台突入!

ヘビー級ツアラーとして誕生したハヤブサをレーシングマシンに仕立て上げる、しかも国内屈指のコンパクトなレイアウトの筑波サーキットが舞台ということで、車体の変更は大掛かりなものだ。ベースは加賀山が所有する初期型ハヤブサで、オーリンズ製倒立フォーク、アラゴスタ製リアサス、GSX-R1000R用スイングアームを使用し、まずはホイールベースを大幅に短縮。セッティング性を高めるため、キャスター角可変のピースも搭載。

スタイリングは「エンジンを極力露出すること」というハーキュリーズクラスのレギュレーションに沿って、エンジン部分の切り欠きを大きく取った、ハーフカウルスタイルとしている。ハヤブサの特徴的なメインカウル形状は、ほぼ初期型ハヤブサの形状を踏襲している。

そして、決勝レースを1週間後に控えた5月上旬、ハヤブサのプロトタイプが完成! 鉄フレームのハヤブサということで、ついたニックネームは「鐵隼」(=テツブサ)。ちょうど、加賀山の友人であるランドシャークレーシング「ハッピーライド」走行会にお邪魔しての鐵隼シェイクダウンテストだ。


レーシングパーツは、基本的にTeamKAGAYAMAのセレクトで キャリパーダクトは重量車ゆえ、ブレーキングが厳しいからなのだという


メーターまわりにハヤブサのノーマル色を残す トップブリッジもTeamKAGAYAMAオリジナルで、キャスター角可変ピースも使用している


タイヤはブリヂストン、前後ホイールはゲイルスピードを使用 スイングアームはGSX-R1000R用を使用し、ショートホイールベースとした


鉄フレームのハヤブサだけに「鐵隼」とネーミング 「テツブサと呼んでください」とのこと

「シェイクダウンでは、まずはまっすぐ走るか、エンジンちゃんと回るかってテストからスタートしますよね。もちろん、走らないマシンなんかうちのメカが作るわけはないんですが、レーシングスピードとなると、まずはタイムより安全に走れることも確認しなくちゃなりません」

そして鐵隼は、加賀山が想像した以上のペースで走り始める。ライディングポジションをセットし、基本的なサスペンションセットを済ませると、15分ほどのコースインを繰り返し、なんとタイムは59秒台に突入! まだまだタイムを狙った走りではないし、加賀山も限界を探り探りの走行より、もっとマージンを持っての走行。

それが初乗りで59秒台とは、想像以上のペースといえるだろう。


シェイクダウンに出る加賀山 マシンのセットアップへのステップは、全日本ロードレース用のレーシングマシンとなんら変わらない


ライディングポジションの微調整、シフターの調整は加賀山自ら行なう テストも最小人数での筑波入りだった

「まずは1分切るくらいのペースで安全に周回できる。やっぱりスゴいな、ウチのメカは、って感じですね。カタナ1000Rのシェイクダウンで感じた『あれ?ぜんぜん普通に走れるじゃん』って気持ちより上でしたね(笑)。カタナ製作のノウハウが役に立っているんだと思います」

もちろん、ここから詰めていきたい所も多い。マシン重量も重く、エンジンの出力特性だってサーキット向けではない。本来なら、ここからテストを重ねて仕上げていくのだけれど、なにせ本番は一週間後だ。

「エンジンが1300ccもあるし、ベースがレーシングスピード向けの特性ではないので、そこのセッティングを詰めたいですね。GSX-R1000Rのエンジンに比べたらパワーはないし、サーキットで乗るバイクなのに、高回転を回してパワーがどんどん出てくる、って特性じゃないんです。でも、それがテイストですからね。ワークショップに帰ってできることをやって、あとは人間が何とかするしかない。それが面白いレースじゃないですか!」


鉄パイプをトラス状に組み合わせたオリジナルフレーム スイングアームピボット、ステアリングヘッドはスチールの削り出しパーツ。カタナ時代に比べ、この完成度は飛躍的に上がっている


TeamKAGAYAMAのチーフメカである齋藤雅彦と。加賀山と齋藤は加賀山がスズキワークス時代からの、コンビ歴20年以上にもなる名コンビだ

ハヤブサとカタナが筑波に集合!

そして加賀山は、カタナオーナーがテイストofツクバを観戦しに来てくれたように、今度はハヤブサオーナーを筑波サーキットに呼び込もうとしている。前回、筑波に来てくれたカタナオーナーたち、そしてハヤブサオーナーズクラブにコンタクトを取り、筑波サーキットと折衝して再び専用パーキングを設定。筑波サーキットのグランドスタンド裏では、カタナとハヤブサの合同ミーティングになるのだろうか、カタナの時と同じく、レースなんか見たいことないよ、というハヤブサオーナーも駆けつけるはずだ。

「全日本ロードレースは引退しても、レース好き、バイク好きってところはずっと変わらない。今までレース界にお世話になってきた僕としては、こうやってカタナファン、ハヤブサファンというストリートライダーをどんどんサーキットに呼び込んで、ひとりでも多く『レースってスゴいねぇ』って思ってもらいたい。それがレース界への恩返しのひとつだし、いま僕ができること、やりたいことがそれなんです」

テイストofツクバは5/14~15の土日に茨城県・筑波サーキットで行なわれる。カタナオーナー、ハヤブサオーナーは、加賀山の挑戦を、一緒に楽しんであげてください!


本番一週間前にシェイクダウンを済ませた鐵隼と加賀山。本番ではどんなカラーリングになるのかも楽しみ

テイストofツクバ ハヤブサミーティング&TeamKAGAYAMA「鐵隼」応援イベント

5/15(日曜) 茨城県・筑波サーキット
参加資格:なし ハヤブサ・カタナオーナー以外も自由参加
参加費:3500円(日曜日観戦入場料込み) 専用駐車場、記念入場チケットあり

ハーキュリーズクラス決勝レース後に、鐵隼と共に本コースのパレードラン、記念撮影あり
詳細はこちら → Hayabusa Tsukuba Meeting「鐵隼」

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