
「レース」に参加してみたい!という気持ちは、バイクをコントロールする楽しさを感じたら一度は思うもの。しかし公道でテクニックを競うような危険行為は言語道断、でもサーキットにはライセンスや装備などのハードルが目白押し。興味はあっても参加したことはない……という人も多いでしょう。
しかしそんな初心者でも参加できるのが「ランクアップレーシング」主催の3時間耐久のミニバイクレース「Rank Up Challenge Cup」。レースに持ち込めるレーサーマシンなんて持っていないよ!という人も参加可能!というのは今レース、マシンはすべてレンタル!最低限のサーキットのルールを勉強すれば、誰でも参加できるレースなんです!
目次
Rank Up Challenge Cupとは?
2021年より全日本ロードレースに参入した「ランクアップレーシング」が今年から主催する、3時間耐久のミニバイクレースが「Rank Up Challenge Cup」。
このレースの特徴はなんといってもレンタルバイクオンリーのレースだということ! このためマシンの差はなく、参加者が体ひとつでレースに出られるのが特徴です。そしてライセンスも不要!
初心者からベテランまで、あるいは友達や家族とチームを組んでみんなが楽しめるレースを目指して、2022年は全8回の開催を予定しています。
今回は私、サーキット超初心者&レース初体験の編集部員が、その第1戦「本庄モーターパーク(練習会+3時間耐久)」に「Webikeオンロード部」チームで参加してきました!
「オンロード部」先輩方もミニバイクは初めてという状況で、不安半分楽しみ半分のチーム構成。そんなチームでのレース参戦をレポートします!
埼玉県「本庄モーターパーク」で開催された第1回「Rank Up Challenge Cup」。参加チームは全18チームで、初開催の大会ながら大賑わい。車両はすべて同じ「MR150」のレンタルによるワンメイクレースだ。最低限のサーキット走行ルールは理解しておく必要があるが、レースの参加経験は問われない。
レース初挑戦!超初心者の体験
参加前から寝られない!
前日までは非常に不安でした。サーキット走行会に行ったことはあるものの、全力でベテランが走り回っている中に乱入するのは……転倒も怖いし、接触も怖いし、ルール違反で叱られるんではないか……。
それにマシンは乗りなれたバイク(普段は250ccクルーザーに乗っています)とは全然違う、カリカリのレーサー! 信じられないことに、ブレーキランプもウィンカーもないんです。
じゃあ前の車両が急停車したらどーするんですか!? 交差点では!?(←そんなものはないんですが)それにレースの装備は値段も高いだろうし……変な恰好で登場して笑われたらどうしよう……。
現地ですっかりリラックス
ところが現地にて一安心。マシンがとても小さい! フルカウルのレーサーとはいえ、150ccのミニバイクは思っていたよりはるかに小さく、大型犬くらいしかないんではないでしょうか?またがってみると165cmの小さい私でも足つきべったり。もちろん車重もすごく軽く、持ち上げられそうなほど。
「レーサーって取り回しが怖い」という印象は消え、むしろ「こんなカワイーのが走るレースに何をビビッていたのかな!」とすでに余裕ムード。さらに周りを見回せば、あきらかにご高齢のベテランチームからワイワイしている若者チーム、10代っぽい女子チーム、どう見ても普通のおば様チームとバラエティ豊か。求道者みたいなストイックなライダーばかりかと思っていたものが、すっかり裏切られてしまいました。これで心理的ハードルはゼロに。
「KAYO」製の「MR150」が40台以上待機。タイヤも新品のダンロップ製レーシングタイヤ・TT93GPproを装着。カウルのスキマがおおきい車体がいたりなど、個体差はあったが整備は「ランクアップレーシング」のクルーにより万全に仕上げられている。
最初は練習会から。サーキット走行の経験に合わせて3段階のクラスが割り振られ、先導には全日本参戦ライダーがついてくれる。
コース取りやヒザすりのコツを指導もしてくれる。「皆さん誰でもヒザすりできるようになります!」という言葉にかなり安心。
腰がひける初心者!
スタートすると最初は車体に慣れるため、自己申告の腕前別に練習会が始まりました。全日本レーサーが一緒に走ってくれるうえ、「キックスタートはこうするんですよ」というような手取り足取りの丁寧な説明にややこっ恥ずかしい。先の通りすでに気持ちの上では不安はゼロ。やってやるぜ! というピュアな闘争心に満ち、小さな車体を前に「初めての"ヒザスリ"ってやつができるかもな!」と余裕顔。
ローコストフル装備! KOMINEのエンブレムが眩しいピカピカのスライダー。
ついに走り出したサーキット。12インチのホイールサイズも初めてで、とても腰が引けている……。
正直に言って参加ライダーの皆さん、レベルが高い!
ところがサーキットに乗り出してみると、ビックリするほど走れないのでした! サーキット用のマフラーはすさまじい爆音、12インチのホイールはものすごく寝かしこめるものの、どこまで倒していいのかわからない! スロットルを全開にするとすぐに次のコーナーがやってきて、あわわ! と思ったらコースアウト! 30分程度の練習が終わったころには、最初の自信は完全にピットに置き去りとなっていたのでした。
もちろんバンクセンサーはピカピカです。そして周りのおじさんや女子ライダーは「思ったより速いね!」「あそこのヘアピンが難しいね!」などと一段レベルの高い会話をしています。すっかり打ちのめされてしまいました。
さすがにレース経験メンバーのレベルは段違い!「ミニバイクは初めて」とのことながら、危なげなくすごいラップタイムを刻む。
同じバイクならそこまで力量差は出ないのでは?というのは完全に間違い!同じバイクだからこそ、純粋に腕前が試される。
そういうわけでレース本番の頃にはまた不安で震え始めていたわけですが、しばらく走っているうちにだんだんと気持ちは落ち着きはじめました。最初に考えていたような「他人と接触するのではないか!」とか「マナー違反を叱られるんではないか!」といったことはとくになし。お互いがしっかり避けあって(私は避けていただいておるわけですが)怖いと思うこともありません。マナーだって理不尽なものはなにもなく、突然叱られたりも当然ありません。
また、耐久レースというスタイルも非常にありがたいものでした。そもそも耐久レースって何ですか、という人もいると思いますが、端的には「制限時間内(今回は3時間)にそれだけ多くコースを周回できるか?」というもの。つまりアッという間に終わり! ということはなく、どれだけ下手でも(トラブルがなければ!)3時間は走り続けることができるのです。チームの皆と交代しながらですから、今回は1人1時間は走り切ることができました。
「Webikeオンロード部」メンバーと共に。真ん中が筆者ですが、打ちのめされ状態のため笑顔が少しひきつっています。
慣れてしまえば次のステップへランク・アップ!
そうして1時間も走っているうちに、だんだんこのMR150という車体にも慣れはじめ、タイヤの食いつき具合が感じられるようになり。コースの先を見ることもできるようになってきました。最初は見られなかったサインボードもしっかり読めます。もう不安はどこかへ消えてしまい、楽しさだけがどんどん沸いてくるのでした。気づけばバンクセンサーも傷だらけ、しっかり"ヒザスリ"は達成できていました!
右ヒザはバッチリ擦れている。今回の本庄モーターパークでのコースはほとんどが右コーナーで、ワンポイントの左コーナーになかなか慣れられず!
お昼から始まったレースはあっという間に午後4時の終了時間に。そのころにはただ「もうちょっと上手く走れないかなー!」というポジティブな気持ちでいっぱいです。恐れていたような出来事はなにも起こらず、次もチャレンジしたい! と思えるレースになりました! レース初心者の私にとって、初めてのレース参戦にあたる大きなカベは、「費用的なカベ」「心理的なカベ」の2つでした。
しかし、実際のところどちらもクリア可能なもので、かつ費用のもっともかかるところ――車両用意の費用が、今回の「ランクアップチャレンジカップ」のようなレンタル車両レースでは、まったくかからないのが非常に大きく、初心者のデビューにはピッタリといえるのではないでしょうか。
以上、ガチ初心者からのミニバイクレース初参戦レポートでした!
「Webikeオンロード部」は参加18チーム中「15位」という結果に……残念ながらレースは初心者が勝てるほど甘くない。しかし表彰台に上るチームはみんな笑顔!
サーキット常連!「オンロード部」アキヒトの視点から
レース経験者でもしっかり楽しめるマシン
私はウェビックスタッフの中でもロードレースを中心にバイク活動をしている「Webikeオンロード部」に所属しています。
普段は筑波サーキットを大型バイクで走っていますが、今回はレース経験者の視点から「Rank Up Challenge Cup」に参戦した感想をお伝えします。
まず大前提として、私自身今回の「Rank Up Challenge Cup」で使用されている【KAYO MR150】はもちろんのこと、前後12インチの「ミニバイク」でサーキットを走ること自体が初めてでした。正直、自分自身まともに走れるのかも不安でした。
そんな中でまず感じたのはレンタルバイクとして使用されている【KAYO MR150】の本格的な見た目。初めて【KAYO MR150】を見た印象は、ホンダから販売されているNSF100を彷彿とさせる本格的なフルカウルレーサーで、レンタルバイクのレースにしては随分と本格的だなと思いました。一般的なレンタルバイクのレースというと青木拓磨さんがプロデュースしている【Let'sレン耐】が有名ですが、車両もエイプやグロムといったストリート寄りのミニバイクを使っています。レース経験者から見ても、ミニバイクとは言え本格的なレーサーが借りられるとなると気分は格段に上がってくるものです。
一般的なミニバイクレースにありがちなストリートマシンではなく、本格的なフルカウルレーサーであるMR150。
乗ってみた感想としては、前後12インチのミニバイクにしてはパワーがあるなといった感じ。MR150は空冷4ストローク150ccという事もあり、ミニバイクは低回転がスカスカでパワーが無いというイメージでしたが、MR150は低回転域でもしっかりと加速していくので、サーキット初心者でも十分扱いやすいと思いました。実際、初戦が行われた本庄サーキットでは、初めてサーキットを走ったというライダーと上級者とのタイム差が思ったほど開かなかったなという印象でした。私自身も初めてのミニバイクに苦手意識なく楽しめたのは、初心者から走り慣れたライダーまで楽しめるMR150の懐の広さにあると感じました。
ワンメイクマッチだからこそテクニックの勝負に!
そしてこのレースの一番の醍醐味は「全てのライダーが同じバイクに乗っている」ことにあると思います。レンタルバイクのレースなので同じバイクでレースをするというのは当たり前の話ではありますが、一般的なロードレースは各ライダーがレギュレーションに則ってバイクを準備するため、車両も含めてイコールコンディションで行われるレースはそうそうありません。その為、少なからず車両の性能差がレースの結果に影響することもあります。なので、今回のように同じバイクでレースとなると、「タイム差=ライダーの腕」となるので、チーム内でも俄然盛り上がります!
レース参加者の腕が露骨に表れるタイム。ビッグバイク並みのタイムを出すライダーも……!
「Webikeオンロード部」のメンバーも車両カテゴリーや参戦するレースもバラバラのため、部員同士がイコールコンディションでレースやタイムを競う機会も中々ありません。耐久レースなので力を合わせて走り抜くことも重要ですが、こういう時こそ「誰が一番速いのか」が明確になる瞬間でもあります(笑)
「Rank Up Challenge Cup」では、レース中もゲストとして現役のプロライダーが一緒に走っていることもあり、プロと同じバイクに乗りながらプロの走りを観察できるため、自分と何が違うのか、どんなラインを通っているのかを走りながら学ぶことが出来ます。そして耐久レースなので通常のレースよりも長い時間走れるのも魅力ですね。
「Rank Up Challenge Cup」は、サーキット初心者だけでなく日頃からサーキットを走るライダーにとっても充実した内容だと言えます。(アキヒト)
まとめ
・初心者クラスはスクール要素が強い。
・タイヤ温度への配慮など、安全面への気遣いを感じる!
・走行後すぐに全日本ライダーからアドバイスが受けられ、コツをつかみやすい。
・レース専用車両+新品のレースタイヤで走行出来るというのは、他のレンタル耐久レースと比較しても大きなメリット。
・上級クラスは普段からロードレースやミニバイクレースに参加している方が多く、かなりハイレベル。完全にサーキット未経験だと少し厳しいかも。レンタルバイクレースとしてはハイレベル。
・友達同士のチーム参加が多いようで、和気あいあいとした和やかな雰囲気! サーキット走行の経験さえあれば、いいレベルアップの機会をつかめる!
MR150ってどんなバイク?
今回搭乗した「MR150」は、「KAYO」製の150ccSOHC単気筒、12インチホイールを前後に装備したマシン。新品のダンロップ・TT93GPproを装着しています。
ミニバイクらしい小さなシルエットながら、扱いきれないようなハイパワーではなく、かといって全然パワー感がないということもない、扱いやすい印象でした。
ただし体格やコースに合わせたいブレーキやサスペンションなどは調整できなかったので、その点は残念でした……。
多くの人にサーキット走行を楽しんでもらう、というコンセプトから生まれたMR150。外見は白ゲル仕上げでソリッド。カウルのゆがみなど、チープさを感じる部分はあるが、レンタルバイクである以上転倒は避けられないため気にはならない。
身長165cmの筆者がまたがるとこんな感じ。足つきはべったりながら、前傾はかなりきつい。コーナリングやコントロールには少し慣れが必要だったが、車体への不安はまったく感じない。
ホンダ・NSF100にそっくり。各所のカスタムパーツはそのまま流用が可能だとか。
エンジンは空冷単気筒、149ccのSOHC。キックオンリーだが踏み込みは軽く、コース上でのエンストでも簡単に始動できる。
諸元
エンジン種類 | 空冷4ストロークSOHC単気筒 | |
総排気量 (cm3) | 149 | |
最高出力 (PS/rpm) | 11/7,700 | |
最大トルク (N・m/rpm) | 11.2/5,700 | |
シフト | 正チェンジ | |
点火 | CDI |
ランクアップチャレンジカップ 年間開催スケジュール
2022年は2月の第1戦から11月の第8戦までをスケジュール。車両は共通ながら、コースは毎回変更されるので近場での開催も狙えます。
今回の記事を読んで興味がわいた方は、ぜひ詳細をホームページで確認してください!
年間開催予定
第1戦 2022年2月26日(土) | 本庄モーターパーク(練習会+3時間耐久) | |
第2戦2022年4月24日(日) | テルル桶川スポーツランド 4時間耐久 | |
第3戦2022年5月22日(日) | 筑波1000 4時間耐久 | |
第4戦2022年6月12日(日) | 茂原ツインサーキット 2時間×2ヒート耐久 | |
第5戦2022年7月24日(日) | テルル桶川スポーツランド 4時間耐久 | |
第6戦2022年8月14日(日) | 茂原ツインサーキット 2時間×2ヒート耐久 | |
第7戦2022年10月10日(月) | 筑波1000 4時間耐久 | |
第8戦2022年11月27日(日) | テルル桶川スポーツランド 4時間耐久 |
ランクアップレーシングとは
2021年より全日本ロードレースに参入した新進気鋭のチーム。
「ランクアップ」とは、チームオーナーの坂本久義氏が代表を務める埼玉県にある物流事業会社。バイク関連企業でもなければ、これまでレースチームを運営したことのない全くの新しいチームの参入とあって大いに話題となりました。
ライダーにベテラン江口謙氏だけでなく、全日本初参戦の梶山知輝氏を抜擢。参戦初年度ながらポイントも獲得している。昨年はアプリリアのRSV4を駆り、JSB1000クラス、ST1000に参戦していたが、今年はマシンをヤマハのYZF-R1にスイッチ。
ライダーは全日本ロードレースST1000クラスに引き続き梶山知輝が参戦するほか、一部ライダーを変更して2年目を迎えます。
チームのレース活動の他に、今年は「Webikeオンロード部」が参加した「Rank Up Challenge Cup」やスクール、走行会など、一般ライダーのレース活動やライディングスキル向上にも注力。
「ランクアップレーシング」は、今後多くのライダーにとって身近なチームとなってくるでしょう。
ランクアップレーシングは全日本ロードレースに参戦中だ!今年も様々な活動を精力的に行っている。
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