
バイクいじり好きサンデーメカニックにとって、部品の脱着や分解×組み立て作業は日常茶飯事かも知れないが、そんな作業を当たり前のように実践できるまでには、様々な失敗や勉強の繰り返しだったと思う?(ぼく自身がそうでした)。フロントホイールの脱着ひとつとっても、そこには実に様々なノウハウがあり、分解順序や組み立て順序が存在する。ここでは、そんな「順序」に注目してみよう。
目次
アクスルシャフトの固定方法いろいろ
原付クラスの小型バイクの場合は、六角頭の長いアクスルシャフトをボトムケースへ差込み→ホイールハブ→反対側ボトムケースの順に貫通させてからナットで締め付けるタイプが多いが、大型バイクのそれには実に様々なタイプが存在する。写真のモデルは、ボトムケースの中心線真下にアクスルシャフトのマウントが無い、言わばオフロードバイクのような「リーディングアクスル」マウントを採用。仮に、ナットが緩んでしまったとしても、簡単にアクスルシャフトが抜けてしまわないように、差し込み側マウント部分が割り構造になっていね。この部分でアクスルシャフト外周を締め付け、抜けどめとしている。こんなタイプのアクスル固定(締め付け)には、順序が極めて重要になる。
レンチの締め付け固定の向きに要注意!!
これはNG!!力が分散してしまう
アクスルシャフトエンドのナットを締め付けるときには、ナットの回転方向を考慮してレンチで締め付けよう。この状態で締め付けると、力点は上向きにチカラが加わり、ホイールが持ち上がる方向になりバイクは安定しない。
地面に向けてレンチを締め付ける
これが正解!!チカラが逃げない
このタイプのホイールを取り付ける(復元する)ときの手順は、ホイールをセットしてアクスルシャフトを貫通させたら、反対側のアクスルに丸棒もしくはドライバーなどを差込み、シャフトの回り止めを行いながらアクスル固定ナットを締め付ける。この際に、レンチの力点が地面へ向くようにすることで、作業姿勢は間違い無く安定する。締め付けトルクもしっかり伝わるはずだ。初心者やビギナーなら、トルクレンチを利用して、確実な締め付けトルクで管理しよう。
割りクランプは最後に締め付け
ボトムケースとホイールハブに貫通させたアクスルシャフトを確実に締め付けたら、最後に割りクランプを固定してアクスルシャフト外周を締め付ける。これで取り付け完了だが、最後に前輪を浮かせて、ホイールがスムーズに回転するか確認して作業完了しよう。回転が渋いときには、アクスルシャフトエンドをプラスチックハンマーでコツッと叩き、再確認してみよう。最初はナット側から叩き、症状が改善されないときにはボルトの頭側から叩いてみよう。ベアリングの座りが落ち着き、ホイールがスムーズに回転するようになればOKだ。
キャリパーはブラ下げると好安定性
ディスクブレーキ仕様の前輪脱着時や後輪ディスクブレーキ車の場合は、最初にキャリパー本体を取り外すが、そんなときには、通称「S字金具」を利用して、キャリパーをステアリングブラケットから吊すと作業性が良くなる。S字管が手元に無い時には、ヒモを使ったり、ウエスを短冊にカットしてから結び、ヒモ状にして結んでキャリパーを保持するのが良い。ブラブラしたままではパーツにキズを付けてしまうことになる。
前輪は浮かす前にサスを伸ばす
このモデルにはメインスタンドがあるため、エキパイの下にパンタグラフジャッキを掛けてリフトし、まずはフロントフォークが伸びきるまで持ち上げてみよう。一気にジャッキを回してしまうと、バイクが安定していないときに倒れてしまうおそれがある。まずはフロントフォークを伸びきりまでリフトアップしたら、ハンドルを持って車体を軽く左右へ揺らして安定性を確認しよう。アクスルシャフトを抜く際は、ホイールを持ち上げずに「フロントフォークが伸びきった状態」で行うのがセオリーだ。
大きく持ち上げずに地切り程度にリフト
車体が安定しているから大丈夫だと思い込み、前輪を大きく持ち上げてしまう者がいるが、アクスルシャフトはタイヤが地面に接地している状況で抜き取る。アクスルを抜いて車体の安定を再確認したら、さらにジャッキでリフトアップして前輪を抜き取ろう。スピードメーターギヤボックスのセット時は、単にホイール側へ押し付けるのではなく、ギヤ内部のリテーナーとホイール側の噛み合い(凸凹の組み合わせ)を確認してから復元しよう。ギヤボックスを押し付けて回し、メーターケーブル取りだし部分が回転していれば噛み合わせはOKだ。
バッテリーターミナルにも要注意!!
車載済みのバッテリーを取り外したいとき、ありますよね?冬場はバイクに乗らない、乗ることができない北国に住むユーザーなら、乗らない時期はバッテリーを取り外し、室内保管することで、バッテリーの寿命には大きな影響を及ぼすみのだ。取り外し時には、マイナスのアースターミナルから分離するのが鉄則。取り外したアースリードは。折り曲げてバッテリーターミナルに振れないように要注意。リード線を折れ曲げられないときには、バッテリーターミナルを覆うようにガムテープを貼り付けるのも正解だ。
取り外し時は「マイナス→プラス」の順
マイナスターミナルを取り外してからプラスターミナルを分離することで、工具が車体に振れたとしても火花がバチッ!!とスパークすることがない。何も考えずにプラスターミナルから取り外し、工具が車体に振れてバシッ!! 驚いたことがあるサンデーメカニックもいるはず。失敗は危険!! 最悪でバイクを燃やしてしまった……なんてお話しもある。
ブリーザーチューブは極めて重要!!
液注入タイプの開放型バッテリーにはブリーザーチューブが必ず取り付けられている。バッテリー充電する際に、バッテリー液がポコポコと小規模に沸いている様子を目の当たりにしたことがあると思う。車載状況のバッテリーは走行中の充電状況を得て、このような状況になりながら走行する。そんな際にブリーザー先端や途中がマフラーに触れて溶けてしまい、チューブ詰まりが起こると赤信号!! 最悪でバッテリーが爆発し、大惨事に至ることもある。したがってバッテリーブリーザーを取り回す際には、熱源に触れないように取り回し、しっかりズレどめするようにタイラップで縛っておきたい。また、チューブ交換する際には、最悪の状況を考慮し、チューブ途中にカッターの刃を縦に差し入れ、詰まったときにはその切れ目からガスが抜けるようにしておこう。バッテリーメーカーの純正ブリーザーチューブは、そのような処理がなされている。
- ポイント1・部品の脱着(取り付け取り外し)には様々なノウハウや手順があるので理解しながら作業進行しよう
- ポイント2・ たかがバッテリーとあなどらず、正しい手順で脱着しよう。ナメてかかって失敗するとその代償は大きい!!
数多くの部品を組み合わせることでカタチになるのがエンジン。そのエンジンを車体に搭載することで、バイクとしてのカタチが見えてくる。仮に、部品構成通りに組み立て、ボルトやナットで締め付けたとしても、最善の組み立て状況に至らないこともある。すべての部品がそうではないが、そんな組み立て作業の中に潜むのが「組み立てノウハウ」と呼ばれるもの。
高品質かつ高精度な部品作りで、世界のバイクシーンを大きくリードしたのが日本のバイクメーカーである。「初心者が組み立てても、高性能を発揮する」、海外ではそのような表現で賞賛されることも多かった。裏を返せば、欧米製のバイクは、単純に組み立てることができない、という意味にもとれた。
事実、国産車と外車を比べてみると、シンプルに組み立てられる国産車に対して、80年代以前の外車には、独特な組み立てノウハウが存在する。国産車でも、60年代以前に登場したモデルの中には、独特な組み立てノウハウを要したモデルもあった。そんな状況ではいけないと、日本のメーカー技術者が取り組んだのが「高品質かつ高精度な部品作り」であり、そんな考え方があったからこそ、現在のバイクシーンがある。
それでも部品の組み立て時には、組み合せ順序や締め付け順序など、法則のようなものがある。それは現代のモデルでも同様で、ちょっとした心遣いで作動性がスムーズになったり、操作感覚が改善されたりする。それが「組み立てノウハウ」であり「メンテナンススキルの違い」となって、評価されることもある。
ここでは、フロントホイールの脱着手順を例に解説しているが、すべての部品がコンディション良い状態なら、スムーズに組み立てが進み、作動性も良好になることが多い。肝心なのは、一番大切なアクスルシャフト周りの締め付け順序である。ボトムケースに組み合わさるのがホイール。そのホイールを支持しているのがアクスルシャフトである。大型車の多くは、ボトムケースをクランプすることでアクスルシャフト外周を締め付け、抜けを防止している。間違った組み立てが以下の手順だ。ホイールをセットしてアクスルシャフトを差し込む。次に、アクスルシャフトをナットで締め付ける(ボトムケースにネジ加工が施されたタイプもある)のだが、シャフトの締め付け前に、ボトムケースのクランプを締め付けてしまうビギナーがいる。これでは締め付け順序がNGなのだ。アクスルシャフトを締め付けた後に、ボトムケースの抜け防止クランプを締め付けるのが正解。手順が逆だと、アクスルシャフトに締め付けトルクが掛からず、走行振動で緩んでしまうこともある。
バッテリーに関しても、ターミナル端子の締付け時には順序があるのを知っておきたい。バッテリーを搭載する際には、「+端子の締め付け」→「-アース端子の締め付け」の順で作業する。逆に、車体からバッテリーを取り外すときには、「-アース端子の取り外し」→「+端子の取り外し」となる。重要なことは、電気を流す「+端子」を触れるときには、常に「-端子」が『外れている(外してある)』状況で作業進行することだ。バッテリーアースが車体に接続したままで、+端子に工具をアクセスした際、その工具が車体と触れると、バシッ!!と火花を発してしまい大変危険!!
また、70年代以前の英国車に多いのが「+アース回路」の電装系だ。現在のバイクは-アース回路で構築されているので間違えることはないが、旧車にはそんな例もあるので、間違えないように確認してから、バッテリーへアクセスしよう。
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