
「新車だからノーメンテナンスで良い」といった保証など、どこにも無い。「新車だからこそメンテナンス実践」が重要で、それが後々のマシンコンディションに大きな影響を及ぼすことが多い。高性能ケミカルや油脂類を利用しメンテナンスすることで、マシンコンディションはさらに良くなるものだ。エンデューロレースに参戦したKLX125は、降雨や泥んこ環境など関係無く、ここ数ヶ月元気良く走ってきた。比較的高年式モデルだが、走り込み直後のバイクメンテナンスがどれだけ重要か……。ここでは、ホイールベアリングへのグリース封入の重要性を改めて知ることにしよう。
目次
ナラシ完了直後でも重要なメンテナンス
ホイールベアリングのメンテナンスうんぬんに関係無く、タイヤ交換時など、前後ホイールを取り外したような機会には、ホイールを外さないとできない様々なメンテナンスにチャレンジしてみよう。
高性能グリスの利用でコンディションを高める
摩擦熱によって高性能グリスに添加されたスーパーゾイル成分が、耐摩耗性に優れた金属化合物を形成。1トンに及ぶ摩擦圧力の中でも潤滑性能を維持できるのがスーパーゾイルグリースである。摂氏-35℃~130℃の高温下でも使用でき、酸化・劣化が少なく湿潤性能でも高品質グリスとしてランクされている。長期に渡った安定性能の維持が期待できるのだ。
鉄のサイドカラーが摩耗することもある
アクスルシャフトが通るダストシールのコンディションは重要だ。リップ内部にドロが侵入していてはNGである。前輪を見るとダストシールはこのアリサマだった。明らかに潤滑不足=防錆不足でもある。前回のメンテナンスから、今回の作業までのあいだに、何度もダート走行していたそうだが、間違い無くその影響だろう。ダストシールに刺さるサイドカラーのコンディションも確認しなくてはいけない。カラー外周側面のダストシールリップが触れる箇所にゴム片が焼き付いていたとすれば、それは潤滑性低下の証と考えよう。
スナップリングプライヤーは常備したい
汚れを除去したダストシールにサイドカラーを差し込んでも、接触感が無くスルスル回ったり、シールリップに当たらずガタがある場合は、間違い無くダストシールの交換時期である。このダストシールは意外と悪くなりやすい。オフ車のダート走行が多いオーナーさんは定期的なグリスアップと交換用ダストシールはストックしておきたいもの。シール性低下の予測は当たり、シールの内側にセットされているベアリング抜け止め用サークリップが、真っ赤にサビ始めていた。雨中走行やダート走行後は、ホイールを外してダストシールを洗浄&グリスアップしておくものだ。
ベアリングを抜かずにグリスアップ可能
ラバータイプのシールベアリングなら、先端が平らで細いピックアップツールや精密ドライバーの先端を利用することで、スムーズにシールだけを取り外すことができる。ホイールを取り外したときには点検してみよう。今回は、精密ドライバーを利用し、内輪シールリップの隙間にドライバーを差し込み、内輪をテコの支点にドライバーをクイッとやることでシールは簡単に取り外すことができた。このシールは再利用できるので、曲げないように注意しよう。
ベアリング寿命はグリスで決る
シールリップを取り外した純正ベアリングには、極めて少量のグリスしか塗布されていなかった。多ければ良いという訳ではなく、常にメンテナンスしているレーシングマシンならこれで十分かも知れない。しかし、市販ロードバイクでしかもオフ車なら、もっとしっかりグリス塗布しておきたいものだ。旧グリスを綿棒で除去した。
グリスの塗布と擦り塗りを実践
スーパーゾイルグリースに付属の先細ノズルを取り付け、先端をニッパでカットしてグリス封入開始。鋼球の隙間にグリスが入り込むように、ノズルを押し付けながら塗布した。全体にグリスを盛ることができたら、指先でさらに押し付けながら内輪を回転させてグリスを行き渡らせる。上っ面への塗布だけではなく、できる限りグリスを内部へ押し込むようにしよう。この作業を2~3回繰り返し行うことで、ベアリングの内側へもグリスが回り込むようになる。出先でホイールベアリングトラブルに見舞われたら最悪だ。
ベアリングシールを復元
グリスが行き渡ったことを確認したら、ベアリングから外したサイドシールを復元する。このシールはアルミベースで、ラバーリップが焼き付けられている。変形しているときには形状修正してから復元。メンテナンス次第で、ホイールベアリングは長持ちするものだ。
分解「ついで」のメンテナンスが大切
前後ホイールを取り外したときには、必ずアクスルシャフトをウエスで拭き取り(汚れが酷いときにはパーツ洗浄液を併用)、軸芯にグリスを塗布しよう。カジリ防止と防錆効果を高めることができる。ホイールベアリング以上にメンテナンスしやすいレバー類周りも点検実施。特に、レバーピボットのグリス切れは操作感の悪化を招くので、軸部と摺動部ともにグリスアップは必須。ちなみにクラッチレバーの遊びを調整するアジャストボルトにもゴミや雨水が入りやすいし、ドロが噛み込むと調整しにくくなる。定期的なグリスアップは必須だが、塗りすぎると汚れやゴミを寄せやすくなるので塗り過ぎは禁物!!
作業完了後はホイールを地切りして(浮かして)、空転させてみよう。スムーズに回ればよいが、イマイチ渋さを感じるときには、ブレーキキャリパーを取り外して、ホイール単体でスムーズに回るか確認してみよう。それでも渋さがあるときには、アクスルシャフトの頭をプラスチックハンマーで強めにコツッと叩くと、ベアリングやカラーの並びが良くなり、スムーズに回るようになることもある。
- ポイント1・ オフロード走行後や雨天走行後は前後ホイールを取り外し、洗車ついでにハブのダストシールを点検しよう
- ポイント2・ 定期的にホイールベアリングへグリスアップすることで、ベアリングの寿命は間違い無く高まる
- ポイント3・ ホイールだけではなく、レバーピボットや摺動面、サスペンションリンクのシャフトやブッシュにも定期的にグリスアップしよう
グリスアップという言葉は聞いたことがあっても、実際に体験したり、実践したことがあるビギナーライダーは少ないと思う。ビギナーに限らず、それはベテランライダーでも同様だろう。車体各所にある摺動部のほぼすべてがグリスアップポイントと呼べるが、どの部分にグリスアップしたことがあるか?エンジンオイル交換は、極めて重要な作業だが、長年に渡ってバイクのコンディションを保つという意味では、オイル交換と同等以上に重要なのが、車体各部へのグリスアップと断言できる。
ここでは、前後ホイールのハブベアリング(ホイールベアリング)にグリスアップを行うが、今回「ホイールベアリングにグリスアップしよう」と思った理由は、何度か雨中の林道ツーリングやエンデューロレースにエントリーしたとマシンオーナーから聞いていたからだ。外部から観た限り、どうやらハブベアリングやアクスルシャフト周辺へのグリスアップは実施されていないような雰囲気だった。
早速、メンテナンススタンドで前後ホイールを持ち上げてホイールを取り外した。すると、ホイールサイドカラーは、ダストシールに対してスポスポ状態。ダストシールリップとの抵抗感は、ほぼ無かった。ダストシール内部を確認すると、ベアリングの抜け止めサークリップにはサビが発生し、ダストシールの中にも乾燥したドロが詰まっていた。結論としては、ダストシールの賞味期限切れ=摩耗により、ダストシールの役割を果たせずシール内部にドロが入り込んでしまっていたようだ。このメンテナンス実践時は、手元に交換用ダストシールが無かったので、グリスを多めに塗布して復元した。これは明らかに前後ダストシールを交換しなくてはいけない。オーナーに申し送りすると、近日、ドライブチェーン交換の予定があるらしいので、その際に、前後ダストシールの交換も進言しておいた。
ここでは、ハブベアリングへグリスアップを施そう。エンジン内部のベアリングは、エンジンオイルで常に潤滑されているが、車体周りのベアリングは、積極的にグリスアップしない限り、音が出たりガタが出たり、最悪で焼き付くなどのトラブルが発生する。そもそもトラブルが起きたことで交換する部品ではないので(焼き付きトラブルが発生するとほぼ自走不可能になり、移動すらできなくなることが多い)、あらかじめ(定期的に)メンテナンスするのが重要なのだ。
グリスアップを定期的に行うことで、実は、半永久的に長持ちするのがベアリングでもある。このハブベアリングには、シールベアリングが採用される例が多く、シール部分がスチール製ではなくラバー製であれば、ハブに組み込まれた状態のままでもベアリング洗浄やグリスアップは可能だ。高性能グリスを利用し、定期的にメンテナンスしたいものだ。
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